(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第30話

 

「なあ」

 

「なにかな、完二のシャドウくん」

 

「おねえさんのシャドウが半分しかないのは、誰かに半分にされたから?」

 

「え?」

 

「お母さんをここまで連れてきたの、おねえさんのシャドウだったよ。ううん、正しくはそのシャドウでできた入れ物をつかって好き勝手してる人がいるんだ」

 

「えっ」

 

「僕はもう1人の僕にはやく会いに行かなくちゃいけない。このままじゃもう1人の僕に受け入れてもらう前に死んじゃう。たすけて」

 

私たちは顔を見合せた。完二のシャドウが意を決したようにここまでの経緯を教えてくれたのである。

 

 

 

 

 

近くの病室から不自然な光が漏れていた。完二はそちらに向かう。誰かが母親をこの世界に拉致し、完二を無理やり引きずり込んだのは間違いないのだ。はやいとことっちめてこの世界から脱出しなければならない。バットを握りしめながら歩き出す。

 

「んだこれ......?」

 

完二は何度も目をこすってみたが、あまり状況はかわらなかった。真っ暗であってもやがて目は闇に慣れてくるはずなのだが、いつまでたっても視界は不明瞭だった。やがてその原因を完二は知る。霧だ。朝の登校風景でよく見るあの霧だ。まるでスモークをたいたように辺り一面霧がたちこめているのだ。おかげで数メートル先になにがあるかわからないレベルだ。

 

だから近くの病室の光がやけにぼんやりと見えるわけだ。ドアノブを回すとすんなり回り、ドアが開く。鍵はかかっておらず、開いていた。ほんの少しだけ開けて様子をうかがってみる。

 

「......ッ!?」

 

そこには異様な空間が広がっていた。

 

ぐったりとした母親が空中に浮遊している。マジックの空中浮遊とはちがい、ほんとうにうかんでいるのがわかる。怪しい呪文が飛び交うさなか、母親がみたこともない光に包まれていくのがわかる。緑とも黄色ともつかない、蛍光色の目映い光だった。直感的に完二は思った。母親が生贄に捧げられている、このままではやばいと。どうしてそう思ったのかはわからないが、完二はドアを開けるなり叫んだのだ。

 

「てめえら、なにしてやがる!」

 

完二がドアを開ける前から誰かが様子を伺っていることには気づいていたのかもしれない。黒いローブをきた集団だった。誰一人として声をあげることなく詠唱を続けている。完二はやばいとバットで殴りかかった。一人があっけなく倒される。もう一人が後ろに吹き飛んだ。呻きすらあげない不気味な集団だ、手応えすらないことに違和感を覚えてバットを見ても血は出ていない。ローブが散乱するだけであたりに人の姿がない。忽然と姿を消してしまった。まさか、まさかまさかゆ、ゆゆゆゆうれ───────!?

 

そこまで考えて詠唱がやんだせいか、母親がいきなり落ちてきた。完二は母親をキャッチしてそのまま抱き抱える。横にそれかけた意識は元に戻った。

 

「おふくろ、おふくろしっかりしてくれ!おふくろ!!」

 

完二の叫びにうっすらとあく目。

 

「完二......?」

 

「よかった......はやいとこ病院いかなきゃな」

 

「それはこまるよ、巽完二」

 

いきなり呼びかけられた完二は弾かれたように顔を上げた。知り合ったばかりの先輩の声がしたからだ。

 

「神薙先輩......?いや、神薙先輩はさっきうちに電話してくれたからぜってー違う。誰だてめえ!」

 

黒いローブをした神薙によく似た女はニヤリと笑った。神薙が絶対にしないようなニヒルな笑い方だった。

 

「君のシャドウ、ペルソナでもいいけれど、置いていってもらわないとこまる。わざわざ巽屋の女将さんをここまで拉致した意味が無いじゃないか」

 

「はあ?シャドウ?ペルソナ?なんだそりゃ??......って待てよ!まさかおふくろを誘拐したのは俺が目的かよ、クソっ!卑怯もんがァッ!!」

 

「《コトシロヌシ》」

 

問答無用の死刑宣告だった。女の真下に魔法陣が形成されたかと思うと真後ろから見上げるほど大きな人ならざるものが出現する。完二はあまりの非現実の連鎖に目を丸くするしかない。《コトシロヌシ》とはなんなのか。日本神話に詳しくない完二でもわかる。あれは人間がまともに相手ができる存在ではないということくらい。冷や汗が完二につたうが、それがどうしたと啖呵を切る。

 

「まさか、てめーらが山野アナをころして、神薙先輩たちを誘拐してた犯人どもか!?」

 

「そうだといったらどうする?」

 

「てめえッ!!」

 

女は笑う。

 

「《コトシロヌシ》、シャドウ剥がしていいよ。ペルソナになるまで待ってられない」

 

《コトシロヌシ》が向かったのは完二ではなかった。

 

「なっ!?こんなとこに子供ッ!?おい、なにしやがる!俺が目的じゃねーのかよ!」

 

完二は叫ぶ。そして《コトシロヌシ》から逃げる子供を庇うように前にたった。

 

「おい、お前こっからおふくろつれてにげろ!」

 

「えっ」

 

「2人もいたんじゃまともに戦えねーからな!」

 

「でも......僕は......」

 

「男ならやるべき時くらいわからんだろ!返事は!」

 

「う、うん......!ありがとう!」

 

「おう!」

 

「死なないでね......完二」

 

「おう......ってなんで俺の名前知ってんだ?まあいっか、よし、相手になってやるぜ、こいよ!」

 

完二はバットを振り上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「間違いないのか?完二のシャドウが巽屋の女将さんをここまで?」

 

完二のシャドウはうなずいた。

 

「なんだって!?完二が?」

 

「君たちを守るために?」

 

「なんつーむちゃくちゃな......」

 

「でも完二くんらしいかも」

 

「月森、はやくいこう。手遅れになる前に」

 

「ああ」

 

「僕も行く。代わりにお母さんをここだして。お母さんはここにいちゃいけない。このままじゃあぶない」

 

「お、そうだな、たしかにグリムリーパーあたりに襲われたらあぶないな」

 

「なら私、いくね。完二くんのお母さんが入院しているところに連れて行ってあげなきゃいけないし。私なら違和感ないと思うから」

 

「えっ、1人で?」

 

「うん、そう。弟呼ぶから大丈夫だよ。だからクマちゃん、私と完二くんのお母さんを連れて行ってくれないかな」

 

「おりょー、そういうことならいいクマよ!この世界から君たちを出してあげられるのはボクだけクマね」

 

「クマが戦線離脱か......わかった。私がここからはナビゲーションするよ」

 

「大丈夫か?神薙。神薙も一緒に帰ったほうがよくないか?いくら魔法で治療できても、精神力まで回復する訳ではないし、貴重なアイテムをこれ以上消費するわけにはいかないから完全回復は無理そうだし」

 

「だから後方から支援するよ。クマがいないんじゃ、こっから先、安心して戦いに集中できないだろ?無理そうならみんなで大事をとって撤退するのも手だよ。完二を助けられるのは私たちしかいないんだからな」

 

「そこまでいうなら、しかたないか......無理だけはするなよ?」

 

「月森もな」

 

「わかってるさ」

 

こうして小西先輩とクマは巽屋のお母さんの精神をを先に保護して現実世界にある肉体に返してあげるために離脱したのだった。

 

 

「どうする、月森。リヒトさんがいうにはグリムリーパーをもったコトシロヌシをつかってくるらしいけど」

 

「まいったな......今から戻るにしてもベルベットルームまでは遠すぎる。完二が心配だ」

 

「完二くんだけどうにか連れて逃げられないかなあ?シャドウくんが協力的だし、なんとかなるかもしれない」

 

「それもありか......」

 

「でもグリムリーパーもちだよな、神薙のシャドウ。完二のシャドウがあぶねーな......。シャドウのカードもってる神薙が本調子じゃないし......。月森、一回帰ろうぜ、こっから《魔人》が出たらガチで死ぬぜ?」

 

「そうだね、クマくんにナビゲーション頼んだ方がいいと思うよ。晃ちゃん、私たちの中で一番早いんだから、やっぱりペルソナも強化して再チャレンジした方がいいと思う」

 

みんなの意見を聞いた月森は決断を下した。

 

「一回撤退しよう、そしてベルベットルームで休憩するんだ。あそこは時間が意味をなさないから。そして、クマとリヒトさんと合流して、また再チャレンジしよう」

 

みんな、うなずいた。月森がトラエストを発動する。気づけば不気味な廃病院のダンジョンから離脱し、すぐ目の前の空間に出た。近くにはベルベットルームの扉がある。私たちは扉をくぐったのだった。

 

 

 

雪子

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