IS −インフィニット・ストラトス− 蒼の魔神   作:ラナ・テスタメント

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はい、第七話をお届けします。今回からバトル、バトルの連続ですよー。お楽しみにー。


第七話「壊れた平和」

 

「ッォオォォォォ――――!」

 

 放たれ行く光砲の嵐。それをかい潜って、白式を駆る一夏は無人ISへと突撃する。

 両手で握る武装、雪片弐型から伸びる光刃を迷う事無く振り下ろし――しかし無人ISは見た目に似合わぬ軽快な動きで、ぐるぐると回りながら縦に放たれた刃を回避した。それどころか、回転を利用しながら長い腕を振り回して来る。

 すれ違う形で無人ISを通り過ぎた一夏は、呻きを上げながらも横に高速回転。どうにか回避に成功した。

 しかし向こうもそこで終わってはくれなかった。肩部からビームの雨が放たれる!

 それは回避を完了させた一夏の軌道予測地点へと迫り。

 

「一夏っ!」

 

 危うい所で横から割り込んで来たシャルロットの『ラファール・リヴァイヴ』が左手の腕部装甲と一体化した実体シールドで、ビームの掃射から彼を守ってくれた。

 更に右手へ五五口径アサルトライフル『ヴェント』を量子変換、呼出(コール)し、直ぐさま無人ISへと撃ち放つ!

 『ヴェント』が連続して火を吹き、弾丸が風を切って無人ISへ降り注ぐ。だが全身に取り付けられた大型スラスターは伊達では無かった。

 至近距離で放たれたその弾幕を、無人ISはスラスターを吹かしながら回避する。それを見て、シャルロットはすぐに武装を切り替えた。

 『高速切替(ラピッドスイッチ)』。シャルロットの得意とする技能である。事前呼び出しを必要とせずに、戦闘と平行してリアルタイムの武装呼び出しを行う技能だ。彼女が次に呼び出したのは、六二口径連装ショットガン『レイン・オブ・サタディ』。面制圧力に特化したショットガンだった。この距離ならば、外さない!

 しかし無人ISが次に取った行動はシャルロットの予想を超えた。

 何と被弾を恐れずに突っ込んで来たのである。いくら強固な装甲があるとは言え、流石に銃弾に真っ直ぐ自分から突っ込んで来るなどとは想像も出来まい。

 右腕を無人ISは突き出すと、腕部部分が最大出力形態(バーストモード)に変化。シャルロットへと狙いをさだめる。

 だが、そんな彼女の前に踊り出る存在が居た。一夏である。彼は、こちらもとばかりに雪片弐型を最大出力で振るう! それはワン・オフ・アビリティー『零落白夜』の発動を意味していた――!

 光刃が無人ISの右腕を通り過ぎる。見事、その腕を断ち切って見せたのだ。

 しかしそこは無人機。腕を一本切られた程度で止まる筈も無い。

 すぐに残る左腕で、一夏を殴り飛ばさんと振りかぶる。だがその前に、今度は両腕へと『レイン・オブ・サタディ』二丁をコールしたシャルロットが動いていた。

 一夏の背中越しから、二丁がそれぞれ散弾を撒き散らす。

 至近距離からの一斉射が無人ISへと雨霰に叩き込まれた。たまらず無人ISは後ろに下がり、残った左腕のビーム砲と、肩部のビームが同時に放たれる。一夏達は無理に追撃せずに後退して、それらを回避した。

 

「相変わらずしぶとい……!」

「うん、でも本当に無人機なんだね」

 

 全身に散弾を受け、腕を一本落とされた状態。それでもこの無人ISは無人ならではのしぶとさでまだ立っていた。

 呻く一夏に、シャルロットも驚きを隠せない表情で頷く。半ば半信半疑だったのだろう。それはそうだ。無人機など、どこも理論構築段階の物である。信じられなかったのも無理は無い。

 だが目の前に居るISはまごう事なき無人機であった――そして、無人故に。

 

「っ!」

 

 ダメージに関係無く、攻撃を続行出来る!

 再び左腕からビームが連射され、一夏達を襲う。彼とシャルロットはその攻撃を回避しながら左右に分かれ、シャルロットは六一口径アサルトライフル『ガルム』を呼び出すと直ぐさま放った。

 

「一夏!」

「おう!」

 

 『ガルム』から放たれた弾丸は、だが高速機動を繰り返す無人ISに避けられてしまう。それどころか構わずに反撃してくる始末だ。

 だが、そこはシャルロット。回避と射撃を同時にこなしながら、器用に無人ISの軌道を限定して行った。つまり、一夏の直線軌道上へと。直後、『白式』が爆発したかのように加速する。

 『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』。後部スラスターからブースト・エネルギーを放出、それを内部に一度取り込み、圧縮して放出。その際に得られた慣性エネルギーを利用して爆発的に加速すると言う奇襲攻撃技能である。

 出し所さえ間違わなければ代表候補生とも渡り合えるとされた技能でもある。つまり必殺の一撃を至近距離で叩き込む為の技能なのだ。そして、今がまさにその時!

 

「っらぁあああああっ!」

 

 怒号と共に一気に懐へと飛び込む一夏。しかし無人ISもシャルロットの射撃よりこちらが危険と判断したか、撃ち込まれる弾丸に構わず一夏の方へと左腕を向ける。

 しかし、その動きが途中で止まった。まるで巨人に掴まれたように完全に全身の動きを封じられたのである。これは!

 

「私の嫁はやらせん」

「ラウラ!」

 

 堂々と色んな意味でツッコミ所のある台詞を告げながら現れたのは、ラウラ・ボーデヴィッヒと彼女が駆る『シュヴァルツェア・レーゲン』であった。

 片手を突き出している――これが、あの無人ISの動きを封じていた。

 『AIC』アクティブ・イナーシャル・キャンセラー。通称、停止結界である。これはもともとISに搭載されている『PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)』を発展させたもので、対象を任意に停止させることが出来ると言う第三世代の空間型兵器であった。これに無人ISは捕まったのである。いくら高速機動や火力があろうとも、動きを停められては何も出来ない!

 一夏は内心でラウラに礼を言いながら、『零落白夜』を発動。雪片弐型を一気に振り放つ!

 そして『零落白夜』の光刃は、無人ISを袈裟に叩き斬った。

 無人ISは二つに分かれて地面に落下していき、その上半身だけが急に浮いた。まだ動いている!

 『瞬時加速』と『零落白夜』を同時に使った『白式』は、ブースト・エネルギーを多量に使った影響で動きが鈍い。

 そんな一夏へと無人ISは肩部のビームを差し向け、だが一夏はにっと笑って見せた。ラウラが来と言う事は、すなわち。

 

「残念ですが」

「これで終わりよ!」

 

 上半身のみとなった無人ISの全包囲から撃ち込まれるビーム砲撃。それがまず全身に撃ち込まれ、更に目に見えない砲弾が無人ISを吹っ飛ばす!

 その攻撃を放った二人組は、ボロボロとなった無人ISをフンと鼻を鳴らして見下ろしていた。

 セシリア・オルコットの『ブルー・ティアーズ』。

 そして凰鈴音の『甲龍(シェンロン)』である。

 二人が放った攻撃も第三世代型の兵器だった。浮遊自動攻撃システムである『ブルー・ティアーズ』と、空間圧作用兵器『龍咆』。

 それらの攻撃にさらされ、さしもの無人ISも地面へと落ちる。しかしまだ動きを停止しないのか、肩部ビーム砲を放たんとして、その前に四人の少女達から一斉砲撃を叩き込まれて、今度こそは完膚無きまでに破壊。無人ISは完全に動きを停止したのであった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ふぅ……」

 

 ようやく無人ISの撃破に成功して、一夏は安堵の息を吐く。

 そんな一夏へとプライベート・チャンネルで画像と声が来た。鈴とセシリアである。彼女達は心配そうな顔で、一夏の顔を覗き込む。

 

《一夏、大丈夫!?》

《怪我はありませんの!?》

《ああ、大丈夫だ。無傷だよ》

 

 そんな彼女達へと一夏は笑い掛ける。更にラウラとシャルロットからもプライベート・チャンネルが繋がれた。

 

《……詰めが甘い》

《う、うぐっ!》

《ま、まぁまぁ、ラウラ。今日は一夏頑張ったんだし、そこまでで》

 

 開口一番にそう言われ、言葉を詰まらせる一夏。すぐにシャルロットがフォローに入るが、ラウラはジト目で一夏を睨むばかりである。

 そんな彼女の視線に後々の訓練が大変な事になりそうだなぁと、一夏は思った。そしてそれは概ね間違いでは無い。

 ともあれ無人ISの撃破にも成功したのだ。地面に降りて、ISを解除しようと皆に告げようとして――。

 

 −警告! 新たな熱源感知。ロックされています−

 

『『な……!?』』

 

 それぞれのISから警告が告げられ、一同は目を丸くする。無人ISはたった今撃破した筈だ。それが、何故――!?

 直後、その答えは来た。ゆっくりと上空より降りて来て。

 

「……嘘でしょ」

 

 鈴が呻くようにして呟く。他の皆も呆然としていた。

 たった今撃破した無人IS。それと同じものが再び目の前に現れたのだから。

 増援――普通に考えれば当たり前であった。五機もの専用機に囲まれているような状況だったのだ。戦争を起こせる戦力である。状況は不利。なら増援を寄越すのは至極当然と言えた。

 しかも、一同の驚愕はそこで終わらなかった。

 

『『…………』』

 

 もはや全員が全員絶句する。何故なら新たに現れた無人IS。その後ろに、”更に二機も無人ISが現れたのだから”。

 総計三機。無人ISの性能を知った一同が絶句するのも無理は無い。

 だが当然無人IS達はこちらの驚愕なんぞに構わない。全く同時に両腕を構えた。光が灯る。

 

「っ! 散開しろ! 来るぞ」

『『!?』』

 

 一足早く我に返ったラウラから飛ぶ叫び。それに一同も我に返り、弾かれたように散る。直後、三機の無人ISから一斉砲撃が一夏達へと放たれた。

 

「く――っ!」

 

 ビームの一斉射は辺り周辺を容赦無く蹴散らす。駅前のショッピング・モールはおろか、辺り一面を更地に変えた。

 既に駅前は地獄もかくやと言う有様になっている。これがIS戦闘を市街地でやった結果であった。ISと言うものが、どれだけ恐ろしい兵器であるかを如実に物語っている。

 一夏はその光景に表情を歪めながらも、絶えず放たれて行く光砲を避ける。同時に、『白式』のシールド・エネルギーが一夏の前に表示された。残り、120ちょい。かなりぎりぎりの数値である。

 雪片弐型から生まれる光刃『零落白夜』。それは自己のシールド・エネルギーすらも喰いながら放たれたるものなのだ。

 ゲームで言うのならば常にHPを消費しながら使われる武器と考えれば分かりやすいだろう。

 エネルギー性質のものであれば、それが何であれ無効化、消滅させる攻撃。その攻撃力は全ISの中でトップクラス。下手に全力で使うと、シールド・エネルギーはおろかISの絶対防御すら斬り裂きかねない。そこまで強力な武装なのだ。当然エネルギーの喰いっぷりは半端では無い。

 シールド・エネルギーの消費から考えても後二発。だが三機もの無人IS相手にこれはキツイ。

 他の四人もそれぞれ射砲撃を撃ち込んで行くが、無人IS達はそれぞれ高速機動でこれを回避する。

 戦況はやはり思わしく無かった。ただでさえシャルロットと自分は消耗が激しいのだから。

 

 どうする……! どうすれば――。

 

 そう思った直後、いきなり無人ISの一機が回頭し、こちらに背を向けた。

 何があったと言うのか。その視線の先を見て、一夏は掛値なしに凍りついた。

 そこに人が居たからだ。それも、一夏にとって最も大切な人が。

 ――織斑千冬、彼の姉が、瓦礫を避けながら歩いていた。女の子を背中に抱えて。

 何で帰った筈の千冬がここに居るのか……帰るとは言ったが、あれからあまり時間も経っていない。近場にでも居たのだろう。

 そしてこの騒ぎだ。IS絡みの事件で出て来ない筈が無い。背に居る娘は、おそらく逃げ遅れた娘なのだろう。だが、今はそんな事はどうでも良かった。今、重要なのは……!

 無人ISが迷う事無く千冬へと腕を向ける。撃つつもりだ。よりにもよって、彼女を。昔はともかく、今はISを持っていないのに!

 

「やめろ……!」

 

 一夏は叫ぶ、でも無人ISは待たない。当然、狙いも変えなかった。千冬を確実にロックオンする。

 

「やめろ……っ!」

 

 千冬はと言うと、自分に狙いをつける無人ISを睨み。しかし空中に浮いているそのISに何も出来ずに、ただひた走るのみ。

 いくら超人じみた体力をしていようと、いくら世界最強のIS操縦者であろうと、ISが無ければ何も出来ない――そして。

 

「やめろォォォォォォ――――――!」

 

 『瞬時加速』。一夏が爆発的な加速で千冬に狙いをつける無人ISへと突貫する!

 しかし他の二機がそれを許さない。光砲が一夏へと集中する――無視した。あれを止められるのならば、墜とされても構わない!

 全身に光砲を浴びながら、少女達が悲鳴を上げるのも構わずに一夏は無人ISへと接近し、しかし無情にも一夏から斬撃が放たれる直前に、ビームの一撃が千冬へと放たれた。それは真っ直ぐに千冬とその背中に居る娘を捉えている!

 

「千冬姉ェェェェェェェ――――――!」

 

 一夏が断末魔もかくやと言う叫びを上げた、次の瞬間。そのビームは千冬に当たる寸前で曲がり、別の場所へ炸裂した。

 あまりの出来事に唖然となる一同、何が起こったか全く分からず呆然とする……そして。

 

《出来れば、この世界の揉め事に干渉したくは無かったのだがな》

 

 そんな一同の元に声が届く。同時、千冬の前方に穴が開いた。

 穴――である。他に表現のしようが無いので仕方ない。空間に直接開いた穴。それを人はこう呼ぶ、”ワームホール”と。

 そこから『魔神』が現れた。一夏達の目の前に、千冬の目の前に、『魔神』が。

 『蒼の魔神』が、ゆっくりと現れたのであった。

 

 

(第八話に続く)

 




はい、第七話でした。一夏とシャルの連携ですが、一夏にシャルが合わせてるのでここまで上手くいったと(笑)
戦闘の相性で一番いいのはやはりシャルじゃないかなと。
シャルロ党? ふ、そんなのは当たり前だ……!
そういや蒼の魔神ですが、基本的に主人公は一夏でフフフ……さんは、二人目の主人公ポジションとなります。
では次回、第八話「魔神邂逅」グランゾンさんマジチートな戦闘をお楽しみにー。
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