IS - 女装男子をお母さんに - 改訂版   作:ねをんゆう

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16 ラッキースケベをされる側

「今日はISにおける実践的な飛行訓練を行う。各自ISスーツに着替えてグラウンドに集合しろ。遅刻は許さん。以上だ、移動を開始しろ」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

………はい。

 

 

 

こんにちは、綾崎奈桜です。

かつては直人でしたが、今は奈桜です。

でも基本的に名字の方で呼ばれるのであまり実感はありません。

今僕は女装生活を始めれば誰しもが予想できたであろうに、何の対策も施すこともできず、とうとうやってきてしまったこの恐ろしい危機に直面しています。

 

「やだ……着替え、やだ……女の子といっしょ、だめ、ぜったい……」

 

だめです、これはだめです。

本当にだめな奴です。

だってこれ、超えてはいけない一線です。

この一線を超えたら、多分一生自分の性別を明かすことができません。

自分の性別を墓まで持っていくなんて、そんなの僕はやーです。

お断りです。

 

「お母様♪よろしければ私と一緒にお着替えしましょう?それとも先にお手洗いの方にしますか?」

 

どっちもいけない!

 

女子トイレで着替えを済ませればいいじゃん?

そう思うじゃん?

でも僕、この学園に来てから女性用トイレなんて使ったことありませんから!

 

だってダメじゃん!

倫理的にダメじゃん!?

トイレしてる音なんて誰だって異性に聞かれたくないじゃん!?

例えそれがどんな音でも!!

 

「お母様?」

 

「……セシリアさん。一つだけ、お願いを聞いてもらえないでしょうか?」

 

「はい?」

 

 

 

 

「こちらが更衣室ですわお母様!どうぞご自由にお使いくださいませ!」

 

「うぅ、ありがとうございますセシリアさん……」

 

アリーナにある本来の更衣室。

しかし今は教室で着替える事が基本となっているため、誰にも使われることのない寂れたその部屋。

そしてその更に壁一枚隔てた場所にある、かなり小さめの教員用の更衣室。

セシリアさんが紹介してくれたのは、そんな素敵な場所だった。

誰にも使われていない場所の中でも、更に人目につかないこの場所。

決して着替えを見ることも、見られることもあってはならない僕にとっては、これ以上が無いという程に本当に最高の場所だ。

こんなのもう、いくら頭を下げても下げ足りない。

 

「いえ、まさかお母様が自身の肌を見せることにそこまで抵抗があったとは思いませんでしたもの。これまで気づくことの出来なかった自分を恥ずかしく思いますわ」

 

「いえ、そんなことはありません。とても助かりました。本当にありがとうございます、セシリアさん」

 

「そんな!お母様の役に立てて良かったですわ!……それではわたくしも教室に戻りますわね、また後でお会いしましょう」

 

「ええ、また後で」

 

そう言って向こう側の更衣室へと走っていくセシリアさん。

きっと肌を見せたくないという僕のためだろう。

彼女は本当に優しい人だ。

セシリアさんにもまた別の形でお礼をしなければならないと思う。

 

「ふぅ、とりあえず下着を外さないと。いつも思うけどこれを付けたり外す時って本当に心が削れるなぁ」

 

ぶっちゃけた話、他の生徒と一緒に着替えてもバレることは決してない。

それは下にISスーツを着ているからとかいう理由ではなく(というかそもそも今日は着ていない)、僕には本当に胸があるからだ。

 

……胸があるからだ。

……推定B〜Cカップの胸があるからだ!

 

なんだと思いますこれ?

パッドじゃないんですよこれ。

何かを敷き詰めているものでもないんです。

そう、おっぱいなんです。

偽物のおっぱい。

 

その名も、《乙女の栄光パイパイン》である。

ネーミングセンスよ。

 

肩上から胸に貼り付けるタイプの偽乳で、本物に非常に近い触り心地と見た目をしている(らしい)。

特殊なジェルを使用しないと外すことができないが、貼り付けたことが分からないくらいの驚異の偽装力を持っている。

1日に1回洗浄が必要であるが、連日使用しても皮膚に害を与えないように作成されているという見る人が見れば本当に素晴らしい製品だ。

正式に商品化した場合の利益は計り知れないだろう。

 

ちなみに開発スローガンは、

『幼気なロリッ娘が念願叶って巨乳を手に入れて喜ぶ姿を見たい』

である。

純粋に歪んだ性的嗜好100%の下で開発されたこの製品。

流石は乙女コーポレーション、気持ち悪い。

 

そんな胸のおかげで例え抱きつかれた所でそうそうバレることは無い。とは言え、もちろん下半身は別の話だ。

流石に女装のために切る勇気は無いので、そこは仕方ない。

そこでこのISスーツの出番である。

 

授業まで時間が無いため急いで着替えに取り掛かる。

スクール水着型のISスーツ、ただし僕のは乙女コーポレーションの特注品だ。

なるべく女性らしい体型に見えるように調整され、かつ下半身は男性のシンボルを隠すためにスカートが普通より長めに設定されている上に素材も硬めにできているという優れ物。

 

……まあ、露出度が高いのは変わらないんですけどね。

肩出し脇出し太腿出し、身体のライン丸出しだけでは飽き足らず、ニーソによる絶対領域まで生み出して。

このスーツを最初に考案した人間は間違いなく変態だ。

特にこれが女性が着るならまだしも、僕は男だ。

これを着るとなるともうなんか本当に死にたくなる。

しかもこれ下に何も付けてないんですよ?

肌の上にそのまま着るんですよ?

辛みしか感じないでしょう?

 

「はぁ……」

 

ため息を一つついてISスーツを腹部まで上げる。

ベンチに鏡とジェルを置き、地べたに座りこんで違和感がないかを丁寧に確認していくが、こうして見ると胸一つあるだけで本当に自分が女性のように思えてくるのだから笑えない。

 

実際、このそこそこ大きな胸は非常に邪魔である。

こうしてスーツを着るだけでも変な形で入らないように工夫しなければならないし、重量のせいで身体のバランスだって変わってくる。

なによりジェルの塗りが甘いと微妙に剥がれてしまうので、露出度の高いISスーツを着る時には手入れが大変だ。

 

「あ、ここ微妙に剥がれてる……ん、これで大丈夫かな」

 

カバンから取り出したジェルで直ぐに応急処置を済ませていく。

授業まで残り3分、もう時間が無い。

女性は準備に時間がかかると言うが、この時間のかかり方は僕特有のものだろう。

 

「さて、急がないと」

 

ジェルは塗り終わった、恋涙も待機状態でここにある。

事情があるとは言え、他の生徒の目もあることだし、遅れてしまえば千冬さんに怒られてしまうだろう。

そうして僕は胸を押さえながら上半身までスーツを上げようとし、その瞬間……

 

 

「やっべ!!授業もう始まっちまう!さっさと着替えて行かねぇと千冬姉に怒ら……れ、る……?」

 

 

「あ」

 

「え……?」

 

この学園で(公式では)唯一の男子生徒である織斑一夏くんが更衣室へと入ってきた。

 

「あ、あああ、あやさき……さん!?な、ななな、なんでここにっ!?」

 

「あー、ええと……私、人に肌を見られるのが苦手で……」

 

「あ、え、あ、え、そう、です、か……」

 

「「………」」

 

「ええと……その、そうじっくりと見られると照れてしまいますので、目を逸らして頂けると助かるのですが……」

 

「ご、ごめんっ!!」

 

ばっと後ろを振り向く一夏くん。

あんなにもジッと見つめられてしまっては偽物とは言え思う所はある。

身体を見られる女性ってこういう気持ちだったんですね。

こんなにも恥ずかしくなってしまうのは自分が段々と女性化してしまっているからなのだろうか、そうでないと信じたい。

 

(今の、角度的に完全に作り物の乳首まで見えてしまったんだろうなぁ)

 

そんなことを思いつつISスーツをしっかりと着る。

……まあ、今回に関しては彼は全く悪く無いのでフォローはしておこう。

こういう時に咄嗟に隠す癖を付けておかなかったのも、下調べをしておかなかったのも、どちらも僕のミスではあるのだし。

 

「えっと、織斑くんは悪くありませんから。あまり気にしないで下さい。それよりも、授業に遅れないように気をつけて下さいね?」

 

妙にいやらしいデザインをした恋涙の待機形態であるガーターリングを素肌の上から身につけて更衣室を出る。

この気まずい空気の中に織斑くんだってずっと居たくは無いだろう。

 

「……そういうところなんだよなぁ。くそぅ、誰か俺を殴ってくれ」

 

更衣室を出る前にそんな一夏くんの呟きが聴こえてきたけれど、どういう意味なんだろう?

どうせ偽物なのだからあんまり気にしないで欲しい。

 

 

 

 

 

「では、これよりISにおける実践的な飛行訓練を行う。織斑、オルコット、綾崎、試しに飛んでみろ。」

 

あの後、結局遅刻をしてきた一夏くんは千冬さんにグラウンド10周を言い渡されたが、『10周じゃ足りない……15、いや20周は走ります……』という謎の猛省によってクラスメイト全員がドン引きをした。

そしてそんな一夏くんは今、いつもよりもずっと気合が入っているように見える。

あの後なにかあったのだろうか?

やる気が入ったのなら良いことだ。

 

「ねえ恋涙」

 

呼びかけるようにしてガーターリングに手を添える。

すると直ぐに薄桃色と薄水色の装甲によって全身が包みこまれた。

一夏くん達ほど訓練はしていないが、セシリアさんとの戦いの後、ちょくちょくアリーナに行って試しはしていた。

その結果、この恋涙は武装に色々と文句はあるが、性格的に自分とかなり相性が良いことが分かった。

 

「ふむ、オルコットも綾崎もISの展開に問題は無いようだな。織斑は1秒を切るようになれ、ISの展開速度は操縦者の生存率に大きく直結する」

 

「は、はいっ!」

 

ビシッと背筋を伸ばす一夏くん。

男性操縦者という立場上、それは確かに大切なことだ。

千冬さんが一夏くんに言い聞かせるように言っているのはそれ故だと思われる。

それを聞いていたセシリアさんや箒ちゃんも納得したように頷いているし、恐らく今日からの訓練メニューに取り入れる気なのだろう。

あの2人もしっかりと先生をしているようで安心した。

 

「よし、飛べ!」

 

千冬さんの言葉と共に上空へと飛び出す。

ただしその瞬間、思いもよらぬことが起きた。

 

「あれ」

 

少し溜めを作る感覚で地面を蹴ったのだが、その影響なのかまるで某レースゲームのスタートダッシュの如く急発進してしまったのだ。

直ぐにブレーキをかけて目標高度で停止するか、想定外の動きに少し驚いてしまう。

上手いこと制御できていなければ空の彼方に飛んでいってしまうところだった。

 

『綾崎!誰が瞬時加速(イグニッションブースト)を使えと言った!』

 

「あ、なるほど!今のが瞬時加速なんですね!ごめんなさい、次から気をつけます」

 

『「知らずにその精度(です)か……」』

 

「そういえばあいつも頭の中は初心者だったな……危うく忘れかけていた」

 

いつかの予習の際に見た覚えがある、確かそういう技術があると。

後から追ってきたセシリアさんと通信で呼びかけている千冬さんが顔を痙攣らせているが、それも当然の話。確か瞬時加速による事故は非常に多いとのことで、ろくな練習もしていない素人が適当に使うものでは無いのだから。その証拠に千冬さんが『私が許可を出すまで瞬時加速は禁止だ』と伝えてくる。

僕だけならまだしも、一夏くんまで真似し始めたら大変だものね。

悪い見本にならないように、それは一理ある。

 

「う、おぉお?なんだこれ、上手く飛べねぇ……!」

 

ちなみにその一夏くんはと言えば、ぐんぐんと蛇行飛行をしながらも高度を上げて来ていた。

セシリアさんとの決闘の時は簡単に飛び回っていたのに、やはり意識の違いなのだろうか。一夏くんが追いついた所で、3人でグラウンドの上空を回るように軽く飛行する。

 

『何をやっている!スペック上は白式の方が恋涙やブルー・ティアーズよりも速度は上だぞ!』

 

「は、はい!……つっても、やっぱ飛ぶのってあんまりイメージつかないんだよなぁ。なんだっけ、前方に三角錐を作るイメージだっけか」

 

ちょくちょくバランスを崩しながら飛行する一夏くん。

こうして見ているだけでもなんだか危なっかしい。

それを見て、僕とセシリアさんはレクチャーを始めようとアイコンタクトをした。

一夏くんは考え過ぎるとダメなタイプだ。

マニュアル通りよりも自分の感覚で動くようにした方が絶対にいい。

 

「一夏さん、イメージは各々で異なりますわ。自分のやり易いイメージを模索するのが最適ですのよ」

 

「そうなのか?うーん、でも最適なイメージって言われてもなぁ」

 

「例えばアニメや特撮のキャラクターが空を飛ぶのをイメージしてみたらどうでしょうか?衝撃波を出しながら高速移動する感じです」

 

「ああ!それならなんとなく分かるかも!……こうか!!」

 

突如、ぐんっと速度を上げた一夏くん。

僕とセシリアさんを簡単に追い抜いて飛んでいく彼を見て、思わず呆気にとられてしまった。確かにスペック上はかなり早いとは聞いていたけど、ここまでとは誰も思うまい。

あんな曖昧なイメージでここまで劇的に操縦スキルが変わってくるのだから、つくづく一夏くんは感覚的な天才なのだろうなと思わされる。

セシリアさんもこの意見には同意らしい。

 

『よし、大分慣れてきたようだな。織斑、オルコット、綾崎、急降下と完全停止をやってみろ。目標は地表から10cmだ』

 

千冬さんからの新たな指令を受けて、まず最初にセシリアさんが降下する。これは一夏くんだけでなく、僕にもお手本を見せるという感じなのだろう。先程の様なことにならないようにと、その気遣いは個人的に本当に嬉しい。

 

「それでは一夏さん、お母様、御機嫌よう」

 

軽い調子でそう言った彼女は、代表候補生の名に相応しい着地を披露して見せた。

指定された10cmピッタリと言うところにも彼女らしさを感じる。

やはり彼女の操作技術は凄い。

 

「それでは織斑くん、次は私が先に行きますね」

 

「ああ、気をつけてな」

 

次は僕の番だ。

一夏くんに一言かけて降下する。

素人の自分ではセシリアさんほどピッタリと綺麗な着地はできないだろうが、とりあえず勘に任せてスラスターを稼働させ、完全停止を行ってみた。

恋涙自体はそこまで速くないため、仮に落ちたとしても大丈夫だと思っていたのだが、やはりグラウンドにキスすることもなく綺麗な着地が出来た。本物の手足のように自在に動いてくれる恋涙には感謝してもしきれない。

変に尖ったスペックではなく、平均的なバランスの上に突出した扱い易さがあるのがこの機体の良いところだ。

武装とか関係ないよね!いざとなれば他の人のを借りればいいし!

 

「……15cmか、十分だな。よくやった綾崎」

 

「ありがとうございます」

 

千冬さんからの褒め言葉、大半は従順過ぎる恋涙のおかけなのだけどとても嬉しい。

 

そう笑みを浮かべてお礼を述べていると、今度は後方に突如として白い流星が落下してきた。

白式という名の流星が。

犯人は言うまでもない、一夏くんだ。

あと数秒あの場から離れていなかったら、僕も巻き込まれていたかもしれない。どれだけ気合を入れていたのか、その速度での落下は間違いなく不味い。

 

「クレーターを作り出すなんて!織斑くんは一体どんなスピード出して来たんですか……!」

 

ISの絶対防御を考えれば恐らく怪我は無いだろうけれど、初めて見る墜落事故であったために僕は急いで彼の元へ駆け寄る。

すると外目からはそれなりに深刻な事故のようにも見えたのに、肝心の彼は頭から地面に突っ込んで非常にギャグ的な格好をしていた。

これがギャグによる不死身化ってやつですか……いや言ってる場合か!!

 

「お、織斑くん!?大丈夫ですか!?」

 

足をジタバタさせている織斑くんを恋涙で引き上げる。

生存と元気が確認できているだけでもマシだ。

激突後にISが解除されていたために生身となっていた一夏くんは、僕にズルリと収穫された。

白式も最後まで責任を持ってあげてほしい。

 

「お、おお?おお……っ!?」

 

不可抗力的にお姫様抱っこの様な形になった一夏くん。

しかし彼は衝撃から目を覚ますと2度3度僕を見て急激に顔を真っ赤にしてしまう。

いや、これは本当に申し訳ないけれど緊急時なので許してほしい。

男性が女性にお姫様抱っこなんてされたらそうなるよね、ごめんね。

でも足とか捻ってないか心配なのだから仕方ない。

 

一応そのまま千冬さんの下まで彼を持っていくと、千冬さんは頭を痛そうにしながら一夏くんを睨みつけた。一夏くんは度々何かを言おうとするが、その度に口を閉ざし、挙動不審という言葉がこれ以上無いほどに似合う有様。

大丈夫です千冬さん、怪我は無いみたいです。

 

「どうだ織斑?気合いを入れてグラウンドに大穴を開けた挙句、同級生の女子にお姫様抱っこされる気分は?」

 

「死にたいです……」

 

「授業が終わったらしっかりグラウンドを整備しておくように。綾崎に手伝わせるのは当然禁止だ」

 

「そこまで恥知らずじゃないんで……」

 

そう言って一言僕に声をかけた一夏くんは授業終了の挨拶にも参加せず、逃げるようにして大穴を埋め始めた。

落下のトラウマを抱えていないようで何よりである。

ちなみに千冬さんの授業終了の合図と共にセシリアさんと箒ちゃんは一夏くんを手伝いに行った。僕は釘を刺されてしまっていたので動けなかったが、作業が終わるまでに着替えを済ませて3人のことを見守っていた。

終始一夏くんが落ち込んでいたことが非常に気になったが……大丈夫かな……?

 




--おまけ--

「今日のお味噌汁はどうですか?少し味付けを変えてみたんです」

「……うむ、これもこれで美味いな。辛い物が欲しい時に良さそうだ」

「なるほどなるほど、参考になります。……あ、そういえばなんですけど」

「ん?どうした」

「今日、織斑くんに着替えを見られました」

「ぶっ!」

「だ、大丈夫ですか千冬さん!?あー、シャツに染みになっちゃいます……!」

「ごほっ、ごほっ……こ、これくらい別に良い。それよりも、それよりもだ!!着替えを見られたとはどういうことだ!?」

「ひぁっ!そ、そんなに顔近づけないでください……!」

「どこまで見られた!?バレたのか!?」

「い、いえ、その、見られたのはこの偽乳を完全に貼り付けた後でしたので、バレては居ないです。これは本当に、間違いないです」

「そうか、それは良かっ……いや、待て!偽乳を貼り付けた直後だと?ということはつまり、お前しっかり前を隠したのだろうな!?」

「それは、その……あまりに突然で、癖が付いて無かったのもあって、反応が遅れてしまって……」

「……見られたのか」

「……はい」

「「…………」」

「……あいつが今日に限って妙におかしな雰囲気をしていた理由がようやく分かった」

「気にしないで欲しいとは言ったのですが」

「それはどうやっても無理だろう……はあ、今後怪しまれる事が無くなると考えれば別にいいのだが。何故か妙に一夏を指導したくなるな、男同士の話だというのに」

「いえその、流石にそれは許してあげましょうよ。事前に着替えについて考えていなかった僕が悪いんですし……」

「ああ……すまんな、トイレでも着替えれば良いと思っていたんだ」

「ええ、気持ちは分かりますけど……僕は未だに女子トイレに入る事が出来ていませんから。かと言って男子トイレから出てくるのもおかしいですし、普段の様に寮のトイレやこの部屋まで来ているも体育に間に合いませんから」

「次からは私の方で何らかの対策をしておく。……ただ、その、なんだ。お前はその後、一夏に反撃したりしたのか?」

「え、しませんよそんな事。見られたのは僕も悪かったですし、そのまま更衣室を後にしました」

「だろうな……だが、むしろ殴られでもされた方がマシだったかもしれんな。これではあいつはまた拗らすぞ、本当にどうしたものか」

「………?」

意外と姉は弟のことをよく分かっていた
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