……今日はホリィさんが倒れてしまう日だ。
どうしても落ち着かなくて今日は朝からずっと彼女の近くにいる。
「ベラちゃん、花京院くんの様子を見てきてくれない?」
「はい……。わかりました」
出来れば離れたくなかったのだが、彼女からの頼みだ。断れるわけが無い。
典明くんの寝ている部屋に行くと、丁度彼がでてきた。
「イザベラさん、どうしました?」
「ホリイさんに様子を見てきてって言われたから来たの。それで、具合はどう?調子悪いとかない?」
「特にないですよ」
典明くんがニコ、と笑う。
その時だっただろうか、空条邸の中が嫌な静けさに包み込まれた。
「やけに静かですね。何かあったんでしょうか。」
「……ホリィさんが」
「ホリィさん?彼女がどうしたんです?」
「ああ、なんてこと。きっと倒れてしまったんだ」
「イザベラさん?」
典明くんの声を無視して私は慌てて台所へと走る。
そこにはもうみんな集まっていて、中ではホリィさんがぐったりした様子で倒れていた。
「ホ、リィ……さん……」
分かっていたことのはずなのに頭がどんどん真っ白になっていく。
呆然と立ち尽くす私を見てアヴドゥルがこの場から離れるよう言う。
頭を冷やした方がいいのかもしれない。
その場を離れる足取りは信じられないほど重い。
「イザベラさん!急に走り出してどうしたんですか、心配しましたよ」
「典明くん、ホリィさんが倒れてしまったの」
「どうして、疲労かなにかですか?」
「疲労だったらどんなに良かったか。ホリィさんにスタンドが発現して、でも穏やかな性格の彼女にはそれが毒になってしまっているの」
「スタンドが、毒に……ですか」
「うん、私は過去にそれのせいで命を落としてしまった人の記録を見ている」
「記録?」
「私SPW財団の職員なんだ。だから、見た事あるの」
「イザベラさん、ホリィさんはこのまま死んでしまうんですか?」
「多分だけどまだ大丈夫、まだタイムリミットがあるはずなの。元凶であるDIOをどうにかすれば、ホリィさんはきっと助かるはず」
「……DIOは、エジプトにいます」
「エジプト?」
「あの時から移動していなければ、の話ですけどね」
典明くんと一緒にジョセフの元に向かう。
私が介入したことにより物語が変わっていないことを確認するためにも。
「やつはエジプトにいる!それもアスワン付近と限定されたぞ!」
「やはりエジプトか。いつ出発する?私も同行する」
「同行する?何故?お前が?」
「……そこんところだが、なぜ同行したくなったのかは私にもよくわからないんだがね。お前のおかげで目が覚めた、ただそれだけさ」
「フン」
「私も同行します。いいでしょう、ジョースターさん」
「もちろんだ、君がいてくれるとわしも心強い」
そして承太郎がタロットカードで自分のスタンドの名前を決める。
"
私も旅の為に準備した方がいいかと思い買い物にでも行こうとした時、後ろから声をかけられる。
「ベラ、どこに行くんだ?」
「買い物です。一応女性なので準備するものが少し多くて……」
「そうか」
「……他になにかあるんですね?」
「記憶を失くしたって本当か?」
「はい、古い記憶がすっぽりと抜け落ちてしまいまして」
「だからそんなよそよそしい話し方だったのか。納得したぜ」
帽子のつばを下げてふっと笑う。
私には何故かその笑顔が寂しそうに見えた。
「ごめんなさい」
「何故ベラが謝る?」
「なんだか謝らなくてはいけない気がして」
「ふ、いらねー謝罪だったな」
「ふふ、そうですね。いらない謝罪でした」
承太郎は優しい。
記憶を失くした私にこんな風に接してくれるなんて、やはり彼らは美しい。身も心も全て美しい。