GIFT   作:O-RiN

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こんばんわ、O-RiNです!
今回は戦闘描写が少し入ります。
そしてお待ちかね(?)の序盤の物語の大きな展開がついに始まります。

それでは、どうぞ!


《EP:4》狂気

 「エルスさん、私を殺してください」

 

 エルスは目の前の彼女の言うことが理解できず、ただ目の前の惨状に震えていた。そんな彼女に憐れむような視線を送り、諭すように続けた。

 

 「私はね、文字通り命の奪い合いが大好物なんですよ。次の瞬間には殺されてしまうかもしれないという恐怖感、目の前の相手を殺した時の快感、全てが私にとっての最高の栄養素であり、それこそが”生”を実感できる証なんです。」

 

 そこで一度言葉を区切ると、瞬時にエルスの目の前まで移動し、エルスの首元に短剣を突き付けた。

 

「そこで私は考えました。どうすれば強者との血湧き肉躍る殺し合いができるのか、と。そしてひとつの結論に至りました。年に一度、国中の猛者が一挙に集う一大イベント・・・そう、”騎士団選定試験”です。」

 

「・・・・・・!(どうして? 動けない・・・! 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い! 死ぬのが怖い! 情けない・・・! なのに身体が勝手に震えて動けない・・・!)」

 

首元に突きつけられた短剣の冷たく鋭い感触と、言葉から感じられるヤクモの常軌を逸した狂気に、エルスはただ冷や汗を流し震えることしか出来なかった。

 

「国中から強者が集うここでなら、私と肩を並べて殺り合える者との最高の殺し合いができると踏んでいたのですが・・・。正直どいつもこいつも期待外れです。・・・・・・ですがエルスさん、あなたと出逢えたのは思わぬ収穫でしたよ。」

 

「私と・・・?」

 

ヤクモは震えながらも絞り出すようにして問うたエルスに対し、ニヤリと笑みを浮かべるとゆっくりと、言い聞かせるように話した。

 

「そうです。お気づきなんでしょう? あなたの身体能力はそこらの雑魚とは違う。あなたが本気を出せば私とも渡り合える・・・いや、私を殺すことも可能でしょう。」

 

「・・・・・・!(落ち着け、エルス・ヴァーミリオン。落ち着いて、身体の震えを抑えるの・・・!)それは、私にヤクモちゃんと戦えって言いたいの?」

 

必死の思いで震えを抑え、ヤクモをキッと睨んだエルスに、歓喜の表情を浮かべるヤクモ。それはまるで、新しい玩具を買ってもらった小さな子供のような無邪気な笑顔のようだ。

 

「話が早くて助かります。さあ、私と死合いましょう・・・!」

 

首元に当てられた短剣をもう一度振りかぶり、素早い動きでエルスに向けて振り下ろされた。真っ直ぐ、左胸に向けて振り下ろされたそれを、エルスは寸前で手甲で受け止めた。

 

「ほぅ・・・さすがの反応速度、お見事です。ですが・・・!」

 

攻撃を受け止められたヤクモは素早く飛び退くと、目にも止まらぬ素早い動きでエルスの前後左右へ移動し、翻弄する。

 

「・・・・・・!(さっきの瞬間移動みたいなやつだ。どこから来る・・・?)」

 

「上ですよ!」

 

先程と変わらぬ笑みを浮かべたヤクモは既にエルスの頭上に飛び上がり、短剣を振りかぶっていた。

 

「しまっ・・・!」

 

 

ーーーガシャーーーン!!!

 

 

遠くで鳴り響いた何かの爆発音のような音が聞こえたと思うと、ヤクモはエルスに向けて振り下ろされていた切っ先をずらし、エルスから飛び退いた。

 

「チッ・・・! もう始まりましたか。予定より早すぎやしませんかね、全く。」

 

「・・・? どういうこと!?」

 

訳が分からずヤクモに問いかけるエルスに対し、ヤクモは嘲笑した。

 

「命拾いしましたね。ですがそれももはや無意味です。遅かれ早かれ、あなたも、あなたの周りの人間も、全て死にます。・・・もちろん、()()。」

 

「・・・ヤクモちゃん。あなたの言わんとしていることは私には理解できない。だけど、私はヤクモちゃんの思うようにはならない。私が強くなって、家族、街人達を護るから。」

 

「そうですか。ならせいぜい足掻いてみせるといいでしょう。あなたは全てを否定する程の絶望にどこまで抗えるのか、見物ですね。」

 

真っ直ぐに自分を見つめて宣言するエルスに、ヤクモはフッと笑うと意味深な言葉のみを残し、先程の瞬間移動のようなスピードでどこかへ去っていった。

 

「護る人達の中にヤクモちゃんもいるんだよ・・・。だって、友達じゃん・・・。」

 

エルスは寂しげに、ヤクモも、他の受験者も誰も居なくなってしまった中庭で、一人零した。

 

「そういえば、これだけの騒ぎがあったのに、他の騎士団の人達は来なかったよね・・・? それどころか外は騒がしいのに城全体は妙に静かなような・・・?」

 

確かに、受験者はヤクモにやられてしまったとして、城に誰もいないのはおかしな話である。それに先程の爆発音と、ヤクモの意味深な発言。エルスは妙な胸騒ぎを覚えた。

 

「とりあえず、外に出なきゃ! 助けも呼ばないといけないし・・・!」

 

この時、エルスはまだ知らない。

 

謎の黒い生命体によって、王都のほぼ半分以上が壊滅状態に陥っていることを。

 

時を同じくして、エルスの家のある街が、同じ存在によって既に焦土と化してしまったことも・・・。

 




いかがでしたでしょうか?
これからエルスはただの活発で明るい少女から、良くも悪くも少しずつ成長していきます。

次回、王都とエルスの街を襲った悲劇の正体と、エルスの両親の運命や如何に・・・?
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