VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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三期生デビューから1年と1ヵ月記念配信2

「さてさて、開幕の挨拶も終わったところで、それでは今日の配信の企画内容の説明に入りますね。かたったーでも事前に告知がありましたが、今日は光ちゃんの家で四人集まってお泊り会をします!」

「本当は1周年丁度のタイミングでやれたらよかったんだけど……光のせいで一度延期になっちゃってごめんなさい……うぐぐ、なんであんなバカなことしちゃったんだろう……」

「まぁまぁ、反省は大事だけれど、自分を責めすぎてもだめよ」

「そうだね。それに、さっきのちゃみちゃんの挨拶を聞いて思ったけど、1周年と1ヵ月記念っていうのも僕たちらしくて良くない? 常に予想の斜め上を行ってこそライブオンだよ」

「まっ、ましろちゃん!」

「あ、えっと、抱きつかれる程のことは言ってないというか……あの、よっ、よしよし……」

 

 ましろんの言葉に心打たれたようで、そのままぎゅっと抱きついた光ちゃん。

 ボディータッチが激しい光ちゃんに顔を赤らめながらも、戸惑いがちに抱きしめ返すましろんがてぇてぇ!

 

「うんうん、いいこと言いますねましろん! やっぱり私たちは誰もやらないことをやらないと!」

「そうよね! 好きなものを好きって言って何が悪いのかしら! 声フェチ最高!」

「自己肯定に浸っているところ悪いけど、そこの二人は最近斜め上どころか真上に行ってる節があるからね? 集まると自然とツッコミ役になる僕の身も労わってほしいな」

「ねぇましろちゃん!」

「ん? どうしたの光ちゃん?」

「このままプロレス技のベアハッグかけて! めっちゃ強く抱きついて締め上げる技!」

「ああそうだった、光ちゃんもあの二人に負けないくらいの変人になったんだったね! ふんっ!」

「おっ、そうそう! 遠慮なんてせずにもっと強く抱きしめてくれ!」

「……うっ、うるさい!(ペちん!)」

「ぁひん!?」

 

 もう終わりとばかりに光ちゃんから離れてそのお尻を叩いたましろん。

 だが私には分かる。今のましろんは遠慮なんてなしに本気でベアハッグしようとしたけど、非力すぎて光ちゃんに分かってもらえず、無理やり誤魔化したことを。

 必死な顔で抱きしめてたましろんかわいい。

 リスナーさんにも何が起こっていたのかを説明する。一瞬止めようとしてきたましろんだったが、配信者としてリスナーさんに状況を説明する必要があるため、睨み顔になりながらもじっとしていた。かわいい。

 

「ねぇましろん」

「……なに?」

「ざぁこ♥ざぁこ♥」

「(ぺちん!)」

 

 流石に無言で尻をしばかれてしまった。かわいい。

 

「…………(ぺちん!)」

「ひぇえあ!? え!? なんで私までお尻叩かれたの!?」

「いや、ちゃみちゃんのお尻おっきくて叩き心地良さそうだったからつい」

「お、大きくないわよ!! ……そう思いたい。微妙にコンプレックスなのよねぇ……」

「そう? ちゃみちゃん身長があるからお尻の大きさがメリハリに繋がってスタイルよく見えるけどな。あと昇天してないで光ちゃんは早く起きる」

 

コメント

:このオフじゃないと見られないやり取りがたまらん

:わかるマーン!!

:完全にドMの声出してて草。これが淡雪ちゃんの調教の成果か

:ちゃみちゃんは! お尻が! 大きい!

:タッパとケツがデカい女がタイプだったのかな?

:俺はヤッパと札が似合う女が好きです

:残念ながらちゃみちゃん愛しの組長は今日お休みや

:ましろんがかわいすぎてしんどい

 

 

 こうしてほのぼのと始まったお泊り会。

 要所要所で企画を用意してあるが、当然時間は山ほどあるので、全体的にこのようなゆったりとしたテンポで進行していった。

 光ちゃんが喉を壊してしまったときなどの今日に至るまでの過程の回想から広がり、やがて今日という日を迎えることができたことへの達成感へと話題はシフトしていった。

 

「デビューから1年以上経ったのね……なんだか長かったのか短かったのか私よくわからないわ……」

「そうですねぇ。とにかく激動の日々だったので長短どちらにも感じます」

「あわちゃんは特にすごかったかもね。トラブルメーカーと巻き込まれ体質両方持ってるから」

「おお! 金〇一とかコ〇ン君みたいでかっこいいぜ淡雪ちゃん!」

「あははっ、初配信の時は今の自分の姿なんか想像もできませんでしたよ」

 

 デビュー当初を思い返す。

 懐かしいなぁ。自分に自信がなくて内心を表に出すことが怖かったから、清楚系の仮面を被り、配信でも常に緊張が抜けなかったあの頃。

 下ネタなんかコメントから拾うことすらなかったのが、今日ではこうなっているのだから人生不思議なものだ。

 しかもそれが配信を切り忘れたことがきっかけというね。

 

「初配信かぁ、僕とか光ちゃんはあんまり変わってないかもしれないね。……ドMは一旦置いておいて」

「光は常に全力疾走だからね!」

「私は迷走してたわねぇ……。初配信とか緊張でまともに喋れてなかったし、それからも光ちゃんをまねてハイテンションにしてみたらコメント欄で『無理しないでいいんだよ』って言われまくったの未だにトラウマだわ。それが今では……あれ? なんだか今もずっと迷走している気がしてきたわ?」

「まぁまぁ、それがポンコツキャラとして人気がでる要因に繋がっているわけじゃないですか。それに――なんだかんだ言っても私は今が楽しいです」

 

 私がそう言うと、皆は頷きながら一斉に同意の声をあげた。そしてしばらく無言で見つめ合った後、なぜか今度は一斉に笑い始める。

 なぜ笑っているのか自分たちでも意味不明だけど……きっと今こうやって皆で笑える、それがこの記念日で最も重要なことなんじゃないかな。

 カオスでおバカでハチャメチャな道のりだったけど――ライブオン三期生はカオスでおバカでハチャメチャで、そして最高だ!!


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