IS −インフィニット・ストラトス− 蒼の魔神   作:ラナ・テスタメント

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しかしこう、あれです。フフフ……さんってこう言うキャラだっけ? そういや、プライベートのフフフ……さんってまずお目に掛かった事がねぇやと。
なので、久保さんが入っているやもしれません。天然的な意味で。
そんな第三話、どぞー。


第三話「一夏がリア充すぎて、生きてるのが辛いです!(またはシャルが可愛いすぎて)」

 

「えーと……」

 

 がつがつがつがつがつ!

 

 駅前のショッピング・モール『レゾナンス』。食べ物は欧、中、和を問わずに完備し、衣服は量販店から海外の一流ブランドまでも網羅。更には各種レジャーすらぬかりないと言うあらゆる意味で凄い総合施設である。

 曰く、『ここで無ければ市内のどこにも無い』と言われる店なのだが。その地下一階。飲食店が立ち並ぶ軒先に、やたらパワフルな食べる音が響いていた。

 その音が鳴る先を、汗ジトで聞きながら見るのは山田真耶。そして呆れたように見るのは織斑千冬でる。

 さもありなん。目の前で食事をする男は、既にメニューを一周しているのだから。

 つまり、それだけの食料を全て胃に納めた事になる。最後に日替わりスープ(コンソメ)を一気に飲み干すと、男は人ごこちついたのか、ふぅと息を吐いた。

 無表情なのに、何故か満足そうな顔に見えるのは気のせいであろうか? もし尻尾があればパタパタと振っている事であろう。

 最後まで、男の食事風景を眺めていた真耶と千冬は目を見合わせる。そんな二人に、男は頭を下げた。

 

「いや、助かった。久しぶりの食事は美味いな。礼を言おう、確か……?」

「あ、山田真耶です」

「織斑千冬だ」

 

 礼を言いながら疑問符を浮かべる男に、二人は名前を教える。それに彼は頷いた。

 

「ああ、覚えた。山田と織斑でいいのか?」

「それでいい。しかし、こんな時代に行き倒れとはな」

 

 いきなり呼び捨てにされた事にもあまり不快感を見せずに千冬は苦笑する。

 つい先程の事である。臨海学校に備え、水着を新しく購入しに来た二人だったのだが、そんな二人の前にこの男が倒れ込んだのだ――真耶に抱き着きながら。

 女尊男卑な今の時代に珍しくも痴漢かと、千冬が横から蹴りを入れたのだが、しかし男はそのまま気絶してしまったのである。……盛大に腹の虫を鳴らしつつ。

 そんな男に一時は救急車を呼ぶか迷った二人であったのだが、男が『……食べる物が欲しい……』と譫言(うわごと)を呟いていたので、ここまで連れて来たのである……結果はテーブルに載る空の皿が物語っていた。

 どれほど、お腹を空かせていたと言うのか。尋ねても男はただ苦笑するだけであったが。

 千冬や真耶としても深くは聞き出すつもりも無かった。

 男の顔立ちは明らかに欧米系の顔であり、そんな男が行き倒れともなると、まず浮かぶのが不法入国。そして不法滞在だからだ。

 それならば食うに困る状態と言うのも頷けなくは無い。二人も一応は公務員と言えど、流石にそこらを指摘するつもりは無かったのである。

 ……実際は不法入国どころか不法入界とでも言う方が正しいのだが、当然そんな事が分かろう筈も無かった。

 

「しかし、これだけ食べておいてておいて何だが。払って貰って大丈夫なのか?」

「気にするな。金がない奴に心配される程でもない。この分の借りは、今度返してくれればいいさ」

 

 とても漢前な台詞を千冬は平然と放つ。女ならば、惚れていてもおかしく無い。だが悲しいかな。目の前に居るのは男であった。彼は再び頭を下げる。

 そんな男に千冬は何かを思い付いたのか、ポンっと手を打った。

 

「そんなに気になるんだったら、そうだな。私と彼女はこれから買い物なんだが、荷物持ちでもやってくれ」

「それくらいならば、お安いご用だが……いいのか? そんな事で?」

 

 逆に尋ねる。だが、千冬は構わないと手を振り、真耶はと言うと微笑むだけであった。

 なら言葉に甘えるかと、男も頷く。

 

「よし、なら決まりだ。これから水着を買いに行くから、ついて来い。……真耶、ここの支払いは割り勘でな」

「ええ!?」

 

 いきなりとんでも無い事を言われ、真耶は素っ頓狂な声を上げた。ちなみに、千冬はプライベートでは真耶の事を名前で呼び捨てにするのである。

 まぁそれはともかく、真耶はテーブルに所狭しと並んだ空となった皿を見る。

 支払いは、えらい事になりそうであった。しかし、今更文句も言えずに真耶はしくしくと財布の中身について思いを馳せる。当然千冬はお構いなしであった。椅子から立ち上がる。

 

「では、早速行くとしよう」

 

 彼女のそんな言葉に男は無表情に、真耶はがっくしと肩を落としながら頷く。

 そして三人は連れ立ってレジに向かい。そこで、はたと千冬が立ち止まった。男に振り返る。

 

「そう言えば、お前の名前をまだ聞いて無かったな。差し支えが無ければ教えてくれないか?」

「ああ、そう言えばそうだな。……名前か」

 

 そう問われ、少しだけ男は考え込む。

 名前の事である。偽名を使うかどうかを迷ったのだ。しかし、彼はすぐに首を振る。元の世界でならばともかく、こちらの世界では自分の名を出しても問題ない。だから、男は自分の名前を正しく答える事にした。

 

 その名前は。

 

「イングラム。イングラム・プリスケンだ。よろしく頼む」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 一方、所変わって同じショッピングモールの二階。

 水着売り場にて、織斑一夏はいろいろな意味でピンチに陥っていた――主に、理性的な意味で。

 

 な、なんでこうなったんだっけ……?

 

 そう思い、しかし目は壁から離せない。離してしまうと大変な事になってしまいそうだったからである。やはり理性的な意味で。

 一夏が今居るのは確かに水着売り場である。ただし、女性用と上に名前が付くが。更に言ってしまうとその試着室の一室であった。

 そこで今、一緒にここに来たシャルロットが”水着に着替えている”。

 比喩でも何でもない。一度裸になって、水着に着替えているのだ。”一夏の目の前で”。

 さて、何故こうなったのかと言うと、水着売り場に来た二人はちょっとした揉め事があったにせよ、シャルロットの見事なフォローもあり窮地を脱し、水着選びをしていた。

 だがそこで、シャルロットが何を思ったのか、一夏を試着室に連れ込んでしまったのである。

 しかも困惑する一夏を置いて、いきなり水着に着替え出したのだ。

 慌てて一夏は彼女から背を向けて、視線を逸らしたのだが、同じ個室で着替えている状態に変わりは無い訳で。

 現在絶賛、一夏は困惑の真っ只中に居ると、そう言う事であった。

 もちろん試着室にシャルロットが一夏を連れ込んだのには訳がある。

 ISの特性からシャルロットが追跡トリオの存在に気付いたのだ。

 結果として、シャルロットは三人の追跡を撒く為に試着室へと一夏を連れ込んだのだが――そこでシャルロットは、勢いで水着を着た状態で一夏に見て欲しいと頼み、そのまま着替えをはじめたのだった。閑話休題。

 ぱさり、とシャルロットは真っ赤になった顔で下着を脱いで、脚から抜き取る。その音が聞こえたのか、一夏はびくりと背を震わせた。

 シャルロットの位置から姿見の鏡で一夏の姿は見えるのだが、やはり困惑と羞恥があるのか、彼も顔を赤くしている。耳まで真っ赤にしていた。

 そんな一夏にシャルロットは少しだけ嬉しそうに微笑む。意識してくれていると、それが分かったから。

 そして選んだ水着を身につけると一夏に呼び掛ける。

 

「い、いいよ」

「お、おう」

 

 頷き、一夏もくるりと振り向く。そして早速一夏は、シャルロットの水着姿を目にした。

 セパレートとワンピースの中間のような水着で、上下に分かれているそれを背中でクロスして繋げていると言う構造だ。

 色は夏を意識したイエローである。大きく開いた背中と言い、正面の谷間を強調するかのようなデザインといい、結構――いや、かなり大胆なデザインと言える。

 一夏は、そんな大胆な水着を着たシャルロットに目を奪われ、彼女はと言うと一夏の視線を体に感じて落ち着かないのか、ごまかすように組んだ指をもじもじと動かしながら、彼の感想を待ち侘びた。

 しかし、当の一夏はと言えば完全に硬直していた……まぁ、個室で女子と二人きり&生着替え&水着お披露目の三連コンボである。いくら超弩級唐変木鈍感男と二つ名を持つ彼と言えど、何も思わない筈が無い。

 

 ――ここで、皆様方には全力で叫んで頂きたいものである。

 リア充爆発しろォオオオオオオオオォォ――――――――――っ!(指揮者、五反田弾)

 ただしシャルは置いて行け、と。

 

 ともあれ硬直した一夏にシャルロットは似合っていないのかな、と勘違いして、ちらりと上目遣いで彼を見た。

 

「あ、あの、一応もう一つもあって」

「い、いや! それが似合うんじゃないか!? うん、それがいいぞ、シャル!」

 

 更に水着を取り出すシャルロットに一夏は反射的にそう叫んでしまう。

 また突然に着替えがはじまってしまうのかと思ってしまったのだ。その台詞自体は、お世辞にも異性を喜ばせるような言葉ではなかったが、一夏同様テンパってるシャルロットは、ものすごく褒めて貰えたように聞こえ、パァッと表情を明るくした。

 それはそれは、嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 

「じゃ、じゃあ、これにするねっ」

「お、おう。それじゃあ俺は出てるから」

 

 そんなシャルロットに、今度は引き留められまいと一夏は試着室を出ようとする。

 彼女の返事も聞かず、慌ててドアを開き。

 

「え?」

「えっ?」

「ええっ?」

「…………」

 

 その目の前に、何故か自分達の副担任である山田真耶が居た。

 彼女も一夏と――その後ろで、水着姿となっているシャルロットを見て呆然としている。

 そんな真耶の後ろには、状況に気が付いた彼の姉である織斑千冬が額を押さえていた。何故か、男連れで。

 あれ? どっかで見たようなと思う暇もあらず、その男がほぅと感心したような声を出した。

 

「……ここでは女性の試着に男性が付き合えるのか?」

「そんな訳があるかっ。……しかし、何をしているんだ、バカ者が……」

 

 次の瞬間、軽くパニックに陥った真耶の悲鳴が、店内に鳴り響いたのであった。

 ――なお余談だが、女性の試着に男性が付き合える店は存在するので悪しからず。

 

 

(第四話に続く)

 




はい、第三話でした。この時、誰がDPの発売やらPOJの発売を予期していただろうか……。
超魔装機試作型ニムバス(笑)、時系列的には出せませんが、出してぇなぁ(笑)
第四話もお楽しみにー。
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