VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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宮内匡VS朝霧晴&シュワちゃん6

「さてと、シュワッチの次は私と討論だよね会長! もう待ちくたびれちゃったよ!」 

「ぇ? ァ……そっか……あの……晴先輩は~その~……ら、ライブオンについてどうお考えでしょうか?」

「めっちゃくちゃ弱気になってる!? さっきまでの強気の姿勢はどうした!?」

「ワカラセはいいものだな」

「シュワッチがやったのはワカラセじゃなくてワカランクサセだからな!」

 

コメント

:敬語www

:地獄の二連戦の始まりや

:これが鬼畜と名高いマレ〇ア戦ですか

:ライブオンは朱い腐敗に蝕まれていた!?

:円周率のラダンゴ

:ノリだけで言うな

:響きから知ってる人かと思ったら完全なる別人だった

:パチモンじゃねーか

 

「こ、コホン! そうだ、宮内がなにも戦果を挙げずに敗走するなどあってはならない! 気を取り直して、せめて晴先輩は説得して見せるのである!」

「おお! それでこそ会長だ!」

「ワイトもそう思います」

「ラドンもそうだそうだと言っています」

「あーもう! また余計なこと言いだす! 宮内にもうその手は通用しないからな!」

 

 怒られちゃった……しょぼん……。

 

「よし! それでは晴先輩! まず、原点なる存在として、今のライブオンをどう思っているのか宮内は聞きたいのである」

「どう思っているかかぁ……ライブオンはライバーの採用基準に輝ける人って項目があるんだよね。世の中に埋もれない、自分だけの輝きを持っている人の集まりを目指しているわけだ。これは輝ける才能を持っている人がいても、私がそうだったように社会がその在り方を否定してくることが往々にしてある世の中だから、それを認めてあげられる場所でもあるってこと。人は社会に属する生き物ではあるけど、でもせっかくの才能が潰れてしまうのも勿体ないよね。だから私はライブオンを特別な才能を持った人達が満開の花のように輝ける場所として、この世にあってもいいものだと思っているかな」

「…………ら、らしいぞシュワちゃん先輩!」

「え!? 私!? なんで立場的に観客だった私にバトン渡した!?」

「す、すまない。シュワちゃん先輩と違って晴先輩は真面目に答えてくれたから逆に困惑してしまった……」

「私が真面目に答えていなかったみたいに言うのやめてくれるかな?」

「真面目以前に会話にすらなっていなかったのである」

「ストゼロ飲んでない時点で同じ土俵にすら立てていないってことなのだよ」

「宮内はまだ飲んだらだめなのである」

「そっか、匡ちゃんはそうだったね…………ぅ゛う゛う゛、可哀そうに……ぐすっ、可哀そうに……」

「ガチ泣き!?」

 

コメント

:めっちゃそれらしい答えだ

:考えがハレルンらしいなぁ

:創立者、ライバー、自分の経験、色んな視点が混じってるんだな

:それに比べてこのシュワシュワは……

:シュワちゃんも今日キレたり受精したり歌ったり泣いたり大忙しだぞ

:体内で天変地異起こってんじゃん

 

「私はこんなところ、会長今のに対してどう感じた?」

「あ、えっと、そうであるな……分からない話ではないが……それでも、なんでもやっていいのは違うと思うのだ」

「なんでもではないかな、ライブオンは悪いことはやってないよ」

「そうであるが……やはり人である以上ある程度は型にハマって生きるべきだと思うのだ」

「うーん……そもそも会長の思う程型にハマっている人間ってそんなにいるのかな?」

「え?」

「人間ってさ、欲望で満ちた内臓を理性という皮膚で包んだ生き物だよ。強い欲求が無い人間なんていない。でもそれを表に出すと気持ち悪がられたりするから、社会ではなんとか皮膚から溢れないようにしてる。でも結局その欲求自体は本物で、証拠としてネットだとかSNSとか、社会から離れて行けば行くほどその欲求を爆発させて発散してる。これって本質自体は大して私たちと変わらなくない?」

「だがライブオンは一切欲求を隠していない! 隠すという行為に意味があるのだ!」

「それはなぜ?」

「皆が皆好き勝手やっていたら、社会そのものが成り立たなくなるのである!」

「……会長ってさ、隠されているものからなにかを妄想するのが好きなんだよね? その成り立たなくなるって考えは、私にはこの欲求から発生した正当化に見えるんだ」

「そ、そんなことは!」

「そりゃあ皆が犯罪好き勝手にやりまくりとかだったら社会は崩壊するけど、そこは法律がラインを引いてくれているわけで、いくらアンチでも今のライブオンを野放しにしたら社会が崩壊するなんて言い出す人いないでしょ、ほぼありえない話だし」

「それは……」

「きっとね、私たちのすべき討論の的はそこじゃないんだよ。もっともっと俗なこと。それは――倫理と欲求について」

「倫理と欲求?」

「現代ってね、これまたネットとかSNSの発達の影響で、すっごくこの辺が曖昧になっちゃってる状態なの。難しい話なんだけどね」 

「その話、少し詳しく聞きたいのである」

「お、興味を持ってくれて嬉しいよ! これね、なにが難しいって、倫理は欲求から発生することがある点なの。例えば、世の中には性を嫌っている人たちがいるでしょ? でも性欲は三大欲求であって否定するのは人間という生き物としてなんか違う、でも完全に野放しにしたら性欲からの犯罪とかが出てきちゃうから倫理的にそれもなんか違う。矛盾しちゃうけどじゃあどれが正解なんだろうって。多様性が広がって発言も容易にできるようになった現代は、いわばその正解を探している途中なわけだ。ネットは便利でもう手放せないものだけど、便利すぎて一気に世界が広がりすぎちゃった部分もあるんだよ」

「なんとなく分かってきたのである」

「ほんと? いいねいいね! そんで、今正解を探しているって言ったけど、より正確に言うと今は規制期みたいなもので、倫理が優先される傾向があるんだよ。私たちのいる配信界隈もそうだし、創作界隈とかもすごいよ? 10年前できたことが全然できなくなってる。その中にはそりゃあダメだよねって思うのも多いけど、それを規制とか嘘でしょって思うのも実際ある。だけどこの流れがずっと続くとなにもできなくなって界隈が死んでしまうから、どこかで限界が来て流れが変わるときがくるとも思う、アメリカの禁酒法みたいにね。そしてこの流れを繰り返して、人類はこの問題に正解を見つけていくんじゃないかなーって」

「……また分からなくなってきたのである……」

「あはは! 分からなくて当然だよ! だって天才である私ですらこの問題の先にどんな正解があるのかなんて、さっぱり分かってないんだから。私こういう問題解くの正直苦手だし。もしかすると今した話だって未来は全く違う展開になっているかもしれない。でもそれはあくまで未来の話だから、今の私たちはお互いに倫理という盾を持って欲求という武器を振るい、少なくとも現状のライブオンの中で決着をつける必要がある。その準備として、正解は分からなくても、今言った問題があるってことを知っておく必要があると思うんだよ」

「…………」

「なーんて言っても、突然こんなこと言われても、じゃあどうしようってなるよね。だから、自分はなぜ行動を起こしているのか、それを客観的に見て、自分なりの答えが出せたらまたおいでよ。あっ、急に行動を変えようとすると逆に自分を見失うから、そこは答えが出るまで今のままでいいかも」

「……分かった。なんだか考えさせられる話だったのである」

「ははっ、分かんないよ? わざと考えさせて討論をうやむやにしただけかもしれない。私天才だから、相手の思考を指定することもできちゃうかもよ? でもまぁたとえそうだったとしても……きっと自分で答えを考えた先に、会長が本当に思っていることが見つかるよ」

「承知した。情けなくはあるが、今日のところは出直してくるのである」

「おけおけ、よーし! それじゃあ今日のところはここでお開きにしますかー! ねーシュワッチ! ……シュワッチ?」

「ぐー……すぴー……」

「「寝てる!?!?」」

 

コメント

:すっごいまともなこと言ってる、激レアシーンだ

:ハレルンが慕われる理由が分かった気がする

:いい先輩や

:シュワちゃんはオチを付けられてえらい

:今日は怒りもあって相当本気モードだったからなぁ笑

:夢の中でも酒飲んでそう

 

 ぐぅ……ぐぅ……えへへ……ストゼロちゃん……ふへへへ……ふにゃあへへへへ……。




ぶいでんの5巻が9月16日に発売予定です。
5巻にはファンタジアスペシャルパックという特別版もありまして、シュワと淡雪のアクリルスタンドコースター付きとなっています。
このコースターと一緒にグイっと飲みましょう!
下記URLや各書店様などで既に予約が始まっているので、ぜひよろしくお願いします。
https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g302206002732/?twt=goods

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