VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
「よし! それじゃあお待たせしました! 本題の富士竜アイランドでなにがあったか振り返っていきましょう!」
「「おおおっ!」」
予定通り目的地に入園を完了した直後、そのスケール感に圧倒され感嘆の声を二人揃って漏らしてしまった。
さっきも言った通り私はこれが初めて訪れたわけではないのだが、やはりこの規模の大きさは心動かされるものがある。
富士竜アイランドだけの話ではないが、大人気テーマパークってどれも膨大な敷地を使って一つの世界を作り上げているのがすごいよね。
こんな楽しそうな今までの日常とはかけ離れた異世界を前にしては、年代問わず心躍ってしまうものだろう。
東京暮らしで人ごみにある程度慣れている私ではあるが、それでもびっくりするほどの人数がウキウキとした表情で歩き回っている。
「流石の人気ですねぇ」
「駅でも思ったけど、世界ってこんなに人がいたのね」
「今度コミケでも行ってみます? 多分人間の繁殖力に恐怖を覚えますよ?」
「そうなの? 私コミケは詳しくないのよね」
「いいですかよく聞いてください、コミケとは一つのS〇Xの形なんです。来場者が精子でお目当ての品が卵子。無数にも感じる勇者たちが共通の目的のために我先にと歩みを進める姿は最早生命の神秘を体現していると言ってもいいでしょう」
「お外でなに変なこと語り出してるの!」
し、しまった! どうも賑やかな周りにつられて私の清楚フィルターが薄くなっていたようだ、気を付けねば。
「すみませんすみません。そうですね、初めにとりあえず映えるところで写真でも撮りません?」
「いいわよ。ふふっ、女友達と遊園地――私は今限りなく陽の人間に近づいているわ!」
なんだかよく分からないこといってるけど、まぁみちるちゃんも喜んでくれてるみたいでよかったよかった。
お、jkと思わしき6人組発見! 昔を思い出すなぁ。あの頃は就職の闇も知らずに純粋だった……
「気を付けて雪ちゃん! あの子たちは私たちより陽キャ指数が高いわ! 避けて通るわよ!」
「みちるちゃん何を警戒してるの? 確かにここはアイランドって名前だけどバトロワをしてるわけじゃないんだよ?」
相変わらずのコミュ障ムーブをかましてビビるみちるちゃんの手を引き、記念写真も撮り終わったのでいよいよどのアトラクションに乗ろうかという話になったのだが。
「それはもうFUJISIMAでしょ!」
「え、一発目から!?」
FUJISIMA――富士竜アイランドが誇る巨大ジェットコースターだ。
建造されてからわりと長らく経つのだが、そのクオリティと絶叫マシーンの名にふさわしい怖さは未だに世界のジェットコースターシーンをリードしている。
確かに絶叫系が有名でもあるこの富士竜アイランドだがそんなものを初っ端から選ぶとは、意外と絶叫系とか好きだったりするのかな?
まぁ元々富士竜に来た以上乗りたいとは思ってたから全然いいんだけどね。
覚悟を決めていくどー!
「うひゃー……」
焦らすようにゆっくり坂を上るコースターに揺られながら、もうすぐ訪れる恐怖に思わず冷や汗が出る。
私絶叫系は人並みだからわくわくと恐怖がいい具合に心の中で拮抗している感じだ。
景色は文句なしに美しいのだが、高すぎてそれどころじゃないよ……
……そろそろ来るかな。
「雪ちゃん」
「ん?」
いよいよジェットコースター本領発揮の寸前のところで、ずっと無言だった隣に座るみちるちゃんに声をかけられた。
「だじゅげで(たすけて)」
震える声でそう言った彼女の顔は……そう、まるで地雷を踏んだことに気づいて絶望と共に一切の身動きがとれなくなった兵士のようだった――
「「きゃああああああぁぁぁぁ!!!!」」
「「あははははは!!!!」」
FUJISIMA一周が終わりコースターから降りた後私たちは、お互いのぐでぇっとした様子を見て思わず二人そろって吹き出してしまっていた。
「みちるちゃん普通に絶叫系よわよわじゃん! なんでこれ選んだの?」
「私の事をコミュ障陰キャだと断言してる数少ない知人達に、乗ったことをイキりまくって見返してやろうかと思ったのよ!」
「そんなことやってるから言われるんだと思うよ……」
「いやぁでも実際乗ってみるとやばかったわね……少しだけ嘔吐しながら天に召される未来が見えたわ」
「ゲロの川を渡りかけたんだね。あのスピードの中吐くと綺麗な川が架かりそうだし」
「天の川みたいに言わないの! もう、テンション上がって第二人格が見えてきてるわよ」
「「あはは!」」
一回アトラクションに乗って気分が完全に遊園地モードに切り替わったのかもしれないな。二人とも声の大きさが上がりどこか童心に戻った様子からテンションが上がっているのが分かる。
いいねいいね、遊園地もなにもかも楽しんだもの勝ちだ、この調子でいこう!
とはいえ……
「流石に開幕2連続絶叫系はやめておきましょうか」
「そうね、何か落ち着いたものでも挟みましょう」
「それなら……コーヒーカップでもどうです?」
「いいわね! さっそく行きましょう」
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