IS - 女装男子をお母さんに - 改訂版   作:ねをんゆう

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13 一般人の女装生活に罪悪感は付き物

side奈桜

 

「というわけで織斑くん、クラス代表内定おめでとうございます!」

 

「おめでとうございます!一夏さん!」

 

「よくやったぞ一夏!」

 

「………」

 

波乱万丈の一日の終わり、寮監室には僕と千冬さんの他に、一夏くんに箒さん、加えてオルコットさんも集まっていた。

なんでも今日は一夏くんが夕飯を作ってくれるということで、だったらオルコットさんも呼んでしまおうという僕の提案を皆も快く受け入れてくれたというわけだ。

まあ、肝心の一夏くんがどこかどんよりしているのは気になるけれど。

さっきまで元気だったのに、一体どうしたのだろう?

 

「どうした一夏、祝われているなりに何か言うことはないのか?」

 

「いや……だってさ?よくよく考えたら俺クラス代表になっちゃってるじゃん?」

 

「勝負の結果ですもの、仕方ありませんわ。一夏さんはわたくしに勝ったのですから、誇っていただかないと!」

 

「つってもオルコットさんはスターライト?だっけ。あれ無しでの勝負だったろ?他の武装だって綾崎さんのおかげで分かってたし。

綾崎さんとの試合だって引き分けとは言え一回雪片ぶっ飛ばされたしさ、あれも実質負けみたいなもんだろ……」

 

「でしたら織斑くんは全敗、勝利者である私とオルコットさんは辞退しますからやっぱりクラス代表は織斑くんですね♪」

 

「なっ!だったら俺も辞退を……!」

 

「「「「それはダメ(だ)(です)(ですわ)♪」」」」

 

「なんだよちくしょー……」

 

そう、結局のところ、一夏くんはオルコットさんに勝ったのだ。

その前の試合で僕がオルコットさんの替えの利かないレーザーライフル"スターライトmkⅢ"を壊してしまい、彼女が近接武器とブルー・ティアーズのみで戦う必要になってしまったのも大きいだろう。

しかしそれでも素人が代表候補生に勝ったのは事実、ならば間違いなく適任だ。

少なくとも、まともな攻撃ができない僕よりはずっと。

 

「そういえば綾崎、お前のペルセウスについて何かあの変態から連絡はあったのか?」

 

隣で寛いでいた千冬さんが思い出したように僕に尋ねる。

僕はいつも通り千冬さんのグラスにビールを注ぎながら、苦い顔になっていくのを自覚した。

あれを笑顔で報告するのはなかなか難しい。

 

「そうだよその武装、なんか突然光ったと思ったらオルコットさんの攻撃とか俺の雪片をぶっ飛ばすし。結局なんだったんだ?」

 

「そうですわ、私のスターライトに武器を貫通してアリーナのバリアにまで傷をつけるほどの威力はありませんし。一夏さんのブレードに関しては根元まで地面に突き刺さるほどの威力。わたくし、とても気になりますわ!」

 

2人は身を乗り出して僕に迫る。

今日はすき焼きにしたので机の中央には黒い鍋があるわけだが、熱くはないのだろうか。

とりあえずオルコットさんの指が鍋に触れそうになっていたので注意をしてから説明することにした。

流石にその綺麗な指に火傷を負って欲しくは無い。

 

「ええとですね。まずペルセウスはただの近接武装ではなく、その本質は対ISを想定した反射武装だそうです」

 

「反射武装?どういうことだ」

 

「ペルセウスは衝撃を受けるたびにエネルギーが充填される仕掛けになっているそうで、どれだけ早くとも完全展開に至るまで20〜30分がかかります」

 

「完全展開ってのは、要するにあの光った状態のことだよな?燃費悪すぎねぇか?」

 

「ええっと、そうですね。とりあえず完全展開したペルセウスなのですが、その光った状態の時に物体にぶつけることで、対象を指定した角度へ反射することが可能ということでした。反射の設定は使用者のイメージで調整ができると」

 

「なるほどな、そんな微妙なところでイメージインターフェイスを使っているのか。対ISを想定しているというのはなんだ?」

 

「完全展開時のペルセウスが最も有効に働くのがISを相手に反射した場合だそうです。ペルセウスがISに直接干渉すると、一時的にブースターなどのISの一部システムが停止します。要は対象は完全に無防備な状態で吹き飛ばされるということですね」

 

「……は?」

 

「なんですのその機能……」

 

「言いたいことは色々とあるが、その無駄に悪い燃費はそのせいか」

 

「そうです。ちなみにインパクトの瞬間には金属バットでホームランを打った時のような音が流れます。『メルヘンゲット!』と叫びながら放つと状況に応じた解説と実況、BGMが流れるそうです。私は絶対に使わないですけど」

 

「なんか急にネタ武装じみてきたな」

 

「なぜ少ないスロットにそんな無駄なAIを付けてしまったのか」

 

「『乙女は強くなくっちゃね!』というのが開発スローガンだったと変態社長が言っていましたが、全く意味が分かりませんでした」

 

「もういい分かった。ISの機能に干渉する武装など言いたいことは山程あるが、とりあえずこの話はここまででいい。なんだか頭が痛くなってきた」

 

「奇遇ですね、私も話していて頭が痛くなってきました……」

 

「BGM云々を抜きにしてもブルー・ティアーズ以上に性能がピーキー過ぎますわ……」

 

ただの棒かと思っていたらとんでもない兵器を持たされていたという恐怖。

流石に絶対防御やSEには干渉できないそうだけれど、地面に向けて打てば敵ISは受け身も取れないままに叩きつけられるのだ。

場合によっては冗談では済まされない。

それにエネルギーが溜まり次第、自動展開するという点もいただけない。

仮に今日の試合、織斑くんが零落白夜を使用したままの状態だったら、吹き飛ばされた剣はアリーナのシールドをぶち破って観客席にダイブしていた可能性だってある。

そうなれば死者が出るのは確実だ。

 

使いたくないが、武器がこれ以外に無いので使わざるを得ない。

本当に嫌らしい武器である。

上手くタイミングを見計らって大事故に繋がらない形で使用しなければならないなんて、強力だが使い勝手が悪いとしか言いようがない。

守るだけならまだシールド付与機能のある拳銃型武装"遠距離恋愛"の方が使いやすいだろう。

……いや、名前が名前だけに使い辛いのだけれど、武装としてはまだマシだ。この際プライドは捨てていく。

 

というか、他にも色々と微妙なものは付いていたりするので、これらをどう使っていくかは考える時間が必要だ。

だって普通の武装が無いんだもの。

そういうマニュアルも無いし、時間をかけて練っていくしかない。

使う側が考えること前提とか、ちょっと意地悪過ぎないでしょうか。

 

「千冬さん、また後で相談に乗って下さいね」

 

「……まあ、何かつまむものを用意してくれるなら考えよう」

 

僕が色々と考えていたことは既にお見通しだったらしく、苦笑をしながらも千冬さんは了承してくれる。

確か冷蔵庫に買っておいた枝豆があったと思うから、それを出すことにしよう。

それとも卵焼きでも作ろうか?

 

(そういえば卵が心許なかったかな)

 

などと冷蔵庫の中身を思い出していると、ちょうど織斑くんが銀紙に包まれた料理を配膳し始めた。

なんでも千冬さん曰く、彼は非常に料理が上手らしい。

家事のできない姉に代わって掃除洗濯食事の準備、全てを一人でこなしていたという自慢の弟くんだそうだ。

 

そんな彼の今日のメニューは鮭のムニエル。

 

醤油で食べてもよし、ポン酢でもよし、特製のソースでもよし。

匂いだけでも美味しいと分かるほどの出来である。

お酒に合うのは間違いないのか、千冬さんもゴクリと喉を鳴らした。

実は僕もかなり楽しみだったりしている。

 

 

「……さて、お食事の前に少しだけお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」

 

しかし目の前に出された料理に夢中になっていた僕達を呼び戻したのは、何故か異様に畏まった様子のオルコットさんだった。

食事前の良いところで声をかけられて不機嫌そうになっていた箒ちゃんや千冬さんも、彼女のそんな様子を見て態度を変える。

僕もなるべくオルコットさんが緊張しないように、なるべく優しい笑顔をつくって様子を見守る。

 

「今回の件で、わたくしは一夏さんに対して多くの無礼を働いてしまいました。その件に関してまずは謝罪をさせていただきます。本当に申し訳ありませんでした」

 

「え?いや、別に気にすんなって。今の時代、女なら誰だってああなる可能性があるのは分かってるし……それに、今はもう違うんだろ?」

 

「はい……言い訳にはなりますが、わたくしは軟弱だった父と両親の財産目当てに群がってくる殿方を見て、男性というものに失望しておりました。母が強い女性だったことと、そんな母に憧れていたというのも拍車を掛けたのでしょうね。あの時、授業の内容が全く分からずお姉様に泣きついていた一夏さんを見て、結局日本の男性も同じものなのだと思い込んでしまいましたわ……」

 

「いや、あれは単に一夏が軟弱だっただけだ」

 

「えと、少しドジしちゃっただけですもんね?」

 

「この愚弟が……」

 

「その件に関しては100%俺が悪いから綾崎さんのフォローすら胸が痛い……」

 

ごぶっ!と親しい女性2人から冷たい視線で貫かれ、救いの手による罪悪感で内側からも攻撃を受けた一夏くんは机に頭をぶつける。

オルコットさんも少し苦笑いをしながらそんな様子を見ていた。

仕方がないのでもう一つフォローを出しておく。

 

「ふふ。でも、こうして実際に戦って見てオルコットさんも分かったのでしょう?織斑くんのこと」

 

「……はい。『剣を交えれば分かる』というほどの腕はありませんが、間違いありません。一夏さんはとても強い男性でした。そして、とても魅力的な男性でもありました。

ですから、どういった形でも構いません。謝罪を受け取っていただきたいのです。そうでなければ貴方をあんな男達と重ねて見てしまった自分を許すことができません」

 

「オルコットさん……」

 

きっと一夏くんだってここまで真剣な謝罪を受けたことはそうそうないだろう。

側から見ていた人間にとってはあのやり取りはただの喧嘩に過ぎない。

けれどそれを行った本人にとっては、その時の内心を唯一知っている自分にとっては、ただの喧嘩ではなかったのだ。

彼女の中にしかない葛藤、外には見えない心の闘争。

彼女は自身の中で様々な思いを抱き、戦い、整理してここにいる。

故にこれは大袈裟な謝罪でもなければ、割りに合わない謝罪でもない。

彼女の中で彼女が行ったことを彼女が評価したものがこうして現れているのだ。

 

だからこそ、そういったことを全て含めて察して、こうして直ぐに笑いかけることのできる一夏くんは、やはりオルコットさんの言う通りに魅力的な男性なのだろう。

千冬さんも少しだけ誇らしそうに、そんな彼の姿を見ている。

 

「ああ、わかった。俺はその謝罪を受け取る。だからさ、一つだけお願いを聞いてくれないか?」

 

「お願い、ですか?私にできることならなんでもしますが……」

 

「そのだな、セシリアって呼んでもいいかな?多分だけどさ、オルコットさんとは仲良くなれると思うんだ。俺も、剣を交わしてから初めて分かった。だから、とりあえずはそこから始めていきたい」

 

「一夏さん……!もちろん、もちろんですわっ!!」

 

感謝、感涙、感激。

一夏くんからの思わぬ提案にオルコットさんは涙を流しながら喜んだ。

やっぱり一夏くんは良い男だ、いつか千冬さんが彼がとてもよくモテるということを話してくれたが、今ならその理由がよく分かる。

僕が女で、オルコットさんの立場ならきっと惚れてしまっているだろう。

もちろん、オルコットさんもその節があるのは間違いない。

 

「皆さんも!よろしければわたくしのことはセシリアとお呼び下さい!お母様もです!」

 

「はい、もちろん分かっていますよ、セシリアさ………ん?」

 

オルコットさん、もといセシリアさんと一夏くんとの和解によって和やかになった雰囲気がピタリと静止した。僕も静止した。

 

……待って?今この子、僕のことなんて呼んだ?

 

「どうしたのですか、お母様?どこか具合でも悪いのですか?」

 

心配そうな顔をして僕の顔を覗き込んでくるセシリアさん。

綺麗な容姿をしているからか、そんな動作一つすらとても魅力的で。

 

いや、そんなことよりも。

 

静止していた空間でまず最初に動くことができたのは、やはり世界最強の冠を持つ彼女だった。

 

「……あー、オルコット?その、『お母様』というのは、なんだ?」

 

「前はお姉様だったはずだが」

 

千冬さんに続いて箒ちゃんも訪ねてくれる。

しかしそんな当然の疑問に対しても、セシリアさんは満面の笑みで答える。

 

「イギリスにいるわたくしのメイドに聞きましたの。先の時代の母親達は今のように己の強さではなく、母性というもので家族を守っていたと……当初はわたくしも母性というものがイマイチよく分からなかったのですが、お母様と出会ってようやく理解ができましたわ!優しくて、けれど厳しくて、それでもいつでも見守ってくださって……お母様と居るとわたくしは母に抱かれていた頃のような安心感を得ることができました。ですから間違いありません、お母様はお母様です!わたくしの2人目のお母様です!大好きですお母様!」

 

「ひゃんっ……!」

 

突然ガバリと抱きついてきたセシリアさんに自分でも疑問を抱くほど自然と女性らしい悲鳴をあげることができた。

僕も染まってきたな……

 

それにしてもこれはマズイ、とてもマズイ。

 

いや、もうお母様と言われることに関してはどうでもいい。

だって孤児院では僕のことをママと呼んでくる子供達も少なからず居たから。

その辺はもうとっくに諦めているし、セシリアさんにも同じ様に対応すれば良いだけ。

だから今回も諦めるだけなら簡単だ。

同級生にママ扱いされるのは結構辛いけど、それはもうこの際いい。

 

問題は彼女が僕のことを男だと知らないことだ。

彼女は恐らく一夏くんに恋心を抱き始めている。

けれど、そんな傍らで見知らぬ男に抱きついてしまっているのだ。

これはよろしくない、本当によろしくない。

もしかしたら今後も母にするようなスキンシップを行なってくるかもしれないし、距離感もこれくらい高くなるのだろう。

その時、僕はきっと強く抵抗することなんてできやしない。

今と同じように、されるがままにされるしかない。

そして真実が明るみになった時、セシリアさんが一体何を思うのか。

そんなことは考えなくとも分かる。

 

(……そうか。これは本当に、まずい)

 

これは僕の罪だ、人を騙すということを分かって引き受けたことだ。

けれど、その重さは今日というこの日まで全く理解できていなかったらしい。

自分のことながら、なんて無責任で考えのないヤツだと思う。

 

「いい加減にしろオルコット」

 

ビシッと放たれた千冬さんのデコピンによってセシリアさんは渋々と席に戻る。

そうしてようやく夕食の時間が始まった。

皆がセシリアさんの言動に困惑しながらも各々食事の感想を言い合い、僕も必死に頭の中を整理しながらそれに混ざった。

空気を壊すことなく、上手く溶け込めていたと思う。

 

……けれど、この生活が始まって初めて自覚し、そして今後も重ねていくであろうこの罪は、少しずつだけど僕の頭を蝕み始めていた。

これからも同じようなことはきっとたくさんある。

その時に僕は、これまでと同じように、自分のことを隠し通す事ができるのだろうか。




--おまけ--

「オルコットさん、今日も鍛錬ですか?」

「お姉様……?え、ええ、あの男に負けるわけにはまいりませんから。どんな可能性も潰すよう、徹底的に仕上げなければなりませんの」

「なるほど……ですが、少しは休まないと保ちませんよ?最近は放課後ずっとアリーナに篭っているようですし、取り敢えずはここに座って私とお話しとかしませんか?」

「!……ま、まあ、それくらいでしたら」

「ふふ、それなら良かったです。よいしょ……日本での生活はどうですか?少しは慣れてきましたか?」

「ええと……そう、ですわね。そもそもIS学園が他国の生徒でも快適に暮らせる様に作られていますので、不自由というのは特に感じませんわ。必要なものがあれば外から直接取り寄せますし」

「あはは、そうですか。……でも、やっぱり日本にあるだけあって、生徒の比率は日本人が多いですからね。孤独感を感じたりだとか、寂しく思うこともあるんじゃないですか?校内で働いている大人の方々も日本人ばかりですし」

「……そんなこと関係ありませんわ、少なくとも私はこの学園に遊びに来たわけではありませんので。誰とも話す機会が無くとも、これっぽっちも問題ありません」

「そうなんですか……?でも、私は寂しいですよ?私は時々でもいいですので、オルコットさんとこうしてお話ししていたいです」

「それは、光栄なことではありますけれど……そもそも、お姉様はどうしてそれほど私のことを気にかけて下さるのですか。お姉様はあの男と仲が良いようですし、私に対しても少なからず思う所があるのではありませんの?いくら勢い余ってとは言っても、私はあの男を口撃したのですし。実はお姉様にだって心の内では口にしたい恨み言などが」

「え?ありませんよ?」

「え?」

「え」

「え……?」

「いえその、別に私は誰が誰を好きで嫌いでも良いと思いますし。例え私が好きな人が私の好きな人の事を嫌いだとしても、それでどちらかを嫌いになったりはしませんよ。それくらいで私の好きは揺るぎませんから」

「す、好きだなんてそんな……!」

「それに、私はオルコットさんの笑顔が好きですから」

「………!」

「出来るのなら私は、オルコットさんが色々な人と仲良くなって、色々な楽しい事を経験して、心から幸福だと笑って居る所を見ていたいです。せっかくこんなにも美人なのに、その笑顔を仕舞い込んでずっと無表情で居るなんて、それこそ勿体無いですよ」

「そ、そんなことは……」

「ほら、オルコットさん?取り敢えずはこうやって、私と一緒に笑ってみましょう?色々と辛い事や苦しい事もあるとは思いますけど、こうして誰かと笑顔を見せ合うだけでも少しは楽になるはずです」

「こ、こうですの……?に、にぃ〜」

「ふふ、そうですそうです!にぃ〜♪」

「ふ、ふふ、お姉様ったら、そんなに必死になさらなくても。頰が上がり過ぎて、なんだか少しおかしいですわ」

「ふへへ、でもやっとオルコットさんが笑ってくれました♪」

「!」

「やっぱり、オルコットさんには笑顔が似合いますよ。それは私が自信を持って保証します。例えるならそうですね……深海の宝箱、なんてどうでしょう?あ、我ながらこの表現いいですね。個人的に結構お気に入りです♪」

「……もう、本当に大袈裟なんですから」

けれど、そう笑うセシリアの顔からは怖さはもうすっかり抜けていて。
膝元でぎゅっと綾崎の服の端を握っていた小さな手だけが、小さく、しかし確かに、彼女の本当の心の声を訴えかけていたように思えた。
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