VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
四期生の鮮烈なデビューから約一週間が経った。
三人は個性を生かしてもうすでに期待通りの人気を集めているようだ。
私も先輩として負けないよう今日もパソコンの前で配信を開始するのだが……
「……はい、今日はあんまりよくない淡雪が降ってますねー」
うん、かつてここまでテンションの低い挨拶をしたことはないと断言できるだろう。
私だって自分で言うのもなんだがお金を稼いでいる以上プロの配信者だ、リスナーの皆に配信を楽しんでもらえるためなら全力を尽くしたいと思っている。
でも、でもだよ?
「はっ! 相馬有素、ただいま参上したのであります!」
いきなり目の前に現れた爆発する気満々のバカでかい爆弾を見て、果たして笑顔でいることはできますか?
コメント
:きたきたきたきた!! ¥3000
:このコラボを見るために生きてきた
:いいコラボしてんねぇ!
:あわちゃんのテンションの低さに草草の草
:そりゃあ自己紹介で喉ち〇こ欲しいです発言した奴が隣にいたらこうなるわ ¥300
:有素ちゃんはシュワちゃんが今までライバー達にセクハラかましまくってたカウンターやで、たっぷり楽しんでな!
:ヤラれたらヤリかえす、倍返しだ!
:もっとまともなもので返して、どうぞ
:てかよくコラボOKしたなwww
「いやそれはまぁ先輩なので応えてあげますよ、勿論」
当然ながらこのコラボは有素ちゃんから提案してきたものだ。
感想としてなにが起きるか分からないから気を引き締めねばとも思ったが、でも断るのは自分の中じゃNOだ。
ただでさえ有素ちゃんはデビューしたてで実生活も右往左往しているだろう。自分も昔そういった経験をしたことがあるため、先輩としてサポートしてあげたい。
更に言えばもしここでコラボを断ったりなんてしたら、ショックを受けて有素ちゃんがこれから自信をもって前に出ていくことが出来なくなってしまうかもしれない。それだけは避けないと。
だからコラボすることは全然いいんだよ、いいんだけどね。
でもかたったーのDMにコラボの誘いだけで3000文字書くのはやめようか!
最初見たときびっくりしたよ、小説でも書いたのかと思ったわ。
確かに本日はお日柄もよくとか色々書いてあって丁寧だったけど、流石に長い!
前置きとか特に長くて、コラボの誘いが本題だと気づいた時にはもう1600字くらい読んじゃったよ。
喉ち〇こ下さいとか言われるのかと思って恐怖しながら1600字も読んだ私の身にもなってくれ……
「いやぁ本日は私にとって人生最良の日であります! 何といってもあの神様である淡雪殿とコラボなのでありますよ!」
「いつの間に私は神様になってたのかな?」
「ストゼロの神様であります!」
「罪深い神ですねおい、せめて他になにかないの?」
「下ネタの神、嘔吐の神、性癖の神などがあります! どれでも名乗ってどうぞであります!」
「頭の中でラグナロクおきてませんその神様?」
コメント
:おまえじゃい!
:おまえじゃい!
:ラグナロクということはライブオンは神話の中の世界だった……?
:確かに人間界に生きてきたとは思えない逸材ばっかだしな
:ゼウス=あわちゃん説、根拠は女が好きだから
:過去最高に適当な根拠に草
:全痴全煩悩の神になってしまうからやめて差し上げろ
「さて、前置きはこれくらいにして、今日は有素ちゃんの提案で企画を全て任せています。まだ私にもどんな企画をするのか知らされていない状況ですね。正直見えている地雷を踏みに行くようなものな気がしますが、有素ちゃん企画の説明をお願いします」
「…………」
「あれ? 有素ちゃん?」
「少し待ってくださいであります、今ボイスレコーダーで私の名前を呼んでくれている淡雪殿のボイスを収録しているので」
「え、なにやってるの!? 一体なんのために!?」
「使うためであります!」
「何に!? 何に使うつもりなの!?」
「ナニに使うつもりであります!」
「理解できてしまう自分を殴りたい今日この頃」
コメント
:有素ちゃんぶっ飛ばしてんなぁ……
:そりゃあ自分の配信なのに自分よりあわちゃんのこと話す時間の方が多い人ですから
:有素ちゃんの配信みたけどシュワちゃんの声をHz単位で分析し始めたときは草しか生えなかった
:歌枠ではアイドルだけあってかっこよかったのに……
:多種多彩な表現を同じ音で表現できる、日本語は美しい
「はぁ、はぁ、も、もうこれ以上前置きに時間かけるわけにもいかないからいいです! 企画の説明早くしてね!」
「了解であります! 今回の企画はずばり! 『チキチキ! 二人で伝説のシュワちゃん誕生の瞬間を見てみよう!』であります!」