VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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ワルクラ配信2ー4

マシュマロ返信が終わって更に数時間が経過した。

建築物は一応形にはなったのでよしだが、流石にもう眠気が限界だ。

そろそろ私は配信終わらせて寝させてもらおうかな。

 

「ちゃみちゃんー? そっちどんな調子?」

「うーん……ちょっとまだ時間かかりそうね。もう少し頑張ってみるからお先に寝てくれて大丈夫よ」

「おー頑張るねぇ。それじゃあお言葉に甘えて今日のところは寝ようかな、申し訳ない……」

「いいのよ、私がやりたいだけだから。気にしないでぐっすり寝て頂戴」

「ありがとー。それじゃあ明日の夜に完成品の発表しようねー……」

「了解よ。ふふっ、ほんとに眠そうね。おやすみなさい」

「おやすみ……滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器、湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き 眠りを妨げる、爬行する鉄の王女、絶えず自壊する泥の人形、結合せよ 反発せよ、地に満ち 己の無力を知れ、破道の九十 「黒棺」が一つ。滲み出す混濁の紋章ry「黒棺」が二つ。滲み出すry「黒棺」が三つ……」

「寝方の癖がすごいわね」

 

コメント

:不遜なる狂気の器(アルミ缶)

:滲み出す混濁の紋章(ALC9%)

:絶えず自壊する泥の人形(シュワちゃん)

:新しい自己紹介かな?

:眠り妨げるどころかぐっすりしそうなんですがそれは

 

半ば寝落ちのような状態だったが、鋼の意地で配信だけはしっかり切り、私の意識は夢の中へと誘われていった。

 

 

 

そして翌日。

 

「あれは、誰だ? 誰だ? 誰だ? あれはシュワちゃんだー! っということで今日も元気に配信して行くどー! 昨日の続きからだからさっそくちゃみちゃんと通話を繋ぎましてー」

「あ、淡雪ちゃん! 待ってたわよ! いよいよ発表の時間ね!」

「お、おう?」

 

あれ、ちゃみちゃんってこんなにテンション高いキャラだったっけ? いつもに比べて今日はやけに声が出ている気がするな。一体どうしたのだろう?

 

「今夜は元気だねーちゃみちゃん、なにかあったん?」

「あらそうかしら? ふふふっ、良いものができたから舞い上がってしまっているのかもしれないわね」

「お、ということはちゃんと完成したわけだね?」

「胸を張って発表できるくらいにはね。期待していいわよ」

 

おお! あのコミュ障で自信なさげな言動が多いちゃみちゃんにここまで言わせるなんて、これはとんでもないものが出てくるかもしれないぞ!

負けるのは勿論嫌だけど、内心ちょっとどんなのができたのか楽しみだな。

それじゃあ日も跨いじゃったことだし早速発表していくとしますか!

まずは私から!

 

「私が作った豪邸は――これだああ!!」

 

コメント

:おお!

:この墓石を彷彿とさせる角ばったシャープなデザイン!

:ひたすらものを収納することしか考えていない東京に立ち並ぶビルのような外観!

:これがあらわすものは!

:縦長の豆腐だな

:縦長の豆腐だね

:でかくはあるが豪邸かと聞かれたら……

:うん、本気で頑張ろうとしたのはすごい分かるよ。でもそれが分かるから尚更悲しくもある

:うん、よく頑張った! 頑張って偉い!

 

「あれ、なんか皆から哀れみの念を抱かれてないこれ? 普通に罵倒されるよりなんか心にくるものがあるんだけど……」

「大丈夫よ淡雪ちゃん。もし共産主義国家だったらこの機能的建築法は間違いなく評価高いわ!」

「それ褒めてる?」

 

くっ、今回もダメなのか? もう認めるしかないというのか? 私がクソザコ建築家だとっ!

いやまだだ! まだ負けが決まったわけではない! 私は最後の最後まで抗い続けるぞ!

 

「さてと、次は私の番ね」

「覚悟は決めた……お願いします!」

「私が造ったのは……これよ!」

「……ん?」

 

ちゃみちゃんの動きを見るに今表示させている画面の中に建物があるのは間違いないだろう。

だがなぜかそこに見える人工的な建物は、例えは悪いが公園の公衆トイレのような極小の掘っ立て小屋のみだった。

 

「ちゃみちゃん、これは……」

「ふふ、中に入ってみて」

「う、うん」

 

どうやら本当にこの小屋が完成品のようだ。

不思議に思いながら小屋の中に入ってみると、そこに1マスだけ穴が開いていることに気が付いた。

これは……地下に梯子が伸びているのか?

 

「ふふ、降りてみて」

 

この時点で地下がメインだということには感付いた私だったが――梯子を下りた先の光景はその予想は裏切られる……いや、予想の遥か先を行かれていた。

そこは一つの世界だった。

嘘ではない。雪原や砂漠、海原のように目の前に一つの全く新しい世界が存在しているのだ。

芸術的と言っていいまでに精巧に地下で削り出された石のアーティファクトたちが至る所に無数と点在しており、中央にはまるで古代文明の遺跡を彷彿とさせている超巨大な柱のモニュメントが聳え立っている。

更に驚きなのはこの空間がゲームで描写しきれないほど広範囲にまで広がっているということだ、一体どれほどの広さになっているのか想像もつかない。

故にここは一つの新しい世界なのである。

もし名前を付けるとするなら――

 

「地下帝国じゃねぇかあああ!!??」

 

うん、これだな、間違いない。

 

「え、なにこれすご! どうやって作ったのこれ!?」

「ふふふっ! 一度作り出したら止まらなくなってしまってね、今の今までずっとぶっ続けで作ってたわ!」

「はい!? え、昨日の配信からずっとってこと!?」

「そうよ、一睡もせずにずっと作業してたわね」

 

ああなるほど、道理でさっきから変にテンションが高かったわけだ、もしかしなくても深夜テンション真っ只中なんだな!

 

「規模がおかしすぎるでしょ……というかこれ、豪邸と言えるの?」

「うるさい! 私にとってここは豪邸なの! 私はこのまま地下帝国をライブオンメンバー全ての生活圏にまで広げて、地下からありとあらゆる会話を盗聴して声を楽しみながら、誰にも会わず一人で慎ましく生きていくのよ! これぞちゃみリカンドリーム!」

「まさかの全世界盗聴計画!? やってることは全然慎ましくないよ!」

 

コメント

:カ〇ジ君、ハンチョウ、あなた方の夢は今叶いましたよ

:いや、その二人別に完成を目指してたわけじゃないんだが……

:配信終了した後もずっと一人でやってたのか……

:はい狂気

:下の世界(物理)

 

「ちゃみちゃん」

「ん? なにかしら?」

 

色々言いたいことは山積みだったが、とりあえず真っ先に言わないといけないのはこれだ。

 

「寝なさい」

 

判定――コメント欄でも審議が起こった結果、豪邸ではないので淡雪の勝利!

自分で言うのもなんだがなんで二連勝もしてるんだ……




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