VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
そして後日、ネコマ先輩の予定も確保し、いざ4人でのオンラインコラボが始まろうとしていた。
「配信前のチェックやるよー。あーあー、よし、声出し問題なし、後は音量を調節してー」
「prrr、prrr」
「ん、今の音ネコマ先輩ですか?」
「にゃ? そうだけどどうかしたかー?」
今は配信開始まで後数分といったところなのだが、個々でチェックをしているときに唇を振動させるような音が聞こえてきたので、気になったので聞いてみた。
「それってなにか効果があるんですか?」
「あー、なんか口元の緊張ほぐすとか色んな効果があったような……活動当初からやってるからルーティーンみたいなものだぞ」
「なるほど、私も何かやってみようかな……」
「あっ、あっ、あっ、はぁはぁ、ああぁぁ、あっ! あっ! ああっ!」
「おいそこの無職ビッチ」
「なにかな淡雪君?」
「今の喘ぎ声はなんですか?」
「配信前の発声ルーティーンだけど? 昔からやってるんだ」
「sexy女優だった頃のルーティーンですよねそれ!? 配信前にやってもなんの効果もないでしょ!」
「ボディービルダーのパンプアップみたいなものさ。これをやるとボルテージが上がってヤル気になるんだ。君たちも一緒にヤラないかい?」
「この場を乱交百合AVみたいにしないでください。あと耳が腐るのでやるのならミュートしてやってください」
「仕方ないなぁ、じゃあ声は我慢するよ、手は許してね」
「手!? じゃあさっきのあれ発声練習の声じゃなくイジッて出たガチの声!? ボルテージってそういうことですか!? 配信前になに致してるんです!!」
「せっかくだしこのまま皆でイジって絶頂前の寸止め状態で配信始めないかい? 寸止め我慢大会しよう」
「企画ものAVみたいなこと考えるな!!」
「聖様3秒なら我慢できるよ」
「配信開始した瞬間にイッテるじゃねぇか根性無し! もしAVだとしても企画説明の前に絶頂したらお客さん大困惑するだろうが!」
「そんなことないさ、AVの世界に世間の常識は通用しないよ」
「……本当ですか?」
「じゃあ再現してみるかい? 淡雪君が開幕の企画説明役やってよ」
「分かりました、始めますよ? はいどうも皆様こんにちわ! 今日もいやらしい企画の方始めて行きま」
「んんんんイグう゛う゛う゛ぅぅあああああああああ!!!!」
「うるせええええぇぇ!!!!」
「え、だめだったかい?」
「どこにいい要素ありましたか?」
「いやだって、そっちが『始めて行きましょう』って言おうとしてたからさ、ノリノリで『イク!』って言っただけに聞こえなかった?」
「いやいや無理あるから、ノリがいいどころの反応じゃなかったから、撮影現場凍り付きますよ。全く、放送事故はだめですよ!」
「「「え?」」」
「うん、そうですよね、私ある意味そのレベル超えた放送事故やらかしてますよね、すいませんでした」
……あれ? なんで私が謝ってるんだ?
「そうだよ、もっと反省したまえ淡雪君」
「組長呼んできますよ?」
「言葉濁さず素直に死刑って言いたまえよ」
「にゃ!? 組長呼ぶ=死刑になってる!?」
「ふぅ、まぁ今まで聖様が言ったこと全部嘘なんだけどね」
「にゃ、分かってたからネコマ組長の件までは驚きもしなかったぞ」
「私もそんなことだろうと思ってましたよ、相変わらずおふざけ癖が止まらないんですから」
「ははははっ! すまないすまない、ルーティーンの件の後からネタが思いついたものだから言わずにはいられなかったんだよ」
へ? 今ルーティーンの件の後からって言った?
「ルーティーンの件の前からの間違いでは?」
「喘ぎをルーティーンにしているのは本当だよ? 流石にいじりはしないけど」
「……それも嘘ですよね? ね、ネコマ先輩?」
「ネコマは同期だから知ってるけど、まじで聖は毎回やってるぞ!」
「で、でも! カラオケでコラボしたときはやってなかったじゃないですか!」
「あれは自宅じゃなかったし、事前にシオン君と淡雪君と3人で飲んで語り合って喉も絶好調だったからね、やる必要がなかったんだ。あくまで喉の体操だからね」
「いや、体操とかもっともらしいこと言わないでください。一瞬納得しそうになったじゃないですか」
先輩が毎度配信前に喘いでるとか正直知りたくなかったのだが……。
だがまぁ……それ以上に安心した点があったかな。
「聖様、声がなんだか明るいですね」
「ん? そうかい?」
「はい。事務所でお会いした時よりハキハキして聞こえます」
「自分ではあまり分からないけど……せっかくのコラボ配信だからね、気分が上がっているのかもしれない。……そうだね、もっと引き締めないと――」
「別にいいじゃないですか、もっと上げていきましょうよ」
配信前の聖様のテンションがどうなるのか読めていない部分があったから、収益化剥奪前とあまり変わらない様子で安心した。
というか、以前よりも楽しそうかもしれない。収益化剥奪後初めてのコラボだから、なにか思うところでもあったのだろうか?
「おーい淡雪ちゃーん! 聖様とコントをやってるのもいいけど、ちゃんと自分の調整は出来てる? もうすぐ配信時間だよー!」
「あ、そっか! 失礼しました!」
シオン先輩に言われて、慌てて冷蔵庫から例のブツを取り出す。
「プシュ! ごくっごくっごくっごくっ、くはあああぁぁ! やっぱり私のルーティーンはこれに限るぜぇ!!」
「……なぁネコマ君、淡雪君のルーティーンも聖様のと似たようなものだと思わないかい?」
「底辺同士で争うのはやめるのにゃー」
よっしゃ! それじゃあシュワシュワしてきたところでコラボ配信、『聖様の収益化奪還計画』始まります!
9月からは一気に書籍などの情報が解禁されていくと思います。お楽しみに!
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