VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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ラスボス討伐5

「いいか還ちゃん、今日で決めるぞ」

「はい」

 

 私の決意に、隣の還ちゃんが頷いてくれる。

 そう、隣だ。一度くらいは直接会いたいよねということで、今日は私の家に還ちゃんが来てくれてのオフコラボとなった。

 決着の時は近い。今日で決めなければ私がやられる、そんな予感がする。

 今日の私は気合の入り方が違うぞ――

 いざ、ゲームスタート!

 

「実はママに差し入れを持ってきました」

「お、マジー?」

「こちら幼児プレイセットです」

「差し入れるな抜き出せ」

 

 やけに大荷物だったからなんだと思ったらそういうことかよ。

 

「還ちゃん。さっき私今日で決めるって言ったよね? 還ちゃんもはいって言ったよね?」

「はい」

「じゃあなんでゲームの邪魔にしかならないもの持ってきてるのかな?」

「ママをキメる為です」

「帰りなさい」

「じゃあこのストゼロ缶にレモンの種を入れて作った、ママ用ガラガラもいりませんか?」

「なんだちゃんとした差し入れもあるんじゃん! おーすっげぇ! めっちゃギラギラした音鳴る! ありがてぇー!」

 

コメント

:出オチ

:還ちゃんのオフは特に破壊力凄そう

:ちゃんとした……?

 

「ママがガラガラに気を取られているその隙に懐に潜り込めば! 桃源郷の完成!」

「あ、こら抱き着くな!」

「ママはそのままガラガラを振って楽しんでいてください! それだけで還は気持ちよくなれるんです!」

「それは赤ちゃんを楽しませる為にママがガラガラ振ってるんじゃなくて、ママがガラガラを振って楽しむ姿を赤ちゃんが見ているだけだぞ!」

「ママみが摂取出来るならそれでもいい!」

 

 私に縋りついてくる、顔も体も成熟している、明らかに私より年上の女性。

 この人が私をママって呼んでくるんだからなんだかな……せめて自称赤ちゃんヤバ女じゃなければ、今日までこんな複雑な心境にならなかったかもしれないのに……。

 

「せっかく会ったんですし、このままおっぱい吸う約束もやっちゃいましょう!」

「嫌に決まってんだろ! あれは10000日後!」

「還暦間近のBBAに乳吸われるのよりアラサー女に乳吸われる方がまだいいでしょう!」

「――――一理あるな」

「では失礼します」

「いややっぱダメ! なんか大切なモノを失う気がする! 絶対に私嫌な顔しちゃうから!」

「嫌パイも還いけます!」

「なんだそれ?」

「嫌な顔されながらオッパイ吸わせてほしいの略です」

「――――一理あるな」

「じゃあいいですね?」

「でも私も吸われる方より吸いたい!」

「自分の片方空くんだからそれ吸えばいいでしょう!」

「なんで嫌な顔しながら自分の乳首吸わないといけないんだよ!」

 

コメント

:還ちゃんウッキウキじゃん

:久々のオフコラボで楽しそう

:シュワちゃんが性欲に負けそうになるせいでヤラせてくれそうでヤラせてくれないママになってる

:そんなママ嫌だ……

:嫌な顔しながら自分の乳首吸いたい

:ごめんなさいそれはちょっと理解できないです

:なにこの2人の関係……

:現実ってお堅いのね、ライブオンじゃ全然アリよ

:ライブオンが掴めないレベルで柔らかすぎるだけです

 

「全く、応援しに来てくれたんじゃないんかいな!」

「還が来てくれただけでバフかかってますよ」

「天才言ってた私が言えることじゃないかもだけど、段々と自尊心がすごくなってるなこの子……」

「ママのおかげで毎日が楽しいです」

「はいはいさいですか」

 

 ドタバタしてばかりもいられないので、ゲームを続けていく。ちなみに本当にお菓子の差し入れは持ってきてくれていた、ありがてぇ!

 だがそれからも、還ちゃんは色々なサポートという名のちょっかいをしかけてきた。

 真剣勝負中とは思えないドタバタ模様だが、これがあるおかげで相変わらずスイカ2つには届きそうで届かない中、ゲームへのモチベーションを持ち続けられている気もする。

 やはり持久戦にはこのくらいがちょうどいいのだろう。開戦当初の思惑通りだ。

 やがて時間的に耐久と呼べる範囲に入っても、構わずゲームを続ける。2人ならそれも苦にならなかった。

 そして――降り注ぐ果物達の中に偶然紛れ込むように、その時はやってきた――

 

「還ちゃん――これいけるんじゃね?」

「スイカ一つに消化不良になってしまった果物はほぼ無し。今までで最良の状況ですね」

「ちょい集中するわ」

「はい」

 

 私がそう言うと、すっと絡んでくるのを止める還ちゃん。その見極めは、彼女がライブオンに入り、人とのコミュニケーションをとるようになったことによる成長だったのかもしれない。

 凡ミスへの細心の注意を払い、じっくりと果物を合成していく。

 

コメント

:あるぞこれ

:ブドウピンポイントで落としてくるのほんとすごい

:頑張れー!

:うまい

:いきなりストゼロ落ちてこない限りいけそう

 

 リンゴ二つがナシに、ナシ二つがモモに、モモ二つがパインに、パイン二つがメロンに、そして――

 

「いっけえええええぇぇぇーー!!!!」

 

 メロン二つが合成され、それが事前に作ってあったスイカと接触した時、画面には今までの窮屈さが嘘のような開放感が広がっていた。

 晴先輩からのクリアの報告はまだ無し。

 つまり――

 

「よっしゃあああああぁぁ私の勝ちいいいぃぃぃーー!!!! 還ちゃん分かってるな!? 私から行くぞ!!」

「はい!!」

 

 裏で耐久配信していた晴先輩に早急に電話を掛ける。

 繋がったらやることは一つ!

 

「うぇーい晴先輩見てる~?ww」

「今日は晴先輩に~重大発表がありまーす!www」

「晴先輩が必死に作ろうとしていたスイカ2つぅ!w」

「なんとぉ!w」

「「こっちが先に作っちゃいましたー!!wwww」」

 

コメント

:こいつらwww ¥10000

:計画してたな?

:恐れ多いとはなんだったのか ¥5000

:素直に祝福出来ないんだわwww ¥220

:じゃあなんすか、晴先輩は完全敗北したってことっすか

:あっちももうちょっとだったんだけどなー!

 

 スピーカーから晴先輩の言葉にならない絶叫が聞こえてくる。愉悦なり。

 

「ふぃ~勝った勝ったー! あの晴先輩に勝ったとか一生自慢できるでしょ! めっちゃ快感だわ!」

「これも還という子供がいたからですね」

「またそんなこと言って………………いや、まぁそっか」

「え? ママ?」

 

 いつもなら否定するなり適当にボケて流すなりする流れだったが、今回の私は違っていた。

 

「一緒に活動してきてさ、意味不明な関係性ながらも交流を深めてきて、なんだかんだ結構これ気に入っててさ。この前のシオンママの時なんかもオチに使わせてもらったりしたし、今回も正直還ちゃんがいてくれなかったら負けてた可能性が十分あったと思うんだよ。だからさ、なんつーかー、あー……もう完全に認めてもいいのかなって」

「完全に……認める……?」

「うん。還ちゃんが子供でよかったってこと」

 

 照れくさくなりながらも、こんなこと今を逃すと次いつ言えるタイミングが来るか分からないので、はっきりと言葉にして伝える。

 これ聞いた還ちゃんは、きっと調子に乗って、私に今までにないくらいのちょっかいを掛けてくるようになるだろうが、まぁそれくらいは今回協力してくれたお礼として受け入れようじゃないか。

 まぁ甘えさせてやるかどうかは別だがな! 甘いだけが正しい親じゃないから! 少なくとも今乳は吸わせてやらん!

 そんなことを考えていると、還ちゃんの頬に光るものが伝って落ちていった。

 ――――へ?

 

「ぐすっ、ぅぅぅ……」

 

 ――――泣いてる…………泣いてる!?!?

 

「ちょ、ちょっと還ちゃん!? ど、どどどどうした!?!?」

 

 あまりに突然の予想外な光景に、動転してしまう。

 あたふたと戸惑う私に、還ちゃんはこう言った。

 

「だって……それって、あの初めて会った日の別れ際に言ったことを、還は果たせたってことですよね?」

「ぇ?」

「還はママに娘が還でよかったと言われるような存在になってみせますって、あの日に」

 

 あ、確かに事務所で倒れている還ちゃんを見つけた初対面のあの日……別れ際にそんなことを言われた気がする。

 でも……あのぉ……それさ…………結構昔の話だから……その……そのぉ!

 

「ごめん還ちゃん! それ言われるまで忘れてた! 普通になんも考えずに言っちゃった!」

「う゛う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!」

「ああぁー!? ごめんごめんごめん! まじごめん! こんなところまでダガーちゃんの師匠でごめん!!」

「いえ……ぐすん……それって、何も考えずに出た……つまり還を気遣ったわけじゃなく、本心から言ってくれた言葉ってことですよね……?」

「ほぇ? あ、あぁうん、そうなるのかな?」

「びええええええええええぇぇぇぇぇぇーー!!!!!!」

「ちょちょちょちょちょ!?!? え、どうする? この状況どうすればいい!? と、とりあえず泣き止んで貰わないとか!! あ、そうださっきのガラガラ! ほーら還ちゃーん? ママでちゅよー!(ガラガラガラガラ)」

「うわあああああああぁぁぁんん初めてママが赤ちゃんらしく扱ってくれたああああぁぁぁぁーーーー!!!!!!!!」

「いやあああぁぁーーもう誰か助けてえええええええぇぇぇぇーーーー!!!!!!!!」 

 

コメント

:何やってんだこいつら……

:聞く限りめっちゃ大事なことなのに普通に忘れてて草

:あのコラボって相当前だから多少はね……

:四期生デビューしたばっかの頃の話か笑

:泣き止ませるどころか次々と還ちゃんの涙腺破壊してるのホントバカ

:オメ? ¥30000

:本当に今日でママキメることになるとは思わなんだ

:出産祝い ¥50000

:推し〇子(ライブオンedition) 

:君は完璧で究極の芸人! ¥10000

:これは切り抜かれますわ

:切り抜かれすぎて微塵切り状態なんよこの人

:だからさっき煽りまくった後だから祝福しにくいんだって ¥22000

:ハレルンが尚更発狂してるんですが……

:とりあえず通話切ってやれw

:これもう実質セル戦だろ

:てぇてぇ

:えっと、これはハッピーエンドでいいんだよね?

:ライブオンエンドでいいと思う

 

「ママ。きっと今日は、還の人生で最も幸せな日です」

「そ、そっか……えっと……よかったね?」

「はい」

 

 私の予想に反し、その後はずっとエモーショナルな状態になってしまった還ちゃん。

 こんな時に締まらない私でなんだか申し訳ないけど……勝負には勝てたし、何より、我が子が幸せそうなら、まぁこれでいっか。そう思ったのだった。

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