必要なものを買い終え、すぐに出発する。
飛行機に乗ったはいいが、ジョセフの取った席が2人ずつだったため、必然的に私が1人になってしまった。
ちょっと寂しい……とか言ってる場合ではないことは百も承知だ。
そんな時、ブブと虫の羽音が聞こえてきた。
弱ったな、これから出てくる敵スタンド使いは把握しているけど一番最初に出てくるコイツが何気に嫌だ。
相手が強いとかじゃない、ただただ虫が嫌いなだけ。ただそれだけ。
ブーンと羽音を我々の目の前に現れた。
「かぶと……いや、クワガタムシだ!」
「アヴドゥル!スタンドか!?は、早くも新手のDIOのスタンド使いかっ!」
「ありうる、虫の形をしたスタンド……」
「座席の陰に隠れました」
「どこだ……?」
全員が辺りを見回し、耳を澄ませる。
私が立ち上がったのと同時に典明くんが声をあげる。
「JOJO!きみの頭の横にいるぞ!」
「異常な大きさ、やはりスタンドですね」
クワガタムシがヂュルヂュルと不快な音を立て、口針を出す。
「気持ちわりぃな、だがここは俺に任せろ」
「き、気をつけろ!スタンドだとしたら人の舌を好んで食いちぎる虫のスタンド使いがいると言う話を聞いたことがある」
スタープラチナの攻撃を避け、承太郎の舌を食いちぎろうと口針を伸ばす。
「承太郎さん!!アブドゥルさん、やはりアイツ」
「ああ、間違いないヤツだ。タロットで"塔のカード"!破壊と災害、そして旅の中止の暗示を持つスタンド
「金か何かで雇われたのではないでしょうか」
「……十分ありえる話だな」
「全員が全員DIOの信者として動くわけではないでしょう」
承太郎がタワーオブグレーを仕留めようとするが、ソイツはそれすらも躱した。
なんていう速さだ、その場の全員が思ったことだろう。
「たとえここから一センチメートルの距離より十丁の銃から弾丸を撃ったとして弾丸は俺のスタンドに触れることすらできん!もっとも、弾丸でスタンドは殺せぬがな」
そう言ってタワーオブグレーはフッと消える。
まずい、このままだと乗客が殺されてしまう。
私は急いで時の流れを遅くし、乗客を軽く移動させる。
「ヌゥ!?」
ついこの間分かったことだが、この遅くなった時の流れを認識できるのはどうやら私だけらしい。
確か5部のキング・クリムゾンも本人だけが認識できるはずだったから、またそこも被っている。
いや、それとは少し違う点があるな。私が触れていれば最低二人にこの時の遅れを認識させることができるらしいが……私の体力が持つかどうかの話になってしまう。
……なんて心の中で冷静にスタンドの解説なんかをしているがヤツに肩を少しだけ食いちぎられてしまった。傷跡が残らなければいいけど……。
「乗客の舌を引き千切るはずだったんだが、まあいい!俺の目的はただ一つ!」
タワーオブグレーが原作通り壁に血文字を書き殴る。
『
よくその血液量で文字が書けたものだと何故か感心してしまった。
「貴様、よくも!焼き殺してくれるッ!」
「待て、待つんだアヴドゥル!」
「そうですアヴドゥルさん!私の怪我だって痛みはしますが大したものではありません!」
「うーん、なんか騒々しいのォ……何事かな」
老人が席から立ち上がり、壁の血文字に触れ悲鳴をあげる。自分でやったくせによくそんな顔が出来るなと言ってやりたい。
その老人は花京院の手刀で強制的に気絶させられる。
「アヴドゥルさん、あなたの炎のスタンドはこの飛行機までも爆発させかねない。JOJO、きみのパワーも機体壁に穴でもあけたりしたら大参事になる!だからここは私のスタンド、
「クク、花京院典明か。DIO様からよォく聞いているよ。やめろ、貴様のスピードでは俺をとらえることは出来ん。俺に下を食いちぎられ、苦しみ悶えるのが目に見えているわ!」
「果たしてそうかな、アット・ヴァンス、私と典明くん以外の時の流れを遅らせろ」
「ッ!これは」
「これが私の能力、世界の時の流れを遅らせる能力」
「すごい……僕ら以外の時が遅くなっている」
「そういう反応をしてくれるのは大変うれしいことなんだけどたった一人でもこれを認識したら能力の維持なんかが難しくなるようでね、悪いけど早くソイツを捕まえてはくれないかな」
「わ、わかりました。ハイエロファントグリーン!」
典明くんはすぐにハイエロファントの触脚でタワーオブグレーをとらえる。
どんなに素早くても時間自体を遅くしてしまえば全てが無意味になってしまう。
まあ、止められてしまったら私も何もできない奴らの仲間入りしてしまうんだけどね。
「能力を解除してもいいですよ、イザベラさん」
「了解」
解除した途端、タワーオブグレーは驚くことになる。
さっきまで自分が優位に立っていたはずなのに気づけば自分の体が引き千切られる寸前の状態
「私のハイエロファントグリーンは引き千切ると狂い悶えるのだ、喜びでな!」
「なん、だとッ!?どういうことだ!どういうことだァッ!!」
「お前ごときが理解できるわけがないね」
痛む肩を抑えながらそう吐き捨てる。
さっきの老人の舌がクワガタムシの形にえぐれ、そして裂ける。
「さっきのじじいが本体だったのか、フン、おぞましいスタンドにはおぞましい本体が付いているものよ」
「……肉の芽が付いていない、ということはやはり金で雇われた人間みたい」
「変じゃ」
「どうかしましたか?」
「さっきから機体が傾いて飛行しているぞ」
「なんですって」
しまった、スタンドの事で頭がいっぱいですっかり忘れていた。
乗客の命は無理矢理ではあるが助けたというのにパイロットは……くそ、やっぱり全員を救う事なんてできるわけないのか。
「お、お客様どちらへ?この先は操縦室で立ち入り禁止です」
「知っている!」
「お、お客様……」
「どけアマ」
「きゃあ!」
「おっと、失礼。女性を邪険に扱うなんて許せん奴だが、今は緊急時なのです。許してやってください」
「はい……」
酷い茶番を見た。
とか思ってる場合じゃない、操縦室に向かうとそこは、地獄絵図とでもいえばいいのか、パイロットは舌を抜かれ、自動操縦装置も破壊されていた。最悪の状態だ。
「この機は墜落するぞ」
「ぶわばばばァ、お前らはDIO様の所には行けんッ!たとえ助かったとてエジプトまでは一万キロ!その間四六時中DIO様に忠誠を誓ったスタンド使いが貴様らをつけ狙うのだァ!!」
「ヴァンス、黙らせて」
ヴァンスはコクリと頷き渾身の力で老人をぶん殴った。
……いや、我がスタンドよ。命令したのはほかでもない私自身だが他にもっとやりようがあったんじゃないか。殴ったらその殴った拳の痛みが私にも来てしまうんだぞ。
「流石スチュワーデス、プロ中のプロ、悲鳴をあげないのは鬱陶しくなくていいぜ。指示で頼むがこのジジイがこの機をこれから海上に不時着させる。他の乗客に救命具をつけて座席ベルトしめさせな」
「は、はい!」
「うーむ、プロペラ機なら経験あるんじゃがの」
「プロペラ……」
「しかし承太郎、これでわしゃ三度目だぞ、人生で三回も飛行機で墜落するなんてそんな奴あるかなあ」
「……二度とテメーとは一緒に乗らねえ」
これも最悪だ、ジョセフには悪いがもう一緒に乗りたくない。