(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第37話

6月16日木曜日曇りのち晴れ、放課後

 

「買い出しどうするー?」

 

「やっぱうちか?ジュネスならなんでも揃ってるぜ、そろそろタイムセールの時間だし」

 

「うちの農園来てくれたら、商品から跳ねた野菜持ってこれるけど」

 

「あー、ダメだよ、晃。レシート後でモロキンに出すって話じゃん。そういうとこきっちりしとかないと怒られるよ」

 

「ああ、そうだっけ」

 

「なら直売所いかないか、あそこなら野菜安いし。ほかの材料はジュネスで買えばいいよ」

 

「なるほど、安く抑えた分、デザートも確保できるってやつだね。なるほどー」

 

「つーか、なにつくるよ。分かれて買い出しの流れなら、今のうちに決めとかないとダメだろ」

 

「キャンプみたいなもんだし、やっぱカレーかな?」

 

「キャンプねえ。なら焼肉とか?」

 

「焼肉もいいね!でもさすがにいくつもは無理だよねー、どうする?」

 

「それより、キャンプなら火を起こすとこからやるんだよね?なら、焼肉はキツくない?」

 

「ならやっぱカレーか」

 

「野菜カレー?おいしそー。晃、今の時期ってなにあんの?」

 

「夏野菜のカレーにする?なら玉ねぎ、なす、ピーマンやパプリカ、かぼちゃ、オクラ、トマトあたりかな」

 

「夏野菜のカレーか、なら肉もいるな」

 

「カレー安く抑えて、なに買うよ。デザートもつくんの?」

 

「うーん、カレー作るだけで力尽きそう」

 

「ならジュネス組が買ってきたらよくない?」

 

「たしかに」

 

「じゃあそろそろ決めるか」

 

みんな、立ち止まる。

 

「最初はグー、じゃんけん、」

 

「いやー、キレーにわかれたね」

 

「お野菜、たくさんあるみたいだし、重くなりそうだからこっちでよかったよ」

 

「えーっと、野菜はあっちが買ってくれるからいらないとしてー。晃、きのこってうってるの、直売所?」

 

「きのこ?あるよ、だから大丈夫」

 

「よーし、ってことはあれだね、肉!」

 

「お肉かあ......私は魚がいいな......」

 

「ならどっちも入れちゃえばよくない?カレーってなんでもありなイメージあるし」

 

「あんまり買いすぎるとデザートの予算なくなるよ、二人とも」

 

「おっと、そうだった。さすがにそれは本末転倒!」

 

「ねえ、千枝、晃ちゃん。先にデザート買わない?」

 

「それいいね!」

 

「じゃあ、いこっか」

 

私たちは先にデザートコーナーで調達を済ませた。

 

「さあて、雪子。残りの予算的に、あんまり余裕なさそうだよね」

 

「そうだね......小麦粉からやってみたかったんだけど、さすがにお金が足りなくなっちゃう」

 

「無理無理無理、香辛料買うくらいならあたし、肉欲しい!」

 

「私もシーフードミックス欲しいかも」

 

待って待って待ってくれ、ちょっと安心してた矢先になんで料理初心者なのにいきなりカレーのルーじゃなくて小麦粉からやろうとしてるんだよ。難易度高すぎるよ、しかも香辛料一個も買わないまま鮮魚コーナー行こうとするんじゃない!!

 

「ならカレーのルーかっちゃおうか、2人とも。ルーさえあればこれだけでいけるしね」

 

私がたまらず口を挟むと、あ、という顔をして振りかえる。いやなんで私をみるんだよ。

 

「小麦粉とか香辛料とか節約できるから、その分肉とか買えるよ、2人とも」

 

「そうなの?晃ちゃん。知らなかった」

 

「全然知らなかったけど、カレーのルーって偉大なんだなー。知らなかったや」

 

なんでカレー作ろうって話になってるのにいきなりルーを使わない方向に行こうとしてたんだ2人とも。目の前で繰り広げられる惨劇の芽を回避できたことに私は安堵する。

 

2人が、あの2人がカレーのルーを買ってる!!!よかった、思ったよりもかなりまともな料理ができそうだぞ、と私は安堵する。いやまだだ、まだ監視を緩めるわけにはいかない。気を抜いたら見た目は普通なのに味が一切しないカレーとか下処理まともにしてないカレーが出来上がりかねない。

 

本来犠牲になるはずの花村曰く、食感的には、ところどころ『じゃりじゃり』 していたり 『ブヨブヨ』 していたりと、今までの食べ物に無い、まったくの新食感らしい。考えるに魚介類の下処理をしていないから生臭さがのこっていて、砂とか内臓とか本来人間が食べちゃいけないものが色々混入している上に、男の子だから強力粉薄力粉とかいう意味のわからない理由で採用された粉類が直に入れられた結果、謎のぶよぶよ食感が生まれたに違いないのだ。

 

シーフードミックスの下処理の仕方どうやるんだっけ。あとで調べなくては。使命感にかられながら、私はルーを入れていったのだった。

 

......一応、救済措置にレトルトカレー入れとこう。

 

「雪、今ググったんだけど、シーフードミックスってさ、塩水で戻さないと生臭くなるんだって」

 

「え、それ本当?」

 

「うん、30分くらいつけといて、汚い水捨てて水気をきって、最後に入れるといいんだって。火を通しすぎても生臭くなるみたいだから、私がやっていいかな」

 

「うん、冷凍だし、そのまま入れたらいいかなって思ったけど、せっかくのカレーが生臭くなるのはいやだよね。お願いできる?」

 

「わかった」

 

「ねえ、千枝。入れるお肉決まった?」

 

「うーん、うーん、まって、ひとつしか入れられないとなるとホント迷うんだけど!鶏肉も豚肉もいいけどやっぱり牛肉......でも牛肉高いしなあ......これ入れるとあんま量はいらないしなあ、むむむ」

 

「花村も月森もそこそこ食べるだろうし、千枝も食べたいなら量とったほうがいいね」

 

「や、やっばり?」

 

「私は野菜カレーでもいいけど、2人はそうでもなさそうじゃない?」

 

「た、たしかに。ああ、さようなら牛肉ぅ〜!今度のカレーの時には牛肉入れてってお母さんにたのもっと。じゃあ、鶏肉か豚肉ってとこだよね。どうしよっかなー。でもさあ、よくよく考えたら切るのもめんどくさくない?野菜たくさん切らなきゃいけないだろうし。なら少しでも楽した方がかしこい?」

 

「なら細切れとかカット済みのを選んだらどうかな」

 

「おおう、鶏肉量少なすぎるし、ちっさいねこれ!ミンチの方が量多い。ハンバーグはまた手間増えちゃうからやだなー。串刺さってるやつあるけど、焼き鳥するわけじゃないし、まーいっか。じゃあ、豚肉で!」

 

「豚肉か......火をよく通さないとダメなやつだね。生肉触った手で顔触っちゃだめだよ、千枝。病気になるって板前さんいってた」

 

「そ、それほんと?こっわ!そういえばお母さんお肉切る時いっつも牛乳パックでしてたっけ?それってそういうこと?野菜と一緒にしちゃダメなやつ?なら細切れにしとこ、これなら直に鍋にいれられるし」

 

「うん、それでいいと思う。炒めるとか色々あるだろうけど、そこまでスペースないと思うし」

 

「だよね、だよね。どうせなら楽できるとこは楽しようよ。どうせ午前中は清掃活動でずっとゴミ拾いしてヘトヘトなわけだし。というわけで、あたしは少しでもたくさんの豚肉が入ってるタイムセールのパックを求めていざゆかん!ちょっと探してくるね!」

 

「いってらっしゃい」

 

「ここら辺で待ってるよ」

 

「はいはーい!」

 

千枝がタイムセールのベルを鳴らすおばちゃんたちの人だかりのなかに消えていった。お肉に対する千枝の並々ならぬ情熱はきっとおばちゃんたちにも負けないはずだ、頑張れ千枝、負けるな千枝、きみに私たちのカレーの肉がかかっている。

 

「あれ、晃ちゃん。レトルトカレー入れたの?ルー入れたのに?」

 

「え?ああ、これ?寸胴鍋くらいの大きな鍋で作ったことないからさ、味が薄くなったらこれで足そうと思って。野菜の水分がどれだけ出るかわかんないし」

 

「それならルーの方がよくないかな」

 

「んー、まあそれもそうか。じゃあ戻しとくよ。そうだ、雪どれ気になる?今のはうちで使ってるやつなんだけど、どうせなら違う種類入れたほうが美味しいんだけどさ、どれがいいと思う?」

 

「そうだね......うちはこれなんだけど、さすがに小さいね」

 

「カレー粉なんだ」

 

「うん、賄いで板前さんがね、時々作ってくれるんだ。すごく美味しいんだよ」

 

「あー、なるほど。これ美味しいけど高いやつなんだよな」

 

「うーん、辛さは違う方がいいのかな」

 

「まあルーによって辛さバラバラだけど、揃えた方が無難だよな多分」

 

「なら、これかな。表紙のカレー美味しそう」

 

私が雪の指差すパッケージを手にしたときだ。

 

「あれ、雪子ちゃんに神薙さん。明日の買い出しに来たの?」

 

「あ、小西先輩、こんにちは」

 

「小西先輩もですか?」

 

「うん、うちのグループもね、ジュネスで買い物してるんだ、手分けして。けど......あれ、月森くんと花ちゃんは?」

 

「2人とも別の買い出しがあっていないんですよ、結構な重さになるから」

 

「そうなんだ。ここのカレー美味しいよね、うちはここの使ってるの」

 

「そうなんですか。ならこれで間違い無いね、雪」

 

「うん、美味しいなら安心して使えるし」

 

「初めてなの?なら試してみて。万能タイプのルーだから、便利だしね」

 

「ありがとうございます」

 

「おーい、小西、ちょっときてくれ。わかんないとこあるんだ」

 

「え?あ、うん、わかった。じゃあ、私、まだ買うものあるから。またね」

 

「はい」

 

「また明日」

 

「うん、また明日ね」

 

小西先輩は手を振って去っていった。同じ班だと思われる男子生徒たちとなにやら話を始めるのが見えた。

 

「花村くん、いなくてよかったかもしれないね」

 

「だな」

 

うなずく私はその中に飯田先輩がいることに気づいてしばし固まる。雪もそれに気づいたようで苦笑いした。

 

「晃ちゃんも、あっちのがよかったかもしれないね」

 

「......だな」

 

軽く手を振られ、なにも返さないわけにもいかず、微妙な笑顔のまま私は軽く会釈したのだった。世間は狭いというか、なんというか。

 

「おっまたせー!ふたりとも!」

 

そんな私と雪の間にダイブする小さな影がある。どーん、とつっこんできたのは千枝だった。私はあわてて振り返る。悪戯成功とばかりにピースサインといい笑顔で返された。どうやら千枝は気づいていてわざとやったらしい、気を遣われてしまったようだ。

 

「いいのあったよー、タイムセールのシール貼ってあるからかなり安いの!」

 

戦利品の豚肉をカゴにいれながら、千枝が会計に行こうと急かすので、私たちは顔を見合わせて笑ったのだった。

雪子

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