IS −インフィニット・ストラトス− 蒼の魔神 作:ラナ・テスタメント
てな訳で彼女の登場です。ハイテンションな彼女をお楽しみあれ。
ちなみに今回のBGMは「正調 ミオのじょんがら節」を強くオススメいたしますの事よ(笑)
では第十二話、どぞー。
時間は一夏が起きた時間にまで遡る。朝5時。日が昇ろうとするまさにその時間に、イングラムは海を仰ぐ砂浜に到着していた。……グランゾンは飛行も出来れば高速巡航も出来る上に、空間転移まで出来るので、リアルに世界(宇宙)の果てまで行ってQな真似も可能なのだが――それでも朝も早くからゲートを察知して戦わなければならないのは辛い所である。
虚空の使者に労働時間なんて素晴らしいものは存在しないのだ……今はホームレスだが。ともあれイングラムは辺りの様子を確かめようとした、次の瞬間。
「な、なななななな……!?」
そんな素っ頓狂な声を真後ろから聞いた。……とっても嫌な予感を覚えながら後ろを振り向く。そこに居たのは。
「ちょ、ちょっとそこのおにーさん!? そこからびかーって光って出て来なかった!?」
「……しまった」
見られたか――。
イングラムは聞こえて来た声に思わず呻きを上げる。まさか転移して来た瞬間を見られようとは。やはり普通に飛んで来た方がと思うが、そちらの方が目撃されやすいと言うものだろう。どちらにしろ見られたからには、どうしようも無いのだが。
声の主は小柄な少女であった。見た目十代前半と言った所か。青い髪をツインテールにした少女。
……しかし、何故だか妙に見覚えがあったりなかったりする少女である。これは……?
−…………−
シュウ・シラカワ?
こう言う時は、いの一番にツッコミを入れてくれそうな現在相方に声を掛けてみる。しかしイングラムは、シュウの反応に怪訝な顔となった。
何故か呆けているように感じたのだ。シュウはイングラムの疑念に、答えない。いや、むしろシュウも戸惑っているようにすら見受けられる。どう言う事なのか。
−おかしいですね? 見覚えは無いはずなのに、何故か見覚えがある−
……お前もか?
−では、貴方も?−
「ちょっと、おにーさん何を黙り込んでるの?」
「む……」
しばらくシュウと話していると、目の前、と言うには随分下で、少女がプゥっと頬を膨らませていた。基本的にシュウとは思念だけで話しが通じるので、黙り込んでいたのだが。
「それより、ねぇねぇねぇねぇっ。おにーさんは何者? どうやって今来たの? ここ私しかいなかったんだけど――ハッ!? ひょっとして宇宙人か何かだったり? いや――! さらわれる――――−―!」
「ま、待て……!」
マシンガントーク、恐るべし。イングラムに一切の反論をさせずに勝手に喋って、勝手に勘違いしてらっしゃる。しかも何気にイングラムは宇宙人と言えない事も無いのがややこしい……ついでに過去に人さらいもやらかしているので、少女の直感は凄まじいものがあった。それはともかく、ここで騒がれても困る。イングラムは少女の口を抑えようとして。
「なーんちゃって」
ずしゃり。と、その場で勢い余り盛大にすっころんだ。……後にイングラムは述懐する――あれがズッコケと言う奴だったのだなと。少女はそんなイングラムをつんつんと指で突ついた。
「……おー、おにーさん分かってるね。見事なリアクションだよ?」
「そ、それはいい……とりあえず俺の事は忘れて、帰って――」
そこでようやくイングラムは我に返る。ゲートは果たしてどうなったのかと。慌てて後ろを振り向く、そこでは既に魔法陣が展開完了。デモンズゴーレムが這い出ている所であった。
「ところで、あれって、おにーさんのお仲間さん?」
「違う……が、しまったな。……シュウ・シラカワ?」
−無駄です。カバラ・プログラムを起動しても起きてしまった事象までは覆せませんよ。今から精神世界を発生させても遅いでしょうね−
「ち……」
つまり、この少女を巻き込む事は既に確定であった。やってしまった感は尽きないが、もはや後の祭である。おー、と現れるデモンズゴーレムを感心したように見る少女を、イングラムは脇に抱え上げた。
「て、わ!? ちょっと何するの、おにーさん!」
「黙っていろ……とりあえず、君をここから離れた所に――っ」
そこまで言った瞬間、少女を抱えたイングラムの足元が爆裂したように膨れ上がった。見ると、そこは巨大な腕となっている――魔法陣から伸びるように! これは!?
−辺り一帯は砂ですからね。デモンズゴーレムの材料には事かかないでしょう−
……つまりゲートから出たと同時に、辺りの砂と同化したらしい。何とも奇天烈な真似をやってくれるものである。
イングラムは片手で少女を抱え直すと、右手部分のみにグランゾンを展開。グランワーム・ソードを取り出すなり、砂浜に叩き付ける! すると、辺りが鳴動し。
「飛べ」
”砂浜が、丸ごと盛大に吹き飛んだ”。辺り一帯、全てである。少女の悲鳴が聞こえた気もしたが、今は無視。イングラムは頭上いっぱいに広がる砂を見て、グランワーム・ソードを逆手に構えた。
「狙いはもう、ついている」
思いっきり、頭上目掛けてブン投げる。投擲されたグランワーム・ソードは、違う事なくイングラムの狙い通りの場所に突き立ち、大量の砂を貫通。そのまま、空へと消えていった。
−ほぅ? お優しい事です。私はてっきり、砂浜ごと消し飛ばすのかと−
「……それでは被害が出るからな。ならば多少の手間が掛かろうともこの方がいい」
「……おにーさん?」
「これで終わりだ」
そう言うと頭上に広がった砂が一斉に散る。イングラムは頭上を見ながら、後ろに退がる。すると、上から砂が大量に降り注いで来た。
「わ、わ、わー!? ……て、あれ? 何ともない?」
「…………」
少女は思わず悲鳴を上げようとして、しかし来るべき衝撃が無い事に目をぱちくりとさせて、周囲を見渡した。そこは何と、先程の砂浜から数百mも離れた所であった。
イングラムは難しそうな顔で無言。右手の装甲を消すと、少女を荒っぽく地面に下ろした。
「きゃっ!? 痛っいなぁ〜〜! 何すんのおにーさん!?」
「……やれやれ」
「ちょっと!? 聞いてる!?」
聞いてはいるが、イングラムは気にしていない。それより最優先でやるべき事があったのだ……戦闘の後片付けである。
幸いにも辺りは砂しか無いので、重力操作を使って砂を操作するだけで事足る。それらを済まし、イングラムはふぅと安堵の息を吐くと、未だに騒ぐ少女に視線を向けた。
「……とりあえず、ここであった事は他言無用。忘れてくれると助か――」
「無理。説明してもらうからね!」
きっぱりと即答された。
イングラムは呻き、どうするかを思案する。
記憶操作――しかし、そう言った真似をする道具も無ければ手段も無い。却下。
買収による口封じ――そんな金があるなら、ホームレスになぞなっていない。却下。
手段を選ばず口封じ――……言うまでもなく、却下。
ならば後は一つしか無い。すなわち。
「……では、さらばだ」
逃走である。
戦闘の後始末は全て終わらせたのだ。ならば、あの少女がいかに騒ごうとも問題は無いだろう。
虚言扱いされるのが関の山である。故に、ここは撤退を――。
「い、痛たたたたっ!」
「……っ、どうした?」
――まさにしようとした瞬間、少女がいきなり、足を抑え出した。まさか先程の戦闘でどこか痛めたか。イングラムの顔色が変わる。流石にこうまで痛がっているのに置いていく訳にも行かない。少女はそんなイングラムに涙目で訴える。
「あ、足が……捻っちゃったかも……!」
「……く」
少女の言葉にイングラムは呻き声を上げる。それはやはり一般市民を巻き込んでしまったと言う自責の念か。しばしイングラムは思案する。やがて彼女に背を向けて屈んだ。
「……送って行こう。家はどこだ?」
「いいの?」
「構わない。俺が原因のようなものだ」
「……うん、じゃあ、お言葉に甘えちゃおっ」
イングラムの言葉に頷くと、少女は背中に覆い被さる。彼は軽い少女の身体に苦もなく立ち上がり、さっさと歩き出した。
「わっ、おにーさん力持ちだね」
「……君が軽すぎるだけだ。子供だからな」
「むっ! 私、子供じゃないよ、これでも15歳っ!」
「……何? てっきり10歳くらいかと……ぬ」
そう言うと後ろからぽかりと叩かれた。少女は不満そうに頬を膨らませ、イングラムをジト目で睨む。
「誰が小学生!? これでも高校生だよ! 貴家 (サスガ)澪(ミオ)。スリーサイズは、78、56、82の乙女だよっ!」
「……いや、誰もスリーサイズまでは聞いてないんだが」
「う、うるさいなぁ。とりかく家までれっつごー! ほら急ぐ!」
「……背中で暴れないでくれ」
そんなこんなで、イングラムは彼女の家――正確には親戚の家らしいが、そこに彼女を連れて行く事になったのであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
……そして、こんな有様か。
そう嘆きながら、イングラムは昼前から来ると言われている団体客(学生だそうだ)の為に部屋の用意をしていた。海の前にある旅館。そこが貴家澪の家ならぬ親戚の家であったらしい。どうも団体客が来るとの事で、学校を休んで手伝いに来たとの事だが……そこを朝の出来事で怪我をしてしまい、手伝えなくなったのである。澪を旅館に送り届けたイングラムの前で交わされた話しは以下のようなものであった。
『ごめん、おばさん。怪我しちゃって……』
『あらあら、いいのよ澪ちゃん。澪ちゃんの身体の方が大切なんだから。……でも、困ったわねぇ。これから澪ちゃんの学校の方達が臨海学校でいっぱい来るのに……人手が……』
チラッチラッ。
『…………』
『そう言えば、お礼もまだでした。澪ちゃんを送り届けて頂いて、ありがとうございます。……でも、困ったわねぇ』
『うん。おにーさん、ありがとうね♪ ……そだね、困ったねー』
チラッ、チラッ、チラッ。
『………………』
『誰か一日中暇してて旅館を手伝ってくれる方いないのかしら。お給金くらいは出しますし……』
『まかないだけど、料理も出るし、温泉も入れるし……』
チラッ、チラッ、チラッ、チラッ。
……そして、イングラムは敗北した。後の事はもはや言うまでもあるまい。現在、澪の指導及び指揮を受けながら、旅館の仲居さんの真似事をやっていると言う次第であった。
……人は言う。どうしてこうなった。
「ほら、おにーさん。ぼーってしてないで、次々」
「む、了解だ」
頷くと、澪を背負って次の部屋に向かう。……足を捻挫しているので、移動の際には背負って行くように言われたのである。澪本人から。ちなみに最初は抱っこしてと言われたので肩に担いだのだが、普通に怒られてしまった。なので背負う事で妥協してもらった形である。それはともかく、澪はやたらニコニコした顔でイングラムの背中に張り付く。
「へへー、クラスの皆が知ったら、ちょっと自慢出来るかな」
「……何の話しだ?」
「何でも無いよ。さて、じゃあお部屋の準備が出来たら玄関に向かってね。私、臨海学校に合流しないと」
「……? 臨海学校? そう言えば女将もそんな事を」
思わず最初に勧誘(?)された時の事をイングラムは思い出す。確か、澪の学校がどうのこうのと言っていた記憶があった。彼女は、そんなイングラムの反応ににぱっと笑い、頷く。
「うん。臨海学校なんだよ。IS学園って言うんだけど、知ってる?」
「どこかで聞いた事があるが――」
どこかで知ってるも何も、彼のダンボール宅がある目の前である。これもまた偶然のなせる業であったか。
そして、イングラムは知らない。
背中に居る少女が、平行世界において魔装機神操者である事を。未来のラ・ギアスにおける地上人召喚事件で、そうなってしまう事を。
その未来で、ようやくシュウ・シラカワは彼女に出会う事を。
イングラムも、彼に宿るシュウも、それを知らないのであった。
(第十三話に続く)
はい、第十二話でした。
ミオは書いてて楽しいなと(笑)
今回のイングラムとシュウも既視感も一種の虚憶なんですかね(笑)
いや、第2次OGで全力でツッコミ入れましたもの俺(笑)
あ、そういや改めてアンケート取った方がいいのかな?
次回までに決めておきます。
では、次回もお楽しみにー。