VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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ひと狩り行こうぜ2-5

 そろそろ狩りが始まって五分ほど経過する。

 ある程度攻撃にも慣れてきたので、段々と狩り以外のことを気にすることができる余裕が出てきた。

 そしてそれに応じて……私は時間が流れれば流れるほどとあることにツッコミを入れたくて仕方がなくなってしまっていた。

 ……ああもう我慢できない!

 

「ダガーちゃん!」

「あー?」

「私貴方に言いたいことがあるんです」

「ママ、多分全く同じことを還も言いたくて仕方ないです」

「ええ!? なに!? 俺なんか変なプレイしちゃった!?」

 

 いや、ゲーム自体は問題ないどころかこのメンバーの中で一番うまいだろう。

 そこじゃなくて例の点だよ例の点! 君は往々にしてブレている部分があるでしょダガーちゃん!

 

「ダガーちゃん――厨二病キャラはどうしたんですか!」

「ほんとそれです」

「あー? ……ああ!?」

 

 そう、未だに配信が始まってからこの子が所謂厨二っぽい言動をした覚えが一度もない! 

 開幕こそ泣いたりなどあって仕方がないものがあっただろうが、狩りが始まってからもただのゲームを楽しんでるかわいい子なのよ! 一度気になり始めたらもうこっちも止まらないのよ! 厨二っぽいこと言うチャンスを逃すたびにズコーってなってるのよ!

 

「や、やば! 記憶喪失を守ることに集中し過ぎた!」

「なんてもの守ってんですか!」

「キャラブレすぎて残像できてますよ」

「今使っている武器もチャージアックスじゃないですか! 主観になってしまうかもしれませんがそれは味のあるかっこ良さなんですよ! 厨二なら太刀とか双剣とかあったでしょ!」

 

コメント

:あー……笑

:言われてみれば……

:そんな設定ありましたね、素で忘れてました

:還ちゃんがうまいこと言ってて草

:実はこの子普段の枠でも思ったほど厨二じゃないんだよなぁ

 

 そうそう! 今のコメント欄の人も言ってたけど、この子多分厨二というものの本質を知らない。配信見ててもたまーに思い出したようにそれっぽいこというだけだった印象だ。

 

「もしかして、あんまり厨二は前面に出さないスタイルにしたんですか?」

「そんなことない! 俺はかっこよくないとダメだから!」

「それならなんで……デビュー配信の開幕と締めはそれらしいこと言えてたじゃないですか」

「あれは運営さんの添削入ってたから……」

「はいそんなこと堂々と言わないの!」

「読み終わったとか言ってたのはそのせいですか。還よりよっぽど運営さんから甘やかされている……羨ましい……」

 

 そうだ、いい機会だしこのモンスターを使ってテストしてみよう。

 

「ダガーちゃん、さっきからこのモンスターが使っている、溶岩を纏った腕を地面に叩きつけることで爆発させて空を飛び、こちらに急襲してくる嘘だろって言いたくなる技あるでしょ。この技に厨二っぽい名前付けるとしたらどんな名前付けますか?」

「あー……じゃ、ジャンピング」

「はいもうだめ」

「はぁ!? 判断がはえーよ!」

「だってもうダサい! シンプルな名前でもメテオブレイクとかあるでしょ!」

「ママ、今の技の名前もう一回言ってもらえますか?」

「メテオブレイク!」

「もう一回」

「め、メテオ、ブレイク」

「もう一回。ぷくく……」

「……メテオブレイク(小声)」

「淡雪先輩だって恥ずかしくなってんじゃん!」

 

 仕方ないじゃん! 厨二は冷静になったら負けなんだよ! だから過去に自分が厨二病だったことを思い出すと今でも悶えちゃうんだよ!

 ああでも今のダガーちゃんを見ると止まらなくなってきた! 封印されたはずの過去の私が疼きだしている!

 

「あとこのゲームで登録してある名前! 『ダガー』じゃなくて両端に『†』を付けた『†ダガー†』とかの方がかっこいいでしょ」

「な、なるほどな!」

「かっこいいのにダサい不思議」

 

コメント

:出たよ伝統のやつ

:読み方ダガーダガーダガーになるじゃん、ニシローランドゴリラかよ

:これからは†ちゃんと呼ぼう

:そこが取られるのか……

 

「淡雪先輩の言う通りだ、俺はかっこよくなくちゃいけないからな……でもそんなぱっと浮かばないんだよなぁ」

「そんなの簡単な話です。ブリ〇チを読みなさい」

「ブリ〇チ? あの漫画の?」

「そうです。ブリ〇チは厨二の教科書ですから。あれを一気読みしようものならどんなに冷静な敏腕女性社長も次の日には隊首羽織に斬〇刀所持で通勤、あっという間に会社は尸〇界へと変貌です」

「倒産まっしぐら」

「おぉ! なんかすげぇ! 淡雪先輩めっちゃ厨二知ってる! 厨二師匠だ!」

「なんだその師匠は! バカにしてんのか!」

「厨二ママだ」

「ババ赤ちゃんは黙ってなさい!」

 

コメント

:あわちゃんやけに熱入ってんな

:元厨二としては中途半端な厨二には我慢ならなかったんやろなぁ

:厨二師匠はダサすぎて草

 

「なぁなぁ厨二師匠! もっと俺に厨二教えてくれ!」

「だから厨二師匠じゃない!」

「ぇ……だめなの……?」

「…………」

「(ウルウルウルウル)」

「せ、せめて師匠呼びにしなさい」

「(にぱー!!)はい! 師匠!」

「ねぇママ、還やられて一乙しちゃった(ウルウルウルウル)」

「は?」

「リスナーママの皆、これが格差社会ですよ」

 

 それからというもの、なぜかこの枠内どころか枠終了後も私はダガーちゃんに師匠と呼ばれるようになり、厨二関連を教えることになってしまったのだった。

 黒歴史だから極力思い出したくないのにどうして……どうして……。

 

コメント

:最近のあわちゃんって冗談抜きで母性あるよな

:面倒見がいい立派な先輩よ

:初期と比べると成長感じて目からストゼロ出ちゃう




ぶいでん5巻が今月16日に発売になります。
詳しくは活動報告の方にて!

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