VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
そして時刻は流れて夕食時。
夕食は料理ができる私とちゃみちゃんがメインになって作ることになっている。
なにを作るかだが、せっかくならパーティーらしい料理にしようということになり、決まったのはたこ焼き。所謂タコパってやつだ。
材料も事前にちゃみちゃんが揃えていてくれたため、早速調理に取り掛かろう。
「……今更だけど、生地作るだけでいいなら私たちじゃなくてもできる気がしてきたわね。焼きは皆でやるし」
「まぁまぁちゃみちゃん、材料切るくらいは腕の見せ所ありますよ」
焼き用のプレートは光ちゃんの家にあるらしく、ましろんと二人で準備してもらっている(光ちゃんの家なんでもあるな……)。
えーっと、まな板はどこかなー。
「あ、ましろんちょっとこっち来てください」
「ん? どうしたの?」
「いやー丁度まな板が見つからなくて困ってたんですよねぇ、ましろんが居て助かりました! 携帯まな板の異名は伊達じゃないですねグホァ!?」
ネタでましろんを台所に呼んでまな板代わりにしようとしたら腹パンを食らってしまった、びっくりはしたが相変わらず非力で痛くない。
「(キラキラキラキラ!!)」
「いや光ちゃん、そんなに期待した目でお腹を見せつけられても僕無罪の人は殴らないからね? ほら、服下ろさないとお腹冷えちゃうよ?」
「えー!? 淡雪ちゃんだけズルイズルイー!」
「光ちゃん! なにか平らな物の名前を出せばいじめて貰えますよ!」
「へ? 平らな物? あっ、ましろちゃんのバッタ〇キング!」
「よし光ちゃん覚悟しろ、痛みとは違う地獄を味わわせてやる。というかなんでキング付けた?」
「そっちの方が強いから!」
「この場合は強かったらだめでしょーがー!」
そう言って光ちゃんの露わになったお腹側面をくすぐり始めるましろん。キャッキャキャッキャとじゃれ合う女の子二人……。
「あぁ~ええ光景なんじゃぁ……」
「ほら淡雪ちゃん、私たちは遊んでないで材料切るわよ。まな板も見つけたわ」
「え、ちゃみちゃんが頼りに見える――だと――」
「なんでそんなに驚いているのかしら? 料理の主軸は私たちなのだから、私たちがしっかりしないと美味しいものができないでしょう?」
「ちゃ、ちゃみちゃん! そうですよね! 今は私たちのターンなんですから、決めるときはビシッと決めないとですよね! それじゃあ早速、なにから切ろうかなー(材料が入っている袋を漁る)。……ちゃみちゃん」
「なにかしら?」
「タコはどこに?」
「ダッシュで買ってくるわ」
「ちゃみちゃん(泣)」
どれだけ探しても材料の中にタコが見つからない。チーズとかウィンナーとかはあるのに……。
決めるべき時にビシッとライブオンを決めたちゃみちゃん、流石である……。
結局用意が終わって手持ち無沙汰になっていたプレート班の、二人が近くのスーパーに買いに行ってくれたのだった。
「ごめん……本当にごめんなさい……」
「いいってことよちゃみちゃん! むしろ光は今パシリにされて最高に興奮している! ありがとうって言わせてもらうぜ!」
「あああああ淡雪ちゃん! この子天使よ!」
「天使じゃなくてドMですよ」
「それ、あれはガ〇キーじゃなくてシュワちゃんですよって答えているのと似たようなものだよ」
「もしかしてそれガ〇キーが天使で私がドMの立場ってこと? ましろん今私のことめちゃんこバカにしました?」
そんなこんなでわちゃわちゃとタコパを楽しみながらお腹を満たし、そして次の企画は――
「よし、マイクの設定も完了、これで準備はいいですね? それでは、三期生によるミニライブの開催です!」
ミニライブ、つまりは歌である。
そう――練習で光ちゃんが喉を壊す原因にもなってしまったあの企画だ。
流石にあの事件があったため、歌はやめようかとの話も出たのだが、結果的にそのまま開催することになった。
なぜか? ちゃみちゃんと私で光ちゃん宅に集まったあの日のことを思い出してほしい。光ちゃんの喉はあの時点でほぼ完治しているのだ。
そもそも、光ちゃんが1ヵ月の活動休止期間を設けたのには、実は体を休める以外にもう一つ理由があった。
それは歌の練習だ。
活動休止期間とはいえなにもしないのはそれはそれで主に精神面に良くない。そして私たちは喉が仕事道具だ。そこに負担をかけない声の出し方を学ぶことは無駄にはならない。
そこで、疲労に繋がらない程度にボイストレーニングをこの期間中光ちゃんはプロの先生から学んでいたのだ。
休止当初の声は出せない頃から座学が中心ながらもこれは始まっていた。そして喉が治ってからはより本格的に。この1ヵ月間、光ちゃんは学び続けた。
そして迎えた今日、光ちゃんの歌はどうなったかというと――
コメント
:はい! はい!
:♪♪♪
:やべー!
:淡雪ちゃん相変わらず歌うめーな
:ちゃみちゃん意外なくらい声出てて草
:ましろんの落ち着いた歌声たまらん
:光ちゃんうめー!!
:え、歌苦手で喉壊したはずでは!?
:全く他の三人に負けてないやん!
ドヤアアアアアアァァァァーー!!!!
楽しそうに曲に合わせて体を揺らしている光ちゃん。
間違いなくこの時、私たち四人の歌声は一つになっていた。