VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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ちゃみちゃんの様子が……1

「……まだかな」

 

いつもなら配信中である夜の十時。私は布団に体を預け寝転がりながらも、落ち着かずにソワソワと何度も寝返りをうちながらスマホの画面を凝視していた。

今日は配信を休んだわけではなく、普段より配信時間のダイヤを丸ごと前倒しし、終了の時間を早くさせてもらった。

その理由はスマホに表示されているちゃみちゃんの配信待機画面にある。

配信のタイトルは『エーライちゃんと二人でASMRオフコラボ!』そう、人狼の時に約束していたこの二人のコラボが、もう実現されることになったのだ。

あの人見知りのちゃみちゃんが自分から勇気を出して誘ったオフコラボ……ちゃみちゃんと後輩とのオフの絡みが楽しみやら、あのちゃみちゃんのことだからなにかとんでもないPONをやらかさないか心配やらでドキドキが止まらないため、絶対にリアルタイムで見たかった。

ASMRということもあり、なんとか落ち着こうと布団にもぐりイヤホンと共に配信の開始を待っていたのだが、勿論眠気なんて皆無。激しく高鳴る心臓の音が耳に聞こえてきそうである。

もはや気分は我が子の運動会を見守る母親だ。還ちゃん? 知らない子ですね。

 

「ッ! 始まった!」

 

いよいよ画面が切り替わる。配信開始だ、ちゃみちゃん頑張れ! 応援してるぞ!

 

「…………あれ?」

 

2人のアバターが表示されて表情とかも動いてもいるはずなのに、なぜかしばらく声が聞こえてこない。

まさか――機材トラブル? いやヨーチューブ君の不調か?

 

『あっ、えっと』

 

出だしから思わず私まで焦ってしまったが、エーライちゃんの声が聞こえてきたことで一安心できた。

まだASMRマイクではなく通常のマイクのようだ。

 

『ゃ、やっほー! みんな~! 元気ですか~ですよ~。お待たせしました、エーライ動物園園長の苑風エーライですよ!』

 

コメント

:組長! お待ちしておりました!

:殺法(やっほー)!

:殺法、自らの道を突き進む組長らしい素晴らしい挨拶ですね! 感動しました!

:こちら本日の上納金になっております ¥50000

:上納金は草

:なにやってる! お前らも早く出せ! ライオンの餌にされるぞ! 

:本人は一切催促とかしたことないのに、リスナー間で謎のスパチャ文化が形成されるせいでスパチャ額がトップクラスの組長すこ 

 

珍しいコラボということもあり既に同接がえげつないことになっている。当人ならプレッシャーすら感じる人数だ。

幸いエーライちゃんはかなり頭が切れる逸材、ちゃみちゃんのこと任せたよ!

そう手を組みながら願い、いざちゃみちゃんの登場を待っていたのだが……あれ? また無言の空間になっちゃったぞ?

 

『……あの~ちゃみ先輩? そろそろ挨拶をお願いしたいのですよ~! そもそも予定では先輩が先に挨拶するはずだったのですよ~』

 

コメント

:ちゃみちゃーん?

:相変わらずの人見知り具合で草

:今日もちゃまってんなぁ

:やはり後輩との初オフコラボは緊張するか

:園長助けてあげて!

 

『いや、これは多分人見知りではなくて……』

 

コメントを見てなるほどと思いさっそく心配してしまったのだが、エーライちゃんの様子を見るに人見知りとはどうやら事情が異なるようだった。

 

『あの、ちゃみ先輩? もう配信開始しているので挨拶をお願いしたいのですよ~』

『エーライちゃんかっこいいね……』

『いや、だからそうじゃなくて……』

 

…………んん?

 

『ちゃみ先輩、だから挨拶を』

『ちゃみって呼んで? 呼び捨てにしてほしいの』

『いや、だから先輩にそれは恐縮なのですよ……そんな熱い視線を向けられても困る……あと話を聞いて挨拶をしてほしいのですよ……』

『んんんんん~~~エーライちゃん~~~』

『あの、抱きつかれても困るのですよ……』

 

んんんんんんん!?!?

 

コメント

:ファ!?

:ゑ?

:なにが起こっているんだ!?

:どういう展開!?

:これは予想外すぎる

 

コメント欄も私も驚きのあまり脳の理解が追い付いていない。

状況を整理しよう。人狼をきっかけに仲良くなり初のコラボ、しかもオフコラボが決定した二人。いざ配信が開始され、なぜかあの極度の人見知りであるちゃみちゃんが挨拶すらせずにエーライちゃんに蕩けたような声で甘え、抱きつき、エーライちゃんはそれをいかにも苦笑いといった反応。

――いやいや、整理してもまるで意味が分からんぞ!

やばい、冗談抜きで混乱してる、あれだけソワソワしていた体もピタッと停止してしまった。

やがてやってくるのは滝のように体に流れる冷や汗。布団に包まっているはずなのに嫌な予感が体の芯から噴き出し寒気が止まらない。

私はその寒気から逃れたい一心でなんとか手を動かし、コメントを打ち込む。

 

コメント

<心音淡雪>:SEXした?

 

『それだけはないので安心していいのですよ~』

 

コメント

:淡雪ちゃん……

:氷タイプかと思ったら草タイプだった女

:なんだしてないのか……

 

落ち着いたエーライちゃんのツッコミに少しだけ安心したが、じゃあちゃみちゃんの人が変わったようなこの状況はどういうことかと最大の謎は残っている。

一体何が起こっているの……?




心音淡雪Twitterアカウント↓
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