VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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バレンタイン企画チョコ作り対決4

 私が生クリームとチョコを合わせている時、晴先輩は今度はネコマ先輩の手元にカメラを向けていた。

 

「ネコマーはなーにつくーるの!」

「お? 気になるか? 晴先輩に喜んで貰うために気合い入れて作ってるんだぞ!」

「マジ!? えー私の為とか嬉しくなっちゃうよー!」

「日々の感謝を込めてってやつだぞ! ……でも、困ったことがあってな……」

「お? どしたよ?」

「ネコマは猫だからチョコが食べられないんだ。だから人間の晴先輩の口に合うものが出来るか分からなくてな……」

「え、急に猫設定強調してきてどうしたの? いつも全く気にしないのに……」

「そんなネコマの作るチョコでも食べてくれるか?」

「えぇぇ? ま、まぁ勿論私の為に作ってくれたものなら喜んで食べるけど?」

「そうかそうか! じゃあ溶かしたチョコにこのキャットフードを入れちゃうぞー!」

「ちょぉぉぉおおおっと待ったああああああぁぁぁ!?!?」

 

 晴先輩の大声に何事かと驚き顔を向けると、そこではネコマ先輩が湯煎で溶かしたチョコにキャットフード、その中でも所謂カリカリと呼ばれる物をドバドバと投入していた。

 

「ななななにやってんのネコマー!?」

「にゃははは! ネコマのお気に入りフードを晴先輩にも食べて欲しくてな!」

「ネコマーがそんなの食べてるとこ見たことないし、そもそも私は人間だよ!」

「でもさっき食べてくれるって言ったよな? 嘘ついたのか?」

「いや、だってこうなるとは思わなくて!」

「動物を騙すとか動物虐待だぞ。一期生がそんなことしたらライブオン全体の体裁に大きな悪影響を及ぼすぞ」

「嫌な脅し方してくるなこいつ!」

 

 慌てて止めようとする晴先輩、だがネコマ先輩はむしろその様子を見て楽しんでいるようだった。

 やがて晴先輩はその真意に気が付いたようで、ネコマ先輩を睨みつけ始める。

 

「ネコマー! さっき普段はしない猫アピールしてたのはこのためか! 私に牙を剥こうってんだな!」

「にゃはははは! 気付くのが遅いぞ天才さんよー! ネコマはお菓子作りなんてさっぱりだからな! 料理下手を露見して笑われるくらいならゲテモノ食わせて噛みついてやんぜ!」

「くっ! どうしてしまったんだネコマー! お前はそんな卑屈な性格じゃなかったはずだ!」

「晴先輩、これはな、復讐なんだよ」

「ふ、復讐? な、なんのだ? ま、まさか私は知らぬうちにネコマーになにか酷いことを――」

「ス〇ムダ〇ク」

「へ?」

「前評判からきっとネコマ好みになると思ってたス〇ムダ〇クの映画が普通にめっちゃ面白かったことに対する復讐なんだよおおおぉぉーー!!!!」

「私全く関係ねえええええぇぇぇーー!!!!!!!!」

 

 完全なる八つ当たりにもかかわらずネコマ先輩は涙ながらに言葉を続ける。

 

「薄々ネコマも感付いてたんだよ! あの天才原作者様が監督までやって変な物って出来るか? って思ってたんだよ! なんだよあれ蓋を開けてみればめっちゃ名作じゃんか! 映画館で周りが感動してる中1人宇宙猫みたいな顔だったネコマの気持ちが分かるか!?」

「いや知らん知らん知らん! クソ映画は嫌いじゃないけど、あの映画は私原作ファンで感動しながら見てた側だし!」

「きっとこれも最近不憫キャラなんて言われているせいなんだ! だからここで晴先輩に不憫を押し付けてやるんだぞ!」

「ぇぇぇ…………」

 

コメント

:そうきたかwww

:原作知ってる前提ではあったけど良かったよな

:待ち望んでた試合のアニメ化だからね

:まぁ聖様が来てたら意味深な形のチョコバナナとか出て来ただろうからまだましでしょ ¥500

<宇月聖>:チ〇コバナナってな

:うわっ

:刑務所に帰れ

<宇月聖>:まだ捕まってないよ?

:予定はあるのかよ

:シオンママが来てたら乳首にチョコ塗って吸えって言い出すぞ

:あり寄りのありありのありじゃん

 

 はたから聞いていてもここまで同情できない供述も珍しい……。

 

「あれ?」

 

 ふと気になる点が思い当たって私も会話に混ざる。

 

「でも晴先輩コオロギはなんの抵抗もなく食べていましたよね? キャットフードくらい良くないですか?」

「えー? でもあのコオロギは人間が食べる用のやつだよ? キャットフードは猫が食べるものじゃん!」

「?? 味の問題とかじゃないんですか?」

「だって猫が食べる用の物を人間が食べるのはおかしいじゃん。人間用のキャットフードとかならいいけど」

「???? ダガーちゃんのカカオ豆よりも?」

「カカオ豆くらいならいいよ、美味しくは無いだろうけど人間の食べ物だし」

 

 なんだろう、天才独特の感性なのだろうか? とりあえずコオロギやカカオ豆よりは嫌みたいだ。

 

「というか、それなら最初から審査員なんてやらなきゃ良かったのでは……?」

「一期生だけ企画丸ごと仲間外れはやーだ!」

「さいですか……」

「まぁ心配すんなって、いくらカリカリでもチョコでコーティングして冷やすんだから食えなくはないだろ」

「そうかなー?」

「それにな晴先輩。なんとこのキャットフードはな――」

「なんと――?」

「人間でも食べられる原料で作られている、つまりはヒューマングレードなんだぞ!」

「ヒューマングレードでも人間用ってわけじゃないからな!」

 

 そうツッコミを入れた後、諦めが着いたのか息を整え写真撮影へと戻った晴先輩。

 

「まぁ企画に協力してもらってる身だから許す! でもさぁ、さっきのカクテルに続きこれも商品化が不可能だよね。なんでカカオ豆が中堅にまで食い込んできてるのか……」

「おい大変だ! ダガーちゃんが今のを聞いて嬉しくなったのか笑顔でフライパン振り始めたぞ!」

「コラー! 豆が飛び散ってるからやめなさーい!」

 

 調理の進みが遅い……。


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