(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第22話

「......それ、マジっすか?」

 

私たちがうなずくと完二は唸り始めた。

 

「もしかして、オレに興味ってそーいう......?」

 

「どうしたの、完二くん。なにか心当たりでもあるの?」

 

「へ?いや、違うっつーか......そのー......。すんません、オレ頭良くないんでよくわかんないんすけど、呼び鈴がなったら注意しろってことっすよね」

 

「そういうこと。今のところ、巽屋の女将さんか巽のどちらが狙われるかわからないから、気をつけろってこと」

 

「そーっすよね。尚紀の姉ちゃんや天城先輩、神薙先輩まで攫われてんなら、お袋も拉致されたらひとたまりもねーもんな。わざわざ教えてくれてあざっす!」

 

「巽屋の女将さんだけじゃない、巽も狙われてるかもしれないんだ。お前も気をつけろよ」

 

「大丈夫っすよ、月森先輩。オレ喧嘩だけは得意なんで!先輩方の分までボコッて警察に突き出してやりますよ!......でも、心配してくれてありがとうございます!いつかお礼はしますんで!それじゃ!」

 

深々と頭を下げた完二は、それじゃオレはこれで、と去っていった。6時を告げるどこかのお寺の鐘がなり始めた。

 

「たしかに話してみるといい子だったね、完二くん」

 

「でしょ?誤解されやすいんだよ、あのこ」

 

「帰っちゃったけど大丈夫かなあ?完二くん、全然心配してなさそうだったよね」

 

「まあ、被害者が女の子ばっかだし......暴走族100人1人でタイマンしたやつって話だし、自分は大丈夫だと思っても仕方ねーかもなあ......」

 

「見た目だけのも含めてな」

 

「絶対話の半分も理解してないよね、あの子。あたし真面目に心配なんだけど」

 

「でも、里中先輩たちが本気で心配してくれたのはわかったと思いますよ。完二がああいう風に笑うの久しぶりに見たなあ」

 

「そっかあ......ならいいんだけどね」

 

「巽はお父さんを亡くしてるし、他に家族はいないんだ。お母さんが誘拐されるかもしれないとわかったら、さすがに注意するんじゃないかな?」

 

「でも心配だよね......」

 

「しばらくは俺たちも誘拐犯が来ないか注意した方がいいかもな」

 

「あ、メールきた」

 

尚紀が携帯を見る。

 

「霧が出るまでサボりますだって」

 

「学校休んじゃうんだ?!そっかあ......やっぱ完二くんていい子だね。お母さんが心配なんだ」

 

「これで誘拐を犯人が諦めてくれりゃいいんだけどなあ......」

 

「しばらく巽屋さんで張り込みしない?」

 

「そーだね、現行犯しかないわけだし」

 

「みんな、そんなに完二のこと心配してくれるんなら、連絡先教えますよ?」

 

「え、いいの?」

 

「わざわざ俺から連絡いれなくても、月森先輩たちなら無視しないと思うし。あとから完二にはいっとくんで」

 

そういって尚紀は完二の連絡先を教えてくれた。ついでだからと自分の連絡先まで教えてくれた。俺にはこれくらいしか出来ないし、と笑う尚紀に、月森が充分だと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後、鉄骨が組まれた足場や照明機材など、テレビの撮影スタジオのような外見をしているエントランスに私たちはいた。

 

「センセイーッ!みんなー!待ってたクマァアアア!おーいおいおい」

 

クマは本当に私たちを待ちわびていたようで姿を認めるなり月森に飛び込んで泣き始めた。

 

「シャドウのアキラがアキちゃん呼んでくれなかったら、ほんとにクマ......怖かったクマよおおお!!

 

私たちが放課後すぐにマヨナカテレビにやってきたのは、昨日の夜、マヨナカテレビの予告に変化がないか確認していたら、シャドウのカミナギアキラが現れたのだ。なにかあったのかと驚く私に聞きたいのはこっちだと苦々しげにシャドウはいったのだ。

 

「オレのダンジョンにお前の知らないシャドウが現れやがった。《刈り取るもの》でも《グリムリーパー》でもない。《魔人》によく似てるが非なるモンだ。シャドウを根こそぎ食い荒らしてやがる。このままだとオレもクマも食われかねん。なんとかしてくれ」

 

シャドウがシャドウを捕食するなんて聞いたことがなかった。私はあわてて月森たちに連絡したというわけである。

 

「シャドウがシャドウを食うとかやばすぎんだろ、それ......まだ犯人捕まってねえってのに、シャドウやペルソナ剥ぎ取るグリムリーパーが現れるってのに、さらに食うやつまで現れるとか......」

 

「なんか、くるたびにどんどん物騒になってくね......」

 

「怖いね......」

 

「グリムリーパー放ってるやつが、新手を放ったのか、どこかから潜り込んできたのかわからない。でも、このままじゃ新しい被害者がでたときに、オレたちが気づく前に死んでしまう。そいつが倒せそうなら倒そう」

 

「天気が悪い時に出るつえーシャドウの変わり種だったらいいのになあ」

 

「そうだな......」

 

「本気でヤバかったら、リヒトさんを頼るとして。ベルベットルームにはいなかったから、一回調べてから連絡とるか考えよう」

 

「さんせー」

 

「新しい被害者?え、そっちはなにか動きがあったクマか?」

 

きょとんとするクマに月森が完二について掻い摘んで説明しはじめた。小西先輩が横から補足する。

 

「なななんとおー!?クマが一人寂しくお留守番してる間に、そんなに調べてきたクマか!?さっすがはセンセイッ!さすがクマァ!!今のところ、カンジって子がテレビに入った気配はしないクマ!なにかあったらすぐ知らせるクマよ!」

 

「よかった、やっぱり誰かマヨナカテレビの中に入らないとこっちに変化はないんだな。そのやばいやつが現れた以外にこっちの世界に変化はないか?」

 

「うんむー、サキちゃんが最後クマねー。誰か新しい人が投げ込まれて、新しい空間ができた訳でもないしー、あいかわらず新月や満月になると《魔人》は出るし、ずっと同じところにいたら《刈り取るもの》が出てくるし」

 

「《グリムリーパー》はでないん

だ?」

 

「そうクマねえ......リヒトが調べに来る時だけ現れるクマ」

 

「そうか......やっぱり誰かがマヨナカテレビにいる時だけ出てくるんだな」

 

「そうクマねー。奥に行けば行くほどみんな出てくる確率が上がってる気がするクマ」

 

「ほんと、この世界なんなんだろうね」

 

「どんどん街が広がってくよね、なんか気持ち悪い」

 

「もうひとつの八十稲羽市、みたいな」

 

「もうひとつの八十稲羽市、か......」

 

「晃ちゃん?どうかしたの?」

 

「うーん......霧がでる範囲とこのダンジョンの広がり方が連動してる気がしてさ。このままいったらどうなるかと思うと薄ら寒くて」

 

「なんかすっごいホラーだね......」

 

「なあ、クマ。そのヤバいやつ、今どこにいるかわかるか?」

 

「わかるクマよ!案内してあげるクマ!センセイたちだけが頼りクマ!」

 

そういってクマはスタジオから歩き出す。小西酒店を中心としたダンジョンが追加されたためだろうか、辰姫神社のダンジョンにアクセスがよくなっていた。その先には雪子姫の城ダンジョンがよく見える。商店街を中心に街によく似た風景が前より広がっているのがわかる。いつ来ても気味の悪いところだ。それゆえにそのやばいシャドウも行動範囲がとてつもなく広く、1度見つかるとどこまでも追いかけてくるという。《刈り取るもの》と違うのは、どいつもこいつも《魔人》みたいに死神の姿をしているがシャドウも標的になることだ。

 

今行けるところをクマが先に提示してくれる。

 

まず、誰かの心を反映した場所。殺風景な小さな部屋で、顔の部分が破かれたポスターが各所に張られている。ここはテレビの中に落とされた山野真由美の心を反映した場所であり、顔の破かれたポスターは生田目の本来の妻である歌手・柊みすずのものかもしれないという。シャドウの本体が死んだらここまで小さな部屋になってしまうのだ。

 

そして、異様な商店街。小西先輩の心を反映した世界だ。稲羽中央通り商店街に酷似しているが、空が不気味などす黒い赤になっている。彼女の実家を模した箇所では商店街とジュネスに対する負の感情を誇張した言葉がこだましているが、本人はもう吹っ切れたようで気にしていないようだ。

 

雪子姫の城とみんなが呼ぶことになる雪子の心を反映した世界は、生まれつき運命が決められて束縛されているという苦悩と、それから脱したいが、自分で抜け出す勇気は無いから誰かに連れ出してほしいという願望が歪められたことで、お城で自分を連れて行ってくれる王子様を待つ、囚われのお姫様というメルヘンチックな形になった。内装は、当初自分の王子様になってくれる(助けてくれる)と期待していた千枝への意識を反映し、赤色一色で染め上げられている。

 

「で、肝心の居場所は?」

 

「アキラのいつもいる辰姫神社クマ」

 

「えっ、そこってまさか......!」

 

「え、ま、待って、そこって晃ちゃんのダンジョンだよね!?く、クマくんっ」

 

「シャドウの神薙は避難してるけど大切な思い出のダンジョンを荒らされたら嫌だよな......」

 

「だからわざわざ私に接触してきたんだしな。シャドウの私なら昨日から悪魔絵師がくれた《吊るされた男》のカードで待機してるよ。《ヒルコ》降ろしたら話せるけどどうする?」

 

「神薙は《ヒルコ》使わないでくれ、敵の正体がわからない以上、シャドウの神薙がスキルが全てつかいものにならないっていってたんだろう?ペルソナが変えられる神薙の方がまだ戦える」

 

「そう?わかったよ」

 

私は《吊るされた男》のカードをしまった。

 

クマに案内された辰姫神社は、たしかに鳥居をくぐる前から異様な気配があたりを支配していた。濃厚な殺意というか、死そのものというか、本能が理解することを拒んでいるおぞましいなにかがそこにいた。

 

辰姫神社は、巽屋のすぐ隣の石段を登った先にある神社だ。御祭神は豊玉昆売命(トヨタマヒメノミコト)で、ご利益は開運や安産、水難除厄など。人気の少ない神社だが、夏休みや大晦日には催しが行われてそれなりに人が集まる。裏山では精力増強などの効果がある葉っぱが取れたらしい。

 

ちなみに狐のコミュを完了させるとおみくじがひけるようになり、直接会わずとも友好度を上げることができるようになる。

 

そんな神社のはずなのだが、石碑に御祭神であるはずのトヨタマヒメノミコトの文字が見当たらない。見たことも無い字がかかれていた。

 

「みんな、くるぞ!」

 

そいつはいきなり襲いかかってきたのである。

 

 

 

雪子

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