VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
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:お天気組じゃん!
:天災組の間違いでしょ
:勝ったな(敗北宣言)
:絶対ハプニングが起こることだけは分かる
:とうとうハレルンが人狼側に……どうなる?
「あー。晴先輩が味方とかイージーゲーム過ぎてごめんなさいだわー。もうね、こんな状況で負けたら木の下に埋めてもらって構わないっすわ! はっはっは!」
コメント
:録音した
:口から無限にフラグ吐き出すマジックとかやってます?
:埋めると聞いてショベルカー持ってきたどー
:殺意が高すぎる
:埋めると聞いて今しかないと思い生まれて初めて履歴書買ってきました
:タイミングは謎だけどえらい
:今年40で愛称は親のすねかじりムシです。まぁ私が本当にかじりたいのは若い娘のおしりなんですがね、デュフフ! ¥4545
:ごめんやっぱタイミングばっちりだったな、一緒に埋めてやるよ
:成虫になったおしりかじりムシやめろ
:これが完全変態ってやつですか?
:スパチャしてるの草
:親のすねで4545するな
:草過ぎる
んーどうしよっかなぁ。 晴先輩が仲間な以上露骨にやらかさなければどう動いてもいい気がするけど……。
うん、最初だしとりあえず晴先輩の後ろについていけばいっか! 先輩がどう動くつもりなのかも気になるし。
「もうね、一、二回戦は無力なプレイヤー側だったからなすすべもなくやられたこともあったけど、天才の名を欲しいままにしている晴先輩が狩る側に回ったらそれはもう人狼じゃなくて無双ゲーなんすわ! 人狼無双本日発売ってことなんすわ! そんな晴先輩とタッグで負けたらもう埋めた後に宇宙に打ち上げてもらっても構わないんすわ!」
コメント
:ラピ〇タじゃねーか
:地平線汚さないでもろて
:どこかに君を隠しているから(土の中)
:ワロス!
:バ〇スみたいに言うな
:晴先輩が開幕で殺されてないから人狼って推理で吊られそう
:殺されてないから人狼は流石に草
:なんで口調まで完全なる小物になっているんだ…・・
晴先輩の後ろを追いかけて辿り着いたのはセクター2。そこには私たち人狼の他にましろんと聖様の4人がいた。
「お? これやっちゃいますか? ダブルキルやっちゃいますか? 晴先輩聖様の傍に居るってことはやっちゃっていいっすよね! それじゃあましろんが他のとこ行く前にやっちゃいまーす!」
現在晴先輩はミニゲームに夢中になっている聖様の傍に張り付いている。恐らくミニゲームをやっているふりをしているのだろう。 周囲に人影はない、完全なるチャンスだ。
「それじゃあいっただっきまーす! ん゛ん゛ん゛ん゛ましろんの体犯すのぎもじいいいいいいぃぃぃぃ!!!!」
この機を逃すまいと一直線にましろんに近寄り殺害する。
ふぅ……(賢者タイム)。さてさて、晴先輩。さっさとそのリア充を爆発させてくださいな。
…………あれ?
「晴先輩? なんで殺らないんですか? え、ちょっと、早くしてもらわないとバレちゃうんですけど!?」
なぜか晴先輩は私がましろんを殺しても一向に聖様をキルする気配を見せない。いや、それどころか動く気配すらないぞこれ!?
本当になぜ!? このままじゃ私ミニゲームが終わった聖様に通報されちゃうんだけど!? ミニゲームをしてるふりをして様子を窺ってたんじゃないの!?
ん……? 待てよ? 様子を窺ってる? ま、まさか――
「晴先輩もしかしてマップ開いてる!?」
このゲーム、人狼側は妨害やプレイヤーの位置情報を調べるためにマップを開く機会が多い。当然画面のほとんどが開いたマップで塞がってしまう。
つまりこの状況、晴先輩はミニゲームをやっているように見せて実はマップを見ていて、今も私が殺したことに気が付いていないんじゃないか!?
「ねぇやばい! やばいって! 聖様もうミニゲーム終わっちゃうよ! こうなったら逃げるか!? いやでもそれだと晴先輩が疑われる! どうすればいい!?」
予想だにしない展開に混乱して立ち往生してしまう。
そんなことをしているうちに聖様はミニゲームが終わり……トドメとばかりに別のセクターから光ちゃんがやってきた。
「終わった」
私が感情の消えた声でそう呟いたのと同時に、通報により画面が議論パートに切り替わる。
お、落ち着け! あの晴先輩のことだぞ、きっと何か策があったんだ。きっとわざと、これも勝ちにつながる手順の一つなんだよ。
ねぇ? そうなんですよね晴先輩!?
「――――――――」
終わった。
今みんなの声に紛れて晴先輩の声にならない声が聞こえた。他に気づいた人は居ないと思うが藁にも縋る思いだった私には確かに聞こえた。
「おいそこのストゼロと人間のハーフ」
「なんや」
「君そんな口調だったっけ?」
聖様とのやり取りに笑いが湧く。光ちゃんの証言もあって完全に人狼確定ムードだ。緊迫感すらないのは悲しくなってくる……。
どうしよ……とりあえず否定してみるか。
「違うんですよ、はい。私は人狼なんかじゃないんですよ、はい」
「淡雪殿がそういうのなら信じるのであります」
「光も信じるよ! 信じることはバカじゃない! 信じることは強さなんだ!」
ごめん、まさか信じてくれる人がいるとは思わなくてびっくりしちゃった。有素ちゃんはいい子だね、今度パンツでもあげよう。でも光ちゃんは目撃者なんだから信じたらだめだと思うな……。
でも当然ながら吊られる流れなのは変わっていない……よし、それじゃあ最後の抵抗だ。
「くっ! ストゼロオールスター味の破壊力がすごすぎたせいでボタンを押し間違えてしまった……人狼ゲームでガンギマリになるのはプレミだったか……」
一見負けを認めたような発言。だがこれの本当の目的はダブルキルを狙ったことを疑わせないようにするためだ。付け焼き刃かもしれないがこれで少しでも晴先輩に疑いが向くことを避けられれば!
「私もシュワッチの傍に死体があったの見たからこれは仕方ないね。ここでシュワちゃんは吊って、私とセイセイはシロ確定でいいんじゃないかな? あっ、あとピカリンもシロの可能性高いね」
あっ、とうとう晴先輩に切られた……。
いや、いいんですよ晴先輩。実際私がセクター2で合流してから通報されるまでの時間は10秒もない。気づかなくても不思議ではないし、静止状態でマップを見ていることを察知できなかった私にも非がある。
「それじゃあシュワちゃん、そこにハイハイしなさい」
「シオンママ、そこは正座では?」
「ハイハイしなさい」
「はいはい分かりましたよ……ハイハイだけに」
さぁ、裁きの時だ。
「それではシュワちゃん、最後に言い残すことはあるかな?」
これはつまり……遺言か。
私は一息つき、そして晴れやかな声でこう言った。
「え!? こんな状態からでも入れる保険があるんですか!?」
【心音淡雪・死亡】
答えは画面が教えてくれた。私はここで退場だ。
それにしても晴先輩、何か今日調子悪くないか? 全く活躍しているシーンを見ていない気がするんだけど……。
「あっ」
その時私は気づいた。晴先輩の今までの開幕退場芸や今のシーン、その全てが不運をきっかけにして起こっているとも言えることを。
不運、言い換えるとクソザコ運。そして晴先輩の代名詞の一つにゲームなどでの驚異的なクソザコ運がある。
狙ったキャラのガチャの排出率は天井までに出れば奇跡の領域となり、これもうガチャじゃなくて天井の値段で買ってるだけじゃね? とリスナーさんから言われてしまったほどのクソザコっぷりは幾多の爆笑を生んできた。
そして今のこの状況……そのクソザコ運が監禁人狼という舞台の上でも発動してしまっているんじゃないのか!?
「なんたるクソザコ運! 圧倒的クソザコ運! 晴先輩を苦しめて神様は何がしたいと言うんだあああぁぁーー!!!!」
やるせない思いを吐き出したところで何かが変わるわけではない。人狼1人に対してプレイヤーは8人、あまりに絶望的な状況だ。
もう無理なのか? そう口に出してしまいそうになったところをぐっと堪え、人狼側は死んだ後も妨害ができる為、それで晴先輩のサポートに回る。
だが――そんな情けない私とは対照的に、そこから繰り広げられた展開は圧巻なものだった。
「これは――」
巧みな操作で大胆かつ繊細に次々とプレイヤーを殺害していく晴先輩。
勿論完全に殺害した痕跡を消すことはできない。どうしても犯人の候補に名前が挙がることがある。
だがそれは『最初に私と一緒にダブルキルをとらなかったこと』がシロである根拠として働いた。
人狼が1人になったことによる殺害スピードの遅れは、巧みな話術を使ってどんどんプレイヤーを吊っていくことで解消する。ご丁寧にエーライちゃん、シオンママ、光ちゃんなどの警戒に値する人物やまとめ役が上手いライバーから殺害していく徹底っぷりだ。
そして最終的に――
【人狼サイド・勝利】
画面には、確かにその文字が表示されていた。
「ごめんシュワッチぃぃぃぃぃぃ!!」
周囲から驚きというよりは感嘆の声が漏れる中、勝者となった晴先輩の第一声は私への謝罪だった。
「いや、あれは仕方がなかったものなので全然いいんですけど……本当に勝ってしまうとは……まさかダブルキルとらなかったのもわざとでした?」
「違うわ! いくら私でも人狼が減るのは困るし、なんだったらあとでアーカイブ見れば罪悪感で半泣きの私が見れるからな!」
「な、なるほど!」
これでライブオンオールスターコラボは終了となった。
最後は己のクソザコ運すら実力でねじ伏せた晴先輩なのだった。
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