VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
「まさかこんなことになるなんて……だからホラゲはダメだと思ったんだよぉ……」
あのベルリンの壁壊すつもりが勢い余って国ごとぶっ壊しちゃいました的な事件から数分経ち、ようやく落ち着いたエーライちゃんだが未だこの調子だ。
うんうん、分かる、心の底から共感できるぞエーライちゃん、まるで当時の自分を見ているかのような心境だよ。
「まぁまぁ元気出して。ほら今までみたいにですよ~って言ってみ? ほら言ってみ?」
「何煽っとんじゃゴラァ!」
「ひぃ! か、勘弁してくだせぇ組長! うちの事務所にカチコミだけは許してくだせぇ!!」
「組長じゃなくて園長じゃあ!! あとガチでそっち方面の人ってわけじゃないからね!? ちょっと昔にそういう映画とかにはまってた時期があって、さっきは本当にほんのちょっとだけその部分が出ただけでね?」
「だめや組長、我らキャラを売る稼業やさかい一度やらかしたらもう戻れんのや。清楚気取ってた私の今の姿を見れば分かるやろ?」
「方言でそれっぽくするのやめろ! まだだ、まだ終わってない! 私はまだ園長なんだ!」
「どうも終わった人です」
その後も散々悩みぬいた園長だが、コメント欄の盛り上がりやかたったーのトレンド入りなどからもう戻ることは不可能と判断したようで、結局は今のが素に近い自分であると認めた。
「でも、でもですよ! 私は園長としての自分を捨てたくはないんですよ。確かに今の方が素の私なのかもしれないですけど、園長だって私の一部なんです! だからこれから動物大好きエーライ園長としても頑張っていくのですよ~」
「お、いいねぇ、分かるよその気持ち。私もあわとしての自分も大切にしてるつもりだからね」
「もう後悔は捨てた! 私は弱い人間じゃない! 後ろは振り向かない! 今の事故ですら己として認め、これからの歩む輝かしい未来への糧とするのですよ! もし今回で失望してしまったリスナーさんが居ても、新しい私が絶対にもう一度振り向かせてみせるのですよ!」
「ようゆうた! それでこそ組長や!」
コメント
:なんか草
:男らしすぎる、こんなん付いて行ってまうわ
:一生ついていきますぜ親分!
:シュワちゃんですらしばらく迷ったのに……なんて器量だ
:かっけぇ……
:園長から組長に留まらず、動物園のお客さんが組員になった瞬間である
:なんだこれって思ったけどいつものライブオンだったわ
「よっしゃ! それじゃあホラゲの続きしようかエーライちゃん!」
「……あの、私もう十分罰ゲームうけたから続きは無しってことでー」
「だめでーす☆」
「私選ぶべきバディを大間違いしたのかもしれないですよ……」
ゲームを再開、さっきゲームオーバーになった場所からスタートだ。
アイテム入手とともに再び登場した紫鬼。流石にエーライちゃんでも二回目はビビりながらも声を上げることはなかった。
そして今回は逃げるルートを変え屋敷内の鍵の開いている部屋に入り、紫鬼が部屋に入ってくる間一髪、部屋の中にあったタンスに隠れることで紫鬼を撒くことに成功した。
「はぁ、一回撒くだけでも疲れるのですよ……あの化け物を倒す手段とか無いのかですよ?」
「生憎ご希望のチャカ(拳銃)やらレンコン(回転式拳銃)やらはこのゲームには無いね」
「そうですか、まぁ分かっていたのですよ~」
「え、本当に欲しかったの?」
「え? ……あ」
「あ」
「「あ」」
い、息が合ってるのかそうでないのか分からないやり取りになってるけど、とりあえずゲームを進めていこう……
次のシーンは新たに入った部屋の中で消えた友達の一人と初めて遭遇するシーンだ。
友達の名前はタケオ。気弱な性格の男の子で今回も紫鬼のあまりの恐怖から隠れたタンスの中でずっとガタガタ震えており、まともに話をすることすらできない状態だ。
「あ、人間ロー〇ーさんちーっす」
「ツッコまないですよ~」
「あ、ロー〇ーの擬人化さんちーっす」
「どうしてそれでツッコんでもらえると思ったのですよ~」
「顔面性器って言われた俳優さんもいるんだし全身玩具ってのもありだと思わない?」
「微妙にかっこいいのやめるのですよ~」
そんなやり取りをしながらも淡々と部屋に設置されていたアイテムを回収して部屋を後にするエーライちゃん。
次はどこへ行ったらいいのか分からない為、散策の為屋敷内をとりあえず歩き回る。
「そろそろマシュマロでもかえしてギョエエエエエェェェ!?」
だがそんななんでもない時でも容赦なく登場して襲ってくるのが紫鬼だ。
「ぷぷっ、私ギョエエエなんて叫び声初めて聞いたよ」
「何笑ってるのですよ!? 鬼は紫鬼だけじゃなかったのですよ!?」
またまた始まる死の鬼ごっこ。今回エーライちゃんが選んだ逃げ道は、さっきのタケオがいた部屋だった。
……あれ、確か隠れられるタンスには既にタケオが入っていたような……
そして案の定、開けようとしたタンスは固く閉ざされていたのだった。
「おいいぃ!! てめぇ開けろやゴラァ! 中にいるのは分かっとんやぞぉ(ダンダンダンダン)!!」
「こ、これがまじもんのカチコミ! 初めて見た!!」
また紫鬼に美味しくいただかれるエーライちゃんなのだった。
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