(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第50話

原色の女は惜しげも無く裸体を晒し、蛇が呪詛を吐く。ピンク色の霧に侵食された空間で治癒できた雪以外封魔になってしまっているさ中、蛇の呪詛が私たちに牙を向いた。

 

真っ黒なエネルギー体がこちら目掛けて凄まじい勢いで飛んでくる。この攻撃の衝撃は大きく、私も壁まで吹き飛ばされてしまった。

 

「あわわわわわ、みんな封魔状態クマァー!スキルがつかえなあい!大ピンチ!誰か花村とセンセを回復しれー!!」

 

封魔のせいで弱点が火炎とわかったのにまた攻撃手段を封じられてしまった。これではダメだ、埒が明かない。私はふたたびロケット花火を打ち込んで、敵の攻撃を封じた。回復は雪に任せるとして、私に出来ることは......。

 

「月森、このままだとジリ便だ。これで凌ごう、反撃のチャンスはかならずある」

 

私は魔反鏡を月森に投げてやる。雪がみんなの回復をしてくれたおかげで全滅だけは回避された。

 

「ありがとう、神薙。そうだな、なら......」

 

月森は私から渡されたアイテムでさらなる魔反鏡を花村にかける。

 

「おっと、起きたな!?2度も同じ手はくわねーよ!神薙、ロケット花火かしてくれ!」

 

「はい、花村!」

 

「サンキュ!よーし、気絶しちまえ!」

 

弱点をたたみかけられた敵はふたたび大きくぐらついた。そしてレッドカーペットにしずむ。

 

「よっしゃ!」

 

「花村ナイス、私も負けてられないな」

 

これはパターンが入っただろうか。こうしてロケット花火と魔反鏡で準備を整えた私たちは、ようやく唯一のダメージソースである一斉攻撃にとりかかる。四方からなぐりかかられたシャドウは足元がだんだんおぼつかなくなっていく。どうやら状態異常にしてはじめてあの強力な魔法攻撃は飛んでくるようで、よりダメージを大きくする追加効果でもあるのかもしれない。

 

私たちにふたたび強力なエネルギー波が炸裂した。それがあとすこしで直撃するというところまで迫った、その刹那。攻撃を透明な壁がふせぎきった。ぱきん、となにかが割れる音がした。一瞬だけ私たちの目の前に魔反鏡の加護がうつる。それはそっくりそのまま反射して女のシャドウ、あるいは蛇に直撃する。属性の耐性も吸収もなかったようで、自らの全体攻撃を全て跳ね返されてしまった敵はとうとう倒れてしまったのである。

 

蛇を投げ出し、女のシャドウはそのまま黒い粒子となってあたりに四散する。おくれて、蛇もまたレッドカーペットに叩きつけられる形で不気味な蛍光色の液体を撒き散らして消えていく。あとには何も残らなかったのだった。

 

「つ、つかれた......マジで危なかったなあ」

 

「アイテム足りてよかったよ、ほんとに。長期戦になったらいよいよ覚悟しなきゃならないところだった。神薙の機転のおかげだな、ありがとう」

 

「あはは、私だけじゃないよ。みんなで頑張ったから倒せたんだ。それだけだよ」

 

「みんな大丈夫クマかー?封魔状態治さなきゃダメクマよ!」

 

クマがチャックを開けて中からゴソゴソしながら、予備の回復アイテムを私たちに渡してくれた。そして、中ボスをなんとか撃破できた勢いにまかせ、私たちは時折休憩も挟みつつ、ストリップ劇場の最上階にまで一気にかけあがり、目的地にたどり着いたった。

 

 

 

 

りせちーのシャドウの舞台がそこにはあったのである。どピンクな風景は一転して、妖艶な雰囲気漂う舞台が広がっていた。戦後から昭和の終わりにかけて、大衆娯楽として人気を集めたストリップ劇場の舞台で妖艶な踊りを披露する少女がひとり。

 

天井からつるした布を体に巻き付け空中でポーズをとったり、フラフープのようなリングにつかまり、回転しながら次々とポーズを変えていったり。アスリートのように鍛えられた腹筋に浮かぶ汗が、舞台上でミラーボールの光を反射する。

 

壁には、無数のキスマークがある。この場所で踊った幾人もの踊り子たちが、それぞれの思いを胸に唇を寄せてきたようだ。形や大きさもばらばらで、はっきりと見える新しく付けられたようなものもあれば、うっすらと輪郭だけが分かるものもある。

 

その壁を背にりせちーのシャドウは笑っていた。ゆらゆら、宙ずりになりながら揺れている。片足だけひっかけて、ゆらゆらとゆれていた。幻想的ですらあった。

 

「とっても充実してるかな。小さな頃からずっと憧れてたから。今は毎日がとっても楽しいよ!理想の男性?うーん、あ、顔とか別に興味無いかも。私、逆にかっこいい人とかって苦手なんですよねー!やっぱり人は中身が大切じゃないですか?なーんてね!きゃははははっ、見られてるぅ!見られてるのね、今のあたしぃ!さいこー!」

 

「や、やめて......」

 

ステージの舞台袖で制服姿のりせちーがいた。怯えた目でシャドウのりせちーを見上げている。

 

「うふふふふ、ほらみなさい!もっとみなさいよ!これがあたし!これがホントのあたしなのよおおお!」

 

シャドウのりせちーの叫びにりせちーはたまらず耳を塞ぐ。

 

「ふふ、おっかしー、やめてだって。んっもー!本当は見て欲しいくせに、ぷんぷん」

 

ポールから降りてきたシャドウはそういいながらりせちーの目の前にやってきた。そして手を外し、嘲笑うようにして手をからませ、のぞき込むのだ。

 

「ふざけんじゃないわよ、アンタはあたし、あたしはアンタ。変わりたいって願ったのはアンタじゃない!始まりは地味でいじめられっ子の自分が嫌いで嫌いで仕方ないから変わりたいってあたしを生み出したんでしょ、アンタさあ」

 

「ち、ちがうもん、わたしは、私はっ......」

 

「なーにがちがうよ。それがなによ、悩みが解決したと単に捨てるわけ?切り捨てるわけ?それってあれじゃん、アンタがだいっきらいな、世界で1番大っ嫌いないじめっ子のすることじゃん。なに、結局そっちも堕ちるわけ?ウケるー」

 

「そんな、つもりじゃ......だって、だってぇ......」

 

「なーにがゲーノージンのりせなんかじゃない、あたしを見て!よ。ウケるー!りせちーになって始めてみんな見てくれたんじゃないの、ただの久慈川りせなんかそこら辺の石っころも同然に決まってんじゃない!」

 

「───────ッ!!」

 

「なあにがベッタベタなキャラ作りして反吐飲み込んで作り笑顔なんてまっぴらよ!仕事ほっぽからして、ファンの子たち心配させて、つまんない、わがままのためにクソったれなことしてるのそっちなんですけどー!」

 

「............」

 

りせちーは泣き出してしまった。

 

「久慈川りせ?誰それ、そんなやつこの世にはいないじゃない、りせちーがいるのよ。みんなが知ってるのは久慈川りせじゃない、あたし、りせちーなんだから。ほーらやっばりあたしの方がよっぽど久慈川りせにふさわしいじゃないの!あたしはあたしよ!ほらあ、あたしを見なさいよおおお!」

 

りせちーのシャドウは、本人を助けようと駆け寄る私たちの前に立ちはだかるのだ。

 

「さーて、お待ちかね、今から脱ぐわよー!丸裸のあたしをやきつけなあ!そして今日からあたしがアンタになるの。久慈川りせがりせちーじゃない、りせちーか久慈川りせになるの。だってアンタがいったんじゃない、私もりせちーになりたいよ、ごめんねごめんねって。ねえ?だから、なにもできないまま、ぜんぶから逃げるしかできなかったあんたは、りせちーになることすら許されないってこと、教えてあげる」

 

ウインクひとつ、りせちーのシャドウは、そう高らかに宣言して、戦闘ははじまったのだった。

雪子

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