物語の山場まではもう少しかかりそうです。
今回はついに騎士団選定試験が幕を開けます。
「よしっ。着いたー!」
家のある町を出て約30分、10キロ以上もある道のりを全力疾走で駆け抜けたエルスは、ブリテン王国王都正門前に来ていた。
「すみませーん。エルス・ヴァーミリオン、白翼騎士団選定試験を受けに来ました!」
「受験票を提示してください。」
エルスは選定試験の受験票を門番に見せると、門番から通行許可証を受け取り、意気揚々とメイン通りを駆け抜けた。
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宇宙空間とも取れない謎の空間。縦も横も奥行きも、どこを見渡しても無限の闇が広がる世界。さながら”異空間”ともいうべきその謎の場所に、ひどく冷たい声が重く響き渡った。
『譎ゅ?貅?縺。縺溘?繝サ繝サ縲りィ育判縺ョ譎ゅ□繝サ繝サ繝サ縲』
声の主と思しき黒い塊のようなモノは、空間に吸い込まれるように姿を消した。
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「ほほぉ〜。ここがブリテン王国が誇る王城・・・! 誇り高き白翼騎士団の本拠地・・・!」
城の前で一人興奮しているエルスを他所に、他の受験者と思われる人の群れは既に王城の中庭広場に集合し始めている。
そんな、城に見とれてそれに気付かずにいるエルスの肩が後ろから叩かれた。
「ひゃうっ・・・!」
驚いて振り返ってみると、一人の少女が肩に手を置いたまま苦笑いしていた。エルスより少し小さめの銀髪のショートヘア、儚げな雰囲気が特徴的な少女だった。
「あら、驚かせちゃいましたか。ごめんなさい。あなたがあまりにもぼーっとしていたもので、つい・・・。」
少し申し訳なさそうに目を伏せる彼女。
「い、いやいや! お城があまりにも凄かったもんで、つい見とれちゃってて・・・。むしろ助かったよ、ありがとう!」
その言葉を聞いて、彼女は顔を上げた。
「そう言って貰えると嬉しいです。・・・おっと、申し遅れました。私、ヤクモと申します。以後お見知り置きを。」
「ヤクモちゃんね、よろしく! 私はエルス、エルス・ヴァーミリオン!」
同じ道を歩まんとす同志、あるいはライバルと握手を交わし、二人は選定試験の説明が行われる中庭広場に急いだ。
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ブリテン王国王城中庭広場、そこには現在1000を優に超える王国騎士団候補生が集っていた。中央の前方には立派な甲冑に身を包んだ騎士団員と思しき男性が立っている。
そしてその集団の最後列には息を切らしながら整列するエルスとヤクモ、二人の姿もあった。先の会話の直後、時間がギリギリであることを思い出し、二人で猛ダッシュして寸前で滑り込んだのである。
「誇り高き白翼騎士団を志すものよ、本日はよく集まってくれた。私は白翼騎士団第一師団長、アラド・ヴィッセンドルフ。早速ではあるが私から試験の流れを説明しよう。」
彼の話を簡単に説明するとこうだ。
試験に先がけて配られた胸元のシールを奪い合い、終了時点で自身のシールを死守しつつ、より多くのシールを獲得していた上位16名を第一試験突破とする。移動可能範囲は中庭全体。つまりはしっぽ取りの要領で如何に生き残りつつ他人のシールを奪うかである。しかも生き残れるのは1000分の16。かなりの狭き門である。
「制限時間は今から60分間である。それでは、諸君らの武運を祈る。」
そのあまりにも不毛な争奪戦の火蓋は、突然に切って落とされた。
いかがでしたでしょうか?
初登場のヤクモちゃん、そして謎の存在と物語は加速していきます。
次回、苛烈な騎士団選定試験の行方と、その後の二人に待ち受ける過酷な運命やいかに・・・?