VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
「おかあさーん! おとうさーん! ご来賓が来たよー!」
「しっ、失礼いたします! 本日は急にお邪魔することになってしまい誠に……ん?」
覚悟を決め、いざ決戦のバトルフィールドに足を踏み込んだ私だったが、有素ちゃんの時みたいにびっくりするわけでもなく思わず気の抜けた声を漏らしてしまっていた。
理由は勿論目を閉じながら仁王立ちしている有素ちゃんのご両親にある。だがこれは何といえばいいのか……。
無理やり言葉にするなら……そう、この二人の光景があまりにも整合性に欠けていたのだ。
洋風なリビングの中でお母様と思われる方はなぜか扇子を手に持ち、やけに派手な赤の着物を着ているし、なぜかそれに対してお父様と思われる方は鉢巻を頭に巻き、上半身には腹巻のようなものを巻いている。
そして一番謎なのがお父様が持っている立派な杵、そして二人から挟まれる位置に設置された臼。
これは……餅つきの道具?
混乱で次の言葉に困っている私を置き去りにして、二人は目をカッ! っと開いた!
「てんてけてんてんててんててんてん、てんてけてんてんててんててんてん♪ 娘がアイドルになったと思っていーたーら―、ストゼロー中毒でーしーたー♪」
「なぁーにぃー!? やっちまったなぁ!? 男は黙って」
「チクショー!!」
シュ! タタタタ! ――――♪
後ろを向き、再び光の速さでラブリブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブリ大根マイエンジェルましろんに通話をかける。
「あ、もしもし、俺だよ俺、どうしたの? 俺にお金でも借りたくなっちゃった?」
「逆オレオレ詐欺とは斬新ですねましろん」
「ふふっ、ちょっとふざけたくなっちゃった。それで、またどしたのあわちゃん?」
「あ、今ですね、有素ちゃんのご両親にお会いしているんですけど」
「え、ほんとに? それは緊張するね、くれぐれも失礼はないようにね」
「いやそれがですね、ご両親がなぜか小梅〇夫とクール〇コ。の叫んでる方に変わっていたんですよ!」
「はい? え、どういう状況? もしかして今スケートリンクにでも居るの? スベリ芸的な意味で」
「しかもですね、息が全くあってなくてネタの落ちめちゃくちゃなんです!」
「まぁその二人が息ばっちりだったら逆にびっくりだよね、特に小梅の方」
「やばいですよ! まさかのドリームコンビの登場に私大興奮ですよ!」
「うん、確かにドリームコンビだね。どうかそのコンビが夢であってほしいもん」
「小梅〇夫とクール〇コ。をバカにすんじゃねぇ! 私この人たちの大ファンなんだぞ!」
「その人たちにどんな思い入れがあるのあわちゃん……まぁ確かにあわちゃんそういう一発芸的なお笑い大好きだったか」
ふぅ、ましろんの力を再び借りたおかげで段々落ち着いてきたかな。
さて――。
「ねえましろん」
「ん? なに?」
「助けて」
「ガンバ」
「いやああああぁぁぁ!!!!」
一切の慈悲もなしに通話が切られ、再びあのカオス空間に引き戻されてしまった。
ましろんめ、今度お腹いっぱいでもう食べられないって言うまでおいしいもの食べさせてやるんだからな!!
「ここが私の部屋なのであります! どうぞ楽にしてください!」
「うん、ありがとう」
ご両親との挨拶を終え、有素ちゃんの部屋に案内された、ようやく一息つけそうだ。
ちなみに挨拶の内容だが、あのファーストコンタクトからは想像もできないくらいスムーズかつポピュラーに終わった。
ネタ披露が終わって私と話を始めた瞬間、さっきのことなど忘れたかのように普通のご家庭の良いご両親に変わったのだ。
正直びびったよ、ツッコミを入れる間もないままあの芸用? の服装のまま礼儀正しくご挨拶されたから違和感が仕事し過ぎていた、一体何だったんだ……?
絶対一筋縄じゃいかない人たちなんだろうなぁ……。有素ちゃんに聞いてみたらこれくらい日常茶飯事って言ってたし。
まぁ一言にまとめると、この家族やべーわ。
仲はすごい良さそうだし、楽しそうなご家庭ではあるんだけど個々の個性がね……。
まぁ気を改めまして、有素ちゃんとの時間を楽しむことにしよう。
部屋の印象は……意外と普通かも? 一般的な女の子の部屋だ。
「そんなにじろじろ部屋を見られると恥ずかしいのであります……」
「あ、ご、ごめんなさい!」
「いえ、でも観察してもそんなに大したものはないでありますよ?」
「うん、正直驚きました。壁一面に私の写真が貼ってあることとかも覚悟してましたから」
「あ、それは趣味用の別室に」
「……」
触らぬ神に祟りなし、スルーで行こう……。
書籍版も頑張ってます!
もう少し立てば解禁できる情報も出てくるのではないかと!
作品へのファンタジア様からの待遇がめっちゃ良くて感動してしまう……。
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