(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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第55話

今度は私が助けるんだ、とクマの役目を引き継ぐことを宣言したりせちーの前に恋愛のアルカナのカードが出現し、ペルソナが発動した。背後からりせちーを見守るように立っている顔部分がアンテナになっているペルソナが出現する。さしだされたヘッドマウントディスプレイを装着したりせちーはうなずいた。

 

「な、何この威圧感......気をつけて、みんな!クマを助けられるのは私たちだけだよ!私も頑張ってナビするから、頑張れー!」

 

シャドウに拉致されてからペルソナに昇華したばかりにもかかわらず、りせちーは自分のペルソナの能力を即座に把握したらしく、千枝たちを支援する体制にはいった。

 

「うっわあ......光属性と闇属性が効かない上に、氷結属性は吸収だって......すっごいつよいじゃん......みんな、注意して!えーっと......」

 

「すっごいじゃん、りせちゃん。初めてでそんなことまでわかっちゃうんだ!?」

 

「あ、ありがとう......えーっと、じゃなくてありがとうございます......?」

 

「あはは、はじめましてだもんね。あたしは千枝だよ、里中千枝。二年生だからよろしく」

 

「千枝先輩、わっかりました!えーっと、あ、物理攻撃は大丈夫みたいだから、そっちで攻撃してください!」

 

「りょーかい!物理攻撃がいけるなら問題ないかな!」

 

「私は小西咲だよ、りせちゃん。よろしくね」

 

「小西......あ、も、もしかして保健委員の小西くんのおねーさんですか!?」

 

「うん、そうだよ。私、疾風属性の魔法が使いたいんだけど、いけるかな?」

 

「えーっと、あ、大丈夫みたいですっ!ただ、すっごく硬いっていうか、強いっていうか、頑丈だから気をつけて!」

 

「わかったよ、ありがとう」

 

「俺ァ、巽だ。巽完二。こん中じゃ俺とオメーが1年だ、覚えとけよ。ちなみに隣のクラスだかんな」

 

「巽......巽......もしかして、よさげなスカーフうってる呉服屋さん?」

 

「お、いいこというじゃねーか、そこが俺んちだ」

 

「そっか、よろしくね完二!物理攻撃の方が通りが良さそうだから、そっちでよろしく!」

 

「おい、なんで俺だけ呼び捨てなんだよ!」

 

「え、だってこん中で1年は私と完二だけなんでしょ?なんか問題ある?」

 

「あるに決まってんだろーが!なんであったばっかで呼び捨てなんだよ!尚紀は名字にくん呼びじゃねーか!」

 

「え、だって完二って巽くんって感じしないんだもん」

 

「んだとこらあ!」

 

「2人とも、じゃれあいは後でいいからいくぞ」

 

「あ、月森先輩......すんません。でも大丈夫なんすか、さっきの戦いの疲れ残ってるんじゃ?」

 

「りせは初めての戦いになるし、いつもサポートに回ってくれてる神薙がいないんだ。俺がフォローに入るよ」

 

「先輩......」

 

「俺は月森孝介、よろしくな、りせ」

 

「は、はいっ!」

 

「ほかになにかわかったことあるか?」

 

「え?えーっと、えっと、あ、そうだ!氷結攻撃してくるみたいです。弱点のペルソナは使わないようにしてね!」

 

「ありがとう、ここまでわかれば充分だ」

 

月森はりせちーの解析を聞いて、氷結系に強いペルソナを装備することにしたらしい。さっき使ったラクシャーサはまさしく弱点が氷結のため当然の判断だろう。

 

「ウンディーネ、頼んだ」

 

サポートに入ると宣言したとおり、回復と治癒に特化したペルソナにつけかえた。

 

「俺がサポートに回るから、みんなは攻撃してくれ。りせはクマのシャドウがなにをしてくるかよく見ていてほしい。なにかあったらすぐに伝えてくれ、なんとなくでもなんでもいいから。自分の直感を信じるんだ、きっとりせならやれるはず」

 

「は、はいっ!やってみます!」

 

りせちーのやる気を月森は評価したようだ。

 

そして、みんなの戦いははじまった。月森からやれるはずだと背中を押してもらったりせちーは、すぐにクマのシャドウがなにかをしかけてくるつもりだと気づいて月森たちに警告する。月森のラクシャーサのチャージとエネルギーの流れが似てるという情報から、コンセントレイトだと気づいた月森は、みんなに次からは防御するように伝えた。

 

コンセントレイトにより威力が2倍以上に跳ねあがったマハブフーラが飛んでくる。氷結吸収のウンディーネを装備している月森は平然としたまま、即座にみんなを回復させた。

 

りせちーのシャドウとラクシャーサで戦ったのは正解だったのかもしれない。次はクマのシャドウがチャージをしてくるつもりだとすぐにわかったりせちーは、次に備えるようみんなに伝えた。そのおかげで状態異常を誘発してきても、なんとか有利に戦えている。

 

クマのシャドウは弱点が無いから、こちらがいかにしてダメージを軽減していくかがポイントだと真っ先に気づいた時点で、どちらが優位にたてるかは明らかだった。

 

どんどんリソースが尽きてきたのか、クマのシャドウのきぐるみの部分が明らかに床にむかってだらりとしてきた。

 

クマのシャドウがとてつもなく頑丈だとりせちーが伝えていたおかげで、みんなは最後までモチベーションを保ったまま、戦い抜くことに成功する。

 

「クマから出て行ってもらおーじゃない」

 

「たしかに、今、真実がわからなくても、私たちも、クマくんも、たしかにここにいる。それだけはたしかな現実だもの」

 

「自分がだれなのか、真実は何なのかなんつーのは、今はわからなくてもいいんだよ。今探してるとこなんだからな!」

 

「いずれ、必ず、俺たちは自分で見つけ出す。もちろん、クマも一緒にだ。お前に教えてもらわなくてもいい。だから、クマを返してもらうぞ!」

 

月森たちの覚悟は、たしかにクマのシャドウにとどいた。本体を乗っとっているはずの干渉者が苦しみ始めたのだ。

 

「みんな...... クマは…自分が何者か、わからないクマ…答えなんてないのかもなんて気もしたクマ…だけどクマは今ここにいるクマ!ここで生きてるクマよ!!だから、クマから今すぐでていきんしゃーい!!」

 

クマの瞳に正気が宿った。

 

「ごー!キントキドウジ!!あいつをやっつけるクマー!!」

 

干渉を自らの意思で打ち破ったクマから、ペルソナが出現する。胴体は金庫でAu(金の元素記号)が図案化されており、持っているミサイルは鉞(正確には手斧)を意味するトマホークミサイルである。

 

「いっけー!!」

 

トマホークミサイルが発射された。それが、とどめだった。クマのシャドウは爆発にまきこまれる形で破壊される。その光は全てクマに戻っていったのだった。

 

みんながクマのところに集まったのは、いうまでもない。

 

 

 

 

「いやー、よかったよかった。りせちゃんも助けられたし、クマもなんか戦えるようになったっぽいしな。さすがに俺の誕生日になんかあったら嫌すぎるからなー」

 

りせちーを丸久さんに送り届け、すっかり遅くなってしまったために食べて帰ろうかと中華屋に足を踏み入れた私たちは思わず箸を止めた。

 

「ん、どーしたよ、みんな?」

 

「は?」

 

「はってなんだよ、月森。俺なんか変なこといった?」

 

「今なんて?」

 

「なにってりせちゃん助かって」

 

「その次」

 

「クマも戦えるし」

 

「だからその次」

 

「え、もしかして俺の誕生日」

 

「なんで言わないんだよ、花村。相棒相棒いってるくせに。もうこんな時間じゃないか」

 

「い、いえるわけねーだろ、それどころじゃなかったんだから!」

 

「マヨナカテレビ的な意味で?」

 

「りせちゃん的な意味でだ!よけーなこというなよ、神薙!」

 

「普通、俺誕生日近いからよろしくくらいいうだろ」

 

「いわねーよっ!なんかタイミング逃しちまってそれどころじゃなかったっつーか」

 

「お前友情より恋愛とるタイプか......彼女できたらそっちにかかりきりになるタイプか......重すぎるっていわれるぞ、気をつけろよ」

 

「なんでそこんとこ心配してんだよ、月森......いや大丈夫だから。友情に熱い男だから俺!もー拗ねんなよー」

 

「拗ねてない、拗ねてない。友達がいのないやつだと思っただけだよ」

 

「めっちゃ幻滅してんじゃねーか!え、俺が悪いのこれ!?それいうなら俺だって月森の誕生日知らねーんだけど!?」

 

「だってすぎてるし。4月2日だぞ、俺が越してきたの12日じゃないか。まだ俺都会にいたし」

 

「そ、そーなのか......」

 

「驚いたー、月森くんにいってなかったなんて意外。あたし、フツーにおめでとってメールしたのに。もしかして、あたしだけなパターン?」

 

「私も送ってたよ、里中さん。たぶんバイトの仲良い子たちはメールしてたと思う」

 

「千枝、花村くんの誕生日知ってたんだ」

 

「まーね、雪子が知らないのも無理ないかも。こんなことがなかったら、ここまでみんな仲良くなんなかっただろーしね」

 

「......なるほどな。花村、もしかしてお前、女の子にしか誕生日教えないパターンか?」

 

「いや、いや、いやいやいや誤解だよ、月森!なんでそーなんだよ、たまたまだってたまたま!」

 

「そっか、だから私にも言わなかったんだな」

 

「追い討ちかけんな、神薙!お前だって月森と似たようなもんだろーが!」

 

「それにしたってもう6月じゃないか」

 

「そーいう神薙はどうなんだよ!」

 

「私?私は9月7日だけど。まだ先だよ」

 

「ぐ......」

 

「そーなんだ、なら修学旅行の前の日だね、晃」

 

「そういえばそうだっけ」

 

「ちなみにあたしは7月30日だからよろしくー。夏休みだから遊べるといいね」

 

「私は12月8日だよ」

 

「あ、俺は1月19日っす」

 

「なら、私が最後だね。3月17日だよ。前期で合格が決まったらみんなで遊べそうだからがんばるね」

 

「小西先輩ファイト」

 

「あー、そっか。そろそろ受験だから小西先輩、もう一抜けって感じっすよね。仲間も増えたし、小西先輩の分までがんばるんで、頑張ってください」

 

「うん、ありがとう、花ちゃん。みんな。私頑張るね」

 

「こうしてみると、見事にバラバラだな、誕生日」

 

「そうだねえ」

 

「あー......なんで今日は水曜日なんだ?明日木曜日だから部活もあるし全体練習の日だから遊べない......。金曜日なら休みだからすぐに取り返せるのに。仕方ない、明日弁当つくってくるよ」

 

「な、なんか俺より残念がってんな、月森......。へへ、ありがとうな」

 

「花村、ステーキハウス奢ってもらうの来月に伸ばすよ、逆に奢らせてくれ」

 

「え、マジでいーのか、神薙!ありがとう!いやーたすかるわ、たぶんクマがこっちきたいって言い出したら、俺ん家に住むことになるじゃん?色々入用になるからどーしようかと思ってたんだよ。いやー、いってみるもんだな!」

 

なんとなく、メールだけで済ませるのは嫌だなあとみんな思ったのかもしれない。平日だから気合いの入ったプレゼントは無理だが、それぞれがプレゼントを渡す流れになっていく。花村は照れ臭そうに笑った。

 

ラーメンが伸びてしまったのは、いうまでもない。

雪子

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