VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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光ちゃんとデート7

「めっちゃ買ったねー!」

「そうですね、光ちゃんの手を借りられる今日だけで、この夏を乗り切れる量を買ったつもりなので」

「そんなに焦らなくても、光ならいつでも手を貸すよ!」

「本当ですか? ふふっ、それじゃあ次遊ぶときは光ちゃんの欲しいものを一緒に買いに行きましょうか」

「いいねいいね! なに買おうかなー」

 

両手いっぱいにいろんな店で買った洋服をぶら下げ、駅への帰り道を歩く。先ほど光ちゃんが荷物持ちに立候補してくれたが、ここまで世話になってそれは私が許せなかった。

駅に着いたらこのまま解散の流れだ。

それにしても、今日だけで今まで知らなかった光ちゃんの色々な面を見ることができたな。

交流を深めるという点ではオフで会ってみることは大きな意味を持つのかも知れない。後日一緒にやる振り返り配信が楽しみだ。

ふと、藍子さんとお店を出るときに話したことを思い出す。

 

 

『光をこれからもよろしくお願いします。おバカな子ですけど、私は光にはずっと輝いていてほしいんです』

『そんなのこちらこそってやつですよ! まぁ光ちゃんは私なしでもずっとキラキラしていそうですけどね』

『いえいえ、きっとそんなことないですよ。人には誰かとの繋がりが必要不可欠です、それは光もまたしかり。光は義務感が強い子です。それは良いことなんですけど、時にそれが重い負担になってしまうこともあります。そんな時は支えてあげてください』

『はい、私にとっても光ちゃんは大切な仲間ですから。ふふっ、でも藍子さんまるで光ちゃんのお母さんみたいですね』

『なっ!? へ、変なこと言わないでください! 友達ですよ! 友達!』

『おーい! まだ話し終わらないのー!?』

『あ、光ちゃんが呼んでいますね。それでは私はもう行きますね。今日はありがとうございました』

『全くもう、あ、最後に連絡先だけ交換させてもらえますか? 光にもしもの事があった時に必要になるかも知れないので』

『やっぱり藍子ママだ……』

『何か言いましたか、最ママさん?』

『な、なんでそれを知ってるんですかぁ!?』

『二人ともはーやーくー!』

 

 

結局光ちゃんに急かされた私は急いで連絡先を交換し、次のお店へと向かった。

でも私には少し気がかりなことがあった。光ちゃんを支えて欲しいと言っていた藍子さんの言葉がやけにリアリティを含んで聞こえたからだ。

もしかすると過去に何かあったのだろうか? 

活発的でいつも元気で正義感に溢れていて真っすぐで、誰からも愛される子。

根っこが影側の私なんかよりよっぽど世の中を生きる才能に溢れている気がするのだが……きっと長い時間を一緒に過ごした藍子さんには更に深くまで見えているものがあるのだろう。

……なんか悔しいな。私だって同業者であり同期という藍子さんにはないアドバンテージがあるのだ、いつか光ちゃんマウントでもとってやれるくらいになってやろう。

 

「あ、あのお店水着売ってる! 夏入ったのにまだ海行ってないから新しいの買っちゃおうかな! ねぇ淡雪ちゃん、ちょっと見て行っても……ってその荷物の量じゃきついよね、ごめん……」

「いえいえ、ちょっとくらい全然平気ですよ。私も気になるので行きましょう」

「ほんと? ありがとう! じゃあ少し見るだけ失礼するね」

 

パタパタとお店の中に入っていく光ちゃんの後ろを付いていく。

海かぁ、もう何年行ってないだろうか。夏をエンジョイすると決めた今年は水着を買って行ってみてもいいかもしれないな。

……それにしても、やっぱり水着は露出が多いものが散見されるな。自分が着ている姿が全く想像できない。ビキニタイプとか下着と面積変わらないし、名前が違うだけで見せても平気になる人間とはなんとも単純な生き物だ。

……今露出とビーチ繋がりで全裸の赤いアレを思い出したけど、アレはUMAみたいなものだからノーカンだ。

 

「ねぇねぇ淡雪ちゃん! これ見て!」

「はい? どうしましたか? ……って、ぇ?」

 

そんなことを考えながら水着を眺めていると、お店の奥から一着の水着を持って傍に戻ってきた。

だが、その水着を見たとき、しばらくの間私の理解が追い付かなかった。

それは黒色のビキニタイプの水着であった。それだけならセクシーな水着程度で私も理解できただろうが、問題はその布面積だ。

胸部はかろうじて見せてはダメな部分を隠しているだけであり、下部はTバックというよりもはや全体が紐だ、恥部周辺のみかろうじて布が存在している。

これは――ああ、やっと理解が追い付いてきた。そうだ、私が知る限りそれはマイクロビキニというやつだ、しかもかなり過激な方の。

そう、あのどう考えても普通のビーチで着る用ではないあれだ。

 

「この水着すごいね! きっと着用した人が泳ぎやすいように極限まで布を削いでいるだよ! ……あれ? でもこれ、泳いでたら簡単にずれちゃわないかな?」

 

そして光ちゃんはその水着を自分の体の前に掲げて、体型と合わせるようにしている――。

こっ、こっ、こっ、こっ!

 

「こらあああぁぁーー!! やめなさーい!!!!」

 

思わず声を荒げて水着を取り上げる私。

藍子さんの言っていた支えが必要の意味がなんとなく分かった私なのだった。

というかこのお店なんでこんな水着置いてあるの……。

 

 

 

「後は駅についてお互いの帰路へって感じですね」

「いや~楽しかったね! 絶対また遊びに行こうね! 今度は三期生みんなでとかもどうよ?」

「いいですね、絶対楽しくなりそうです」

 

コメント

:てぇてぇ

:いいぞ、もっとヤれ

:楽園はここにあった

:光ちゃんの謎ルールの件めっちゃ草だった

:ひかるーる

:途中計算は間違ってるのに答えはあっている数式みたいな

:光ちゃんの友人A氏のライバー実装はよ

 

途中、少し藍子さんの名前など配信で言えない部分は伏せたが、これで当日やったことのほとんどをリスナーさんと共有できたと思う。

いい服もたくさん買えたし、光ちゃんとの関係に大きな一歩を踏み出すことができて、私は大きな充実感を覚えながら、配信は終了となった。

 




ぶいでん2巻、9月18日発売です!
どうかよろしくお願い致します!

心音淡雪Twitterアカウント↓
https://twitter.com/kokoroneawayuki

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