IS −インフィニット・ストラトス− 蒼の魔神 作:ラナ・テスタメント
これを二回行動で、しかもマップ兵器(射程50)付き……そりゃトラウマになるよなぁと(笑)
そんなラスボスが僕書きたいです……と言う第十話。今回シリアスブレイクも大概なので、お気をつけ下さい。コーヒーは大変危険です。ではではー。
それは、イングラムがその世界に現れる直前の出来事。ネオ・グランゾンの破壊。そしてシュウ・シラカワの死亡と言う形を持って、その存在は世界に干渉する術を失った。
サーヴァ・ヴォルクルス。
異世界、ラ・ギアスにおいて破壊神と呼ばれる存在である。シュウの語る所からすると、ヒンドゥー教に置けるシヴァ神と同一の存在。
そして、”負の無限力”そのものである負の意思からなる思念の集積体であった。
しかし、その身は復活する事は叶わずただ漂い続ける――彼の存在の企み。地上世界人類を殺戮し尽くす事によって、その魂を贄として蘇ると言う目論みが潰えたからだ。
ハガネ、ヒリュウ改の戦力。そしてシュウ本人の意思によって。
本来のネオ・グランゾン――ヴォルクルスの力を憑依(ポゼッション)させて変質した真なるグランゾンの力を持ってすれば、ハガネ、ヒリュウ改の戦力なぞ簡単に蹴散らす事が可能な力があった筈だ。……だが、何故か彼等の前に立ち塞がったネオ・グランゾンにそこまでの力は無かったのである。
誰の仕業か――言うまでも無い、シュウの所業であった。よりにもよって、ネオ・グランゾンと化した時点でヴォルクルスと契約している状態では出力を半分以下に抑えられるように仕掛けが施されていたのである。
結果、ネオ・グランゾンは墜され、シュウは死亡した――”本人の望み通り”に。
そこに何の意味があったか、ヴォルクルスは知らない。興味もない。
ただ自身の復活が遠退いた事だけは確かであった。
邪神官ルオゾール・ゾラン・ロイエルはラ・ギアスから動かせない。サフィーネ・グレイスもまた同様。
ネオ・グランゾンに宿っていた自分もまた、本来のヴォルクルス、その分身の一つでしか無い。
そして分身である以上、寄り代を失った身では世界に対して何らアクションを起こせないのだ。
もはや何も出来ず消えるしか無いのか――だが。
《……ほぅ、また面白い存在が現れたものだ》
……?
声が、霊体である自分へと届いた。しわがれた、老人のような声が。
次元の狭間にて存在出来る生命体は存在しない筈である――だが、その存在は平然とそこに居た。
《最初は”霊帝を失った『神殿』”が、先程は”負の無限力を失った『暗黒の英知』”が。……そして、”寄り代を失った『破壊神の思念』”が、ここに。フフフ……まさか因果地平の彼方に来て、ようやく全ての因子を揃える事が出来たとは、これも皮肉な事だな》
声は笑う――だが、ヴォルクルスの思念はその笑いの意味を理解出来ない。声は何をしようと言うのか、やがて声は実像を顕す。
《『神殿』を、ここに器とし――》
顕れたのは、ヒトカタであった。
黒い異形のヒトカタ。細長い首と四肢を持ち、背中から伸びる翼は複数の節がある。そこから、灰色にうごめくぼろ布のような翼幕が広がっていた。
それを人はこう言う、”ケイサル・エフェス”と――。
《『暗黒の英知』の世界を見透かす”暗破眼”と、超高性能自律型霊子演算装置”開明脳”を――》
続いて、ケイサル・エフェスの頭が消し飛ぶ。と、そこから新たな頭部が生えた。
その頭を見る者が見れば、こう言っただろう。”ダーク・ブレイン”と。
《そして開明脳に、『破壊神の思念』を――》
さらにダーク・ブレインの脳に先程のヴォルクルスの思念が宿る。目が光を得た。暗い暗い、光を! そして!
《――最後に我が悲願にして研究成果、限定因果律操作装置(クロスゲート・パラダイム・システム)を! ……フ、フフフ! ついに私は手に入れた……魔王の器を、因果律を見透かす目と計算し尽くせる演算装置を、そして数多の怨念からなる負の無限力を! 私は、ついに成ったのだ……! 神を超える神! ”真なる超神に”! そう――私は!》
声は叫ぶ! 誰よりも早くケイサル・エフェスの存在に気付き、彼のものを超える存在となるべく暗躍し、数多の生命を弄び、果ては運命すらをも手中に収めんとした男――それ故に、因果地平へと飛ばされた男。
いついかなる世界においても、イングラム・プリスケンの宿敵たる存在。
彼は――!
《真神(しんじん)……! ”ユーゼス・ゴッツオ!” フフフ、ハハハハハハッ!》
ユーゼス・ゴッツオ。
神となるべく暗躍した男が、偶然とは言え全ての要素を手に入れ、真なる神として世界に再誕したのであった――。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
……と、こんな訳です。
「…………」
IS学園近くにある橋の下――実質上のホームレスとなった彼は、最近専らここで居を構えているのである――ダンボールの、ではあるが。
ともあれ、イングラムは何故か自分に憑依していたシュウから事情を聞いて頭を抱えた。
最初は破壊神ヴォルクルスが自らの復活の為に、この世界へ介入したのだと思っていたのだが……まさか、奴がここでも絡んで来ていたとは。
ユーゼス・ゴッツオ、あの男が。
……皮肉な事です。貴方とユーゼスの縁は切っても切れないようですね。
「……それは今はどうでもいい。問題は奴が手に入れたものだ」
ケイサル・エフェス――正確には、その器だが――それはともかく、アレを手に入れ、さらにはラプラス・デモンズ・コンピュータの代わりと成り得る暗破眼と開明脳を。
とどめとばかりに破壊神ヴォルクルスの思念を解明脳に封入したと来た。
これで奴は、クロスゲート・パラダイム・システムを完全な形で使用出来る。因果律をも自由に操作し得る存在となった訳だ。
まさしく最悪の事態である。この世界の危機に留まらない、あらゆる平行世界にとっての危機と言えた――しかし。
「何故、奴は動かない……? この世界にもヴォルクルス自身の分身か、デモンズゴーレムしか寄越さないが?」
イングラムは眉を潜めて、シュウに問うた。そこだけが不可解なのである。それだけの力を手にしたのに、何故ユーゼス自身が動かないのか。まさか余裕を見せていると言う訳でもあるまい。なのに、何故――?
……いえ、先程の話しにはまだ続きがありましてね。
「……何?」
思わぬ言葉にイングラムは疑問符を浮かべる。
あの話しにどんな続きがあるのか……そして何故、”シュウの声に微妙な呆れが入っているのか”。
マサキ・アンドー相手に『マサキ……貴方も懲りない人ですね』と言う時と同じ口調である。続きとは果たして?
先に言っておきましょう、イングラム・プリスケン……戦意を喪失しないように。
「……どう言う事だ」
聞けば分かります。では――。
そうして、シュウは話しの続きを始めた。
《フフフ……ハハハハハハ……! さぁ、奪いに行こう! 手に入れに行こう……! 世界を!》
言うなり真神はクロスゲート・パラダイム・システムを起動。平行世界間移動を開始しようとして――。
《……な、なん……だと? う、動けない……だと……?》
全くその身体が動かない事に気付き、ユーゼスは愕然とした。
ピクリとも動かないのである。これは、どう言う事なのか。ユーゼスは真神内でデータを表示。何があったのかを調べ――目を見開き、愕然とした。真神が動けない、その理由とは!
《そ、存在係数が無限大を超えて動けないだと……! そんなバカな!》
存在係数――つまりは質量、霊量、その他もろもろの要素を含む”存在としての大きさ”の事である。
真神は大きさこそ数百mクラスなのだが、有する力が莫大過ぎて存在係数が跳ね上がってしまったと言う訳だ。それこそ無限大距離――つまり一つの世界より大きい――を超えてしまった為、この因果地平の彼方から一歩も動けなくなってしまったのだ。
全能なる存在になったが故に、大きくなり過ぎて、むしろ何も出来なくなってしまったと言う皮肉。
世の中、こう言う言葉がある。混ぜるな危険。
それを見事、体現して見せてくれた訳である。アホと言わないで上げて下さい。
《こ、このままでは因果地平の彼方から脱出どころか指一本も動かせぬ……! ど、どうすれば》
《……何をやっているんだ》
真神の中で悩んでいると、突如声を掛けられ、ユーゼスはハッと顔を上げる。そこには、悪魔のようなフォルムを持つ機動兵器が居た。
新たなる因果律の番人にして、正と負の無限力の狭間にありし存在。
銃神、ディス・アストラナガン。そして、その搭乗者である虚空の使者、クォヴレー・ゴードンが。
彼は真神に通信を繋げるなり、呆れたような顔となる。
《……シヴァー・ゴッツオ? いや違うな。ならばユーゼス・ゴッツオと言う奴か》
《貴様、イングラム……!? いや違うな。奴から使命を受け継いだ存在か……!》
二人はやたらと似た言葉で、互いを認識する。そこらはやはり似た者同士と言う事なのか。
それはともかく、ユーゼスは激しく狼狽した。全能の存在となって僅か三分足らずで大ピンチである。指一本も動かせないと言う事は、回避どころか攻撃も防御も出来ない。
つまる所フルボッコ。どう言うラスボスだ。
ユーゼスは何とか真神を動かそうとするが、ウンともスンとも言わない。
さてクォヴレーはと言うと、そんな動けない真神相手に胸部装甲を展開して、ディス・レヴを解放していた。
流石、ラスボスが動くまで待つなんて真似をしない男である。
空気を読んでいては、虚空の使者は務まらない。
《……テトラクテュス・グラマトン》
《待て、落ち着け! クォヴレー・ゴードン! こちらは何も出来ないのだぞ――!》
《そうか、好都合だ。デッドエンド・シュート》
《それも私だ――――――!?》
全く容赦無く、アイン・ソフ・オウルが叩き込まれる! 召喚された十の中性子星は一種のタイムマシンを形成し、訳分からん事をほざくユーゼスを、真神ごと消し去らんとその身を襲う――!
ああ哀れ真神、ラスボスにあるまじきラスボスよ。君の事は数秒くらいは忘れない――。
《死、ん、で、たまるかぁああああああぁあぁあああ――――!》
《……何!?》
と、いきなりユーゼスが叫ぶなり、召喚された中性子星が吹き飛ぶ!
なんと、時間逆行現象をキャンセルしてのけたのである。
そこは全能な存在、時間逆行攻撃で倒れる事を良しとしなかったのだ。
ともあれユーゼスは仮面の上から冷や汗を拭う仕種をした――どうでもいいが、その行為にはひたすら意味が無い。仮面脱げよと言うツッコミは、全ての仮面キャラに共通して放ってはならないツッコミなので止めて差し上げよう。
《フフフ……。伊達や酔狂で全能を名乗っている訳では無いぞ……? 時間逆行なぞ、この真神に通じるものか》
《……確か、さっきは焦ってなかったか? 奇妙な叫び声を――》
《気のせいだ》
きっぱりとユーゼスは胸を張って答える。そんな彼をクォヴレーはジト目で睨み――やがてため息を吐いて、ディス・アストラナガンを反転させた。
《あれが通じないのならば、俺が講じれる手段は無いな。一時後退する》
《なに……? いや、待てクォヴレー・ゴードン! 私をここに置き去りにするつもりか……!?》
《当たり前だ。俺も忙しいからな。動けないならちょうどいい。では、さらばだ》
《待――》
ユーゼスの切実な訴えも虚しく、大変忙しい虚空の使者様は消える。
全能になったけど同時に無能になった奴なんぞに構っている暇は無いと言う事か。ユーゼスは愕然としたまま硬直。やがて、一人となった因果地平の彼方で寂しくため息を吐いた――とりあえずは。
《……存在係数をどうにかする術を探さなくては。暗破眼で平行世界にアクセス。解明脳よ、私を導いてくれ……》
ゼロ・システムじゃないんだから、そう言った事は言わないで頂きたい。そして、出た結論とは。
《IS……? 成る程、これは面白い。それにヴォルクルスの思念を完全復活させるためにも贄は必要……いいだろう。ならば、この世界にアクセス。後は――》
IS――量子変換による兵装のデータ化にユーゼスは目を付ける。それに、解明脳に宿らせたヴォルクルスは所詮分身だ。真なるヴォルクルスを解明脳に宿らせる必要がある。その為にも、贄が必要であった。
それこそ、一つの世界丸ごと分程の魂を。
《ヴォルクルスと彼の世界をCPS(クロスゲート・パラダイム・システム)で接続――フフフ……ヴォルクルスよ、好きなだけ人間を喰らってくるといい。そして、ISコアとやらを手に入れろ。その時、我等は真に神となるのだ……!》
呵々と大笑し、ユーゼスは吠える。そして、ヴォルクルスによるこの世界の侵略が始まったのであった――。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……アホなのか」
開口一番、シュウから続きの事情を聞いたイングラムは頭を抑えながら、そう言い放った。
ユーゼスと言い、クォヴレーと言い、アレか、天然なのか。
しかしイングラムもまた天然なので、案外この系譜は全員天然なのかも知れない。
キャリコやスペクトラは正しくは系譜から外れるからいいとして、ヴィレッタは――若干、天然が入っていなくもない。
とにかく、シュウが言っていた意味を今では正しくイングラムは理解していた。
成る程、これは戦意がガリガリと削られる――だが。
「……根本的に、この世界が危機であると言う事は変わらない訳だ」
……そうなります。まぁ、私としてはヴォルクルスに復活して貰った方が大変助かる訳ですが。
「それはさせない。理由は言うまでも無いな?」
イングラムがそう言うと、シュウが肩を竦めたのが気配で分かる。
しかし、彼も諦めるつもりは無いだろう。……シュウ・シラカワとは、そんな人間である。
恐らくヴォルクルスに復讐を遂げるためならば、何を犠牲にしても構うまい。あるいは、この世界すらをも犠牲にしても。
ある意味、ユーゼスよりこの男の方が遥かに危険と言えた。だが――。
「とりあえず、これでこちらのやるべき事は決まった。当分は変わらず奴らの介入を防ぐ」
モグラ叩きのようですね。根本的解決とはほど遠いですよ?
「そちらも対策済みだ。”ソフトとハードの完成を待つだけでいい”」
笑って答えるイングラム。それに、中でシュウが苦笑する。その分だと、こちらがやった行為を理解していると言う事か。
かつての世界で行った事と同じ事をするつもりですか?
「その通りだ。既に仕込みは済ませてある――フフフ……IS。自ら進化する兵器。あれ程、あのシステムの完成に相応しい兵器もない。そして、サイコドライバー候補もまた見つかった」
思い出すのは昼間、斬り掛かってきた少年であった。黒い髪の真っ直ぐな瞳の少年。確か、名前を織斑一夏と言ったか。そう、イングラムの目的は。
XNディメンションのこちらの世界での完成。そしてまた、こちらの世界のサイコドライバーを完成させ――。
「”この世界を封印する”。平行世界からの介入を完全に封じる。それが、俺の目的だ」
XNディメンション――”無限次元、接続、封印システム”。
その完成によって、この次元を封印する事。それこそが自分の目的だと、イングラムは笑ったのであった。
(第十一話に続く)
はい、第十話でした。ユーゼスぇ……(笑)
ちなみに、α世界のユーゼスとなりますので、OGのそれも私だーさんとはまた別です。
うん……これを書いた後に、公式で混ぜるな危険をやるとか全力で笑いましたとも。全く懲りないなユーゼス(笑)
名前も新人祖とか俺にツッコミ入れさせる気かと(笑)
ラスボスの面で腹筋崩壊したのは、流石に人生初でした……その後で、敵戦力に涙しましたが(笑)
さて、次回からようやく臨海学校に突入です。長いなおい(笑)
お楽しみにー。