IS −インフィニット・ストラトス− 蒼の魔神   作:ラナ・テスタメント

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はい、第四話です。
ここから、シャルのターン!(笑)
シャルのターンは長いぜ……?(笑)
そんなお話しです。どぞー。


第四話「震えはじめる世界」

 

「……はぁ、水着を買いにですか。でも、試着室に二人で入るのは感心しませんよ。教育的にもダメです」

「す、すみません……」

 

 悲鳴が響き渡った数分後、ようやく落ち着いた副担任、山田真耶に説教を受けてシャルロット・デュノアはぺこりと頭を下げた。

 それを見て、織斑一夏は申し訳なさそうな顔となる。何となく自分のせいだと気付いたのだろう。まぁ、元凶は確かに一夏である。

 彼はシャルロットのフォローと合わせて話題を逸らす事にした。

 

「ところで山田先生と千冬ね――織斑先生はどうしてここに?」

 

 思わずプライベートな方の呼び名を、プライベートなのだからそれでいい筈なのだが、それはともかく訂正しながら尋ねる。

 それに答えたのは真耶の方であった。彼女はにっこりと笑い掛ける。

 

「私達も水着を買いに来たんですよ。あ、それと今は職務中ではないですから、無理に先生って呼ばなくても大丈夫ですよ?」

「はぁ」

 

 彼女の答えに一夏は生返事を返す。そうは言われたものの、普段先生呼ばわりしている人をそれ以外で呼ぶのは抵抗があるだろう。

 ついでに言うと真耶はともかく千冬はサマースーツである。他の人の目がある所で『千冬姉』なぞと呼ぶと怒られそうであった。

 それに、もう一つ気になる事はある。千冬と真耶の隣に自然と立つ男だ。

 彼は、両手いっぱいに荷物を抱え、こちらを見ていた。

 

「えーと」

「……ああ、俺の事は気にするな少年。俺はこの二人に拾われた身でな。言わば荷物持ち専用の影のようなものだ」

 

 そんな事を言われても。

 一夏とシャルロットはそんな男の発言に二人揃って千冬へと視線を送る。彼女はそんな二人に苦笑した。

 

「行き倒れていた所を拾ったんだ。それで礼代わりに荷物持ちを買って出てくれてな」

 

 それはまた漢前な事を。

 一夏とシャルロットは同時にそう思うが、あえて口にはしない。

 出席簿が無い今、何で叩かれるか分かったものでは無いからだ。

 まぁ、男自身が何も言っていない以上、一夏達が文句を言うようなものでもないだろう。

 そう結論付けて、一夏達は頷く。そして、彼はあさっての方に視線を向けた。

 

「そろそろ出て来た方がいいんじゃないか?」

 

 ぎくっと、そんな擬音が聞こえたような気がする。一同もそちらに視線を向けると、柱の影から二人組が出て来た。

 

「そ、そろそろ出て来ようかと思ってたのよ」

「え、ええ。タイミングを計っていたのですわ」

 

 とてもとても苦しい言い訳をしつつ出て来たのは、やはりと言うべきか、凰鈴音と、セシリア・オルコットであった。

 何故か追跡トリオの一人が見当たらないが、そこまでは流石に知らない一夏は出て来た二人に首を傾げる。

 

「何をこそこそしているのかと思って、ずっと気になってたんだがな」

「女子には男子に知られたくない買い物があんの!」

「そ、そうですわ! まったく、一夏さんのデリカシーのなさにはいつもながら呆れてしまいますわね」

 

 よりにもよって一夏に見破られた事が、よほど後ろめたかったのか、鈴とセシリアの二人は彼に非難を飛ばす。

 そんな二人に彼は参ったと言う顔となり、やがて、そんな騒ぎを起こす一同に呆れたように千冬はため息を吐いた。

 

「やれやれ、さっさと買い物を済ませて退散するとしよう」

 

 そう言う千冬が手にしているのは二つの水着である。

 二人とも、臨海学校の間際であるこの週末に水着を買いに来たと言う事は、土壇場準備と言う事か。

 まぁ、男が大量に持つ荷物を見れば、それも分かろうと言うものだが。

 そんな千冬に、真耶は何か閃いたかのような顔となる。

 

「あ、あー。私、ちょっと買い忘れがあったので行ってきます。えーと、場所が分からないので凰さんとオルコットさん。それにデュノアさんと――イングラムさんも来て下さいっ」

 

 真耶は言うなり有無を言わせずに生徒三人及び荷物持ちの男、イングラムと言ったか。彼を連れて水着売り場から出て行ってしまった。

 その場には一夏と千冬だけが取り残される。妙な沈黙が数十秒ほど流れ、やがて千冬はやれやれと肩を竦めた。

 

「……まったく、山田先生は余計な気を遣う」

「え?」

「ふぅ、言っても仕方がないか。一夏――」

 

 千冬はため息を吐いた後、久しぶりに弟を下の名で呼ぶ。そして彼がぎくしゃくとした反応を返した事に苦笑いを浮かべて、手にしていた水着を見せた。

 久しぶりの、本当に久しぶりの姉弟水入らずを、二人は短いながらも過ごすのであった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ふぅ、ミッション・コンプリートですっ」

 

 一夏と千冬を置き去りにして、一同を引き離した真耶はガッツポーズを取る。

 そこでようやく真耶の真意に気付いたか、女子一同は苦笑いを浮かべた。

 

「家族水入らずにしてあげたいなら、そう言ってくれればよかったのに……」

「そ、そんな事を二人の前で言うと、気まずくなっちゃうじゃないですかっ」

 

 ぽそりと呟く鈴に、真耶はわめくようにして抗議する。それに、セシリアもシャルロットも苦笑した。

 普段は教師と生徒と言う間柄の二人である。たまには姉弟に戻る事も大切な事だろう。

 ……まぁ、彼から離れる事となったのは残念ではあるが。ともあれ少しは時間を潰す必要がある。どうするかと一同は悩み。

 

「あ、そう言えばイングラムさんは……て、あれ?」

 

 一緒に連れて来た荷物持ちをやっていたイングラムに真耶は振り向く。

 しかし、彼の姿は忽然とそこから消えていた。

 彼が抱えていた千冬と真耶の買った物をそこに置いて。イングラムの姿は、どこにもなくなってしまったのであった――。

 

 

 

 

 

「……ここか」

 

 一同から姿をくらましたイングラムは、屋上に居た。

 本来立ち入り禁止の屋上である。レジャー施設も屋内にあるのだ。

 なので余程の事が無い限り誰も屋上には上がらない筈なのだが。そこにイングラムは上がって来て居たのである。何故、屋上に彼は来たのか。その理由はすぐに来た。何時ものように。

 ヴンと光が屋上の一画に灯る。それは複雑怪奇な模様を描き、屋上の地面を走りはじめた。

 それは一瞬にして幾何学模様の魔法陣を屋上に描きだして。

 

「……こちらはまだ荷物持ちの最中でな。来て早々だが、消えて貰おう!」

 

 それを前にして、イングラムはこれまた何時ものように右手のみに装甲を顕現させる。大剣も同時に引き出した。

 同時、魔法陣へとイングラムは駆ける。手に持つ大剣を振りかぶり――。

「デッドエンド――!?」

 

 次の瞬間、魔法陣から巨大な”拳”が現れた。拳は出現するなり、イングラムへと伸びる!

 

「っ!」

 

 真っ正面から飛来する拳。イングラムは手にした大剣を横にして、その拳を受け止め、振り払う!

 横薙ぎに放たれた斬撃は、受け止めた拳を容赦無く吹き散らした。

 よく見れば拳は汚泥で出来ている。だから吹き散らす事が出来たのか。

 だが、イングラムは大剣を放ったまま舌打ちした。

 何時もは魔法陣から現れる前に決着をつけていたのであるが、今回はそれを拳に邪魔されたのだ。

 それが意味する所はただ一つ、”本体”の招来であった。

 ぼこりと魔法陣から汚泥が溢れ、立ち上る。

 それはやがてヒトカタを成して膨れ上がった。

 汚泥の巨人、それが、ショッピング・モールの屋上に現れたのである。その名をこう呼ぶ。デモンズゴーレム、と――。

 とある地下世界、ラ・ギアスに存在するゴーレムの一種である。

 死霊傀儡の外法により、ただの土くれへ周辺にいる死霊・怨霊の類を宿らせ、人の形に仕上げたものだ。

 その身体は土くれから出来ているため、いくらでも再生が可能と言う化け物でもある。

 本来ならば十数mクラスの巨体なのだが、何故かこのデモンズゴーレムは三m程しか体長が無い。それでも大きい事には変わりは無い。しかし何故ラ・ギアスにしか存在しない筈のデモンズゴーレムがこちらに呼び出されたのか。

 その答えを知るイングラムは、しかし変わらぬ無表情で大剣を構える。その刃がヴン、と音を立てた。

 デモンズゴーレムは、赤く光る複眼でイングラムを見据えたかと思うと、拳を振り上げて襲い掛かる!

 身体を構成する汚泥を撒き散らしながら、魔法陣から出る際にしたように再び拳を射出した。だが。

 

「遅い」

 

 イングラムは射出された拳を、五分の見切りで斬り払った。

 ただ真っ直ぐに突き出される拳なぞ、不意を打たれでもしない限りは当たる筈も無い。

 拳と言わず、デモンズ・ゴーレムの腕はたまらず砕け、ただの泥に還り――イングラムは止まらない!

 勢い余って前のめりとなったデモンズゴーレムの懐に飛び込みざま、大剣を翻す。

 

「デッドエンド・スラッシュ!」

 

 今度こそは、過たず本体へと放たれた大剣は一閃。デモンズゴーレムの上半身と下半身を静謐に分断した。

 イングラムは斬撃の勢いのまま、デモンズとすれ違い、そして分断されたデモンズゴーレムはと言うと、屋上に崩れ落ちるなりただの土くれへと還っていく。

 後に残ったものは、デモンズゴーレムを形成していた大量の土砂だけである。イングラムは油断せずに土砂を見遣り、やがてこれ以上は何も無いと判断して、大剣を右手の装甲と共に納めた。

 フゥ、と息を吐き。しかし、次の瞬間には別の方向へと視線を向ける。

 

「更に特異点が発生、か。……荷物持ちは出来そうにもないな」

 

 少しだけ申し訳がなさそうにイングラムは苦笑する。

 だが、誰に謝れる訳でも無い。彼は心の中だけで置いてきぼりにした真耶に詫び、次の特異点へと向かったのであった。

 

 

 

 

 そして、そんなイングラムの遥か頭上。高い空の上から彼を見下ろす影があった。

 それは異形。深い灰色の装甲にずんぐりとした体躯。手は異常に長く、つま先より長い。首と言うものが無く、肩と頭が一体化したような形であった。鋼鉄製のゴリラと言った風情である。

 『全身装甲』の異形。

 それは今年度のはじめにクラス対抗戦にて一夏と鈴。更には、セシリアが共同して撃破した無人ISであった。

 

 

(第五話に続く)

 

 

 




はい、第四話でした。
ようやくバトれましたが、すぐ終わったんだぜ(笑)
次話もお楽しみにです。
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