(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第48話

クマからりせちーの悩みをもっと調べてこいと言われてしまった私たちは、1度ジュネスのスタッフルームに戻っていた。

 

やみくもに聞いて回るのも時間が惜しいため、まずは今わかっている情報を精査することにする。

 

まず議題にあがったのは、昨日のマヨナカテレビは顔が映ったし、本人が名乗った時点でりせちーのシャドウで間違いないということだ。これで犯人に狙われるのは直近のテレビで放映され、八十稲羽市において知名度が上昇した人物であるとわかった。山野アナの事件関係者という線はりせちーで完全に消えたことになる。

 

りせちー本人が不鮮明なマヨナカテレビを見ているわけだから、やはりバラエティ番組仕様の本放送が始まるのは、本人が犯人たちに誘拐されてテレビに入れられたあとなのも確定した。

 

バラエティ番組自体は被害者たちのシャドウが生み出すものだということも。バラエティ番組にでてくるシャドウは、無意識の本音がえぐいぐらいに歪められているのだ。

 

「けどさ、マヨナカテレビって誘拐される前からぼやっと見えるじゃん?予告だとしたらなんのために?誰に見せてる訳?」

 

「犯人に聞けよ、さすがに俺たちだってわかんねーんだからさ」

 

「そうだけど......結果的に見えてるって可能性はない?」

 

「どういうこと?」

 

「被害者の心の中が映るなら犯人もって思っただけなんだけど、誰かが狙ってる心の中が見えちゃうのかなって」

 

「人をテレビに入れられるってことは、犯人たちも同じ力があるわけだしな」

 

「じゃあ、あれは本人のこれから襲うぞ!っていう妄想?」

 

「そこまでいくとあの世界そのものがそんな風な気がしてくるな......」

 

「被害者だけじゃなくて、加害者とか野次馬とかの頭のなかがごちゃごちゃになってる的な?」

 

「それは、私もあると思う。今まではわりとシャドウに根ざしたエリアを作ってたけど、りせちーのエリアは明らかにその歪みが大きいとは思わないか?それはたぶんマヨナカテレビの視聴者の数に応じて、そのごちゃごちゃが余計に流れ込んでるんだと思う」

 

「晃ちゃんのいうことがあたってるなら、それって、危なくないかな?だって、シャドウはりせちゃんが無意識に否定してる自分から生まれた存在なのに、あのシャドウ、明らかにアイドルのりせちゃん寄りだよね?りせちゃんがアイドルの悩みを抱えていたならわかるけど、それにしても見てる人たちのごちゃごちゃまで押し付けられちゃうなら、どこから自分の意思で、どこから周りからの意思なのか、わからなくならない?」

 

雪の言葉に私たちは息を飲んだのである。はやくりせちーを助けなくては。

 

「でも、前にみんなで調べた信仰が失われた土地神様のことも無関係じゃない気がするの、私。だって、神薙さんのシャドウに取り付いているのも日本神話にでてくる神様の名前を名乗っているわけだし、私たちのペルソナも日本の伝説にでてくる人だったり、日本神話にでてくる神様の名前だもの」

 

「そう言われてみればそーかも」

 

「たしかに、言われてみれば結構共通点あんだな、俺たち」

 

「全然違うのはリヒトさんくらい?」

 

「まあ、あの人はずっと前にペルソナ使いになったみてーだし、そんときは海外の神様たちだったんじゃね?」

 

「ペルソナって目覚める場所によって違ったりするのかな?なんだか面白いね」

 

「やっぱ、色々ごちゃごちゃになったせいであんなヤバいとこになってるっぽいね......どんどん八十稲羽市に近づいてる感じだし。りせちゃんのダンジョンだって遠いってことは、空間ごと広がってるからだし。うっわ、寒気してきた」

 

「はやく助けにいきましょーよ、先輩方。で、どうすんすか、これから」

 

ちゃんと話聞いていたのかという視線を向けられた巽は言葉につまり、そのまま目を逸らした。まあ、完二がいうことももっともだという月森の一声で、気を取り直して、私たちは手分けして、久慈川りせという女の子について、あらためて話を集めることにしたのである。

 

松永にもう一度話を聞こうと学校に戻ってきた私と月森は、帰り際に誰かに話を聞かれている松永を見つけた。男は名刺を出してきた。りせちーの所属事務所のマネージャーらしい。どうやら少しでもりせちーの行方がわかる手がかりを探し求めているようだ。

 

「手紙、ですか」

 

マネージャーはうなずいた。

 

「以前、りせはいじめ撲滅キャンペーンのイベントに出た事があるんだ。そこで自分の体験やどう乗り越えたのかを話したことがある。それから中学生の子が定期的に手紙をくれてね、りせはそれを読み返しては元気をもらっていたんだ」

 

「そうなんですか」

 

「昨日、その手紙が届いてね、僕はそれをとどけるためにこの街に来てたわけだが......それを読むなりどうしても1人になりたいと聞かなくてね。高台の散歩をしたいというから、僕は駐車場でまっていたんだ。20時過ぎに電話があって、それを最後にりせは行方不明になってしまったんだ」

 

私たちは顔を見合せた。

 

やはりマネージャーは1番りせちーのことを知っていた。

 

りせちーは、今でこそ感情豊かな女の子だが元々の性格はどちらかというと地味でアイドルデビューする前にはいじめられていた経験もあったという。

 

アイドルデビューの切っ掛けもいじめっ子が一方的に送ったオーディションに受かったことからで、アイドルを志した決定的な理由も「今の自分を変えることが出来れば」という思いがあったから。しかし、それが結果として「誰も本当の自分を見てくれない」という新たな苦悩を生み出してしまう。

 

いじめが激しくなり、芸能人が単位をとりやすい都会の学校に転校したはいいが、そこでもりせちーは学校生活に上手く馴染むことができなかったらしい。

 

アイドルとしての彼女は、マネージャーによれば才能があったらしい。たしかに活動期間は二年とちょっとで写真集二冊とCMタイアップ曲のCDを一枚出していただけだが、トップアイドルになれる素養はたしかにあった。人気アイドルではあったが、ようやく今年に入りそのレベルに有名になってきたという話でありこれから活躍するという大切な時期に休業宣言したこともあってマネージャーはりせの復帰を望んでいるようだった。

 

「手紙か......」

 

「なにが書いてあったんだろう......りせちーあてのファンレターなら心配してたのかな」

 

「映画の主演をやめたらしいし、それもあるかもしれないな、だって表向きは体調不良での休業だろ?」

 

「憂鬱になるくらいの手紙なのか、憂鬱な時に読んだらダメージを追うタイプの手紙なのか」

 

「神薙ならどう?」

 

「私?そうだな......完全に視野が狭くなってるだろうから、心配されてもそれすら申し訳なくなって余計に落ち込むかもしれない」

 

「りせもそうなのかな」

 

「うーん、だとしても松永たちが友達になってくれたんだ。マヨナカテレビに全然反映されてないのは気になるな、とても」

 

私たちの会話にマネージャーは苦笑いした。

 

「内容自体はりせも教えてくれたよ。そんな変な内容じゃなかったさ。はやく体調不良が回復するよう祈っています。映画のことは残念だけどはやく元気になってね、そんな内容だったはずだから」

 

教えてくれたマネージャーに礼を言って、私たちはふたたびジュネスに戻ったのだった。

 

学校の担任やクラスメイトたち、あるいは野次馬のファンと手分けしてかきあつめた情報により、りせちーはホントの自分とアイドルとしての自分の乖離に悩んでいたのだという憶測をクマに話してみた。

 

「ふむふむ、なるほどー。ありがとうクマ!頑張って調べてみるからちょっとまちんしゃい!」

 

クマはさっそく調べ始めた。

 

「時間かかりそうならペルソナ作ってきていいか、クマ?」

 

「モチのロンクマー!」

 

「なら私は買い出しにいってくるよ、装備はいいとしてアイテムが心もとない」

 

「いってらー!」

 

私は1度マヨナカテレビを後にしたのだった。

雪子

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