(更新停止)果てしなく続く坂道の途中で(ペルソナ4) 作:アズマケイ
今日から授業はあるが部活は休みである。16時から暇になった私たちはとりあえずこれからの予定を決めるために教室でたむろしていた。
なにせ花村曰く、クマはお外デビューのために色々準備が必要とかでマヨナカテレビには立ち入り禁止だといいはっているようで、自称特別捜査本部が開けないのである。
今回からペルソナが使えるようになったクマとりせちーがメインだ、特にベルベットルームだとか色々案内するところがある。片方が欠けては二度手間だからと話し合いは期末テストが終わるまで先送りになったのだった。
「まあ、真面目な話はこの辺にして、勉強どーする?さすがにベルベットルームでするわけにはいかないっしょ」
「ジュースとかお菓子とかほしいしな、さすがに......やっぱジュネスのフードコートにする?」
「そうだね、図書館や図書室はちょっと大所帯すぎるかも」
「今から誰かの家ってわけにもいかないしね、りょーかい」
「じゃあ、一回解散しようか。私と花村、今日日直なんだ」
「あ、忘れてた」
「だと思った」
みんなに笑いが溢れる。私たちはジュネスのフードコートに集まる約束をして、一回わかれたのだった。
「ごめん、お待たせ」
「わりーな、みんな。よりによって今日が日直だとは」
「仕方ないってそれは」
「どう?進んでる?すでにいない人がいるけど」
「ああ、うん。月森くんがジュース取りに行ってくれてるんだー」
私と花村が最後だったらしい。きちんと片付いているというわけでもなく、乱雑に汚れているというほどでもなかった。月森が主にりせちーの勉強を見ているんだろうなという跡が、さり気なく残っていた。机の上には数字や記号が並んだノートが開いて置いてあった。まさしく勉強の途中でちょっと席を立ち、近所にジュースを買いに行ったという感じだった。
「あーあ、ペルソナみたいに眼鏡かけたら全部わかるようになんないかなぁ......ほんと数学いみわかんない......」
りせちーはすでにぐったりしている。知恵熱でも出しているのかもしれない。
「こっちの世界だと使えないんだよね......あーもー」
「えーっと、この方程式って、どれ使うんだっけ」
「教科書にはこれしかないけど、練習問題の解説にのってるこっち使ったほうがいいよ、千枝」
「え、あ、ほんとだ!ありがとう、雪子!よーし覚えるぞー!」
「......だーくそ、マジでわかんねえ」
りせちーと完二のあいだに月森の鞄があるということはそういうことなんだろうとわかる。
「晃ちゃん、今日はどうするの?」
「私?そうだな、みんな数学してるみたいだしやろうかな」
「晃、晃、ならここ教えて!ほんとわかんないのこれ!」
千枝から差し出されたのは数式の応用問題だった。過剰数と不足数だ。
「慌てないでまずは書いてみようか、千枝。約数を書き出してみた方が早いよ。20なら2×10とか対応する数を全部書いてみて」
「う、うん、やってみる。えーっと」
ノートを見ながら私は続けた。
「20の約数は6つあるから、全部出すんだ。今回は1 + 2 + 4 + 5 + 10 + 20で42ね。過剰数はその約数の総和、つまり合計が元の数の 2 倍より大きい自然数のことなんだ。だから、20の2倍より大きいよね。だから過剰数だよ」
「な、なるほど、そういうことかー」
「とりあえず、約数全部書いた方が早いよ、千枝」
「ふむふむ。じゃあ、18は1+2+3+6+9=21だから過剰数で、14は1+2+7=10で、不足数?」
「そういうこと」
「おおー、なるほど。いやあ授業聞いてたはずなんだけどなー、ど忘れしちゃって。あはは」
「この応用問題はこれがわかんないと詰まっちゃうから、もう一回問題文読んでみて。とりあえずわかるとこまでなんとなくでもいいから書いてみてもらっていい?千枝がどう考えたかわかるしね」
「うん、わかった。ありがとう!」
「晃ちゃん、数学得意なんだね」
「いやー......今だけだよ。応用問題になるとほんとだめなんだ、私。頭が硬いみたいでひらめきがたりないんだ」
「そうなの?意外」
「だから解説読む方が多いんだ、私。パターンさえ覚えてしまえばいいし。テストのときに思い出せるかどうかはまた別の話なんだけどさ」
「そっか」
「そう」
千枝が自分でやりはじめたため、私も雪も自分のペースでテスト勉強をはじめた。
長ったらしい数式や文字の羅列を、蜘蛛の巣みたいに頭の中に張り巡らす。何か、という以外、表現のしようがないものだった。数字があり、アルファベットがあり、秘密めいた記号があり、それらがまた連なり合って一続きの形を成していた。発せられる言葉の意味は一つとして理解できなかったが、そこには確固たる筋道があり、その真ん中を突き進んでいるか私は確信が持てない。
私はページを撫でた。数式が指先に触れるのを感じた。数式たちが連なり合い、一本に長く垂れ下っていた。もうあと少し歩みを進めれば、目指すものはすぐそこにあるかもしれないのに、どんなに目を凝らしても、次に踏み締めるべき数字はどこにも見つけられない。
固まっていた私は目の前にブラックコーヒーがさしだされたことに気付いて顔を上げた。月森だった。
「それ、ここでこの公式使うんだ、神薙」
シャーペンが走る。
「あれ、こんな公式あったっけ」
「参考書に載ってる派生式なんだ。模試とかでしょっちゅうでるから覚えといた方がいいよ、効率がいいんだ」
「そっちか......!ありがとう、月森。助かった」
「なになに、晃がひっかかるような問題あったの!?あとで教えて、絶対あたしじゃ解けないよ!」
「私も見せてもらってもいい?」
月森は笑った。さすがは都会の理数系特化のクラスに在籍していただけはある。すんごいわかりやすい。
「せんぱーい、いわれたとこできたよ!みてみて!」
「先輩、次お願いします。ガチでわかんねえ......」
月森大人気である。私はふと必死で問題集を見ている花村をみた。こっそり写メをとる。
「......なあ、神薙、今撮った?」
「撮ったよ、小西先輩に送ろうと思って」
「ちょっ、なにしようとしてんだよ、神薙!やめたげて!?」
「今回から本格的に小西先輩来れなくなるんだから、一枚くらい送りなよ、花村。あ、もしかしてもう送った?ならごめん」
「いや、まだ送ってないけど......いやそうじゃなくて!」
「あ、撮る?みんなの送った方が安心かな」
「そーしてくれ......なんでいっつもこう、いきなりなんだよ」
「え?だめ?」
「ダメに決まってんだろー!男の純情弄んで楽しいかこの悪魔!鬼!」
「あはは」
みんなで写メを送るついでに花村のさっきの写メも一緒に小西先輩に送ってあげた。なかなか進まないようにみえる2人の関係がもどかしくて仕方ないんだから仕方ない。お前自分のこと棚にあげてと言われそうだが、私が余計なことをすることでそこから2人の会話が増えるなら越したことないのではないだろうかと真面目に思うのである。
花村からお怒りのメール爆撃がとんでくるのは、勉強会がお開きになり、商店街で解散した道中だった。
「どさくさに紛れてまたやったのか、神薙」
「またやったよ、小西先輩も楽しんでくれたみたいでよかった」
「そうみたいだな」
いつものようにバス停までは通学路が同じな月森が律儀にバスが来るまでいてくれた。
「今日は大人気だったな、センセ」
「今日だけだよ、今日だけ」
「なんで」
「国語苦手なんだよ、特に古文」
「そうなんだ、意外だな」
「......りせたちの期待の眼差しがあるから頑張って勉強するけど」
「頑張れ」
「がんばる......」
リーダーは大変だなあと無責任に私は思ったのだった。
雪子
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