(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第44話

 

「マヨナカテレビ......?もしかして、昨日のやつ?」

 

「え、昨日見たの?」

 

「噂......知り合いから聞くことあったし、一昨日はもうつってたみたいで、撮影かなにかかってたくさん聞かれたから......。試しに見てみたの」

 

「そうなんだ......」

 

「あはは、綾音の方が不安そうな顔してるじゃん、大丈夫だよ。だって、昨日うつってたの私じゃないから。あの髪型で水着撮ったことないし、それに胸が......」

 

「?」

 

「あ、わかんなかった?意外とわかんないのかな。あたし、胸あんなにないんだよ。プロフィールだけはバスト2センチ盛ってるの。それ以外は全部ほんとだけどね」

 

「そうなんだ」

 

「あ、ないしょね」

 

「うん、誰にも言わないよ。でも......りせに較べたら私はこんなだし、よく小学生に間違われるし、羨ましい」

 

「あはは、あたしたちまだ15だよ。まだまだこれからだって」

 

「そ、そうだよね!ありがとう、りせにいってもらえたらなんか希望が湧いてきたよ」

 

「ふふ、綾音ったら大げさすぎ。午後もずっといてくれてありがと。友達まで紹介してもらっちゃって。なんかごめん」

 

「そんなこと、ないよ。だって、私が友達に紹介したくなったのは、りせがいい子だからだし、その、えーっと、みんないいよっていってくれたのもりせがいい子だからだし、だから、」

 

「うん......ほんとにありがと。前の学校、全然通えてなかったし、色々あったからほんと友達いなくて。綾音みたいな子と一緒にいると、ほんとおちつくの。前の学校でもデビュー前は友達いたんだけどね、あたしがアイドルになってから離れてっちゃって......すっごく、さみしかったんだ......」

 

「そうなんだ......」

 

「迷惑かけちゃってるけど、こっちにこれてよかったよ、あたし」

 

「よかった......そういってくれると嬉しいよ。今、すっごく怖い事件ばっかり起きてるせいでニュースで嫌なことばっかり言われてるけど、いいところなんだよ、ここ」

 

「うん......それは、知ってる。ずっとまえから」

 

「まえ?」

 

「ん......おばあちゃんの家に遊びにきたこと何回かあるから......」

 

「あ、そっか」

 

「うん」

 

チャイムがなった。

 

「あ、もうこんな時間」

 

「綾音、吹奏楽部頑張ってるんだっけ。ソロパートの練習、いかなきゃ」

 

「でも......」

 

「あはは、あたしなら大丈夫だよ。お迎え頼む予定だし。部活とか見てみたいんだけど、大会近いなら終わってからの方がいいよね」

 

「そっか、ありがとう。なら、あしたね」

 

「うん、また明日」

 

「あ、そうだ」

 

「ん、どーしたの?」

 

「先輩ね、実は連続誘拐事件の被害者なの。だからりせのこと心配してたよ。マヨナカテレビに映った人が攫われてるみたいだからって」

 

「え、それほんと?」

 

「うん。小西くんのお姉さんもそうだったって小西くんから聞いたことあるから。ほんとだと思う。気をつけてね」

 

「そっか......だから小西くんも気をつけてっていってたのかな。調子悪いの心配してくれてるだけかと思ってた。2人もマヨナカテレビにうつったあとに攫われちゃったんだ。わかった、気をつけるね。ありがと、綾音」

 

「うん」

 

後ろ髪を引かれつつ、綾音は教室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾音から話を聞いた私たちは、部活が終わった帰り道、そのままの足でジュネスに向かった。クマに聞いてみたがりせちーが入った様子はないらしく、マヨナカテレビの世界はいつも通りだという。

 

尚紀と松永からの話を統合するに、りせちーの憂鬱は、私たちの想像以上に深刻そうだった。心にわだかまっている重く激しい物憂いを明らかに隠しきれていない。心にどしんと重たいものがかぶさったように重苦しい気分もあるにはあるが、おばあちゃんばかり店番させるわけにもいかないのに今はそれも叶わないからせめて学校に行きたいという想いもあるようだ。優しい子である。

 

馴染みのない人の前で畏まり続けることは、何か目に見えない縄で縛り付けられているようで辛いのだろう。

 

倦怠感があり、どこにいても、現実が、自分からは少し遠くに感じられた。腕を伸ばせば伸ばした分、歩き出せば歩いた分だけ、世界は自分から遠ざかっていく。

 

歩き出してはみたけれど、それは家を目指して歩いていたわけではなく、ただ肉体に従い引きずられているような感覚に近い。自分の肉体よりも少し後ろを歩いているような感覚で、肉体に対して止まるよう要求することはできない。

 

夏の匂いが無性に 鬱陶しくて遮断したくなり、五感に触れるすべての要素が自分から力を奪って殺そうとしているような気さえする、そんな重たい倦怠。元気が出ない。まるで 呪いのように出ないのだ。

 

 

疲れが溜まると、体がなんとなく重くなり、筋肉の切れが悪くなる。食欲が減退してくる。肌が荒れてくる。髪がぺしゃっとしてくる。汗の臭いが変わってくる。そういうことに人一倍気を遣っていそうなりせちーが取り繕うことすら億劫になっているとしたら、それはもう末期という他ないだろう。

 

頭の中が痺れて何も考えることが出来なくて更なる不安が絶望の風船を膨らませるのにどうしようもない状況にまで追いやられているようだ。

 

もう疲れきったりせちーは何もかもがメンドくさくなってしまっている。そこにさしのべられた綾音たちの優しさはかなりありがたかったのではないだろうか。私たちからお願いするまでもなかったかもしれないが、2年生より1年生の方がいる時間は絶対に長いのだ。友達はいるにこしたことはない。さいわい、みんなりせちーがいいこだとわかった時点で友達になりたいと思ってくれたようでなによりである。

 

「りせちー、やっぱりかなり疲れてるみたいだな。あの時の私みたいだ」

 

私の言葉に当時の神薙晃を知る雪の顔が曇り、シャドウのカミナギアキラから心情を吐露されたことがある月森は心配そうにためいきをついた。

 

「かなり、追い詰められてるってこと?」

 

「たぶん。私はりせちーじゃないから、わからないけど」

 

「たしかにりせちーによく似た子かなって思っちまうくらいには元気なかったなー、あれ」

 

「アイドルおやすみするくらいだもんね、それなりに疲れちゃってるのかな」

 

「だとしたらまずいな、マヨナカテレビに落とされたら、今のりせだとシャドウと会ったら一発アウトだ」

 

「自分が一番見たくないところが誇張されて目の前でみせられるんだもんなー、軽く鬱入ってるりせちーにそんなんするとか鬼畜にもほどがあんだろーに」

 

りせちーは本当にこちらが心配になるくらい元気がなかった。覇気に欠ける気だるげな受け答えしかしてくれなかったし、会見の時のように本当に最低限の受け答えしかできていない。あまりに鬱がひどくなると知能指数が下がるのは経験上よく知っている。ほんとうにいつもできていたはずのことが全くできなくなるのだ。そんな危険な領域にまで突入しているりせちーが心配でならない。

 

「でも、そんなに鬱入ってんなら、下手に色々話すわけにもいかねーしなあ」

 

「マル久さん、野次馬だらけだもんね。張り込みしてたら、私たちまで迷惑かけちゃうよ」

 

「調査のためだっていいにくいっすもんね」

 

「交通整理に警察まで出張ってるなら俺は無理だ、叔父さんと鉢合わせしたらますます疑われて身動きとれなくなる」

 

「うーん......どうすりゃいいんだ」

 

「どうしたら誘拐事件防げんのかなー、あーもーわかんない!」

 

私たちはためいきをついたのだった。

雪子

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