VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
「ここは――水族館かな?」
動物園の闇から逃げた私は、まだ案内されていなかった大きな建物の中に逃げ込んだ。
建物内に広がっていたのは、薄暗い青を基調にした内装に沢山の水槽が設置され、その中をゆらゆらと沢山の魚が泳ぎ回っている幻想的な空間。どうやら偶然逃げ込んだ先は水族館だったようだ。
「ぁぁ……癒されますね……あんな恐ろしい施設を見た後だと特に……」
というか魚までいるのか。本当に生き物系は全て網羅するつもりなのかもしれないなエーライちゃんは。
「結構広いですね、どこまで続いているのかな? ……ん? ここはなんでしょうか? 他の場所に比べるとやけにごった返していますね?」
水族館の奥の方に進んでいくと、他の場所と比べるとやけに無骨な水槽がいくつも設置され、その周囲には奇妙に思える程沢山の、物を収納するためのチェストが設置されている空間が目に入った。
洗練されている周りの水槽群の中で明らかにここだけ浮いている。
「あ、水槽の中に生き物いますね。これは……ウーパールーパー? それも沢山いますね!」
ワルクラチャット
<昼寝ネコマ>:やっと見つけたぞ淡雪ちゃん!
「ひっ!?」
跡を追いかけてきたようでいつの間にか背後に立っていたネコマ先輩に一瞬ビビってしまったが、特に武器などを構える様子もないし、襲ってもこないので大丈夫そうだ。
そうだ、元々は案内をしてもらっていたんだから、ここのことを聞いてみよう。
ワルクラチャット
<心音淡雪>:ここってなんですか?
<昼寝ネコマ>:ここはまだ未完成のエリアだな。今はまだ繁殖中だけど、将来的にカラフルなウーパールーパーの水槽ができる予定
「なるほど、まだ未完成なんですね。完成したら華やかな水槽になりそうですね!」
ワルクラチャット
<昼寝ネコマ>:あとネコマの仕事場でもあるぞ!
<心音淡雪>:仕事場? 働いているんですか?
<昼寝ネコマ>:青色のウーパールーパーがほしくてな。この繁殖施設はその為のものだぞ
<心音淡雪>:へー、確かに青色の子はいませんね。レアなんですか?
<昼寝ネコマ>:確率1200分の1だから中々生まれなくてなぁ
「ぇ?」
ワルクラチャット
<心音淡雪>:それ桁間違ってません?
<昼寝ネコマ>:いいや、1200分の1で間違いないぞ!
「まじですか、そんな激レア生物もいるんですねぇ……」
ワルクラチャット
<昼寝ネコマ>:今日もずっとやってたんだけど出なくてなぁ、昨日も一昨日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もその前の日もずっとずっとずっとずっとやってるんだけどなぁ
「――――――」
背筋が凍った。
やばい、この感覚――さっきと同じ――
コメント
:出たなエーライ動物園の闇その2
:スタンプラリーみたいな感覚で闇設置されてんなこの動物園
:ブラックスタンプラリー全部集めたら飼育員さんの仲間入りだぞ?
:飼育員さん(組員の隠語)の仲間入り(拒否権はない)
:飼育員さんは組員じゃなくて幹部の隠語なんだよなぁ
:エーライちゃんは基本なにも言ってないのにリスナーの妄想で実態が形成されていく栄来組すこ
:あわちゃん、チェスト開けてみ?
「チェスト……ですか?」
リスナーさんに言われた通りすぐそばにあったチェストを開いてみる。空いている空間にはとりあえずチェストが敷き詰められている為、一歩も歩かずにチェストに手が届く。
「ヒィ!?」
いざチェストの中身を確認したのだが、開いた瞬間体が反射的に閉め直してしまった。
開いていた時間は一瞬だったが中に収納されていたものははっきりと思い出せる。いや、思い出したくなくても脳裏にこびりついて離れてくれないという方が正しい。
チェストの中身、それは全ての収納スペースを埋め尽くした青以外の色のウーパールーパーたちだった。
これ、もしかしなくても青色を生み出す過程で生まれた子たちってことだよね?
……え? うそでしょ? まさかここに設置されている大量のチェストって、全部これと同じってこと……?
凍った背筋に更なる冷気が吹き荒れ、段々と体が震えてきた。
ワルクラチャット
<心音淡雪>:どうしてこんな気が狂いそうになることをやっているんですか……? もしやこれも園長の命令?
<昼寝ネコマ>:いいや、自主的にやってるぞ!
<心音淡雪>:な、なぜ? あっ、さっき仕事場って言ってましたよね! なにか報酬でもあるんですか?
<昼寝ネコマ>:お、察しがいいな! とびっきり豪華な報酬があるぞ! 園長が喜んでくれるという最高の報酬だ!
<心音淡雪>:……それだけ? ダイヤとかはないんですか?
<昼寝ネコマ>:なに言ってるんだ? 園長の物は園長の物、ネコマの物は園長の物だぞ? それにそんなもの貰うより園長が喜んでくれる方がよっぽど嬉しいぞ!
「洗脳ヨシッ! ……じゃなくてなんもよくない!? ネコマ先輩返ってきて! 一体エーライちゃんに何されたの!? これはやばい、私が助け出さないと!」
ワルクラチャット
<心音淡雪>:ネコマ先輩一緒に逃げましょう! これ以上先輩がここにいる必要なんてないです!
<昼寝ネコマ>:?? 意味が分からないぞ? ネコマは園長のペットなんだからここ以外に居場所なんてないぞ
<心音淡雪>:ペットじゃなくて先輩ですから!
<昼寝ネコマ>:でもエーライちゃんは園長だぞ?
「あーなんかややこしいなぁ!!」
ワルクラチャット
<心音淡雪>:分かりました、それでしたらいっそのこと私のペットになりませんか? エーライちゃんよりずっとずっとかわいがってあげますよ?
<昼寝ネコマ>:んー……淡雪ちゃんには覇王色の覇気がないからなぁ……
<心音淡雪>:エーライちゃんがそれを持っていることに驚きですよ
コメント
:覇気持ちは草
:エーライちゃんドフラミンゴを新種のフラミンゴさん発見ですよ~って言って捕獲してそう
:なんであの世界なら未知の生物沢山いるのにそいつを選んだ……
ワルクラチャット
<昼寝ネコマ>:どうも淡雪ちゃんは園長の素晴らしさを分かっていないようで残念だぞ
<心音淡雪>:むしろ更に怖くなりましたよ
<昼寝ネコマ>:にゃにゃ! いいこと考えた! 淡雪ちゃんも組員になればきっと園長の素晴らしさが分かってもらえるはずだぞ!
「は?」
そう言いながらネコマ先輩はダイヤ剣を手に持った……。
ワルクラチャット
<昼寝ネコマ>:淡雪ちゃん、お前も組にならないか?
「ぎゃああああぁぁこっちくんなああああぁぁぁ!?!?」
必死で入り口まで逃げる私の背を、今度は逃がさないとばかりに剣を振りながらぴったりと追いかけてくるネコマ先輩。
ワルクラチャット
<昼寝ネコマ>:組になると言え! 死ぬ! 死んでしまうぞ杏〇郎!
「誰が杏〇郎じゃああああああ!!」
ワルクラチャット
<昼寝ネコマ>:できたてのポップコーンはいかがwww? できたてのポップコーンはいかがwww? ハロ〜猗〇座〜こんにちは〜www猗〇座はみんなの人気者〜
「やばい、急に何の脈絡もなく猗〇座がキ〇ィちゃんの歌を歌い出した! CV:石〇彰のキ〇ィちゃんが追いかけてきてる! 全く意味わからないけど恐怖感がすごい! 逃げないとポップコーンにされる!」
なんとか命からがら動物園の敷地から脱出してしばらく逃げた後、振り返ってみるとネコマ先輩はいなかった。流石に敷地外まで追いかけてはこなかったようだ。
「ぅぅぅ……ネコマ先輩、一体どうしてしまったんだ……」
コメント
:ポップコーンにされるってなんだ……
:組長も一夜限りのネタのつもりでネコマー捕獲したんだけど、ネコマーがクソゲーの波動を感じてずっと隷属ロールプレイしてる
:エーライちゃんが一番困惑してたで
:全体的に意味分からない……ライブオン怖い……
:なんだよ↑ニキライブオン学院の不適合者か?
:適合する方がおかしいんだよなぁ
:くっ! 普通科高校の劣等生と呼ばれているこの僕が適合できないとは!
:適合してんじゃねーか
「自分から隷属ロールプレイとかおかしいでしょ……いや、このゲーム自由すぎて楽しみ方を自分で見つけた者が正解みたいなところあるから、正しいプレイスタイルと言えるのかな? ……たとえそうだとしても認めたくない……でも案内ありがとうございました……」
お礼を言いながらもそそくさと動物園から離れていく。次はどこを観光しようか――
心音淡雪Twitterアカウント↓
https://twitter.com/kokoroneawayuki
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