ダンまちで戦う()のは間違っているだろうか   作:ふぁあが

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第1話

 異世界は剣と魔法のファンタジーが舞台、というのは想像上の話だけだと思っていたが、どうやらこの目で実際に見て、事実と合致するようだと知った。

 

 生を受けること2回。16年の生前と11年の人生を経て得た知見である。ちなみに一回目の生では高校生をやっていたところをダンプカーに跳ねられ諸共ガソリンスタンドに突っ込み大爆発死、そして生まれ変わった現在は片田舎で只人(ヒューム)の少年、カイル・アロイスとして村人生活に勤しんでいる。

 

 剣と魔法の世界と言っても、片田舎の村では魔法を使える人間も俺が知ってるのは一人だけだし、剣も自警団がいくつか所有しているくらいで俺には全く関係ない。感覚的には中世のヨーロッパあたりにタイムトリップしたようなもので、そんな日常が11年も続けば本当に俺はウェブ小説でよく見た異世界転生モノの主人公と同じ境遇に遭っているのかと疑わしくなる。

 

 まあそんな感じで、俺はモブ人生を順調に生きていた。時々元冒険者を自称する親父が修行と称して殺しにかかってくるが、それも今では日常の中に溶け込み違和感すらなくなっている。お陰で見えない場所から放たれた投石を避けたり曲芸師の真似事が出来るようになったが、それもまあ魔法や冒険者なんてモノが存在するこの世界では些事のようなものだろう。

 

 正直に独白すると、恥ずかしながら、俺は自分が特別なんじゃないかと思っていた。何せ異世界転生は主人公の専売特許だ。何もしなくても向こうからイベントが舞い込んでくるのではないかと、俺はひょっとしたら主人公になれるのではないかと思っていた。

 

 しかしここまでくれば、俺はもうこのモブ生を謳歌する事に何の抵抗もなくなっていた。むしろ普通万歳、平凡万歳。ある程度科学が発達し良くも悪くもせわしかった前世では味わえなかった、平和で穏やかな時間を俺はいつの間にか大切にするようになっていたのだ。

 

 ビバ村人。ビバ幸せなスローライフ。俺は、この村で生き、お嫁さんを適当に貰い、そしてこの村で死んでいくのである。本当に、なんてすばらしい人生なのだろう。

 

 

 

 

 

 そんな風に考えていた所為だろうか。親父が俺の部屋を燃やしているところを見て、俺はまるで冷やした氷に熱した鉄を流し込んで水蒸気爆発を引き起こしたかのような衝撃を受ける事となった。

 

 

「何してんだ親父いいいいいいいい!?」

「ふんっ!」

「ぐふっ」

 

 思わず飛び膝蹴りを放った俺に対して、親父は腹に拳を突き立てる形で応じた。真顔で俺の部屋を燃やしていた親父は、飛び込んできたのが俺だと認識した途端に、屈託のない笑顔を浮かべ手を上げた。

 

「お、来たかカイル!今お前の部屋を消し炭にしているところだ。どうだ、炎の輝きが綺麗だろう?」

「綺麗だろう?じゃねえよクソ親父!俺の部屋になんてことしてくれてんだ!」

 

 ちなみに、俺の部屋以外の場所は謎のバリアが張られていて炎の手が回らないようにされていた。親父の持つ魔法の力だ。バリアなんていかにも強キャラが持ってそうな力だが、それをこんな事に使うとか馬鹿なの?死ぬの?

 

 というか、俺はなにしてんのかって聞いてんだけど!?

 

「これは初めから決められていたことだ。今日はお前の誕生日だろう?『俺の息子は12歳になるまで育てる。それ以降はオラリオに適当に放り込む』。お前が生まれてくる前から、俺はそう決めていた!」

「何が決めていただ!?生まれる前からそんな壮絶な人生設計されてたとか糞食らえなんですがお父様!?」

「お前の意志など関係ない!というか、もうお前の部屋燃やしちゃったもんね。この家にお前の居場所はないし、村の皆にもお前を泊めたりしないように頼んであるから、この村にいると下手すりゃ餓死するぞ」

「お前、本当に一児の父親なのか…?」

 

 親にあるまじき言い草に、戦慄を覚えて震えた声でそう尋ねる。

 

「カイル…」

 

 ざ、という足音を聞いて振り返ると、そこには母さんがいた。この村で一番の美人であり、心優しい自慢の母親だ。

 

 俺は母さんに縋り付いた。

 

「母さん!親父が、親父が俺の部屋を!」

「私からは何も言えないわ…だけどこれだけはさせて頂戴」

「母さん、何を…ナニコレ」

「剣よ。これできちんと自分の身を守って、生き延びて」

「母さん…!あんただけは俺の味方だと思っていた…!」

 

 母さんは慈愛の籠った眼差しで俺の肩に手を置き、そして片手剣を俺の胸に押し付けるようにして持たせてきた。

 

 後門の親父、正門の母親。どうしてこうなったんだろう。俺、何かやっちゃいました…?

 

「そういう訳で旅立ちの時だカイル。まずはオラリオを目指し、そこで最強の冒険者になってきなさい。いっぱしの英雄になるまでこの村に帰ってくる事は許さんぞ」

「頑張ってねカイル。寂しくなるし、悲しいけれど…私、泣かないわ…。私たちはここであなたの事をずっと見守っているからね」

「村長じゃ。見送りに来たぞ。父親から聞いたが、冒険者になって英雄となり、この村の知名度を上げてくれるそうじゃないか。そう簡単に死ぬんじゃないぞカイルよ」

「幼馴染の私も来たわよ!英雄になったあんたと結婚すれば玉の輿に乗れるってお義父様から言われたわ!ここで応援してるから、ちゃんと英雄になって帰ってくるのよ!」

「カイル兄!都会のお菓子沢山送ってくれるって本当?冒険者になってたくさん稼いで、お菓子沢山買ってきてね!」

 

 いい笑顔で俺と村の間に並び壁となり、言外にこの村に俺の居場所はないと言ってくる知り合いたち。

 

 ち、畜生…引き止めてくれる奴が誰もいない…!みんなして、俺がいなくなっても良いってのかよ…!

 

「み、みんなのばかああああああ!」

 

 俺は、泣きながらその村を後にした。

 

 こうして俺は旅立つこととなった。唐突に日常を失い、知り合い全員に裏切られた俺はただただ一人孤独に走り続けるのだった。

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