(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4) 作:アズマケイ
部活で松永からりせちーと友達になり、送迎を頼んでいるから大丈夫だと言われたと聞いた私たちは安心していたのかもしれない。
部活に入っていない千枝と雪が商店街に出向いてマル久さんを一応覗いてみたのだが、野次馬の話を総合するに、今まで1度もりせちーは店番をしたことは無いようだ。かわりに電信柱からりせちーの部屋と思われる2階に侵入しようとしていた男を取り押さえるのに協力したくらいで、最後までりせちーを見つけることは出来なかったという。
小西姉弟が買い物ついでにおばあさんに話を聞いたところ、よくふらりとどこかにいってしまうんだとあんまり気にしていないようだった。松永曰く、そんなおばあちゃんがりせちーは大好きでこの街に来ることを決めたようだから、失踪届を身内が出さないことに意義を唱えることなどできやしない。
花村は一応バイト終わりにテレビの向こうにいってクマに話をきいてくれたようだが、その時点ではまだなにも異変はないといわれた。
今日は雨だがクマが大丈夫だというんだから平気だろうけど一応、とみんなでマヨナカテレビを見ることを決めた。そんな私たちを嘲笑うかのように、次第に過激さが増していくマヨナカテレビの本放送は始まってしまったのである。
映った。映ってしまった。とても鮮明な映像である。
「まるきゅーん!りせちーず!みなさーん、こんばんはぁ!!久慈川りせでーす!」
瞳が爛々と黄色に輝いている時点で明らかに人外だとわかる。ぴーすぴーす、と無邪気に笑うりせちーのシャドウがそこにいた。
「この春からね、私進級して、いよいよ花の女子高生アイドルにレベルアップしました!やたー!今回はぁ、それを記念して、すっごい企画に挑戦したいと思いまーす!な、ん、とー、それはー、聞いた事あるかなぁ?すぅ、とぉ、りっぷぅー!ん、もぅ、ほんとにー?きゃあ、ほんとにー?でも女子高生が脱いじゃうって、それって世の中的にあり!?」
昭和のノリのテロップと音楽が鳴り響く。タチの悪いAVにも似ている。私は録画ボタンを見たがそういやアニメだとできなくて月森は落ち込んでたなそういえば。あわてて私はケータイを手にする。
「りせちー!見せちゃう!ちゃれんじ企画!青い果実も一皮むけて身ごろ、食べ頃、お年頃!」
八十稲羽高校の制服を脱ぎ捨てた水着姿のりせちーがヤンデレポーズしている。
「でもね、やるからには、どーんと体当たりでまるっと脱いじゃおうかなって思いまーす!!マルキュン真夏の夢特番!丸ごと一本、りせちー特出SP!もー!はっずかしー!でも、がんばりまーす!乞うご期待!!また明日ねー!」
歓声が聞こえる。マヨナカテレビを見る人が増えに増えて、なおかつ男性陣がめっちゃ反応しているのだろう。
「......りせちー転校してきたの昨日なのに、もうマヨナカテレビに......?はやすぎないか?」
ノイズになりそうな誤認逮捕を回避すべく慎重にりせちーにマヨナカテレビについて警告したのだから、戸締りはきちんとしたはずだったのだが今回もまた防ぐことが出来なかったようだ。私は視線を落とした。
「......ダメだ、画素数が死んでる。手ブレがひどいな」
私は諦めて残像ばかりの画像を全部けすことにしたのだった。
「もしもし、神薙か?」
今回は月森が早かった。
「なあ、撮れたか?」
切実な男の願いだった。
「ダメだ、写メは手ブレが激しくてさ」
「そうか......俺もダメだったよ、録画はできないらしい。録画ボタンを連打したけどダメだったよ」
「そっか、ダメだったのか......」
「ああ、録画を確認しようとしたら、写ってたの砂嵐だったんだ......」
「花村は?」
「撮るの忘れてたみたいだ」
「そっか......巽はどうだろ」
「うーん、難しいんじゃないか」
「たしかに女の子に耐性なさそうだもんな」
「あれ、天城たちからなにか聞いたのか?」
「やっぱ肝試しんときになにかあった?それとも水遊び?」
「ああうん......あいつの名誉のために黙ってることにするよ」
「そっか」
月森と私がため息をついたのは、ほぼ同時だった。
「......なあ、神薙。りせの悩みってあれか、みんながりせちーとしか自分を見てくれないとかいうあれかな」
「ああ、うん、ありそう。いじめられてたときとデビューしてからガラッと待遇変わったみたいだし、寂しかったみたいだし。色々悩んでたんじゃないかな、いきなり休むとなると色んなところに迷惑かけるって。鬱になりやすいのは根が真面目な人が多いらしいし」
「それがこんな風になるのか......ほんとにえぐいな」
「言っちゃ悪いが枕営業させられそうになったとか、実は露出狂だとか色々言われそうな内容だしな」
「勘違いするやつはいるだろうな、たくさん」
「そうだよな......」
マヨナカテレビの捻じ曲げられた本人の悩みはある意味りせちーが最高潮だ。ただ、雪以外はマヨナカテレビをちゃんと確認する前に救出できたり、本来抱く悩みの方向性が直前に変わったためにマヨナカテレビの番組内容が変わったりしたため、ある意味奇跡的にも健全な内容だったのは否めない。そこにいきなりのどエロ方面、しかも雪の場合はそれとなく濁されていたことがド直球にぶちこまれたせいで月森は余計に衝撃を受けているようだ。
「......なあ、神薙。たぶん、次行くところってそういうところだよな」
「確実にそうだと思うよ、月森。これ、なんとか堪えないとパーティ内での信頼が地に落ちかねない。心していくとしよう」
「それだけは避けなきゃな......花村たちにもいっとくよ」
「うん、私と男性陣は真面目に状態異常に耐性つけないとまずいと思う。あと治癒できるアイテムまとめ買いしないと」
「ああ、うん、明日のペルソナ作成はそっち優先でいくよ」
「よろしく、買い出しは任せてほしい」
「そうだな、時間かかりそうだし。頼んだ」
私はそれだけ決意してから、眠りについたのだった。
私がバス停を降りると、松永が待っていたようでベンチから立ち上がるなりこっちにかけてきた。
「あ、お、おはようございます、神薙先輩」
「おはよう、松永。はやいな」
「は、はいっ、その......昨日のマヨナカテレビ、みましたか?」
「ああ、うん、見たよ」
「やっぱりあれ、りせなんでしょうか......心配になって、メールしても電話しても出ないんです、りせ。昨日まではすぐに返してくれたのに......」
「そうなんだ」
「はい......テスト休みに入ったら、勉強教えて欲しいってメールが昨日の夜に......」
「それって何時くらい?」
「え、ええと、20時くらいでした」
「20時か......」
花村がシフトを終えてクマに話を聞きにいったのは19時だったはずだ。
学校にいったら、りせちーが行方不明なのとマヨナカテレビで学校中が大騒ぎになっていた。もう6月だ。マヨナカテレビに出た人間が行方不明になっていることは周知の事実になっている。
なにせりせちー本人があれは自分じゃないと否定していたのにこれだから、あれは犯行予告だったのだと誰もが理解し始めている。
ほっといたらりせちーは死ぬと山野アナでわかっているはずなのに、私たちが助けてきたせいで今回もどうせ大丈夫だろうという緩い空気があった。
だから、誘拐されたりせちーがマヨナカテレビで撮影させられているんじゃないかと心配する声。あるいはりせちーが休業自体がこの企画の伏線だったのではないかと疑う声で二分していた。校門前で警察が話を聞きに来ている時点で後者の声はすぐさま沈静化することになる訳だが。どうやらおばあさんではなく、事務所が届けを出したようだ。
そして、私たちはすぐさま学校が終わるなり、ジュネスに急いだのである。
「うーん、うーん、わからんクマァ~!誰かがきたのはわかるし、どっかに新しい空間は広がってる気配はするんだけどぉ~、いままでと違って離れた場所っぽいからうーん......久慈川りせってこの悩みがわかるようなお話、なんかしらなーい?」
久慈川りせに関する具体的な情報はネットや松永たちから手に入れていたと思っていた私たちは顔を見合わせるのだ。どうやらりせちーのダンジョンにいくには情報がまだ足りないらしい。
雪子
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どっちもみせろ