お姉ちゃんと一緒 作:そろそろまぜろよ
少女、宮永咲はいま危機に陥っている。
「ここ、どこ……?」
齢15の彼女は迷子であった。
(こんなことになるならおトイレ行かなければよかったよ……)
はじまりは帰りのHR終わりまで遡る。
普段は同じクラスの子と一緒に部室に向かっているのだが、この日はトイレに行きたかったため先に行ってもらっていた。
そこまではよかった。
想定外だったのは、トイレを出た直後担任に遭遇し、お手伝いを頼まれたことだ。
私立ということもあり、無駄に広い校舎の、さらに誰も行かないであろう別棟へ資料を運ぶ仕事を終え、さぁ部活だと切りかえたときにはすでに時遅く。
入学してまだ2ヶ月を経過したくらいの咲には現在地がわからないでいた。
「さて、どうしようか……」
部活は既に始まっているだろうし、道を聞こうにも人が通る気配はない。携帯も持っていない咲は絶体絶命であった。
こうなったらオーラを出して気づいてもらうかと早まった思考に囚われそうな時
「咲、やっと見つけたし!」
「華菜さん!」
「もう、すぐ迷子になるんだから」と言いつつ現れたのは2年の池田華菜であった。
「咲もいい加減携帯持ちなよー」
「でも持ってても使い方が……」
「照先輩だってメールくらい使えてるよ?」
「うう……」
風越女子高校麻雀部。
世界で絶大な人気を誇る麻雀という競技において、
広い部室には牌を打つ音や副露を知らせる声、牌譜を検討し合う者などの話し声に満ちている。
その一角に咲と華菜はいた。
ソファーに座りお茶を飲む咲に待っていたのは先輩からのちょっとしたお小言。しかしながら機械に疎い咲には難しい話である。
「この際だから言うけどさー、咲も大会に出たらインタビューとか受けるんだし、人見知り卒業しようよ」
「お姉ちゃんがいるし、私にまで取材は回ってこないかなー……なんて」
「それは絶対ないから大丈夫」
インターハイチャンピオンの妹が弱いはずがなく、その自覚がかける咲に華菜はため息をついた。
そもそもとして、4月まで校内ランキング4位、OGとの練習試合でのトップ率31%という好成績を残していた華菜が、咲には手も足も出ない。
それだけ圧倒的な実力なのだからマスコミが放っておくはずはないのだ。
なおもごねる咲とそれを説得しようとする華菜であるが、2人がいるのはインターハイ3連覇を目標に掲げている麻雀部である。
練習もしない生徒がいれば目立つわけで。
「2人とも、お喋りもいいけれど、そろそろ練習しましょ?」
「もうすぐ久保コーチも来るわよ」
「キャ、キャプテン! 部長も!」
声をかけてきたのは3年生の福路美穂子と
現在の風越の黄金期を支える2人の登場に、あともう1人足りないことに気づく咲。
「部長、お姉ちゃんはまだ来てないんですか?」
「あら、言われてみれば居ないわね」
普段であれば部員に指導するか本を読んでいるかしている照が今日に限っては見当たらない。
「あ、照先輩なら先ほど咲ちゃんを探しに行くといって出ていかれましたけど……」
「え゛」
近くにいた生徒が教えてくれた内容に冷や汗が垂れる。
——あの照がひとりで?
——そのようです。
「……」
「……」
「ま、まぁ照は携帯持ちだし大丈夫でしょう。というかそうであって欲しいわね……」
「そうねぇ。とりあえず私たちだけで打ちましょうか」
「あはは……」
さっきまで迷子であった咲は苦笑いを浮かべながら卓に着くのだった。
「ここどこだろう……」
ちなみに、部活終了間際まで帰ってこなかった照を探すため部員総出で探索し事なきを得た。
照の携帯は部室に置いてあるカバンの中であった。
「お姉ちゃん、携帯電話は携帯してこそだよ!」
「ごめんなさい……」
◆◇◆◇◆◇◆
風越の団体戦メンバーの決め方は単純である。
強いものが選ばれる。
たったそれだけのこと。
したがって普段から部内では活発に交流戦が行われ、日々個人のランキングが上下する。
総勢100人を超える部員がいる中で、このランキングが5位以上であればレギュラー入りであるから部員は必死になって努力する。中には、腕を買われて県外からやって来ている生徒も少なくないことから競走の激しさがうかがえる。
しかし、それでもなお上位3つは2年前から不動のものとなっていた。
この4月までは。
「ツモ。メンツモタンヤオ三色嶺上開花赤1は3000、6000です」
「ぬあー! 最後の最後でトんじゃったー!」
「咲ちゃんはやっぱり強いねー」
「さすがは照先輩の妹! って感じね」
「ありがとうございます」
季節は6月。
今年のインターハイのメンバー決めの交流戦は佳境を迎えている。
咲も今しがたの対局で全戦を終え、後は結果を待つだけになった。
といってもある1局を除いてトップを取ったのだから分かりきっていることではあるが。
「みんな注目してくれ。今年のメンバーを発表するぞ」
対局を終え、同じ1年生の部員と雑談に興じていたところデータの集計が終わったようだ。
全部員の視線が集まる中、久保コーチが口を開いた。
「今夏は今から言う者たちで全国を獲る。心して聞くように。
先鋒、宮永照。次鋒、福路美穂子。中堅、上埜久。副将、池田華菜。そして大将、宮永咲だ。今呼んだ5人は後で集まってくれ。以上」
周りがワッと沸く。
「宮永さんすごい!」
「まあ順当な結果だね」
「咲ちゃん頑張ってよ!」
「ありがとう、みんな」
祝福の声に恥ずかしそうにしながらも笑って返す咲はひとまず安堵する。中学の頃までは公式大会に出たことがなく、家族麻雀のみで育った咲は夢があった。
まだ見ぬ強敵と麻雀を楽しむこと。
それの第1歩を踏み出した。
——さあ、始めよう。
——全部、倒す!
◆◇◆◇◆◇◆
長野県某所。
山の中腹にある展望台に1人の少女の影があった。
その体躯は小さく、頭にはウサギの耳のようなヘアバンドが着いている。一見幼い子どもに見えなくもないがれっきとした高校生である。
「ふふっ、照と戦えないのは残念至極であるが良い事を教えてもらった」
手すりに座る少女は月を見ながら笑う。
去年戦い、そして友となった友人からの報せは2つあった。
自分が先鋒であること、そして妹が大将として出場すること。
「咲。果たして照の妹としてふさわしい強さを持っているのか、見極めてやろう」
少女の名は天江衣。
昨年度のインターハイ個人2位の実力をもつ彼女の瞳には、炎が灯っていた。
○池田華菜
風越2年。去年は先鋒として団体戦を経験。
後進の育成ということでエース区間にぶち込まれ無事にもみくちゃにされた模様。
3つ子の妹がいる。
卒業までにコーチに「池田ァ!なんだその猫みたいな髪型は可愛いぞォ!」と言わせたら勝ち。
○上埜久
風越3年。生徒会長かつ麻雀部部長。
離婚(推定)なんてなかったんや!という世界線で県内トップの風越に入学したらくっそ強い女の子に出会い改造された。結果として1年時から団体戦メンバーに選ばれる。
インターミドルでも活躍してたみたいだし妥当だよね!
3年生トリオの中心にいるイメージ。
○福路美穂子
風越3年。その安定感から麻雀競技の中では中心として据えられ部員にはキャプテンと呼ばれる。麻雀部副部長。
久と同じく入学したら弱点やらなんやら見抜く女の子に改造された結果1年時よりレギュラー。
お嫁さんスキルは部内トップ。久と一緒にいることが多い。
○宮永照
風越3年。インターハイチャンピオン。
入学直後に久に出会いなんやかんやあって麻雀部へ。
照魔鏡で部員の長所短所を見抜きアドバイスをすることが多い。
今年は咲と一緒に大会へ出れるため楽しみ。だけど地区予選では先鋒で終わらせないようにセーブさせられる模様。仕方ないね!
お菓子大好き。キャプテンの作った差し入れを頬張っているのがデフォ。でもおもちはちいさい。
方向音痴。
携帯は衣と連絡を取るため透華に持たされた。最近は掲示板なるものにハマりつつある。
○宮永咲
風越1年。全部ゴッ倒す系魔王。
○天江衣
こどもじゃない衣だもん!
去年の個人戦準優勝者。ぅゎょぅι゛ょっょぃ
今年は照の妹が出ると聞いてワクワクが止まらない。
高台にいがち。ハギヨシが迎えに来てくれるため迷子の心配はない。
キャプテンはやっぱりキャプテンって呼ばせたかったので無理やり設定です。許し亭許して…
3年生トリオは久の姉御パワーでキャプテンを虜にし天然照を手懐けました。
こんなに能力者いたら誰か覚醒しちゃいそうだなーチラチラ
次回から地区予選です。