IS −インフィニット・ストラトス− 蒼の魔神 作:ラナ・テスタメント
何故ならシャルは『再動』持ちだから(笑)
だって『疾風の再誕(ラファール・リヴァイヴ)』だし。
……うん? 一夏? 『加速』はありそうだなぁ(笑)
しかし『集中』はあれど『必中』は持たないタイプ。『直感』を覚えられなかったらピンチだぜ……(笑)
そんな第五話、どぞー。
イングラムが現れたデモンズゴーレムを撃破し、次の特異点に向かっている頃。
織斑一夏は、姉である千冬の水着選びに付き合い。それも終えて、一同と合流していた。
そこでイングラムがどこかに行ってしまった事を山田真耶から聞き、千冬は眉を潜める。
「一言も無しにか? 慌ただしい奴だな。まぁ元々は自分達の荷物だ。仕方ないな」
「うぅ、男手があるからってつい買い込んじゃったの、失敗しちゃいました……」
ざっくばらんに頷く千冬とは対象的に、イングラムを当てにしていた真耶は大量に置かれた荷物にため息を吐いた。
ついつい買い込んでしまったのが、ここで裏目に出るとは。一応、車で来ているのでそこまで運べればいいのだが。
「何、大丈夫だろう。男手ならちょうどそこに居る」
「え゙」
そんな真耶に、千冬は顎で弟を指してやった。思わぬご指名に彼は呻き、しかし真耶からも期待の篭った目で見られて諦めたようにため息を吐いて頷く。
仕方ないなぁと言う風にだ……それに元々手伝いを申し出るつもりではあったので問題無い。置かれた荷物に手を伸ばし、抱えはじめる。
「と、本当にいっぱいだな……千冬姉、こんな大量の荷物を見知らぬ人に持たせるなよ」
「その労働分はしっかりと代価を払っていたさ」
「ごめんなさい、織斑君」
衣服から日用品までが所狭しと詰め込まれた袋を抱えて、一夏は立ち上がる。
かなり重い。本当にどれだけ物を買ったと言うのか。流石に一夏だけに持たせるのも悪いと感じたのか、二人もそれぞれ手に荷物を持つ。
そんな一夏へと、やり取りを今まで見ていたシャルロット・デュノアが進み出た。
「あ、一夏。僕も手伝うよ」
「いや、大丈夫だぞ? 何とか持てるって」
「いいからいいから」
言うなり、一夏の手から荷物を一つ貰う。そのままシャルロットは彼の耳元に口を寄せた。
(……それにほら、例の――)
(あ、そういやそうか)
「ふ、二人共、近すぎですわ!」
「そうよそうよ! 耳打ちなんかして――! 何の話し? 言いなさいよ!」
「いや、あのな」
「な、何でもないよ! ないよね!? 一夏!」
そんな二人の様子に、セシリア・オルコットと凰鈴音が噛み付き、思わず一夏が話しそうになるが、シャルロットが必死に否定する。そして一夏に振り向きながら、うーと上目遣いで彼を睨んだ。
話さないで、とその目線は語る。彼女からのアイコンタクトを珍しくも理解したのか、一夏は、なんでだ? と言う顔をしながらも頷いた。
「あ、ああ。まぁ、なんでもないぞ?」
「本当にぃ?」
「一夏さん、嘘はいけませんわよ?」
じぃっと二人からねめつけるようにして見つめられ、一夏は言葉に詰まる。
彼としては正直話してもいいんじゃないかと思っているためだ。何故かシャルロットが嫌がっているので、話してないのだが。
そんな風にぎゃいぎゃい騒ぐ一同に、千冬は付き合ってられないとばかりに歩きはじめた。
「何をバカをやっているんだ、お前は。ほら、行くぞ」
「あ、うん。それじゃあ鈴、セシリア。俺とシャルは先生達の荷物を運んで来るから」
「あ、こら! あたしもついて行くわよ!」
「わたくしもですわ!」
一夏の態度に不審なものを覚えたか。元々一夏とシャルロットの二人を尾行していた二人ではあるので、ここで置いていかれまいと同行を申し出る。しかし、そんな二人に一夏は首を傾げた。
「あれ? でも二人共、買い物があるって……男には知られたくないって言う」
「「うぐっ」」
とてもとても痛い所を突かれ、鈴とセシリアが共に言葉に詰まる。尾行がバレた時に咄嗟に出た言い訳であったのだが、まさかそれがここに来て裏目に出ようとは。そんな二人にシャルロットはここがチャンスと目を光らせた。
「そ、そうだよ二人共。僕達の事は気にせずショッピングを楽しんで来てね。それじゃあ! ほら一夏。先生達、先行っちゃうよっ!」
「あ、本当だ。千冬姉、置いて行くなよ! じゃあ鈴、セシリア、また後でな」
「あ、ちょっ――!」
「お、お待ちになって――」
一夏を促し、先生二人に追い付かんと――むろん建前だ――小走りに駆けるシャルロット。鈴とセシリアは止めようと声を上げるが、構わず走る。
一夏の性格と状況を上手く使った良い手であった。ああ言われると一夏の性格上こちらを優先するのは目に見えていた。
かくして、シャルロットは見事に鈴とセシリアを出し抜く事に成功したのであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「よっと、これで全部かな」
「一夏お疲れ様♪」
真耶の車であると言うミニバンの後部座席に荷物を積み込み、一夏はふぅと息を吐く。そんな彼に同じく荷物を持って来たシャルロットが労いの言葉を掛けた……何故かニコニコと笑いながら。
急に機嫌が良くなった事に、一夏はやはりと言うか、不思議そうに首を傾げた。
超弩級唐変木鈍感の字名は伊達では無い。
「はい、二人共ありがとうございました。先生、助かっちゃいました」
「ほら、礼だ」
そんな二人に真耶がお礼を告げ、千冬は缶ジュースを投げて寄越した。それぞれ一夏にはお茶を、シャルロットにはオレンジジュースである。二人はそれを有り難く頂戴する事にした。
「うん、それじゃあ」
「いただきます」
ブルトップを開き、ちょっとだけ飲む。
店内はクーラーが効いていたとはいえ、今は初夏だ。流石に少しばかり二人共喉に乾きを覚えていたので、これは助かった。
それぞれ缶をあおる二人に千冬はふっと笑うとミニバンのドアを開け、助手席に滑り込む。真耶も運転席へと座っていた。
「私達はこれで帰るが、あまり遅くはなるなよ」
「ああ、それは大丈夫だって」
門限もあるしなーと、一夏は笑う。その横でちょっとだけ拗ねた顔となるシャルロットには当然気付いていない。千冬はやれやれと苦笑、彼女ごしに真耶も手を振る。
「じゃあな」
「織斑君、デュノアさん、また学校で」
そう言うと千冬が助手席のドアを閉め、ミニバンのエンジンを真耶が掛ける。低燃費仕様のミニバンは、わりと静かな音で動き出し、そのまま駐車場スペースから出て行った。しばらくシャルロットと二人で去って行くミニバンを眺め、一夏は彼女に視線を合わせた。
シャルロットと目が合い、一夏は肩を竦めると二人は笑い合う。
「それじゃあ、こっちも買い物に戻るとするか」
「うんっ! それで一夏はどんなものにするつもりなの?」
「いや、それがちょっと決めかねててな――」
そして二人はそのまま駐車場スペースから再びショッピングモールへと戻ったのであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「デッドエンド・スラッシュ!」
そんな風に一夏が青春を謳歌していた頃からしばらく後。僅か数百m先で、イングラムが再び現れたデモンズゴーレムを魔法陣ごと叩き斬っていた。
今度は出現前に叩き潰せた甲斐もあってか、周りに土砂等のものも残さない。イングラムとしては、”あちら側”のものは砂であろうとも持ち込ませたくは無いのだ。
何せ立派な異世界である。土の構造物からして違っていたらどんな騒ぎになるか分かったものでは無い。そう言った意味では、先程の戦いは失敗したと言える。しかし。
これで、朝から六体。どうなっている……。
イングラムは大剣を納めながらぐっと呻く。空腹でぶっ倒れる前も考えていた事ではあるが、いくら何でも異常に過ぎた。
それに付け加え、現れるのはザコばかりと来ている。こちらが本体を呼び出す必要も無いような奴らばかりだ。これは、どう言う事なのか。
俺の戦力を試している? ……いや、グランゾンは向こう側のものだったのだから、それは無い。ならば。
ひょっとして、試しているのは”こちら側の戦力”の方?
まさかとは思うが有り得ない話しでは無い。実際、グランゾンも破損していた部品から、こちら側の最強兵器の姿を模して、己を作り上げていた筈だ。ISと言ったか。それに酷似した姿に、今のグランゾンはなっている。
それと同様に、奴ら側サイドもこちら側に適した状態になろうとしているのだとすれば、一応のつじつまは合う。しかし、それに何の意味があると言うのか。
−おやおや、分かりませんか? 貴方共あろうものが−
「な、に……?」
唐突に。本当に唐突に、己の中から声が聞こえ、イングラムは目を見開いた。幻聴などでは決してない、確かに聞こえた。
それに今の声は――!
「まさか、お前は!?」
呻くようにしてイングラムは叫ぶ。それに己の内側で、確かにアルカイックスマイルを浮かべる存在を、彼は感じた。
間違いない、”あの男”が居る。それも自分の内に!
愕然とするイングラム。しかし、声は待たなかった。笑いながら、こちらへと話し掛けて来る。
−貴方がグランゾンと私に接触したように、奴も別の存在と接触したのですよ。自分と似た存在にね−
なんだそれは、誰の事を言っている!?
声にイングラムは心の内だけで叫ぶ。しかし、彼は答えない。ただ人を煙に巻く笑いを浮かべるだけである。……成る程、こうなって見るとマサキ・アンドーの気持ちが良く分かった。
この男は、非常に腹が立つ――!
−貴方も人の事は言えないと思いますがね。それより、お客様のようですよ?−
「何……?」
男の台詞にイングラムが怪訝そうに眉をひそめた。直後!
イングラムへと、光がまるで雨のように降り注いだ。ビームと言う名の光が! そして、イングラムが居た場所は、迷う事無く爆発したのであった。
(第六話に続く)
はい、第五話でした。イングラムの中に奴が(笑)
ええ、久保さんの気持ちを味わっていただきましょう。
ちなみに、髪が紫色に変わったりするかは――内緒で(笑)
ではでは、次話をお楽しみにー。