VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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五期生3-2

『こほん! はい皆さん、おはようございます! 本日からこのライブオンにて皆さんの教師を務めさせていただく運びとなりました、「チュリリ先生」です! これから何卒よろしくお願いしますね!』

 

 おぁ……

 配信が始まるとまず目に入ったのは大きな黒板が目立つ背景であった。

 数秒後、ガラガラというスライド式ドアの開く音が右耳から鳴ったかと思うと、その方向から最後の新人と思わしきスーツを着たライバーさんがとことこと現れ、一つ咳ばらいをした後よく通るアナウンサーのような声でそう名乗った。

 以上の流れから推測するにこの空間は一般的な学校の教室の黒板前、そしてこの新人さんのキャラクターは――

 

「教師キャラなのですよ~!」

「そうだね、エロゲのサブヒロインでお馴染みの教師だね」

「お前それ絶対本人の前で言うなよ」

「分かってないなぁ淡雪君。サブだからこそ先生という立場に合った特別感が生まれてよかったりするんじゃないか。メインディッシュには出せない背徳の味がそこにはあるんだ」

 

 ……一理ある。悔しいから声には出さないけど。

 まぁエロゲ云々は置いておいて、教師、つまりは先生かー、そういえばライブオンにはまだ居なかったな。

 先生キャラいいよね! 私もアニメキャラで好きなの結構居るなー。

 ……うん、先生キャラ自体はとてもいいと思うんだよ、でもね……でもね……。

 元気な挨拶で誤魔化されていた部分が、黙って観察していると段々と気になって仕方がなくなってくる。

 あの……この人教師なんだよね……? なんでそんな超ド派手な髪の毛してるの? そしてなんで……なんで髪はそんなに派手で声も元気なのに目元にドデカイクマができてて瞳は完全に死んでるの!?

 

コメント

:お、おはようございます?

:先生……大丈夫ですか?

:目に光が無い……

:今この瞬間過労死して幽霊キャラとして再デビューしそうな新人出てきて草

:現代社会みたいな顔してますね

:もうやべーぞライくらいまで来てる

 

「不穏……あまりにも不穏なのですよ~」

「淡雪君、これもうだめなんじゃ?」

「いやまだだ! まだあきらめるな! 仕事に疲れてる先生なんて割と王道じゃないですか! 普段生徒の前では見せない弱い姿をギャップにすれば人気キャラ間違いなしってね!」 

 

 ……だとしてもやっぱりこの外見はやりすぎな気がするけど、私は全力で目を逸らすことにした。

 

『――とは言っても、これが初めましてなわけだから、いきなり名乗られても困っちゃうよね! というわけで、ここからチュリリ先生の自己紹介に入りたいと思います!』

 

 や、やめて! そんな目が笑っていない笑みを浮かべながら元気な声出さないで! 空元気みたいで痛々しく見えちゃうから!

 

『まず! 先生は実は皆さんと同じ地球人ではない! 宇宙からやってきた宇宙人なのです!』

 

 ……はい?

 

『あ、侵略しに来たとかじゃないから安心してね! あの~実は子供のころ乗っていた宇宙船が突然事故で大爆発が起こり墜落してしまいまして~……偶然備え付けの脱出ポッドに忍び込んで遊んでいた私以外の乗組員は恐らく全滅……私は生き残ったとはいえ爆発のあまりの衝撃に脱出ポッドも操作が利かなくなっちゃってて……そうして絶望して宇宙空間をさまよっていた私だったのだけど、なんと! 偶然この地球に辿り着いちゃったの! 以降はこの星で地球人に紛れながら暮らしているって流れね』

 

コメント

:壮絶過ぎワロタ

:平然と語っているのがなんか恐怖だ……

:キャラ濃いなー

:教師だけじゃ満足しないのがライブオン

:カカロ〇トオオオオオォォォォォーー!!!!

:人違いです

 

『名前も本当はもっと長いのだけど、この星の言語じゃチュリリ以外の部分はうまく発音できないの。髪も地球人とは違って派手で大変だったけど、なんとか生きてきたわ』

 

「なるほど、それならこの色んなカラーが入り混じっていて何色と形容できない長くてふわふわした髪も納得なのですよ~」

「あ、もしかしてあのクマや瞳も宇宙人だからってことじゃないかい?」

「ああ! そういうことですか! ナイス気づき! 聖様ゴミ屑!」

 

『本当に大変で、いつの間にかこんなくたびれた顔になっちゃいましたよ!』

 

「ほんっとうにまじゴミ屑」

「え、今最初からゴミ屑って言ってなかった? せめて一回目は天才とか言うシーンじゃないかい?」

「本当にお二人は仲がよろしいのですよ~」

 

コメント

:その顔は後天的なんかい……

:クマと目が死んでさえいなければかわいい系のお顔なのに……

:でもゆうてまだ普通

 

『さてさて! 辛気臭い話は終わりにして、次のお話は先生の担当教科についてです!』

 

 あ、担当教科とかちゃんとあるんだ。え、なんだろ、国語とか? いや宇宙人に国語教えられる地球人ってしっくりこないかも。

 うーん分からないなぁ。

 

『先生の担当科目は――「愛」です』

 

「あいらしいのですよ~」

「Iかー」

「アイですねー」

 

「「「…………愛?」」」

 

 え? あれ……え? これってもしかしてもう確定演出入ってる!?


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