IS - 女装男子をお母さんに - 改訂版   作:ねをんゆう

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17 織斑ー夏はカッコよくなりたい

side一夏

 

「というわけで、織斑くん!クラス代表就任おめでと~!」

 

「「「おめでと~!」」」

 

夕食後の自由時間で、俺たちは珍しく食堂に居た。

1組の生徒で俺の就任パーティーが盛大に執り行われたのだ。

しかしパーティー開始前からアゲアゲムードなクラスメイト達とは対照的に、俺の心は地の底の底……理由は今日の飛行訓練の際の出来事を未だに引きずっていたから以外に無い。

 

(また綾崎さんに情けない姿見られたァァァ!!)

 

終始その一点に尽きる。

 

綾崎奈桜という少女は非常によく出来た女性だ。

それは自分だけではなく同じ女性である箒やセシリア、加えてあの姉ですら認めているほどに。

しかし彼女はISの操縦技術には目を見張るものがあるが、勉強やスポーツに関しては特別出来るわけではなく、それぞれの分野ならセシリアや箒の方が随分とレベルが高いことは間違いない。

決して失敗を犯さないということもなく、時々小さなミスをして姉に叱られてしまうこともあり、こうして間近で見ていればその雰囲気とは裏腹に決して完璧とは言えない人であるということも分かる。

 

……それでも、女性としての魅力で語るならば、彼女は間違いなくその完成形なのだ。

時々犯すそのドジだって彼女の魅力の一つに数えられるだろう。

全てを完璧にこなす事が出来る訳でもないという所にも、近付きやすさや接しやすさを感じられる。

そしてそんな彼女に対して自分自身、憧れというものを抱いているのを自覚していて、彼女の前では格好良い自分でいなければならないという意識を常に強く感じている。

 

恋愛感情、というよりは見栄を張りたいという欲だろうか?

そんな『綺麗な女性の前で見栄を張りたい』という至って平凡な思春期の男子らしい情動に、自分らしくないと思いつつも従い、ここ数週間頑張ってきたつもりだった。

 

……つもりだった。

 

(にも関わらずこれだ!俺まだ綾崎さんの前で一回もカッコつけれたこと無いんじゃないか!?むしろカッコよく助けられてるんだけど!?どういうことだ!!)

 

あれ以来毎日続いているセシリアや箒との特訓が正常に働いているのは、2人を注意してくれた彼女のおかげだ。

出された宿題の分からない場所をそのままにせず提出できるのは、俺の目線になって教えてくれる彼女のおかげだ(セシリアは教え方が専門的過ぎる、箒は一緒に教えられる側)。

 

そして今日だってそうだ。

訓練中にもイメージが掴めず、時々フラついていた飛行が上手くいくようになったのも彼女のアドバイスのおかげだったし、その後に調子に乗って完全停止を失敗した俺をフォローしてくれたのも彼女だった。

 

(恥ずかしかった!綾崎さんにお姫様抱っこされるとか死ぬ程恥ずかしかった……!でもなんかちょっとカッコ良かったのが悔しい!本来なら逆の立場がベストなのに!!)

 

あの後、制服に着替えた彼女がずっとこちらを優しく見守っていたという事実も辛かった。1人の男として格好良くあろうとしたのに、気付けば男ではなく子供の様に見守られているのだ。

 

もはや悔しいとかいうレベルは超えている。

気分は美人のお姉さんに1人の男として認めてもらいたいのに、何度も何度も空回りをして結局は可愛がられてしまう少年っ子だ。

身長170超えの男を少年扱いできる綾崎さんは何者なんだよ。

世界の母か?悔しくて仕方がない。

 

「なぁセシリア……カッコいい男って、どうすればなれるんだろうな?」

 

「ええと、突然どうなされたのですか?一夏さんは十分にカッコいい男性です、少なくともわたくしが今まで見てきた男性の中では一番に」

 

「お、おお、そうか……」

 

落ち込んでいる自分を心配してからずっと隣についてくれているセシリアに軽い気持ちで尋ねてみれば、思った以上の真面目な返答が返ってきて慌てる。

箒もそうなのだが、セシリアも最近は少しだけ気性が落ち着いてきて、こういった不覚にもドキリとしてしまう言動を自然とするようになってきた。聞くところによると、俺が補習でいない時にも彼女達は綾崎さんの下にいるらしいから、きっとその影響なのだろう。

2人とも綾崎さんを見習って色々と学んでいるらしいので、多分間違いない。

 

こんな所にも彼女の影が……

もしこれで綾崎さんが量産されるような事態になったら、確実に俺の心がもたない。

昔は千冬姉というとびきりの美人が近くに居たせいか、容姿の優れた女性を見ても特に何も思わなかったが、最近は綾崎さんという衝撃(インパクト)を受けたせいで徐々にそれが揺らいで来ている気がする。

美人の多いIS学園でそれでは本当に困るのだが。

 

「はいは~い、新聞部でーっす!今日は話題の織斑一夏くんにインタビューに来ました!織斑くんはどこかなー?」

 

「一夏さん、インタビューだそうですよ?落ち込むのは一旦ここまでにして、共に参りましょう?」

 

「あ、ああ、そうだな」

 

そうして何処からともなく出現した新聞部の対応に向かうべく、セシリアに手を貸されて立ち上がる。

 

……おい、今また自然と女の子に助けられたな?

反省してないのかお前ェ!(自分)

 

 

 

「えぇ〜、どうしても見せなきゃ駄目?」

 

「当たり前ですわ。作った記事は公表前に確認する、常識でしょう」

 

インタビュアーの新聞部の黛さんとセシリアが、インタビューについての交渉を行う。

この辺りのスムーズさはやはり国家代表候補生たる所以なのだろうか?

以前は『代表候補生?なにそれすごいの?』だった俺だが、勉強をするにつれて段々とその辺りも理解してきていた。

まだ高校生にもならないうちからメディアや国と関わってきた彼女達は間違いなく凄い人物だと、改めてセシリアを見直したものだ。

俺だったら絶対出来ないし、絶対どっかで騙されてる。

自分で言いたくもないが、そんなに賢くないから。

 

……あれ?もしかしなくてもセシリアって普通にカッコ良くないか?

 

いや、だがそんなことを言えば箒だってそうだ。

姉が天災と呼ばれるようなアレで、家族から引き離されても自分を曲げることなく努力し続けて、剣道では全国大会で堂々の優勝。

その上半ば無理矢理にIS学園に入学させられ、ISの判定がCにも関わらず、接近戦では学年で5本の指に入るなんて先生達が話しているのを聞いた。

これには俺もセシリアも納得している。

加えて未だに朝の鍛錬を欠かすことなく続けており、最近は綾崎さんに家事まで教わっているらしい。

しかも自分のことだけではなく、放課後は今でも俺のために訓練に付き合ってくれているのだ。

これでカッコよくないと言ったら嘘だろう。

 

……もしかして俺の周りの女子、みんなカッコいい?

 

カッコ良くないの、俺だけ?

むしろ俺、結構情けなくないか?

それどころか格好付けられたのってセシリアとの決闘の時だけだし、そもそもそれだって綾崎さんのお膳立てがあったからで……

 

「くぅーん」ドサリ

 

「お、織斑くん!?」

「一夏さん!どうなさいましたの!?しっかりして下さい!」

 

大丈夫だセシリア、大丈夫。

ちょっと直面したくない事実にぶち当たってしまっただけで、

事故みたいなサムシング。

もうよく分かんない。

よくわかんないけど。

でも俺、約束するから。

これから絶対カッコいい男になるって。

口だけじゃない、本物の男になるって、約束するからさ。

だからさ、セシリア達もさ……

 

「止まるんじゃねぇぞ……」

 

「い、一夏さぁぁぁぁん!!」

 

その日、食堂中に悲痛な叫び声が響いた。

直後にやってきた箒によって叩き起こされ、セシリアによって真面目にインタビューを受けさせられる羽目になった。

しかもクラスメイト達にめちゃくちゃ弄られた。

意外とみんな容赦ないな?俺の心はボロボロだよ!!

 

くそぅ、誰かに甘えたい……!(鳥頭

 




--ゆるだん--

「でもさ、綾崎さんって優しいイメージばっかり先行するけど、普段から普通にかっこいいんだよなぁ。その優しさが何よりかっこいいっていうか」

「それは分かりますわ、お母様はかっこいいです」

「私も、それには同感だ」

「例えばつい先日の話なのですが、お母様とお話ししながら歩いている時に、不注意で足を躓かせてしまいましたの。そうしたらお母様は直ぐに私を後ろから抱き寄せて下さいまして……思わずドキドキとしてしまいましたわ」

「ふむ、その点で言えば私はこの間、落ち込んでいる所を慰めて貰ったな。何故かいつも私が落ち込んでいる所にタイミング良く来てくれるからな、思わず聞いてしまったのだ。どうして落ち込んでいる事が分かったんだ、と。そうしたら母さn……綾崎は、『いつも箒さんの事を見ているんですから、気付くのは当たり前です』なんて言ってくれてな。あれが女のカッコ良さというのか、不覚にも涙が出てしまった」

「それだったら俺だって……今日お姫様抱っこされた」

「「………」」

「………」

「そういえばこの間、綾崎が転んで怪我をした女子生徒に傷の手当てをしている所を見た。気の弱そうな女子生徒だったのだが、上手いこと元気付けていてな。あの雰囲気の柔らかさは私も見習いたいと思ったな」

「それは良い話ですわね。その関係の話ですと私は先日、お母様が花壇の花の手入れを手伝っている所を見ましたわ。なんでも以前から手伝いをなさっていたようでして、植物の世話まで出来るそうなんです。嬉しそうに水を撒いているお母様の姿はまるで希望を振りまく天使の様でしたわ」

「それだったら俺だって……地面に突っ込んだ所を引き抜いて貰った」

「「………」」

「………」

「話は変わるが、やはり綾崎は優しさとカッコよさ以外にも、女性としての魅力を語るべきだろう。私としては特に、あの彫刻品の様な脚を勧めていきたい。鍛えてあるのは分かるが、それでも決して美しさを損わない程度のバランス。日焼けや染みの一つもない真っ白な素肌。張りと瑞々しさを保ち続けるその質感。なりふり構わず鍛え続けてきた私としては、あれは羨ましいばかりだ」

「それでしたら私はお母様の髪が好きですわ!黒く、長く、それでいて美しく。箒さんの髪もなかなかですが、私はお母様の髪のあの柔らかさが特に好きですの。まるで空気すらも包み込むように舞うお母様の髪は当然、凄く良い香りを放っていて……髪の手入れの方法もよくご存知でしたし、私もいずれはあの様な髪を目指して行きたいと思っていますの」

「それなら俺はやっぱり胸元かな。この前偶然見ちゃったんだけど……」

「「は?」」

その後の一夏の行方を知る者は居ない。
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