IS −インフィニット・ストラトス− 蒼の魔神   作:ラナ・テスタメント

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……しかし、ISって第何段階まで進化するんでしょうか。いや、グランゾンさんはともかく、白式とかね。
て言うか、一夏ラバーズもセカンドシフトさせたいじゃないと(笑)



第九話「白と魔神」

 

 真っ正面から睨み合う二人――『白式』の織斑一夏と、『魔神』のイングラム・プリスケンは互いに互いを見る。

 一夏は睨むように、イングラムはバイザーに隠されていたが、驚いたようにだ。”何故、邪魔をするのか”。

 

「千冬姉はやらせねえっ!」

「…………」

 

 そこでようやくイングラムは気付く。彼が勘違いをしている事に。

 だが、状況からすれば無理も無いだろう。そして、それを話す暇も無い。

 それ故に、イングラムは手に持つグランワーム・ソードを跳ね上げた。

 

「ぐっ……!」

 

 『零落白夜』を展開した雪片弐型を跳ね上げられて、一夏が呻く。しかし彼はそこから一転、機体を勢いのまま横に高速回転させた。

 さしものイングラムも一夏が取った動作に目を見開く! そして一夏は『零落白夜』の光刃を『魔神』へと振るい――次の瞬間、その光がまるで萎むようにして消えた。

 ……エネルギー切れである。

 ただでさえ無人ISとの戦闘でシールド・エネルギーを消耗していたのだ。『魔神』を止めるために『瞬時加速』を使用し、更に『零落白夜』による斬撃を二回も振るったのである。

 シールド・エネルギーが尽きるのも無理はからぬ事であった。

 変形していた雪片弐型は元の実体剣に戻り、『魔神』の歪曲フィールドの表面をただ叩くだけに終わる。

 

「ぐ……!」

「…………」

 

 一夏はこんな時にエネルギー切れとなった事を悔やみながらも、諦めない。

 雪片弐型を振るって『魔神』に叩き付け続ける。

 だが、その一切が通らない。イングラムは、そんな一夏に目を細め。しかし、己のやるべき事をやる事にした。一夏に背を向け、グランワーム・ソードを逆手に握り変えるなり投擲する!

 その先には少女を背負ったままこちらを見ていた千冬が居た。

 

「逃げろ、千冬姉ぇェェェェ――――――っ!」

 

 轟く一夏の叫び。しかしそれは、無情にも届く事なく投擲されたグランワーム・ソードは千冬の足元に突き刺さり、そのまま周辺を爆砕させたかのように、地面を炸裂させた。土煙りが上がり、辺りに瓦礫が降り注ぐ。

 

《教官!》

《う、うそ……!》

《そんな……!》

《織斑先生が……!》

 

 ラウラが、鈴が、シャルロットが、セシリアが信じられないとばかりに声を上げる。

 一夏は呆然と、未だに土煙りが上がり続ける千冬が居た場所を見続け、そして。

 

「ち、千冬姉ェェェェェェ――――!」

 

 叫ぶと同時に半狂乱となって『白式』を飛ばした。

 

 嘘だ……千冬姉が! 千冬姉がっ!

 

 真っ青になった顔で土煙りの中に突っ込もうとする。だが、それを横合いから阻む者がいた。

 『魔神』である。飛翔し、千冬の元に向かおうとする一夏の進路上に出て、彼を押し留めるかのように片手を上げた。

 

「なんだよ、お前……!」

「…………」

 

 唸りながら一夏は『魔神』に問う。しかし『魔神』は何も語らない。ただ、そこに在るだけ。

 

 そもそも、こいつが……!

 

「どけ」

 

 低く、轟くような声。普段の彼からは想像も出来ないような声が放たれる。

 

 こいつが、千冬姉を……!

 

「どけ……!」

 

 だが『魔神』は応えない。道を譲る事もしなかった。そんな『魔神』に、一夏は己の中で何かが切れたような音を確かに聞いた。

 

 こいつが、千冬姉を!

 

「どっけぇえええええええ――――――っ!!」

 

 怒りの咆哮を上げ、一夏は雪片弐型を『魔神』に打ち込む!

 だがそれは、当然歪曲フィールドを貫く事は無かった。ただ叩かれた瞬間に、一瞬だけ目に見える表面に波紋を発生させるだけ。それでもと一夏は雪片弐型を放つ!

 『魔神』はしばらく一夏のするがままに任せ、やがて左手を横に振って雪片弐型を受け止めると、そのまま一夏を吹き飛ばす。

 一夏はなんとかPICで後退しながらバランスを取る事が精一杯であった。ぐっと呻き、再度『魔神』へと攻撃を再開しようとして――『魔神』が自分を吹き飛ばした左手を、そのまま突き出して己に向けている事に気付く。

 『魔神』左手装甲部分にある宝玉にも似たパーツが輝き、次の瞬間、一夏は地面へと減り込まされた。

 これは、無人IS二機を同時に葬った重力操作攻撃! 一夏は攻撃どころか立ち上がる事すら叶わなくなり、地面に跪いた。

 

「く……ぐ……っ!」

《い、一夏ぁっ!》

《こんの……っ!》

《させるもんですか!》

《よくも、教官と一夏を……っ!》

 

 一夏の有様に凍りついていた少女達は我に返る。

 直ぐさま、それぞれの武装を『魔神』へと差し向けた。しかし。

 

「…………」

 

 それより早く『魔神』が右手を彼女達に掲げた。同時、空を飛んでいた彼女達も地面へ叩き落とされる。

 

《くっ……。これ、は!》

《う、動けませんわ……!》

《う、うぅ――っ!》

《こん、なのぉっ!》

 

 少女達もまた一夏同様、地面にクレーターを作りながらどんどん減り込んでいく。PICとスラスターを全開にして何とか逃れようとするが、身動き一つ取れない。そんな少女達の苦悶の声に、一夏はぎりぎりと歯を噛み締める。

 

「くそ……っ、みんな……! 俺は、みんなを守るって決めたのに……っ!」

 

 肝心な時に、なんで何も出来ないのか。

 力が欲しい時に何故無いのか。

 噛み締める歯から血が溢れる。奥歯にでも皹が入ったのか。

 そんな一夏に『魔神』は歩み寄る。すると、一夏の首を掴んで吊り上げて見せた。『魔神』は己が発生させた重力波は効かないのか、平然としている。

 

「……さっきの奴とは違うな。歪曲フィールドをどうやって斬り裂けた?」

 

 声が一夏に届く。そこでようやく一夏は声が低い事に気づいた。さっきまでは無人ISを叩きのめす『魔神』の力ばかりに目を奪われていた為に分からなかったのだが、声は男のものであったのだ。

 『魔神』の操縦者が男である事に一夏は驚き、しかし構わない。掴まれた手を振りほどこうと、手を伸ばす。だが重力波に捕まった『白式』と自分の腕は言う事を聞かなかった。

 そして『魔神』もまた一夏に構わない。残った右手を『白式』の胸部装甲部分に押し当て――。

 

「……少し、調べさせて貰うぞ」

 

 

 次の瞬間、『白式』が唸り声を上げた。同時に一夏の脳裏を衝撃が走り抜ける!

 

「があぁああああああ――――――っ!?」

《一夏!?》

《一夏さん!?》

《一夏ぁ!》

《一夏!》

 

 とても己が発したとは思えない悲鳴が自分の口から放たれる。それを聞いて、少女達は一夏に呼び掛けた。しかし、聞こえていよう筈が無い。

 そして一夏の脳裏に様々な映像が走り抜ける。

 

 なんだ――これは!

 

 様々な数式の羅列。意味不明の物体。鋼の巨人。光の巨人。異世界。次元の狭間。平行世界。負の無限力。正の無限力。因果率を歪める者。虚空の使者。黒き堕天使。黒き悪魔。

 

 ――精霊。フルカネルリ式永久機関。ラプラス・デモンズ・コンピューター。

 

 ――念動力。サイコドライバー。T−LINKシステム。ウラヌスシステム。

 

 次々と展開していく情報が己に、『白式』に流れ込んで行く。その中で、『魔神』が驚いたような声を漏らした。

 

「……なんだ、これは……! ISコア? ”フルカネルリ式永久機関を擬似的に再現しているだと?” しかも”精霊に似た存在を確立しつつある”……。馬鹿な、これではまるで魔装機神では無いか。それに、この少年――!」

 

 そして、『白式』が叫び声を上げ――!

 

 ONE−OF−ABILITY:『零落白夜』

 

 EVOLUTION!

 

 ONLY−ONE−CRASH−ABILITY:XN−DIMENSION−『色即是空』

 

 DRIVE START?

 

 ――直後、雪片弐型が再展開。エネルギーがほぼ0の筈なのに、光刃を生み出す! それを一夏は無意識の内に振るった――次の瞬間、光刃は重力波を全て叩き斬った。

 

「な……」

 

 一夏が成した結果に、『魔神』が呆然と呻く。一夏は、その瞬間を見逃さない! ぎらりと『魔神』を睨み付けたかと思うと、再び光刃を生み出した雪片弐型を振り上げる!

 

「ぉおおおおおおおおぉおおおっ!」

「っ!?」

 

 届け――! それだけを思いながら雪片弐型を振り下ろす。その一撃は『魔神』の歪曲フィールドを容易く斬り裂いて。

 

「一夏、やめろっ!」

「……へ?」

 

 響いた声に間の抜けた声を一夏は上げると、光刃はあっさりと消え去った。刃を失った雪片弐型は『魔神』を通り過ぎ――『魔神』はその隙を逃さず一夏に拳を叩き込む。

 シールド・エネルギーどころか絶対防御分のエネルギーも使い果たした『白式』は、それに何の防御反応も返せず、一夏は腹を打たれた。

 

 ち、千冬姉……?

 

 埃だらけとは言え、”無傷な彼女”の姿を見ながら、一夏は意識を手放したのであった――。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「……”アストラル・エネルギー”を招来したか、無茶な真似をする」

 

 『魔神』、イングラムは気絶した一夏を腕に抱えて、呆れたように呟く。

 まさか、ここまでやるとは。それに、この少年――。

 ついに見付けた。そう、イングラムは笑う。

 そんな彼の元に千冬と少女達が駆けつけた。イングラムは手に抱える一夏を、ツインテールの少女、鈴に渡す。

 

「一夏!? ちょっと、大丈夫なの……!」

「心配はいらない。眠っていれば、その内目を覚ます」

 

 一夏を受け取って、鈴ならず一同は心配そうな顔となる。だが、イングラムにそう言われ、驚愕も顕に目を大きく見開いた。

 それはそうだろう。声は男のものであったのだから。

 

『『お、男……!?』』

「俺の事はどうでもいい。……しかし済まなかったな。荒っぽい助け方になってしまった」

「……いいさ」

 

 驚きの声を上げる少女達に構わず、イングラムは千冬に謝る。彼女は肩を竦めて苦笑した。そして、先程自分が居た場所――グランワーム・ソードが突き立った場所を見る。

 そこには”大剣を撃ち込まれ、機能を停止した”例の無人ISが居た。

 地下、千冬が居た場所の真下に居たのである。彼女がそこに留まっていた最大の原因が、それであった。自分の足元にこれが居たのである。まるで機を伺うように。

 自分一人ならともかく、背中に少女を抱えている状況で無理は出来なかったのだ。

 そして、それに気付いたイングラムがグランワーム・ソードで無人ISを潰そうとしたのである。

 しかし、その光景を千冬を殺そうとしていると勘違いした一夏が邪魔してしまったと言う訳であった。自らの存在に気付かれた無人ISがいつ真上の千冬を襲うか分かったものでは無いため、強行手段に出たのだが、結果として大量の土煙りを上げる羽目になり、そんな視界性0な所に半狂乱となった一夏を向かわせる事も出来ず、留めた訳だが。その行動が更なる誤解を加速させてしまった訳だ。

 ……元はと言えば一言も話そうとしなかったイングラムが悪いので、彼に関しては自業自得。一夏は運が悪かったとしか言いようが無い。

 ともあれ、ようやく事態を把握して少女達も罰の悪そうな顔となる。イングラムはそれに構わず、ゆっくりと浮き上がった。

 

「……流石にこれ以上戦いはないだろう。俺は行く」

「待て――と言っても聞かないのだろうな」

「分かりきっている事を聞くな」

 

 千冬がイングラムを見上げて問うが、彼はあっさりとそう応えた。

 千冬は苦笑する。その上で周りを見渡して苦い顔となった。

 駅前はすでに瓦礫の山となっている。それだけでは飽き足らず、クレーターを何個も大量に作り上げている始末だ。

 市街地でのIS戦。ここまで被害が出たとなると、後々どれだけの事態となるか分かったものでは無い。少なくとも臨海学校は無理だろう。

 一夏達も警察の厄介となりそうであった。だが。

 

「それなら心配はいらない、”すぐ戻る”」

「……何だと?」

「気にするな、すぐに分かる。ではさらばだ――ああ、そうだった」

 

 千冬が怪訝そうな顔で、どう言う事かと聞くがイングラムはさらりと受け流す。代わりに、苦笑だけを彼女に送った。とても申し訳なさそうな、そんな顔を。

 

「……すまない。荷物持ちは、やはり出来そうにない」

「なに……? まさか、お前――!」

 

 直後、”世界がぱりんとガラスのように割れた”。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 気付けば、シャルロット・デュノアはそこに戻っていた。”駅前のショッピング・モール。アクセサリーショップ前に”。

 何が起きたか分からずに、シャルロットは目を白黒させる――と、彼女へと何かが倒れ掛かって来た。彼女はすぐにそちらを向くと、大きな目を見開く。

 倒れて来たのは、一夏であったのだから。

 

「い、一夏っ!? え? ど、どうなってるの?」

「うーん……」

 

 慌てて彼を抱き留めるシャルロット、しかし一夏は呑気な寝言を漏らす。

 そんな二人を”ショッピング・モールを歩く客達”が微笑まし気に見ていた。

 何も変わってない。”無人ISが最初にビームを撃ち込む前と、何も!”

 ショッピング・モールはどこも壊れておらず、人は普通に歩いている。これは、どう言う事なのか……?

 一夏を抱き留めたまま、腕時計に目を落とす。やはりだ。時間も戦いが起こる前、正午を過ぎた時間にまで戻っている。

 

「……夢、だったの……?」

 

 自分で言って、しかしシャルロットは自分で否定する。

 あれは夢なんかじゃない、間違いなくあの戦いはあった。一夏が眠っているのが良い証拠である。しかし、今シャルロット達が居る現実はそれを否定していた。

 

「と、とりあえず、皆に連絡しなきゃ……!」

 

 そう言うなりISを準待機状態で起動し掛け、それが条約違反である事を思い出してブンブンと頭を振り、すぐに携帯電話を取り出してあの戦いに巻き込まれた筈の皆へと電話を掛けはじめた。

 

 

 

 

「カバラ・プログラム、オフ。アストラル・サイドを閉鎖する」

 

 一方その頃、イングラムは路地裏にて、呻き声を上げて壁に体を預けていた。

 荒げた息で、時間を確認する。時間は自分が撃たれる直前に戻っていた。それに安堵の息を吐く。

 

 −おやおや、たかがこれしきで息を上げられては困りますよ? イングラム・プリスケン?−

 

「……黙れ」

 

 相も変わらず、自分の内から響く声にイングラムは呻くようにして反論する。そもそも”魔法”と言うのが使い慣れていないのだ。このくらいの消耗は致し方無いだろう。

 イングラムは無人ISに撃たれた瞬間、グランゾンのカバラ・プログラムを起動。

 精神世界(アストラル・サイド)へと、ここら一帯の時間と事象を切り離して飛ばしたのである。

 後は戦いが終わってから正常な時間に自分達をシフトさせるだけ。しかし、それはイングラムに多大な消費を与えていた。

 ふぅとイングラムは重い息を吐き、そして己の内へと再び問い掛ける。

 

「……戦いも終わった。先程の問いに答えて貰うぞ、”シュウ・シラカワ……!”」

 

 その台詞に、己の内で再び彼、シュウ・シラカワが微笑を浮かべた気配を、イングラムは確かに感じたのであった。

 

 

(第十話に続く)

 




はい、第九話でした。
白式が何か妙な能力に目覚めましたが、うん。テスタメントなので仕方ない(笑)
読みは、オンリーワン・クラッシュ・アビリティーとなります。SRXか!(笑)
次回は、今更のキャラ紹介。ではではー。
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