VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
「あれ? 急に泣き止みましたね」
「還のガラガラ振りのおかげだと断言します」
「な、泣いてなんかねーし!」
「「はい?」」
急に泣き止んだかと思ったら、今度は震え声で泣いたことを否定しだしたダガーちゃん。
どゆこと??
「いやいや、大泣きだったじゃないですか」
「ガラガラを必死で振った還の労力を否定しないでください」
「泣いてなんかねーし! 今のはあれだし、目にゴミが入っただけだし!」
「それは流石に無理ある……」
「まぁ待ってください還ちゃん。もしかしたら私たちの開幕のやり取りをゴミだと暗喩した可能性があります」
「ちょ!?」
「そうですかダガーママ。よし、またガラガラ振ってあげますよ。永遠に寝かしつけてあげます」
「ちーがーう! そんなこと思ってなーい!」
コメント
:相変わらずガラガラを凶器だと思ってるなこの赤ちゃん
:ダガーちゃんはキャラを守ろうと必死なんだと思われ
:さっき記憶喪失の矛盾を指摘したコメントがありまして
「んー? あーなるほど。還ちゃん、コメ欄見て」
「コメ欄ですか? ……あー」
私と還ちゃんはダガーちゃんを泣き止ますことに集中していた裏では、どうやらコメントにてダガーちゃんのキャラ設定に関する鋭い指摘があったようだ。
「ねぇダガーちゃん」
「な、なんだよ?」
頑張ってキャラ戻そうとしてるのかわいい。でもさ……。
「どうして記憶喪失なんて設定付けちゃったんですか? 入った経緯との相性が悪いような……」
「せ、設定じゃねーし! マジでなんも覚えてねーし!」
「……記憶喪失から目が覚めて初めて見たのがライブオンだったとかですか?」
「無理ありすぎでしょ、そんなの刷り込まれたら還なら精神崩壊してますよ」
「アラサー女が赤ちゃん自称する設定のほうが無理あるだろ!!」
「それな!」
「おいママ、なに同意してんですか」
「すみません、あまりに説得力ありすぎて流れで言ってしまいました……」
「全く、コメント欄のリスナーママ達も同意しない! バブーバブー、応答せよ、こちら還、赤ちゃんだ、オーバー?」
コメント
:どんな状況からでも笑いに繋げるなwww
:やっぱり芸人なんやなって
:いやオーバー言われてもどう返せと……
:還ちゃんまだ精神維持してたんだ
:まぁまぁ、新人さんなんだし多めに見てあげて
……そうだね、コメ欄で言われている通り、先輩なんだしむしろここはフォローしてあげるべきだよね。
どんな理由かは分からないけど、なんたって当の本人が記憶喪失キャラを固く守りたいと思ってそうなわけだし。
でも結構なやらかしだったからな……というかデビュー配信から似たようなことやらかしてたしこの子……どうする? どうすればこの流れを変えられる?
――あれ? そういえばそのデビュー配信の時はどう切り抜けてたっけ? ――そうだ!
「ダガーちゃん! 記憶喪失だと証明したかったらフードを脱ぎなさい!」
「おぁ? フード? なんで?」
「私が貴方を助けてあげます!」
「淡雪先輩……やっぱり優しい! これでいいの?」
「そう! そして私が今チャットで送った必殺技をリスナーさんに叫ぶんです!」
「チャット! 分かった! ええっと、わ、忘れろビーーーームッ!!」
「あはぁああぁああ予想通りめちゃきゃわいい……」
「ママがキモイ」
「ちょ、ちょっと淡雪先輩! コメント欄がかわいい一色になっちゃったんだけど!? あーもう! かわいいって言うな! 忘れたって言え!」
コメント
:忘れました、なのでフードはそのままで
:ダガーちゃんは記憶喪失だ、誰がなんと言おうとダガーちゃんは記憶喪失なんだ
:そのロリ顔は卑怯だろ……
:なにかあっても俺達が忘れ続ければいいわけだな!
「これで万事解決ですね!」
「おお! 本当に疑いの言葉が消えた! 淡雪先輩まじすげー!」
「なんすかこの茶番」
かわいいの下に理論は屈する。
「ぁぁ……やっぱりこのかわいさはたまらん……」
「マーマー? 一応釘を刺しておきますが、今回はナイスプレイとはいえ、今後かわいさに惑わされて甘やかしてばかりだとダガーママがだめになりますよ」
「よくその口でそれを言えますね……」
「愛でるのは還にしてください」
「全てがね……」
「酷すぎワロタ」
でも一理あるか。先輩として支えてあげることは大事だけど、いくらかわいいからって甘やかし過ぎはよくないのはそれはそうかも。
うん! これからはかわいさになんて負けないぞ!
ロリがなんだ! なんなら睨みつけることだってできちゃうし!
「ジーー」
「んー?」
「ジーーーーーー!」
「あー?(にぱー)」
をいがおいsjがおいうごいじゃせおいsふぉうおふぃうえういえ!?!?
「おおおお!? なに!?」
「ど、どうしたんですかママ!? すごい音が聞こえましたけど!?」
「し、失礼、椅子から落ちてしまいました」
「大丈夫ですか?」
「淡雪先輩、怪我無い?」
「ええ、体は大丈夫です。でも、大切なものを奪われてしまったかも知れませんね」
「あー?」
「きっとママのことですからストゼロのことですよ」
「ちげーよ心だよ。私の家からストゼロ補充しようとすんな」
コメント
:ダガーちゃん、まだまだ謎は深い子だ……
:これもうなんの枠か分かんねぇな
:いつになったら狩りに行くんだこの人たち……