(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第46話

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八十稲羽市の南西にある山の神社の参道入り口、それが久慈川りせのお気に入りの散歩コースだった。しばらく歩くと鳥居が見えてきた。三國第一山と書かれている。色々と由緒があるらしいが、目的ではないのでひとまず登る。辺りは誰もいなくて、蝉の合唱だけが聞こえるという荘厳な雰囲気。それがりせは大好きだった。

 

鳥居をくぐると少し広くなった場所があって、そこから今来た道を見下ろせる。正面に見えるのが中央道。何回か通ったことがある人もこの神社の存在にはまず気付かない。りせがおばあちゃんの家に家族で遊びにきたときに家でずっとこもっているよりは、とおばあちゃんに教えてもらって初めて知ったのがこの神社だった。

 

参道脇にある灯篭はいつもある。参道の目印らしく、お祭りのときなどには灯されるとりせは知っている。

 

ちょっと広くなって街が見下ろせるが、りせの目的地はここではない。富士山も見えたが、あいにく今日は雲に隠れて山頂は見えなかった。

 

小さな鳥居と神社があらわれた。何かの記念碑らしきものがある。神社の由緒などを遺した石碑だ。

 

この神社は、甲斐国の時代に八十稲羽市の一帯を治めていた一族が氏神として祀ったのが始まりとされる。そして、平城天皇の御世、富士山の大噴火があり朝廷からの勅使が参向せられ、国土安泰富士山鎮火祭が執行される。その時、平城天皇より三国第一山の称号、並びに天皇の御親筆であり現在大鳥居にある勅額、金幣、破魔宝面(勅使面)が奉納された。

 

戦国時代には武田信玄の父・信虎が北条氏との戦にあたり、この神社の境内地である山に陣をとり、戦勝を祈願し勝利したことにより、刀を奉納された。

 

現在では災除け・家庭円満・安産・子育ての神として地域の人々をはじめ県外に渡って広く信仰を集めている。また、神社が管轄する公園として内外より親しまれ、赤い大鳥居と戦没者慰霊の五重塔はシンボルとして眺望は随一でしられている。

 

特に春になると300本の桜が花を咲かせ、富士の眺望とともに人々の目を楽しませている。

 

この神社では、コノハナサクヤビメと父神にして全ての山を統べる神であるオオヤマツミノミコト、そして夫のアマテラスの孫にあたるニニギノミコトを祀っている。特にコノハナサクヤビメは富士山を神体山とするこの辺りの信仰の神様だ。静岡・山梨を中心とする富士エリアではお馴染みの神様であるとおばあちゃんから聞いた。だからこの街にとっても非常に縁とゆかりがある神様だと。

 

ここに来る時は、かならず参拝しなさいとおばあちゃんに言われているりせは、いつものように本殿に向かうのだ。本殿の参拝客はりせ以外には誰もいなかった。参拝をする前に手水舎にて体を清める。水が冷たくて気持よかった。

 

まずはお参りをする。本当に静かで良い場所だ。

 

お参りしたところで、階段をひたすら登っていく。この神社に来た最大の目的は、忠霊塔と呼ばれる塔と富士山を同じフレームに収めた写真を撮ることだ。世界的に有名な、The日本の風景がとれるのである。

 

どんどん階段を上る。永遠に続くんじゃないかっていう気がしてくる階段。朝からこんなに体力を使って大丈夫だろうかと不安になる。ついに階段にギブアップし、ちょっと遠回りになりますが、坂道で上を目指すことに。ここにエスカレーターがあればどんなに良かったことか。

 

いろは坂のようにクネクネしながら少しずつ登る。木に囲まれているのでいくらか涼しかったのが救いだ。誰もいない参道をひたすら歩き続けていると昼間だが、ちょっと怖くなってくる。少し進むと視界が晴れてきた。景色が良くなったので一気に階段でラストスパート。

 

山の中を歩いてきたので気がつかないが、こんなに高くまで登ってきたんだといつも感動してしまうりせである。

 

またしても広くなっているところにでた。目的地はもう目の前だ。赤い建物と景色が見下ろせる位置にベンチがある。古そうなベンチや色々な種類のベンチが置いてある。横には看板があり、「あずまや」とある。あずまやを目指してさらに登っていき、看板に従って進んでいくと建物のようなものが見えてきた。高台の休憩所だ。

 

「やっとついたー!」

 

休憩所から街を見下ろしてみる。奥の山の感じとか、ところどころに田んぼが広がっている風景が八十稲羽!という感じでりせは大好きだった。

 

もう少し視点を左へ持っていくとのどかな風景が広がっている。そしてなんといっても富士山がやっぱり雄大で美しい。休憩所からの景色に満足し、赤い塔と富士山の写真を狙いに行く。

 

「いい写真撮れた!曇ってるのが残念だけど」

 

この街に来てから、りせはよくこの高台に訪れていた。おばあちゃんの家に遊びに来る時は必ず来ていたが、今は豆腐屋に張り込むマスコミや野次馬から逃れるために閉店時間までここでずっと時間を潰している。すっかりどこになにかあるかわかってしまうくらい詳しくなっていた。

 

ここにくるまでいい運動になるし、気晴らしになる。なによりもここでなにも考えずにぼーっとしていると余計なことを考えないで済んでいた。

 

「うん、やっぱりあたし一人かぁ......土日だと観光客がいるのかな?誰もいないや。気が楽でいーけど」

 

なにより、何故かここにいるとりせのことを知る人間と会わないで済むというジンクスがあった。いや、知ってる人もいるのかもしれないが、ほっといてくれる人しかすれ違わないのだ。神社の敷地内だからトラブルを起こして神様の怒りを買いたくないのかもしれない。観光客だって地元の人だって、神社という場所にくるのはだいたいなにかお願いしたいことがあるに決まっているのである。

 

りせはいつも座ると決めているベンチの上の葉っぱや埃を払ってから座った。そして、ぼんやりと八十稲羽市全域がのぞめる風景を眺めていた。ここからは今のりせにとって大切な時間である。

 

「......期末テスト7月中旬かぁ......勉強まにあうかなあ......。あと2週間しかないじゃんもー」

 

転校時期が時期である。先生たちは大目に見てくれるといってこそくれたが、夏休みの補習で取り戻そうと言われた時点で下駄を履かせてくれるほど甘くはないんだろうなと思う。

 

アイドルを始めるにあたり、厳しい両親を説得してりせちーとしてデビューしたのに今の状況に陥っている今、義務教育だから卒業させてくれた中学と違って高校はほんとに頑張らないとやばいと両親から警告はあったのだ。わかっていたつもりだった。だが中学の下地があってこその高校の発展的な授業だと思い知らされる。綾音のフォローがなかったらほんとに詰んでいただろう。

 

八十稲羽高校は前通っていた学校とは違ってほんとに普通の学校だ。芸能活動が単位として認めて貰えた前の学校とは違うし、そもそもりせちーは休業中である。

 

「......部活、お休みになったら教えてもらわなきゃ......」

 

転校初日で友達が出来たことは、りせの不安を少なからず軽くしていた。

 

数時間がたった。

 

りせは携帯を探る。綾音に心配させてしまってはいけないから、お迎えを呼ばなければならない。

 

「もしもし、井上さんですか?今から降りるんで、おんなじとこで拾ってください。えーっと30分くらいかな。はい、すぐいきまーす」

 

りせは立ち上がる。そして歩き出した。

 

だが......マネージャーの井上が鳥居の前でいくら待っても、リセが現れることはなかったのてある。

雪子

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