VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
「にゃにゃーん! それじゃあいよいよ映画の発表いっちゃうぞ! 今回紹介するのはこちらの《ゴールデンボールレボリューション》だー!!」
「……あ、飼い犬の地獄の番犬ストゼロスがお腹空かせてるから餌あげに行かなきゃー」
「まー待ちんしゃいシュワちゃんや、こいつぁ食わず嫌いするには惜しい作品ぞよ」
「いやだってそのタイトル日本語訳したら《金玉革命》だど? もう革命するべきはこんなタイトルでOKを出した開発環境ですよ! どう考えても近寄らぬが吉です」
まだ詳しい解説が始まってすらいないこの時点で拒否反応バリバリの私であったが、それでもネコマ先輩は一切引かず、むしろ食いついてきた。
「分かる、分かるよ~シュワちゃん、ネコマも最初はそう思った。でもね、見てみるとめちゃくちゃ面白かったんだよ。あ、勿論感性の狂ったネコマだけじゃなく皆にとって面白いって意味だぞ」
「ほんとですか~? というか、面白いのならそれはもうクソ映画ではないのでは?」
「いや、監督はこれが初の映画撮影、他のキャストやスタッフも素人ぞろいで映画としてもクオリティはもうクソの一言なんだよ、映画というより学芸会レベルだね。でもね」
「でも?」
「これを一本のアホなコメディ映像だと思うとめちゃくちゃ面白いんだよ!」
「は、はぁ、なるほど?」
コメント
:ゴルエボやん! ¥1000
:大多数によってはクソ映画、でもはまる人にとっては名作
:どんな映画なん?
:一言で表すと映画版ライブオン
:そんなん絶対クソ面白い映画、略してクソ映画やん
ふぅむ、確かにコメント欄での映画評価は上々みたいだな、意外とガチめに楽しめる映画なのかな?
というか映画について話すネコマ先輩本当に楽しそうだなー。やっぱり本当に好きじゃなきゃ人に勧めるときこんな熱くならないよね。
さっきも言っていたが本気で選んでくれたことは間違いないだろうし、そろそろ私も真剣に話を聞かねばな。
「まぁ論より証拠、どんな映画かさっそく解説していくぞ!」
「はぁい」
「あ、勿論著作権の都合でfullで見せるわけには行かないから、使える映像やスクショだけ流して後はネコマが口頭でストーリーを語っていくからよろしく!」
*――――――――*
物語は日本人の主人公《ゴクウ》がテレビを見ているところから始まる。
どうやらこの世界の地球は宇宙から迫りくる巨大隕石によりあと一週間の命になっているらしく、テレビの中では芸能人たちは悲痛な表情でそのことを語っていた。
ゴクウも同じく絶望に打ちひしがれるも、せめて何か食べようと外に買い物に向かう。
買い物と言ってもこんな状況下だ、もうまともに働いてる人はほとんどおらずどうぞご自由にお取りください状態だが、とりあえず欲しいものだけ入手して帰路を歩いていたゴクウ。
その途中、空から鳥か何かが落としたと思われる何かがゴクウの頭を直撃する。
それは妙に堅いものでありゴクウは痛みに悶絶するのだが、なにかと思い拾ってみると、それは手のひらサイズの金色に輝く玉、ゴールデンボールであった。
*――――――――*
「はいここまでがあらすじ! どうだいシュワちゃんよ!」
「いやまぁ、滅亡が間近に迫った地球とかは割とありがちな世界設定で王道に面白そうじゃないですか? 最後の玉どうこうはしらんけど」
「ふむふむ、他にはなにかあるかい?」
「真っ先に感じたのは映像がめっちゃチープですね。多分言われないと映画ってわからなかったですよ」
「うんうん、だよねー分かるにゃー。相当予算が少なかったのがひしひしと伝わってくるね」
「でも悪いとこばかりじゃなくて、役者さんは頑張っているほうだと思いました」
「おお! 見る目あるね! 演技力は確かに乏しいかもしれないけど、みんな本気で演じているのがいいんだよ! にゃにゃん! シュワちゃんのバイブスも上がってきたところで次行くぞ!」
「いや未だにテンションは低空飛行ですけどね」
*――――――――*
頭を打たれた痛みからイラついたゴクウはそのゴールデンボールを投げ捨てようとしたが、その瞬間、玉から謎の力のようなものが体に流れ込んでいることに気づいた。
勘違いかと思い何度か確かめてみても、変わらずその玉を握っている間は体に力がみなぎってくる。
興味を惹かれたゴクウはゴールデンボールを家に持ち帰ってみることにした。
だが翌日の朝、ベッドで寝ていたゴクウは突如家を襲ってきた謎の組織に連れ去られてしまう。
混乱の最中、辿り着いた場所は研究所のようなところ。そこでゴクウは驚愕の真実を知ることになる。
ゴクウが入手したゴールデンボールは遥か昔、古代に人間たちから神として崇められていた龍、シャンロンの睾丸、つまりは金玉であることが明らかになったのだ!!
このシャンロン、7つの睾丸を持つ龍として語り継がれており、この研究所はこれらを全て集めることを目的とした集団であった。
理由は勿論迫りくる隕石からシャンロンの力を借りて地球を守り抜くこと。
ひょんな運命からゴクウは研究所の一員となり、地球の未来の為、7つのゴールデンボールを集めるために奔走することになったのであった。
*――――――――*
「はいOUT、解散!」
「にゃにゃ!? なんでにゃ!?」
「いやもうこれどう考えても某世界的漫画のパロディでしょ、ゴクウってそういうことかい」
「でも世界観は全く違うでしょ? 解散するには早いぞ! というかなんでシュワちゃんがツッコみやってるの? 生粋のボケキャラのはずなのに!」
「龍の金玉集める話と聞かされてどうしろと? せめて美少女の卵子を集める話とかならよかったのに」
「ぇ……」
「うんごめんね、流石に今のは自分でもあかん発言だと思った、反省してる。でもね、こんな映画勧めてくる先輩にそんな反応されたくないかな」
「はい! 中断はこのくらいにして続きいくぞ! こっからが本番だかんね!」
「本当にこれを続けるのか……」
コメント
:世界観だけで笑わせに来るのやめろ
:シナリオ考えた人が本当に7日後に世界が滅ぶと思ってた説すき
:確かにそうでもないとこんなん思いつかんわなwww
:シュワちゃんの発言も映画と同じくらい狂気の発想やん
:激レアのドン引きネコマに草
映画の内容は実在の物を織り交ぜたオリジナルでいこうと思ってます。
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