VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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愛の授業3

「はい、それでは出欠もとれたところで早速授業の方を開始していきます。えーですがこれが皆さんにとっては最初の授業ということなので、最初に少しだけ時間を使い、先生が提唱する概念的愛が正しいことを分かってもらうために、皆さんの思う愛をあらゆる観点から徹底的に否定してマウントをとってやろうと思います。先生は匡さんのような説得なんて甘いことに一切興味がないから、再起不能になるくらいに叩きのめしてストレスの吐け口にしちゃいますね」

 

コメント

:本性だだ漏れですよ

:教師ってマウントとっていい職業なんだな

:ダメに決まってるだろ

:レスバする気満々じゃんこいつ

:ミヤウチィなら次のコマで負けてる

 

「はっ、先生をあんな世間知らずのお嬢様と一緒にしないことね! どうせここにいる皆さんも薄っぺらい愛しか知らない愚かな地球人だと思うし相手にもならないわ」

「母性はこの世で最も純粋な愛だよ!」

「主従関係こそ愛だって光は知ってるんだからな!」

「I L0VE STR」

「先生が言うのもおかしいけれど貴方たち愛の形拗らせ過ぎじゃない? 時間無いから無理やり進めてるけど本心は貴方たちがどうしてそうなったのか気になって仕方ないからね? さっき相手にもならないとか言ったけど先生は先生で貴方たちに恐怖してるんだからね?」

 

 ライブオンは自由な社風なもんで。

 

「まぁいいわ、それでは……そうね、一番最初に食って掛かってきたシオンさんの思う愛から否定しましょうか。シオンさんは母性こそ真実なる愛と言いたいのですか?」

「その通り! 母の愛に勝るものなどないんだよ!」

「はっ、先生ね、今の一瞬だけでコメント欄に火炎放射器を撒くような発言を山ほど思いついたわよ」

「ど、どういうこと?」

「母親、ひいては家族の話題ってのはそれだけ人の世においてデリケートってことよ。母性が真実の愛? はっ、ならなんで毎日のように虐待がニュースに上がるのよ? 純粋な愛ってのは生まれた環境によって享受できるか変わっていいものなの? 純粋なのは貴方の頭の方なんじゃないかしら? 少なくとも人の持つ母性が愛とは思えないわね」

「ムムム……」

「そんなものより虫などにみられる子を産むと死んでしまう生物に概念を見いだせる儚き家族愛について話さない?」

「ムムム?」

 

 マウントとったと思ったらそのまま上空通過していったぞこの人。

 

「……あと、さっきは皮肉っぽく言ったけど、純粋なことは良いことよ。子供は愛してあげなさいね」

「へ? あ、うん勿論」

 

 今度は優しく立ち上がらせたぞこの人。なにがしたいんだ……。

 

コメント

:え? なぜフォロー入れた?

:溢れ出る根は善人感

:根はというか、元はこの人も純粋やったんやろなって

:悪人になろうとしてるけどなり切れてない感

:なんか悲しくなってきた……

 

 家族関連は私も色々と辛い経験もしたから、ワンチャン先生の話に同意できるかもとか思ったけど、なんかそんなテンションでもなくなっちゃったよ……。

 

「さて、シオンさんは先生に屈したということで、次は光さんでも相手してあげましょうか」

「くっ……光ちゃん! 後は任せたよ!」

「おうよ!」

「光さんは真実の愛は主従関係にあると言いたいのですよね?」

「そうだ! 己を犠牲にして誰かに尽くす、これは愛が無ければ成立しないことだよ!」

「はっ、分かってないわね! かわいい動物の動画で動物の心情に勝手な想像で字幕を付ける投稿者並みに分かってないわ!」

「……え? 急にどうしたの? というかそれになんの問題が?」

「こちとら人間が見たくないから癒しを求めて動物の動画見てるのに、字幕付けられたら人の影が見えて一気に萎えるのよ。語尾にワンとかにゃんとか付いてると吐き気がするわ。特に明らかに動物がそう思ってなさそうなのに人の理想の押し付けみたいな字幕が付いていると怒りすら感じてあーもう本当に許せない。ブツブツブツブツ……」

「え? え?」

 

 話の脈略が無さ過ぎる……これもうただ愚痴りたかっただけだろ……。

 

コメント

:いつまで文句言うんだよwww

:動物字幕が嫌は普通に分かってしまう

:子供のころはなにも感じなかったのにな……これが大人になるってことなんかな……

:そういう人もいるんやなー

:分かるけど今は光ちゃんと話せ!

 

「……こほん、失礼しました。えーそれで? 主従関係でしたっけ? 光さんは仕える側よね、それじゃあご主人様は誰なの?」

「勿論シュワちゃんさ!」

「淡雪さん?」

「知らないっす、うっすうっす」

「光さん?」

「ぁぁ……そっけないのも……いぃ……(ビクンビクン)」

「これ先生が言うまでもなく真実の愛じゃあなくない?」

「間違いないっす、うっすうっす」

 

 これは光ちゃんの為にも先生に同意せざるを得ないね。あとビクンビクンすんな! 主従関係とか言って本当はマゾの快感を得たいだけなの分かってるんだからな!

 

「光さん。主従関係の愛に関しては立場の違いとか被虐心とか色々言いたいことはあるのだけど、双方の利害が一致していない時点で真実の愛と言うのは無理があるんじゃないかな」

 

 あまりに正論過ぎる。

 

「ちっちっち、シュワちゃんは光を気持ちよくするためにこんな態度をしてくれていることに気が付かないとは、先生もまだまだだね!」

「そうなんですか淡雪さん?」

「むしろ私の方がいじめられてる気分だど。助けてほしいど」

「シュワちゃん! 助けてほしいってことはそれだけストレスが溜まってるってことだよね! つまりこの前みたいにまた光のこと踏んでくれるってことだよね!! お誘いしてくれてるってことなんだよね!!! 光には分かるよ!!!!」

「踏んでくれる……? この前みたいにまた……? 淡雪さん、この後残りなさい」

「こういうことだど。コスパが良くて都合もいいドMは無敵なんだよなぁ。グビグビグビ……」

 

コメント

:草

:光ちゃんも大人になったね(泣)

:これはストゼロも飲みたくなりますわ

:心なしかシュワちゃんの飲み姿に哀愁が…… 

:あれ? もしかして先生ってツッコミ枠?

 

「はぁ、光さんも相手になりませんでしたね」

「くっ、シュワちゃん! 光の屍を踏み潰してゆけ!」

「避けていくどー」

 

 うっし、やったるどー!


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