VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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シュワちゃんのお悩み相談所5

「あっ」

「お、どうしたシュワッチ? もしやいいのを思いついたのか!?」

「いや、そこまでじゃないんですけど……確か昔コメント欄にすっごいピッタリな名前が流れたのを見た気がするんですよね……」

「本当か!? よしっ、なんとか思い出してくれ!」

 

 んー……なんだったかなぁ……。

 少しずつ思い当たる記憶の欠片を探し集めていく。

 

「結構シンプルな名前なんですよね」

「いいね、そういうのを探してたからピッタリだ!」

「あと……確か還よりは赤ちゃんの方から連想される名前だったような……はっ!」

「おっ!? 思い出したか!?」

「はい! 『赤さん』だったはず! どうですか! 赤さんってピッタリじゃありません!?」

「赤さん――ッ!」

 

 晴先輩もそれだ!と言いたげな反応だ。

 うん、あの赤ちゃんを名乗るアラサー、社会をなめた言動、考えれば考えるほどしっくりくる。

 

コメント

:赤さんwww

:どっかで聞いたことあるな

:赤ちゃんじゃなくて赤さんと呼べ!

 

「すごいよシュワッチ! もうあの子が山谷還じゃなくて赤さんとしか思えなくなってきたよ!」

「ですよねですよね! それじゃあもう決定ってことで、流れで今還ちゃん呼んじゃいますね」

「……セイセイの時も思ったけど、これじゃあお悩み相談というより仲介人だね」

「はっはっは! そんなの全体チャットで『お悩み相談します!』って言ったら全ライバーから爆笑されたときから諦めてるわボケ! だから捻くれてストゼロ飲んで勢いでゴリ押してんだよ! お悩み相談? はっ、むしろこの場を修羅場にしてやるぜ!」

「まさに外道!」

 

 さて、赤さんノルマをクリアしたところで早速還ちゃんに通話をかけましてー。

 ……お、繋がった。

 

「ママ? 突然どうし」

「今日からお前は、赤さんだ!」

「よろしくな赤さん!」

 

 通話を切る。

 

「いやぁこれで悩み解決ですね! ごくっごくっ、プハァ! 一仕事終えた後の酒はうまいぜぇ!!」

「すごいなこの子、過去と今の言動が全く繋がってない。カブトボ〇グを見てるみたいだよ。修羅場どうした」

「親子喧嘩良くない」

「いい子か!」

 

コメント

:草

:今日からお前は、富士山だ!

:あのアニメも主人公外道だからな

:お米食べろ!

:お前、身も心もお米になっちまったのかよ!?

:会話するな

:松岡違いなんだよなぁ

 

 よし、これで晴先輩の悩みは解決ってことで……あれ? 

 

「還ちゃんから折り返しの通話だ」

「まじ? どしたんだろな赤さん」

「とりあえず出てみますね」

 

 ポチっと。

 

「もしもし? どした還ちゃん?」

「よっ! 赤さん! さっきぶり!」

「どうしたもこうしたもないですよ!? え、なに? なんて言いました? 赤さん? というかなんで晴先輩までいるんです!? 意味不明過ぎてそっちの方がまさに外道ですよ!」

「なぁ赤さん。なんでシュワッチはストゼロと出会っちまったのかな?」

「あっ、そうそう、今お悩み相談企画やってるんだけど、還ちゃんなんか悩みない?」

「たった今悩みができましたよ。先輩が会話できないです」

 

 ふぅ。還ちゃんイジリもこれくらいにして、そろそろちゃんとここまでの経緯を説明する。

 やっぱり晴先輩はノリがいいうえに欲しいときにはツッコミまで入れてくれるから、一緒にいると楽しくなっちゃうんだよな。流石の一期生だ。

 今まであたふたしていた還ちゃんも、経緯を説明したら納得してくれた。

 

「というわけなんだけど、どうかな還ちゃん?」

「どうかなどうかなー?」

「そうなら最初からそう言ってくださいよ。まぁ大先輩とママが考えてくれたニックネームですからね、まさに外道でも許してあげます」

 

 こうして、還ちゃんの新しいニックネームは赤さんになったのだった。

 だが――通話から還ちゃんが抜け、お別れの挨拶に入り晴先輩も抜ける――そんな時だった。

 何の前触れもなく流れた一つのコメント――私は別れの挨拶も忘れ、そこに全意識が吸い込まれてしまった。

 

コメント

:バブりたい還=バブリエル

 

「バブリエル……」

「ッ!?」

 

 そしてそれが最後、私の脳内の全てはバブリエルで汚染され、無意識に口から呟きとして零れだす。

 

「バブリエル……?」

「はい晴先輩……バブリエルです」

 

 電波の先で私の呟きを聞いた晴先輩にもそれは伝染したようで、同じくその名を口に出し続ける。

 バブリエル……バブリエル……バブリエル……。

 

「「バブリエル!!」」

 

 そして二人の声が重なった時、私は再び還ちゃんに通話をかけた。

 

「はいもしもし? またまたどうし」

「今日からお前は、バブリエルだ!」

「よろしくなバブリエル!」

「……通常攻撃が精神攻撃で二回攻撃のお母さんでも還は好きですよ」 

 

コメント

:バブリエルは大草原

:堕天したガブリエルかな?

:この二人が揃うと空気中のライブオン濃度ヤベーな

:そのネーミングセンスを分けて欲しい

:コメント欄ナイス

 

 こうして、還ちゃんの新しいニックネームはバブリエルになったのだった。

 

 




当初は書籍版2巻のコメ欄にも出てくる『赤さん』予定だったのですが、コメントで頂いたバブリエルがツボりまくったのでこちらで。

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