VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

160 / 331
聖様の謎1

今日は毎月恒例のマネージャーを担当してくれている鈴木さんとの打ち合わせの日だった。

打ち合わせ自体は問題なく終わり、その後一緒にワイワイとランチも終えたのだが、いざ帰るかとなったところで事務所に忘れ物をしていることに気づいた。

一旦事務所に戻り、無事に忘れ物も回収できて今度こそ帰ろうかと思ったとき、事務所の廊下で見知った人物が通路端に設置されているベンチに座っているのを見かけた。

 

「あれ? シオン先輩?」

「はい? あ、淡雪ちゃん! こんにちはー、こうしてオフで会うのは久しぶりだね! 打ち合わせ?」

「こんにちは。はい、正確に言うと打ち合わせの忘れ物の回収ですが……」

「おやおや、だめだよ~淡雪ちゃん! 焦ってないところを見ると今日は大丈夫だったのかもしれないけど、忘れ物1つが大きな影響を及ぼすこともあるんだからね!」

「その通りですね……肝に銘じておきます」

「というわけで今後淡雪ちゃんが忘れ物をしないように私が全ての予定に同行して徹底的に管理してあげよう! スケジュールを渡しなさい!」

「嫌です」

「気持ちいいくらい清々しい拒否だね、シオンママもびっくりだよ……さっき肝に銘じるって言ったじゃん!」

「シオンママ、私の肝、つまり肝臓にはなにが詰まっているか知っていますか?」

「……ストゼロ?」

「シュワちゃんです」

「シュワちゃんって肝臓に詰まっているの!?」

 

予想外の答えに身を乗り出して驚くシオン先輩に、楽しくなってきた私は得意げに語り出す。

 

「今は肝臓に封印されているわけです、ナ〇トの尾獣みたいなものだと思ってください。それがストゼロを飲むと肝臓に流れて力を取り戻し、封印が解かれてしまうわけなんですよ」

「尾獣は肝臓に封印されているわけではないと思うけど……」

「まぁそんなわけで、あんなシュワシュワが巣くっているところになにを銘じても無駄ってことなんですよ」

「また妙な詭弁を言いだしたなぁ」

「二面性があるキャラクターってかっこよくないですか? 大体人気なイメージあるし」

「それはいい意味でギャップが生まれるから人気が出るんだよ」

「私は違うんですか?」

「シュワちゃんはギャップがマイナスの方に向いてるんだよ! ベ〇ータと悟〇がフュージョンしたらナ〇パが出てきたみたいな感じ!」

「それは悲惨ですね、合体事故どころの騒ぎじゃないですよ……ちなみにナ〇パとナ〇パがフュージョンしたら何が生まれると思いますか?」

「ナナパッパじゃない?」

「ナ〇パのお父さん出てきちゃったじゃん」

「ママは私!」

「それはリスナーさんが黙っていませんよ、ナ〇パ炎上待ったなし。というかさっきのギャップ云々のライブオンだと私だけの話じゃないですよね? みんな初期設定からマイナスに振り切れてるじゃないですか」

「確かに。本当に困った子たちだよね!」

「あなたも例外じゃないですよ。まぁ冗談はこのくらいにして、忘れ物は本気で気を付けます」

 

なんて自然に挨拶からの雑談を交わしていたのだが、そういえばシオン先輩はなぜ事務所に居るのだろうか?

 

「シオン先輩も打ち合わせですか?」

「うん、でも実は私も淡雪ちゃんと同じでもう終わってるんだけど、一緒に来た聖様がまだ終わってないみたいで、待ってるの」

「あ、そういえば以前会った時も一緒に来ていましたね。……どうです? シオン先輩から見て聖様の様子は?」

「それって収益化のこと?」

「はい」

 

私が知る中で聖様に一番近しい人間はシオン先輩だ。藍子さんの時と同じように聖様の私が見えていない部分が見えているかもしれない、せっかく会えたのだから聞いてみることにした。

シオン先輩は腕を組んで少し考える動作を見せると、困ったような表情と共に答えてくれる。

 

「私は気にしてると思うんだよね! でも聖様自分のことになるとどこか消極的というか、弱さを見せるのを嫌がる傾向があるから何も言ってくれないんだよね」

「シオン先輩にもですか?」

「そう! 今日会った時も『私何も気にしてませんけど』とでも言いたげにケロッとしててさ、かっこつけなんだから全く」

「そうですか……」

 

怒っているような口ぶりだが、それと同時に心配しているのも分かる。

このシオン先輩の様子を見ると……少なからずあの件が聖様に何か影響を与えたとみてよさそうだな。

 

「でもね、私も確信を持っているとは言えないんだよね」

「え、そうなんですか?」

「うん。だって聖様よく収益化無くなるとかネタで言ってたし、昔私が配信外で『本当に収益化無くなったらどうするの?』って聞いたら『その時はその時さ、今を全力で楽しむ、それが聖様だよ』って嘘偽りない様子ではっきり言ってたんだよね」

 

うーん……そうなってくるとまた違うのか? なんだかよく分からなくなってきたぞ……。

 

「あるいは収益化自体は気にしてなくて他が……」

「はい? 今なんて――」

 

シオンママが小声で呟くようになにかを言ったので聞き返そうとしたのだが、丁度そのタイミングで近くの部屋の扉が開き、聖様が出てきた。

どうやら打ち合わせが終わったようだ。

 

 




心音淡雪Twitterアカウント↓
https://twitter.com/kokoroneawayuki

活動報告にてマシュマロとリクエスト募集中です!
本編に出てくるライバーに質問したいことなどあれば、活動報告『マシュマロ募集』のコメント欄に、やってもらいたいことや見たいシチュエーションがあれば『リクエスト募集』のコメント欄に書き込んでくだされば、本編にて採用されます!
よろしければ是非書き込んでみて下さい!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。