(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4)   作:アズマケイ

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つるされた男⑤その2

「......あの、神薙先輩」

 

「どーした、巽」

 

「いや、その......なんでナチュラルにいるんすか。ここ、野郎部屋っすよね?もしかして、天城先輩となんか喧嘩でもしました?大丈夫っすか?」

 

「あはは、ごめんごめん。りせちーのシャドウの精神攻撃結構引きずってるところに、雪にうれしいこといってもらえたからつい泣いちゃっただけなんだ。喧嘩したわけじゃないよ」

 

「そうなんすか?ならいいんですけど」

 

「ああ、そっか。巽にはまだ話したことなかったっけ。マヨナカテレビはみてない?」

 

「久慈川のからっすね、俺」

 

「そうか、なら知らないのも無理ないか。私、あれだ、性同一性障害なんだよ。聞いたことないか?」

 

「......?すんません、よくわからないっつーか、聞いたことないっすね」

 

「そーか、なら、わかりやすくいうと、完二って男だよな?体も心も」

 

「はい?あー、まあ、そうっすね」

 

「赤ちゃんがどうやって男か女かわかれるか知ってるか?あれってさ、体が出来てから頭ができるから、体が決まってから心が決まるんだよ。順番的に」

 

「へー、そうなんすか。知らなかった。寝てばっかだったしな、理科」

 

「あはは、結構大事なことだから覚えて帰ってほしいんだけどさ。因果関係はハッキリしてないんだけど、まあ、わかりやすいからいうよ。誰しも赤ちゃんのときに体が女の子になったんだから、女の子だぞって頭に教えなきゃいけない時期があるんだけど、その大事な時期に私のお母さんは事故にあったんだ」

 

「え、事故っすか。交通事故?」

 

「うん、そう、交通事故だって聞いてる。速度オーバーの対向車がカーブを曲がりきれずに飛び出してきて、産婦人科帰りのお母さんの車と正面衝突してさ。そのときすごいストレスとかがあって、間違えて男の子だって教えちゃったんだ。困ったことに、これって一生モノだから治らないんだよ」

 

「えっ、じゃあ神薙先輩は」

 

「うん、まあそういうことなんだよ。生まれたときからずっと心と体が一致しないとかそういう感じ。巽が女の子の着ぐるみの中に閉じ込められてて、一生出られないような感じっていったらわかりやすいかな」

 

「ま、マジっすか。地獄じゃないですか」

 

「私が神薙農園手伝いながら、おばあちゃんたちと暮らしてるのは、そういうこともあるんだ。そりゃ、お母さんたちは責任感じるよな。弟は普通だから尚更。あ、でも、寝るときは部屋わけるし、風呂は違う時間にいく予定だし、気にしないでほしいな」

 

「う、うっす......」

 

「まあ、私は私だから」

 

「それはそうっすけど......」

 

「ああ、うん、これな。未成年のあいだは手術しないって決めてるからどうしようもないな。思春期には目の毒だよな、わかる。ただ、自分の見てもあんま意味ないんだよな」

 

「俺たちはそうじゃねーからな、神薙」

 

「正直なやつめ、小西先輩がいなくなった途端にこれか」

 

「いや、こーいうのは大事だろ!?」

 

「わかってるよ、もちろん。騒ぎ起こしたら雪に迷惑かけるしね」

 

「ほんとにわかってんのかよ......」

 

「わかってなかったらサラシにTシャツなんか着ないよ。普通寝巻き用の和装は下着だけなんだから」

 

「そりゃそーだけど」

 

「神薙はおっきい方が好きなのか?」

 

「月森!?」

 

「私?私はあんまり......実体験してるとこあるからな、あんま気にならないよ。大変そうだなが先に来る」

 

「ならスレンダー派か」

 

「まあね」

 

「好みは里中だっていってたもんな。りせは声が好きなんだっけか」

 

「えっ、神薙まじかよそれ」

 

「記憶がないんだから嗜好だって変わるさ。まあ......好きになってくれる人がいたら話は変わるけど」

 

「ま、それはわかるけどさ」

 

「なるほど」

 

「そーいや、あんときは濁されたけどさ、月森はもし付き合うとしたら女性陣の誰がいいよ?さらに仲間も増えたことだしそろそろ教えてくれてもいいんじゃね?」

 

「月森の好みの話?気になるな、それ。あ、私のことは気にしないでいいよ」

 

「俺のことは気にして欲しいけどな!」

 

「花村先輩図々しいっすね、アンタ」

 

「うっせえ」

 

「いや、俺は......」

 

「前は菜々子ちゃんがいるからってお茶濁しやがってよ。こっそり里中たちと遊んでんの知ってんだからな」

 

「いや、それはたまたま......」

 

「なーにがたまたまだ、遊ぼうと思ったら先約あったの1度や2度じゃねーだろうが!」

 

「いやそれ月森先輩の都合じゃ?」

 

「うっせえな」

 

「構って貰えないからって、アンタもたいがいガキっすね」

 

「おめーも人の事いえんのかよ、完二」

 

「あはは、大人気だな月森」

 

「いや、だから俺は......」

 

「仲良いのはいいことだよ」

 

「神薙......」

 

「ただパーティ内の雰囲気が悪くなるのは、さすがにいたたまれないから程々にな」

 

「神薙!?いや、なんの話をしてるんだよ、えっ!?」

 

「神薙もそう思うか!?だよな、だよな、気づいたらなんかすげえみんなと仲良くなってるっぽいし!」

 

「さみしい?」

 

「......いや、なんでそんな目でみんだよ、お前ら。何の話だ!」

 

「あはは。で、月森、誰か気になる人とかいないのか?」

 

私の問いに月森は目をそらす。

 

「花村は口が軽いし、完二は隠しごと下手くそすぎるし、神薙はあれだ。フォローしてくれる代わりに視線が優しいのが嫌だから絶対にいわない。決めた、今決めた。これから出来たとしてもお前らには絶対にいわない」

 

「えー」

 

「えーじゃない」

 

「薄情なヤツめ」

 

「どさくさに紛れて天城越えしようとしてる奴がいうなよな」

 

「もうフォローしないぞ、花村」

 

「すいませんでした」

 

「早っ!?え、月森先輩、なんで花村先輩謝ってんすか?神薙先輩に」

 

「いや、うん、まあ......色々あるんだろ、2人とも」

 

「そっすか」

 

「うん」

 

しばらくの沈黙ののち、私たちは笑ったのだった。

 

「だいたい、りせちーのファンのくせに小西先輩がいるからって大人しすぎるんだよ、花村。おかげで私や月森が余計な疑惑向けられたじゃないか」

 

「いや、俺はほんとに調べただけだし......神薙はファンだからだろ?」

 

「そうだけど前の日あんだけまくし立ててたくせに、りせちーのスリーサイズ間違えてるし。ポスターと動画だとちがうのにほんとにファンなのかよ花村」

 

「え、マジ?それほんとかよ、神薙!?」

 

「......そうなのか。いわれてみれば、たしかにりせとシャドウだと大きさが違ったような」

 

「月森!?」

 

「......よく覚えてるっすね、あんたら......」

 

「健全な男の子だからね、仕方ないよ。巽は純情すぎるだけ」

 

「んなっ!?んだとコラァ!さすがに神薙先輩といえどいっ......」

 

「騒ぐな、巽。声が大きい。騒ぎになったら親に連絡行くんだぞ、やめろ」

 

「......神薙先輩、なんかキャラちがいません?」

 

「そりゃ、この場には野郎どもしかいないんだ。いつも通りじゃつまらないじゃないか」

 

「騒ぎはまじでやめとこーな、俺前の中間テストの結果久しぶりにめっちゃ悪くてめっちゃ怒られたんだよ。今回だって同意書書いてもらう代わりにテストめっちゃがんばるって約束したしさあ。騒ぎがバレたらなにいわれるか......」

 

「親に連絡いったら、いよいよ俺、叔父さんに殺されるな」

 

「いや、それ俺も同じっすけど......」

 

そうこうしている間に旅館の人から声がかかる。どうやら遅めの夕食の準備ができたらしい。私たちは部屋を離れることにする。その間に寝る前の準備を全部してくれるらしい。さすがは天城屋旅館である。料理が楽しみだ。

 

雪子

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