放課後のアリーナ。
ここで一夏や代表候補生達が毎日のように訓練に励んでいると聞き、シャルはこっそりとだが足を運んでいた。
目的は言うまでもなく、一夏の乗っている白式のデータ……本当ならば乙女コーポレーションの恋涙のデータも目的の一つではあったものの、それについてはシャルが転入してくる以前に損壊してしまったらしい。とは言え、そのおかげでシャルに命令されたデータの奪取の難易度も幾分かマシになった。彼女もとい彼としてそれは喜ばしい事だろう。
「……やっぱり、想像してたより動きが鋭い」
そうしてしばらくの間、一夏達が一体どんな訓練をしているのか物陰から伺っていたのだが、意外にもその練度は思わず感心してしまう程には高い。代表候補生2人と篠ノ之博士の妹が付きっ切りで教えているのだからある程度は当然なのかもしれないが、それにしてもISに乗り始めて数ヶ月とは到底思えないほどの慣れた動き。
そこには才能だけでなく、彼自身の努力もあるのだろう。
(とは言え、)
それでも仮にそんな4人の訓練を見ていて一つだけ問題点を上げるとするならば、教官3人の教え方が絶望的に下手だということだろうか。
技術一つ教えるにしても、
箒は擬音で全てを表現してしまう感覚系。
鈴音はなんとなくでしか言葉を表現できない天才系。
セシリアはあらゆる動作を細かく数値で表す理論系。
どれも一夏に教えるのに向いているタイプではない。
彼等が基本的に模擬戦を主体として訓練を行っているのはそれが理由の一つなのだろう。それでも教えて貰うことが必要になる時はあるのだが、その度にこうして一夏が頭を悩ませているのだからそれは普通に問題だ。優秀な選手が優秀な指導者になるとは限らないとは言うが、優秀な人間がこれだけ揃っていても優秀な指導者が1人も居ないというのは素直に同情するしか無い。
(……よし、それなら)
シャルは実際のところ、あの輪に入る瞬間をずっと狙っていた。
機体のデータを集めるのなら実際に戦闘してみるのが一番容易い。
集めたいデータのために必要な練習も近くで撮影する事が出来る。
そう考えれば、指導役としての仲間入りは最善だろう。
ついでに一夏に模擬戦を申し込んで見れば、時間稼ぎをする事でそれなりの長時間戦闘で白式のデータを取る事ができ、最早言うことなしだ。
「お疲れ一夏、いい勝負だったね」
シャルは密かに心臓を鳴らしながら4人のもとへと近付いていく。
意外にもそれに嫌な顔をする者は居らず、一夏に関しては何の疑いもなく笑顔で手を振りながら受け入れてくれた。彼からしてみれば唯一の男性の同級生なのだから当然なのかもしれないが、実際そんな彼に不義理を働いているシャルにしては心が痛くなるばかりである。
「おうシャル、負けちまった。あー、クッソ。こんなんじゃ駄目なのに……やっぱまだ遠距離持ってる奴相手だとキツイなぁ……」
「ま、まあ基本的にみんな遠距離武器は持ってるものだと思うんだけどね」
「それなんだよなぁ、どうしたもんか」
「それじゃあ次は僕と試してみない?近距離も遠距離もそれなりに出来る自信はあるよ?」
「おっ、それは助かる!頼むぜ!」
そうして模擬戦に持っていくのはやはり簡単だった。
順番に横入りされた事に不満そうな鈴音も居たが、シャルの実力が気になるということもあってか、彼女も言葉としては何も言わない。
そして事前の情報通り、やはり一夏は武器を一つしか持っていなかった。しかしそれでも、ブレード一本でここまで勝負を長引かせられたというのはシャルにしても普通に驚くべきこと。武装の数で押し潰していけば、てっきり一方的な試合になると思っていたのだが、思っていた以上に一夏の練度は高く、シャルの攻撃を避ける避ける。
最後の方には瞬時加速で直進しながら相手の引鉄と銃口の位置から軌道を予想し、弾丸を剣で弾き飛ばすなどという全く訳の分からない芸当まで行うのだから目を見開くしか無い。
あんなこと一体誰が教えたのだろうか。
それを実践しようとする一夏もおかしい。
そもそも近接戦闘もそれなりに出来て、事前に白式の一撃必殺を知っていたからこそ対処出来ただけで、一般的な操縦者ならばその時点で負けていた程だ。やはり彼も天才の部類、ブリュンヒルデの弟というのは伊達ではない。
「あれ?綾崎さんだ……!」
「え?」
そんなことを考えて一夏と打つかり合っていたからか、一夏がそう言って気付くまでシャルも件の彼女が来ていることに気がつかなかった。
乙女コーポレーションの専属搭乗者にして、あの織斑千冬のお気に入り。箒達が慕い、一夏が憧れる、巷では母性の化身と呼ばれる嘘みたいな少女。
そんな彼女が車椅子に乗ってアリーナへと入り、一夏とシャルの模擬戦を見ていた3人と何やら話し合っていた。3人の様子は妙に真剣で。
(あれ?なんでみんなでこっちに近付いてくるの?……え?しかもこれ、一夏じゃなくて僕の方に来てない?)
「……シャルル、お前に言いたいことがある」
「え、え!?ええっと、な、何かな……?」
いきなりシャルの目の前に仁王立ちした箒は、その鋭い目つきでこちらを睨み付けて立ち塞がった。
他の2人もその横に立ち、何やら只事ではない雰囲気を出している。
……これはもしやデータを取っていることがバレて、そのまま学園から追い出されるなんてことになるのでは?
まさか綾崎がそれに気付いて3人に教えていた?
やっぱり綾崎は自分のことなんてとっくに?
冷汗をだらだらと流して顔を青くする。
無理矢理笑顔を作ってはいても、動揺は止まらない。
綾崎はそんな彼女達の後ろでニコニコと笑うだけだ。
聞くにこの学園で起きた襲撃事件で最も活動したのは彼女、織斑千冬からも信頼されている彼女ならこんな素人の男装を見破ることは容易いだろう。それこそつまり、自分が乙女コーポレーションの情報を探っていたのもバレていて、あの時に聞かされた乙女コーポレーションの内情は全て偽り。そうでなければあんな頭のおかしい話がある筈がない。
凄まじい威圧感に晒されたシャルの頭はもう限界だった。
取り繕える方法が見当たらない、このまま追放されれば父親からも見放される。全てお終いだ。もうこうなったら日本式土下座でもなんでもして何とか協力をお願いする以外に方法なんて無くて……
「シャルル!私達と一夏の訓練に付き合って貰いたい!」
「……へ?……え?は?」
だからもう、何が何だか全く分からなくなってしまった。
「え、ええと……え?……え???」
「その、恥ずかしながらね、どうも私達の教え方って他人には分かりにくいらしいのよ」
「私達はそのやり方でやってきましたけれど、3人とも独学で登ってきたタイプですから。万人受けはしないとの事で……」
「というか、母さんの教え方を聞けば比べるまでもなく私達にセンスが無いことが分かってしまった。だが見ていたところ、どうもお前の教え方は一夏も理解しやすいらしい。つまりスカウト、というところだ」
「え、ええ……?」
先程まで「なぜ分からないのか、これが分からない」といった感じでやんややんやと言っていた3人とは思えない変わり身っぷり。それこそシャルとしてはデータを取れる機会が増えるし構わないものの、今は驚きと困惑の方が強いというか……
「シャル!俺からも頼む!どうか手を貸してくれ!」
「頼む!」
「お願い!」
「お願いしますわ!」
「わ、わかった!わかったから!みんなでそんなに近づいて来ないで!?怖いよ!?」
頭を下げられながら追い詰められるという恐ろしい体験をしているシャルの対面では、今も変わらず綾崎がニコニコと笑いながら見守っている。
どうも彼女はこれを狙っていたらしい。
それはつまりそう、まだバレてはいない。
信じられないような逸話ばかりを持っているせいか、警戒し過ぎていたのかもしれない。
それでも如何にも頑固そうなこの3人をこんなにも簡単に説得してしまうのだから、その影響力の強さは理解出来るというところ。
未だ警戒を弱めてはいけないだろう。
パンパンパンと三発の銃声
一夏の放った銃弾が的を掠めていく。
『まずは銃を理解する事が大切』というシャルの意見の元、一夏は実際にシャルが貸した武器を使用して試し撃ちをしていた。何度か試すうちに精度が上がっていくのは彼の才能故なのか、それとも日頃からイメージしていたりもしたのか、その成長速度は見ている側にしても気持ちがいい。
そうして一夏が何度も何度もそれを繰り返しているのを見ていると、今度はシャルの背後から車輪の音が聞こえてきた。
その音は直ぐ隣で停止して、相も変わらず人の耳を溶かす様な優しい声で車輪の主は語り掛けてくる。
「一夏くん、なかなか筋がいいみたいですね」
「うん、ブレード固定なのが惜しいくらい。もしかして綾崎さんが教えた事があったりするのかな?」
「いえいえ、まさか。私は銃は使えませんから。きっとセシリアさんの仕業だと思いますよ」
「……?綾崎さんも銃火器は使わないの?」
「ええ、私は攻撃するのが下手ですから。剣だってまともに使えません」
「あの、それってどうやって戦うの……?」
「ふふ、秘密です♪」
「えー、そこで隠されたら気になるなぁ」
シャルのことを疑って情報を隠している……わけでは無いらしい。
本当に単純な、軽いイタズラの様なものなのだろう。
こうして話していれば彼女はただ人より少しだけ良く気が利く女の子といった印象でしかなく、とてもではないが先程までの自分があれほどまで警戒していた意味があったのかと思ってしまうほどだ。
なんというか、離れていると冷静に警戒してしまうのに、いざこうして近付いて話してみれば簡単にときほぐされてしまうのだから不思議なものだ。近くに居るだけで心が温かくなるというか、話しているだけでストレスを忘れられるというか、如何にも色々とありそうな彼女にはそんな奇妙な力がある。第一印象から心を許せる雰囲気というのは、それだけで特別な能力と言ってもいいだろう。
「……そういえばシャルルさん、一つだけなのですが、質問をしてもいいでしょうか?」
「ん?なにかな。僕に答えられることなら答えるよ?」
「シャルルさんは女の子じゃないですか?一夏くんと同部屋で困ったりはしていませんか?」
「うーん、そうだね……一夏はスキンシップが多いところがあるけど、それ以外は別に何も……え?」
「え?」
「え?」
「え?」
だからこそ、これも彼女のその能力のせいに違いなかった。
シャルとしてはそう思わずにはいられなかった。
……そう思わせて欲しかった。
「ええええっとぉぉおお!?!?なななな、何の話かなぁぁあ!?綾崎さん!!」
「ふふ、これでも私、乙女コーポレーションの専属搭乗者ですから。そんな初々しい男装では私の目は誤魔化せませんよ?」
「ききき気のせいじゃないかなぁ!?ほ、ほら!僕昔から女の子っぽいって言われるし!?」
「知ってますかシャルルさん。乙女コーポレーションの社員の1割は性別を偽って生活しているんですよ?それも最新の技術を使っているので、その道の専門家でもなければまず見分けられません。アレに比べればシャルルさんの男装なんて可愛いものです。例えばそうして包帯で胸を無理矢理押さえ付けるのは、胸の形が崩れてしまうので専用の道具を使った方がいいですよ」
「あ、ああ、ああああぁぁ……」
絶望した。
油断していた。
そこまで頭が回っていなかった。
彼女が色々とすごい人物であることは知っていた。
けれど、本来なら彼女が自分の変装を見破る可能性も十分に考えるべきだったのだ。だって彼女はあの乙女コーポレーションの専属操縦士なのだから、変装に詳しい可能性は誰だって考えられた筈なのだから。
(ど、どうすればどうすればどうすればどうすればぁぁああ!!)
先程まで彼女に完全にときほぐされていた自分を責めたい。
冷静になった今になって心から後悔する。
事前に何度も確認していたはずだったのに、彼女がただの女子生徒では無いという事なんて。彼女こそが襲撃事件で敵の最大戦力を押さえ付け、あの織斑千冬のお気に入りとまだ言われる人間だというのに。
どこのどんな情報を見ても心を許せる相手ではなかったのに。
「……シャルルさん、私からあなたに伝えたいことは一つです」
「は、はいっ!な、な、な、なんでしょうか……!?」
運良くこの場にはシャルと彼女の2人しか居ない。
他の3人は2人よりも後ろにいるし、どうやらこちらの話も聞こえていないらしい。いやむしろ、彼女がその条件を作り出した可能性だってある。というか他の3人が近寄ってこない時点でそれはもう確実だ。
きっとこれから何かしらの条件を突きつけられ、そうでなければ追放を宣言されるのだろう。当然だ、そもそもが犯罪なのだし、彼女からしてみれば自身の友人である織斑一夏と共同生活をしている相手なのだから。危害を加える対象だと考えられていても仕方がない。
(せめて、せめて条件にして欲しい!どんな酷い条件だとしても、言うことさえ聞いていれば何とかなるから!だから……!!)
だから、今この一瞬だけは心から願った。
彼女が正義に満ち溢れた人間ではなく、脅しや脅迫をしてくる様な邪悪な人間であることを。
「本当に性別を隠したいのなら、自分が安心して居られる空間を作ることをオススメします。いくら努力したところで体調不良でバレてしまっては元も子もありませんからね!」
「……へ?」
ただ、まさかそれは予想していなかった。
出来る筈もなかった。
彼女が正義に満ち溢れた人間でもなく、邪心を抱いた悪人でもなく……そんな小さな事も全部まとめて受け止めてしまうほどの、人間だという事なんて。
「え……え?」
「ほら、目の下にクマができ始めてます。ダメですよ?せっかく綺麗な顔をしているのに、勿体ないです」
「い、いや、あの……」
「それに肌にも少し出てきてますし……全くもう、何を抱えてたら短期間でこんな状態になるんですか。……もしかして、一夏くんが近くにいるせいで手入れも疎かにしちゃってませんか?」
「え、えっと、お風呂の中で出来る事は……けど、日本の男の人は肌の手入れとかしないって聞いて……」
「そんなことはありません!少なくとも私は……じゃなくて!少なくとも、やる人はやりますから!気にしないで今日からはしっかりと手入れをして下さい!分かりましたか?」
「は、はい……」
綾崎のマシンガンのような言葉の数々に、シャルはろくに反応することができない。
さっきまで男装がバレて、それを理由に追い出されるか、脅されて、酷い命令ばかりされると思い込んでいた彼女には、こんな風に優しく頰を撫でられながら気遣われ、ほんの先日出会ったばかりの彼女に心の底から心配していると分かるほどに澄み切った目を向けられている現状が全くもって信じられないのだ。
いっそ夢か何かだと言われた方が飲み込める。
だって自分は許されないことをしていたのだから。
それこそ、誰かに軽蔑されるのは当然だし、もっと言えば完全な犯罪。自分が生きるためとは言え、それでも断ることはできたはず。それを自分の意思で承諾してここに来た時点で、彼にできる言い訳はない。バレた時点で全てが終わるか、良くても酷い目に合うのは当然だと思ってここまでやってきた。
(助けてくれる人なんて居る筈がない……)
デュノア社が絡んでいる時点で、この男装がバレれば誰にでも何のためにそんなことをしているかは分かる。そうすれば協力した時点でその人もまた共犯者になるのだ。
だから、だからきっと、この人もそのリスクを負ってでも得たい利益があるから優しくしているだけなんだと。
そう思いたい。
そう、思いたいのに……彼女の目だけが、どうしても、どうやっても疑えないほどに、優しくて。
「ああ、この状態はちょっと見ていられませんね……今からお時間取れますか?私の部屋にある化粧品をいくつかお分けしますから、皆さんが来ないうちに使い方のレクチャーだけでもしてしまいましょう」
「ま、待って!?こんなことしたら綾崎さんまで……!」
「共犯に、とでも言いたいんですか?」
「っ!」
やっぱり、彼女はシャルのしていた事を知っていた。
けれどそれでも、彼女の瞳に宿る温かな光は変わらない。
「問題ありませんよ。私はただ新生活に慣れずストレスを溜めてしまっている同級生のフォローをしているだけです。他の人から見ても不審に思われることはないでしょう」
「そう言う問題じゃなくて……!」
「シャルルさん、知っていますか?」
「っ!?」
ふわりと頭の上に彼女の手が乗った。
細くて、艶やかで、冷たく綺麗なその手に慣れた様に優しく撫でられれば、怒鳴られたわけでも睨まれたわけでもないのに、シャルの言葉はこれっぽっちも喉から出なくなってしまって……
「私は皆さんに"お母さん"って呼ばれているんですよ?こんなに可愛い女の子が泣いているのに、放っておけるわけがないじゃないですか♪」
重なる。
見えてしまう。
胸から湧き出た情動が、一気に目頭まで上り上がった。
そう言う彼女の笑顔は、あまりにも温かくて、柔らかくて、あの日以来冷たく凍りついてしまっていた心をこんなにも簡単に溶かしていく。
(だって、卑怯だよ……)
その笑顔も、
その撫で方も、
優しい言葉遣いも、
こちらを見る目も、
その目から伝わってくる心、
全部。
全部全部。
全部全部全部……
……もうこの世にはいない母と、本当に一緒のものなのだから。
「うっ、うぅ……う"ぅ"〜……!!」
「あらら……一夏く〜ん!シャルルくんの体調が悪そうなので私達は先に戻っていますねー!」
「なっ!大丈夫かシャルル!?俺も着いていって……!」
「鈴ちゃん、箒ちゃん、セシリアさん、先程も相談させて貰いましたが、後はお願いしますね」
「「「任せろ!(任されたわ!)(任されましたわ!)」」」
「さあ一夏!銃の練習はそこまでにして剣をやるぞ!」
「そうですわ一夏さん!せっかく学んだのですからその身で試さないとなりませんわ!」
「心配しなくてもいいわよ!私は両方できるんだから!」
「い、いや!俺はシャルルを……待て待て待て待て!3人は無理!3人は無理だって……!うわぁぁぁ!!綾崎さぁぁぁん!!」
一夏の叫び声を後に、シャルは手を引かれるままに綾崎に連れて行かれる。車椅子に乗っているのに、こうして自分を先導する彼女の背中はとても大きく見えた。頭の中に過ぎるのはもう既に朧げになってしまった小さな記憶……あの時も自分はこうして、"母"に手を引かれていた。
おまけ
「なるほど、男装してIS学園に……目的はなんでしょう?普通に考えるとリスクが大き過ぎる気もするのですが」
「まあこれについては十中八九、一夏と三世代ISの"白式"だろう。あれは束の手も入っている間違い様のない最新型だ、第三世代の開発が上手くいっていないデュノア社としては喉から手が出る程に欲しい代物。そうでなくとも一夏の情報があればその分野で再起出来る可能性もある、同じ男性操縦者という立場を与えたのもアイツに近付くためだ」
「だとしても、これバレてしまえば国家問題になりますよね?フランス政府の許しを得ていたとしても国の顔に泥を塗る行為ですし、許しを得ていなかったらもっと最悪です」
「その上、その変装すらも杜撰な一言だ。どうせするならばお前ほど徹底的にやるべきだろうに」
「……あの、そもそも私は毎日化粧をしないといけないほど徹底的に変装するべきだったんでしょうか」
「おかげでバレていないだろう?それこそただの1人にさえも、乙女コーポレーションの中でもお前を男だと見抜いた者は今のところ居ないと聞いている」
「ど、どこでその情報を!?千冬さんには隠してたのに……!」
「お前に関する情報は常に流す様に手は打っている。……まあ、偶に余計な写真も嫌がらせの様に一緒に送られてくるが」
「と、ということはまさか……私が色々な服を着せられて撮られている写真とかも……!」
「……先日、乙女コーポレーションが公式サイトで専属操縦者としてお前を発表したのだが、閲覧数は好調の様だ。公式の写真ではサングラスを付けているとは言え、写真集もなかなかの出来だった」
「ほんとに全部チェックしてるじゃないですか!!」
「ち、違う!私はあくまで責任者として確認の義務がだな……!」
「だからって有料の写真集まで買う必要ないですよね!?……うぅ、恥ずかしい。ISスーツ着て胸を強調したポーズとか撮らされて」
「……個人的にはサングラスをズラしながら挑発的な表情で舌を出しているアレはあまり良くないと思ったのだが」
「それ有料どころか最高プランの会員限定の奴じゃないですかぁぁああ!!!ほんとにどこまで見てるんですか千冬さん!!!」
「ご、誤解だ!!」
「何が!?」
「お、お前が発表されてから写真集の売り上げも好調で最高プランの会員が凄まじい勢いで増加していると聞いてだな!それは本当に問題のない写真なのか責任者として確認を……」
「……月に11,500円もする最高プランに?」
「ああ」
「経費ですか?」
「……いや」
「…………」
「…………」
「……もちろん、もう解約したんですよね?」
「……いや」
「…………」
「…………」
「……そういえば、クラス対抗戦前に撮った写真集の発売が確か今日の14時頃に告知されていたような」
「なっ!さっき見た時にはそんな話、有料ページにも更新されていなかったぞ!?」
「どんだけチェックしてるんですかぁぁああ!!」
「なっ、嵌めたな綾崎!?」
「恥ずかしいんです!本当に恥ずかしいんですよ!!見ないでください!!身近な人に見られるとか何の地獄なんですかぁ!!」
「だ、だったら断ればいいだろう……」
「断ったら社長が次の日からストレスで日に日に凄まじい服装になって……社内でも甚大な被害になって……」
「…………すまん」
「うう、せめて一夏くん達には見られたくない……」
「まあ、あいつ等はそういうのを見るタイプではないだろう」
「妹達に見られてたら死ぬしかないです……」
「……それは、まあ」
「千冬さんは次に出る写真集買うの禁止ですからね」
「……出るには出るんだな」
「うぅ……死にたい……」